ジャズ喫茶で流したい・47
ジャッキー・テラソン(Jacky Terrasson)って、メジャー・デビューして、はや19年になるのか。
そう、約20年前、1994年にブルーノート・レーベルからリリースされた、初リーダー作『Jacky Terrasson』(写真左)は、センセーショナルな話題を振り撒いた。ちなみにパーソネルは、Jacky Terrasson (p), Leon Parker (ds), Ugonna Okegwo (b) 。
バリバリ弾きまくるピアノ・トリオ盤で、実に日本人のジャズ者ベテラン、ジャズ者評論家好み。ドラムとベースは意外と控えめで、テラソンのピアノがガンガンに響きまくるアルバムで、とにかく「派手」なピアノ・トリオ盤である。
ジャッキー・テラソンは、1965年11月27日ドイツのベルリン生まれ。この初リーダー作がリリースされた時は29歳の若手、今年は48歳になって、ジャズ・ピアニストの中堅どころのポジションである。
バークリー音楽院に学び、一旦、パリに戻ると、バルネ・ウィランらと共演。力を蓄えつつ、1990年からはニューヨークに進出、1993年にはモンク・コンペティションで優勝。特に、このモンク・コンペティションでの優勝が、テラソンに格好の追い風になった。日本でも、この「モンク・コンペティションで優勝」したピアニストとして、ジャズ雑誌で紹介され、僕達はその名を知った。
さて、このデビュー作『Jacky Terrasson』を聴くと、テラソンのピアノの個性が良く判る。とにかく弾きまくる。それもしっかりと旋律を歌わせながら、高速手捌きで弾きまくる。音の強弱を極端につけて、音の陰影とメリハリを付けてはいるが、音が小さくても、密度の高い硬質なタッチでしっかりと音を押さえていく。音の強弱に関わらず、硬度の高いタッチは、テラソンの個性。
このバリバリに弾きまくる様は、一言で表現すると「現代ジャズのバップ・ピアニスト」。テラソンのインプロビゼーションは、明らかに「ビ・バップ」な弾き回しである。リリカルとか耽美的とか、印象派ジャズ・ピアニストの影を全く感じさせない、徹頭徹尾、ビ・バップな弾き回し。高速な弾き回し、ダイナミックな展開、旋律を歌わせ、秀逸な疾走感。誤解を恐れずに言うと「旋律が美しく、メリハリの効いたバド・パウエル」の様な雰囲気。
確かに、それまでに無いジャズ・ピアノのスタイルではある。1994年当時、新しい響きを宿していたことについては疑いは無く、僕もこの初リーダー作『Jacky Terrasson』を聴いた時は、こりゃ〜まあ、これまた個性的なピアニストが出てきたなあ、と感心したもんだ。
ただ、正直に言うと、とにかく弾きまくるスタイルなので、これからどうするんだろう、と心配にもなった。自作曲については、あまり「これは」というものは無く、どちらかと言えば、「My Funny Valentine」や「Bye Bye Blackbird」や「I Fall In Love Too Easily」など、スタンダード曲の斬新な解釈と弾き回しに、テラソンのピアノの個性が光り輝くのだ。つまりは、バップ・ピアニストなのだ。
今では、中堅のジャズ・ピアニストとして、バリバリの現役。確かに、同世代のブラッド・メルドーやビル・チャーラップらと比べて、ちょっと遅れを取ってるかなあ、という雰囲気はありますが、彼のピアノは今でも「現代ジャズのバップ・ピアニスト」の個性をしっかりと維持していて、決して隅に置けない優れたピアニストのポジションをキープしています。
そんなテラソンのデビュー作『Jacky Terrasson』。渋くて硬派なピアノ・トリオ作として、ジャズ者の皆さんにお勧めです。
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がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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