アキコ・グレースのセカンド盤
しばらく聴かなかったピアノ・トリオ。今の耳で聴き直してみるシリーズ。デビュー当時、鳴り物入りで登場したアキコ・グレース。今でもしっかりと自分の音を奏でつつ、着実な活動を続けている。そんな彼女のセカンドアルバムを聴いてみる。
改めて、Akiko Grace『Manhattan Story』(写真左)。2002年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Akiko Grace (p), Larry Grenadier (b), Bill Stewart (ds)。
デビュー盤で、恐らくレコード会社の差し金だったのだろう、ベースに人気ベーシストRon Carterを起用したのだが、これがアキコ・グレースのピアノに全く合わなかった。よって、今回、Larry Grenadierにチェンジしたのは正解だろう。などとパーソネルを眺めて、聴く前に類推したりする。そして、CDプレイヤーの再生スイッチを入れる。
ん〜、良くなりましたね。2枚目のリーダーアルバムということでリラックスできたのか、それともベースが、かの巨匠ロン・カーターから替わって、若い同世代のラリー・グレナディアとの相性が良かったのか、ノビノビと演奏しているのが良く判る。なんせ、デビューアルバムは全編に渡って、少しぎこちなかったからね。
一言で言うと、アキコ・グレースのピアノの個性、きめ細やかさと大胆さ、激しさと優しさが旨く表現されている。現代ジャズを代表するパット・メセニーやブラッド・メルドーのサイドを務める実力世界最高峰のベーシスト&ドラマーをバックに従え、演奏される曲ごとに硬軟自在、豊かで様々な表現を見せてくれる。
このアルバムのリリース時点では、アキコ・グレースはまだまだ若手の部類なので、最上級とは言い難いが、オリジナル曲のほか、エリック・クラプトンの「Change the World」など興味深い選曲もあって、聴いていて楽しく、しっかりとしたアルバムとなっている。
1曲目からガツーンとやってくれる「Libido〜Mediterranean Sundance」。速いテンポと印象的なフレーズで、最初は違和感を感じるかもしれないが、これが結構、聴き込んで行くにつれ、だんだん、だんだん「クセ」になる。
3曲目の「Fly Me to the Moon」は、ジャスでは有名なスタンダードだが、これがシットリとしていて、落ち着いた、なかなかの演奏。若くしてスタンダードが旨いピアニストは先が楽しみだが、アキコ・グレースも例外では無い。
8曲目の「Over the Rainbow」は、映画「オズの魔法使い」のテーマソング。アキコ・グレースの抒情的な演奏が美しい。この浮遊感のある抒情的なタッチが、彼女のその後の「メインの個性」になっていく。
9曲目は、セロニアス・モンクの「Bemsha Swing」のテーマのユニークさとアキコ・グレースの硬派な演奏のギャップが楽しく、11曲目の「Song for Bilbao」は、人気ギタリスト、パット・メセニーの作曲。エネルギー溢れる演奏で、実に若々しい。
とにかく、デビューアルバムとは似ても似つかぬ、アキコ・グレースの個性を全面に出したアルバムといえる。このアルバムで、アキコ・グレースは、スタートラインに立った、そんな感じがするセカンド盤。なかなかの好盤である。
大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。
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