ジャズ演奏家の持つ「歌心」
ジャズの世界で、1960〜70年代のロック・ポップス・チューンの中で、一番カバーされたのは、やっぱり「ビートルズ」関連の楽曲だろう。ビートルズ・ナンバーのカバーだけで相当数のアルバムが作られたりするし、1〜2曲をちょっと織り交ぜたりするのも含めると、ジャズ・フュージョンの世界でもビートルズは大人気である。
まあ、ビートルズ・ナンバーのカバー・アルバムが一番沢山製作されたのは、ビートルズが実際に活動していた時代なので、ビートルズ人気に乗っかろうとする思惑が見え隠れはする。それでも、ジャズの世界では優秀なビートルズのカバーが相当数、存在する。
今、アルバム・タイトルが、ずばり、ビートルズ関連の題名のアルバムを思い浮かべただけでも、ウェス・モンゴメリーの『A Day iin The Liife』、ケイコ・リーの『Imagine』、 ジョージ・ベンソンの『The Other Siide of Abbey Road』、グラント・グリーンの『I Want to Hold Your Hand』、セントラル・パーク・キッズの『Play The Beatlles』、ヨーロピアン・ジャズ・トリオの『Norwegian Wood』、カウント・ベイシーの『Basie's Beatle Bag』等々、スラスラと軽く7〜8枚は出てくる。
いずれも、聴き応えのある優秀なカバー・アルバムばかりであるが、特に、私、松和のマスターお勧めのアルバムは、Wes Montgomery『A Day in The Life』(写真左)。1967年6月の録音。クロスオーバー・ジャズの筆頭レーベル、CTIレーベルからのリリース。このアルバムは、ウェスの優れたフュージョン・ジャズの先駆け盤です。
音楽家としてのウェスは、独特なオクターブ奏法と、アルバム全体に流れる、溢れるような「歌心」に最大の魅力があると思います。曲毎に曲の楽想にぴたりと合う素晴らしい直感的なフレーズを次々と繰り出してきます。このアルバムは標題曲はビートルズ・チューンですし、その他も印象的なメロディーが主体のポピュラーな曲が多く、ウェスの「歌心」を純粋に楽しめます。
聴いていて楽しいし、聴いていて、グッと惹き付けられます。演奏のテーマに選んだ楽曲の美しいメロディーを最大限に活かすよう、良く考えられたアレンジが素晴らしいですし、その優れたアレンジに乗っかって展開されるインプロビゼーションの印象的なフレーズが実に魅力的。いかにウェスが、優れた「歌心」を備えたギタリストだったかを強烈に再認識させられます。
ウェス・モンゴメリーの「A Day in The Life」を聴いていて思うのは、60年代〜70年代のロック ・ポップスを素材にした「ジャズ・スタンダード化」については、まず、演奏するミュージシャンのその演奏スタイルの中に「歌心」が感じられるかどうかがポイントとなるみたいですね。
その優れた「歌心」で、60年代〜70年代のロック・ポップスの印象的なメロディーをジャズに置き換えていく。そういえば、ハード・バップ期までのジャズ・ミュージシャンって「歌心」のあるミュージシャンが多かったような気がします。
「印象的なメロディー」を持つ楽曲という観点から、新しいジャズ・スタンダードについて考えると、ビートルズやローリング・ストーンズ、カーペンターズ、アバ、ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、ボブ・ディランなど、60〜70年代、メロディー・メーカーとして活躍したグループやミュージシャンの曲が、新しいジャズ・スタンダードに一番近いところにいるのかもしれない。
ジャズ・ミュージシャンの持つ「歌心」と、1960年代〜70年代のロック・ポップス・チューンの「印象的なメロディー」の二つが、60〜70年代のロック・ポップスの名曲をカバーして、ジャズ・スタンダード化する重要な要素だといえる。
う〜ん、ジャズ・ミュージシャンの「歌心」という点が、現在のジャズ・ミュージシャンの最大のウィーク・ポイントかもしれないなあ。
★大震災から2年7ヶ月。決して忘れない。まだ2年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 硬派なフォーク・ロック路線へ | トップページ | 『夜明けの口笛吹き』のモノ盤 »
コメント