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2013年9月 7日 (土曜日)

寺井尚子は「硬派」が似合う。

昨日ご紹介した『Princess T』で完璧なフュージョン・アルバムに転身し、その後、今までの活動の総括的なライブアルバム『NAOKO LIVE』(2011年6月23日のブログ参照・左をクリック)を出したことで、寺井尚子の活動の第一幕は閉じた感があった。

次なる新たな展開は何か。実はあんまり期待はしていなかった。大レコード会社のイメージ先行型の販売展開は、ミュージシャン本人の意思に関わらず、常軌を逸した形となり、ひいては演奏家の個性と才能をつぶしがちなのだが、寺井尚子もその波に飲み込まれたかに見えたからだ。

が、しかし、この4th.アルバム『All For You』(写真左)はその不安をうち消して余りあるアルバムに仕上がっている。リリース当時、ホッと安堵したことを覚えている。

再び「硬派な純ジャズ的雰囲気をバイオリンで力ずくって感じ」を引っさげ、耳に優しいフュージョン的な演奏も「硬派なフュージョン・ジャズ」で押し通し、演奏家としての意志の強さがしっかりと感じられる、素晴らしい演奏の数々がこのアルバムの中に溢れんばかりに詰まっている。
 

All_for_you

 
その「強さ」は冒頭の2曲で感じ取ることができる。1曲目「おいしい水」はボサノバの名曲。しっかりと純ジャズよろしく、寺井はアドリブを繰り広げていく。

2曲目は「ビ・バップ」。ビ・バップの創始者の一人ディジー・ガレスピーの名曲で、この演奏こそが、このアルバムのハイライトで、バイオリンの純ジャズの名演として記憶されるべき名曲と思う。実に硬派な演奏で、胸がすくような名演だ。

4曲目と6曲目は、アコーディオンの名手リシャール・ガリアーノとの競演。これが「目からウロコ」で、 バイオリンとアコーデオンは実に良く合う。

前に『バイオリンの音色の最大の特色は「哀切感」である』ってなことを書いたが、この「哀切感」が、アコーディオンの音色に増幅されて、さらに浮き出てくるのだ。これって「ジャズ」しているよなあ。「ジャズ」以外なにものでもない、この組み合わせの妙。ドビュッシーの「月の光」も、展開部はジャズしていて良し。

このアルバムでの寺井尚子は、良い意味で、純ジャズとフュージョンのいいとこ取りをしている。バイオリンという楽器の性質がそうさせるのだろう。

 
 

大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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