寺井尚子の初期の傑作アルバム
ファースト・アルバム『Thinking of you』(2011年7月19日のブログ・左をクリック)は、デビューアルバムだけに、積極果敢、「なにがなんでも頑張るぞ」的な初々しさと、チャレンジ精神が旺盛だった。そのがむしゃら感と硬派な純ジャズな雰囲気が魅力の好盤だった。
続くセカンド・アルバム『Pure Moment』(写真左)は、1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、寺井尚子 (vln), 奥山勝 (p,syn), 池田達也 (b), 藤井摂 (ds), 横山達治 (conga)。オール日本人のメンバーで、充実の演奏を繰り広げている。
このセカンド・アルバムは、客観的かつ冷静に「ジャズにおけるバイオリン」を最大限活かすには、どの様な選曲が良くて、どの様なアレンジが良いのか、じっくり考えて作られている。そして、細部に渡ってきめ細やかな配慮が行き届いた、充実度の高いアルバムに仕上がっている。
「ジャズにおけるバイオリン」を最大限に活かすには、と検討した一つの結果が、ラテン・フレーバーだったのだろう。ラテン音楽を下敷きにした、1曲目の「Adios Nonino」と、5曲目の「Spain」が素晴らしく、バイオリンの音色が、その曲想にマッチしている。
特に、チック・コリア作の「Spain」は、バイオリン演奏における、苦手な音階の部分を上手くアレンジで処理しながら、バイオリン演奏が映える音階の部分は、堂々とバイオリン演奏の為に書かれたような、素晴らしい演奏が繰り広げられる。
6曲目の「Estate」だって、ほんのりとラテン調。こんなに、ラテン調のジャズがバイオリンに合うとはねえ。やはり、バイオリンの音色の最大の特色は「哀切感」であり、寺井尚子は、その「哀切感」を最大限に引き出しており立派だ。
それと、4曲目のスティングの名曲「Fragile」では、ピチカート奏法を披露する。冒頭の旋律は語りかけるようなピチカートで、静かに、そして力強く歌いかけながら、サビの展開部では朗々とボウイングで歌い上げていく。この展開はなかなか感動的だ。歌心溢れるその名演を是非とも皆さんも体験して下さい。
そして、7曲目では、なんと、あの宇多田ヒカルの名バラード、「First Love」を堂々と歌い上げるのだ。これはなかなかの演奏で、「今」のJポップ・シーンが、十分にジャズの素材として、将来、ジャズ・スタンダードとなりうる優れた楽曲を送出していることに感動を覚える。
この『Pure Moment』は彼女の初期の傑作である。純ジャズにおけるバイオリンがリーダーのアルバムとしても秀逸で、バイオリン・ジャズとして名演に位置する好盤だと僕は思う。
大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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