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2013年9月の記事

2013年9月30日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・37

ジョージ・ケイブルス(George Cables)。1944年11月生まれ。今年で69歳になるベテラン・ピアニスト。アート・ブレイキーやソニー・ロリンズ、デクスター・ゴードンなどのサイドメンを務める。僕は、復帰後のアート・ペッパーとの共演で、彼の名とプレイを知った。

彼のピアノは、適度に硬質のタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションが特徴。適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い。

マイルスとコルトレーンが創り上げたジャズのスタイルを、適度に聴き易く、適度にスローダウンした個性。しなやかな硬質さを持ったタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションは、聴いていて、実に端正であり、実に「雅」であり「粋」である。とにかく、聴いていて楽しい、「メインストリーム・ジャズ」をバッチリ感じさせてくれるピアノである。

そのケイブルスのピアノを感じるのに相応しいアルバムが、このGeorge Cables『Night and Day』(写真左)。1991年5月の録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Cecil McBee (b), Billy Hart (ds)。セシル・マクビーのベース、ビリー・ハートのドラム。1991年当時、実に素晴らしい人選です。

そして、このアルバム、選曲が良い。この選曲を、まず、ピアノ・トリオで聴くことが出来るということが素晴らしく、加えて、ジョージ・ケイブルスのピアノで堪能出来るというとことが素晴らしい。その選曲と作曲者を全て以下に挙げておく。
 

George_cables_night_day

 
1. I thought about you [James Van Heusen / Johnny Mercer]
2. Night and day [Cole Porter]
3. Very early [Bill Evans]
4. I love you [Chuck Dukowski / Gordon Jenkins / Jerry Jeff Walker]
5. Three view of a secret [Jaco Pastorius]
6. Ebony moonbeams [George Cables]
7. Grear is here [Mickey Bass]
8. Doxy -- [Sonny Rollins]

1曲目の「I thought about you」や、2曲目の「Night and day」、5曲目の「I love you」などのスタンダード曲でのプレイが好調。ジョージ・ケイブルスのしなやかな硬質さを持ったタッチと適度に多弁なインプロビゼーションが、実に良い雰囲気を醸し出している。聴いていて惚れ惚れする。

そして、おおっこれは、と耳をそばだてるのは、5曲目の「Three view of a secret」。1970年代から80年代に活躍した伝説のエレベ奏者ジャコ・パストリアスの名曲中の名曲。ニュー・スタンダード曲。これが実に良い。
 
曲自体素晴らしいのだが、その名曲に負けずに、その名曲を更に惹き立たせるケイブルスのピアノ。マクビーのベース。ハートのドラム。この「Three view of a secret」のピアノ・トリオでの名演の一つの挙げられるべき、素晴らしい演奏。

ミュージシャンズ・チューンである、ビル・エバンスの作曲の「Very early」や、ソニー・ロリンズの「Doxy」も、なかなか考えられたアレンジと展開で、ピアノ・トリオの演奏としては白眉の出来である。

良いピアノ・トリオ盤です。極めてオーソドックスなプレイですが、そこは1991年の録音。1960年代から1970年代のハードバップ演奏とは、ちょっとアプローチの異なるアレンジで、アルバム全体の演奏として、そこはかとない、新しい響きを感じます。聴けば聴くほど味がでる、「スルメ」の様なピアノ・トリオ盤です。ジョージ・ケイブルスの代表盤としてもお勧めです。

 
 

大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年9月29日 (日曜日)

ジャケ買い「海外女性編」その1

ジャズの楽しみの一つに、アルバム・ジャケットのデザインがあります。ジャズのアルバムには、なかなか趣味の良い、芸術的にも優れたアルバム・ジャケットが多々あります。

ジャケットのデザインのバリエーションも豊かで、ミュージシャン本人の写真を中心とした基本的なものから、イラスト中心、風景写真中心、イメー ジ写真から漫画まで、他の音楽ジャンルにはなかなか無いバリエーションの豊かさ。

何故、ジャズのアルバム・ジャケットはアート的に優れたものが多く、ジャケット・デザインのバリエーションが豊かなのか、その理由は良く判らないのですが、とにかく、ジャズのアルバム・ジャケットには、アーティスティックな鑑賞に堪えうる、見て飾って楽しいジャケットが多々あります。

今回は、ジャケ買い「海外女性編」、と題して、 海外の女性の写真をあしらった一目惚れジャズ盤のジャケットを幾枚かご紹介します。「芸術の秋」です。アーティスティックなアルバム・ジャケットを楽しみましょう(笑)。

まずは手始めに、僕のお気に入りピアニスト、ハロルド・メイバーンの佳作を。Harold Mabern『Falling In Love With Love』(写真左)。2001年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Harold Mabern (p), George Mraz (b), Joe Farnsworth (ds)。日本のヴィーナス・レコードからのリリースである。
 
  
Halrold_maibern_falling
 
 
ハロルド・メイバーンの快作である。ジャケットはヤンキーなお姉ちゃんのスナップで、これがなかなか雰囲気があって僕は好きだ。車は50年代を彷彿とさせてレトロで渋い。ヤンキーなお姉ちゃんは、なんか「元気溌剌」で「やんちゃ」で「小生意気」そうで、それでいて、なんか可愛い。

米国1950年代の雰囲気プンプン、アメリカン・グラフィティ的雰囲気プンプンで、しかもジャケットにあしらわれている文字デザインも粋で格好良く、このジャケット、良いですね〜。

さて、アルバムの内容と言えば、このアルバムでのメイバーンは、パワフルにガンガン飛ばす。しっかりとしたタッチ、心地良い迫力、ブンブンと思いっきりスイングするかのようなスピード感。そして、バラードはリリカル、かつ、しっかりとしたタッチでじっくりと聴かせてくれる。

