唄ごころ満点のアルト・サックス
ジャキー・マクリーン(Jackie Mclean)と言えば、唄ごころ満点のアルト奏者というイメージが強い。それはそれで大正解なのだが、彼のキャリアを振り返って見ると、彼は様々な面を持っている。
デビュー当時は、バリバリのハード・バッパーで、この頃のスタンダードの演奏は素晴らしいものが多い。 しかし、ジャズ界のフリーや新主流派(いわゆるニューハードバップ)の波が押し寄せると、ジャッキーは積極的にその奏法や方法論を取り入れて、1960年代中盤はフリーばりの演奏を繰り広げていた。
1980年代以降はハード・バッパーの資質を全面に押し出し、時にフリーキーな奏法でマンネリズムを避けるという、なかなかに好ましいアプローチで人気は衰えていない。今回は「唄ごころ満点のアルト・サックス奏者」の面に光を当てて、ジャッキー・マクリーンのアルバムを聴き返してみる。
まずはこれだろう。 Jackie McLean『Swing, Swang, Swingin'』(写真左)。ブルーノートの4024番。1959年10月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Walter Bishop Jr. (p), Jimmy Garrison (b), Art Taylor (ds)。
ハードバップの雰囲気をギッシリと詰め込んだ、唄うようなアルトが素晴らしいマクリーンの面目躍如的アルバム。ピーンと張った緊張感のもと、マクリーンの唄うようなアルトが「What's New」を奏で出すと、そこはもう素晴らしいハードバップの世界。その素晴らしさに惚れ惚れしつつ、このアルバム全編を一気に聴き切ってしまう。
マクリーンのアルトは、ほんの少しではあるが音程が外れた様な音の為、アルバムによっては、緩慢な印象や雑な印象を与えるものも時にはあるが、このアルバムは聴いて安心。一般万民、誰にもお勧めることの出来るマクリーンだ。ワンホーン・カルテットとして、マクリーンのアルトを存分に楽しめるのも良い。 しかも、全編スタンダードで馴染み易い演奏であることも、このアルバムの魅力。
さて、アルバムの内容と言えば、やはり最初の1曲目「What's New」にとどめを刺す。この「What's New」において、マクリーンが情感豊かに旋律を吹き上げていくその様は、アルト・サックスという楽器を通じて、まさに「唄って」いるようなのだ。
情感込めて、歌詞を噛みしめながら「唄う」マクリーン。しかも、その情感に溺れることなく、さりげなく軽く、少し乾いたマイナー調で「What's New」を朗々と唄い上げていく様は、このアルバムを代表する名演である。
マクリーンばかりが目立つ(それだけ抜きんでているのだが)このアルバムであるが、バックのリズム・セクションも素晴らしい。「Speak Low」の名盤で名高い、ピアノのWalter Bishop Jr. 、後にコルトレーン・カルテットの一員となる、ベースのJimmy Garrison、百戦錬磨の人気ドラマーのArt Taylor。全編に渡って、なかなかに素晴らしいバッキングを繰り広げている。
マイルスやコルトレーンなど、ジャズ・ジャイアンツなビック・ネームばかりでなく、マクリーンの様な中堅どころの代表的ジャズメンの演奏に耳を傾けるのも、これまた、ジャズ鑑賞の楽しみです。
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