こんなアルバムあったんや・27
ジャズ盤とは不思議なところがあって、どうしてか理由は良く判らないのだが、ずっと昔にお蔵入りした録音が、ある日突然、陽の目を見ることがある。
例えば、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)とジャッキー・バイアード(Jaki Byard)のピアノの名手2人が録音した『The Magic Of 2』(写真左)などがその好例である。
このピアノ・デュオ盤、録音は1982年2月の録音。1970〜80年代初頭、アメリカ西海岸のジャズ・ライヴの拠点であったキーストン・コーナーでの貴重な未発表音源。そんな魅力的な未発表音源が、突如、今年の2013年3月になってリリースされた。まさに「こんなアルバムあったんや」である(笑)。
トミー・フラナガンは、ハード・バップ時代から活躍したピアニスト。メロディアスでバップなピアノが個性。数々の名盤にピアニストとして名を連ね、「名盤請負人」なる異名を持つ。また、歌伴プレイが絶品で、あのエラ・フィッツジェラルドのバックを長年務めた。
ジャッキー・バイアードは、マルチ・リード奏者としての顔も持ち、チャールス・ミンガスの下で頭角を現したピアニスト。伝統的なアプローチをベースに、今までのジャズ・ピアノの様々なスタイルを織り交ぜ、自由自在な展開が個性。
フラガナンとバイアード、伝統的なアプローチをベースとしたところは同じだが、フラガナンは「メロディアスで端正」、バイアードは「様々なスタイルを持った自由自在な展開」と、やや正反対の個性を持つ、正統派ピアニストである。
この2人が丁々発止とピアノ・デュオでやりあうのだ。面白く、楽しいに決まってる。確かに、このデュオ・ライヴ盤『The Magic Of 2』を聴くと、本当に楽しい雰囲気がビンビンに伝わって来る。キーストンコーナーでリアルに聴いている聴衆も、歓声を上げたり温かい拍手を送ったりと、とても楽しそう。
各々の個性を尊重しお互いを立てつつ、それぞれのテクニック溢れる個性的な展開が、実に美しい対比を生んでいて、聴いていてとても楽しいライヴ盤に仕上がっています。
二人とも、ハードバップな伝統的なアプローチをベースにしており、二人が連弾すると、リズム&ビートが増幅されて、ダイナミックなドライブ感が生まれているところが見事。
フラナガン、バイアード共にそれぞれ3曲ずつソロ・ピアノも披露していますが、これまた、これが絶品。特に、バイアードのソロ・ピアノは、僕はこの盤が初めての体験で、なかなか興味深いソロ・ピアノを堪能しました。フラガナンのソロ・ピアノは当然「絶品」です。
フラガナンとバイアード、息の合ったプレイで、聴き応え十分です。正式なライヴ録音では無かったらしく、音は「中の下」で、クリアな雰囲気に欠けるところがありますが、フラガナンとバイアードのデュオ演奏の楽しさが、その「音の悪さ」をカバーしてくれています。ジャズ・ピアノ好きのジャズ者中級者以上の方々にまずはお勧めかな。
大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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