収録された10曲、それぞれが素晴らしいのだが、アルバムタイトルにもなっている2曲目「恋に恋して」が特に素晴らしい。この曲、キース・ジャレットの「スタンダーズ」が演奏するバージョンが僕のお気に入りなのだが、このメイバーン・トリオの演奏は、その「スタンダーズ」の演奏に匹敵する。

ラストの「サマータイム」の力強さも魅力的だ。とにかく全体を通して、グングン飛ばして「グワーッ」といっちゃう感じが素晴らしい。疾走感あるピアノ・トリオを聴いて、「スカッ」としたい時、是非お勧めの一枚です。
 
 
 
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2013年9月28日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・26

昨日に引き続き「こんなアルバムあったんや」シリーズの26回目。「ちょっと変わり種のジャズ」、弦楽四重奏を中心としたジャズのアルバムをご紹介の第二弾。

今日は、Turtle Island String Quartet『The Sidewinder』(写真左)。今日の主役、タートル・アイランド・ストリングス・カルテット(以降「TISQ」と略)は、アメリカの弦楽四重奏をベースにしたグループ。

「タートル・アイランド」という地名はちょっと珍しい響きなんだが、これは1974年、アメリカの詩人ゲイリー・スナイダーが、ピューリッツアー賞を受賞した散文集「タートル・アイランド」に由来する。この「タートル・アイランド」=「亀の島」とは、アメリカの原住民が北アメリカ大陸の形が亀ににていることから「亀の島」と呼んだことからきている。

とまあ、マニアックな蘊蓄はともかく、このTISQは、ポップ・クラシック的な演奏する傍ら、デビューから3枚目のアルバムの中で、ジャズ・スタンダードやフュージョンの名曲を多数吹き込んでいる。その3枚のアルバムから、ジャズ系の曲をピックアップした、いわば、TISQによるジャズの弦楽四重奏的演奏のコンピ・アルバムとも言えるものがこのアルバム。

収録された曲を見ると「おっとこれは大丈夫なのか」と懸念を感じる選曲もあるにはあるが、このTISQ、それぞれのメンバーの演奏テクニックが秀逸で、どの曲も上手く弦楽四重奏で料理している。とにかくアレンジ能力が高い。
 

Tisq_the_sidewinder

 
もともと、弦楽器系でジャズを演奏するとき、旋律を伸びやかに長々と弾き続けると間延びするので、いきおい、まずはリズミカルな曲が良いということになる。

そういう意味では、1曲目「Sidewinder」や2曲目「A Night In Tunisia(チュニジアの夜)」、7曲目の「Señor Mouse」などは、その成功例。弦のはじく感じとボウイングの伸びやかな感じがうまくブレンドされて、聴いていてとても楽しい。

また、あまりアレンジに気を遣わなくても、ジャズの楽曲の持つ旋律がその雰囲気において、おのずと弦楽器向けという曲がある。 例えば、5曲目の「Stolen Moments」などがその好例。この曲はジャズ・バイオリニストの寺井尚子さんも彼女のセカンド・アルバムで、この「Stolen Moments 」を演奏していますね。

6曲目の「Jaco」もそう。パット・メセニーの作曲だが、リズミカル、かつ、米国のカントリー・フォークを思い出させるような旋律は、弦楽四重奏にぴったり。

この盤は、選曲が良くて、演奏テクニックがしっかりしておれば、弦楽四重奏でも立派にジャズになる好例です。しかし、この盤、かの1980年代に聴きやすさを追求した「思いっきりイージーリスニング・ジャズ」の総本山として一世風靡した「ウィンダムヒル・レーベル」と知ったときには、ちょっとビックリした。

 
 

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2013年9月27日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・25

久し振りに「こんなアルバムあったんや」シリーズの25回目。めっきり秋らしくなってきました。秋は「音楽の秋」。今日明日と「ちょっと変わり種のジャズ」、弦楽四重奏を中心としたジャズのアルバムをご紹介しましょう。

バイオリンがメイン楽器のジャズは、海外ではステファン・グラッペリやジャン・リュック・ポンティらが現役で頑張っていますし、国内では、寺井尚子さんが頑張っています。バイオリンは、その特徴的な音色とエキゾチックな響きで、個性的なジャズを演出します。

では、クラシック界で弦楽でポピュラーな編成である弦楽四重奏の編成でのジャズはあるのか。それが「ある」のですよね。では、その弦楽四重奏中心のジャズアルバムをご紹介しましょう。

まずは、Cello Acoustics『Paris 1256』(写真左)。2002年10月のリリース。この「チェロ・アコースティックス」というグループは、ピアノ:1、チェロ:3、コントラバス:1という斬新な編成(正確には弦楽四重奏の編成では無い)で、 弦楽器ならではの濃密なグルーヴィー感溢れるジャズを実現する。

この弦楽器中心のジャズの音って、一言で言うと「心がなんとなく安らぐ新鮮なサウンド」、 いわゆる流行の「癒し系」である。

このグループの楽器構成は、アルバムを実際に聴いてみると判るのだが、弦楽器の中でも「良い音色」系のチェロ3台でアンサンブルを構成し、このチェロ3台で中音域の基盤がっちり安定させる。
 
その上をピアノが自在に旋律を奏でる。そして、低域はコントラバスに「重量感」をお任せして、弦楽器中心にして、ジャズ ・アンサンブルの要求に十分に応えることのできる演奏基盤を実現している。
 

Paris_1256

 
クラシックとジャズの両刀使い的な演奏家が、この変則的な編成で、室内楽的なジャズをやるのだから、演奏テクニック的には十分に満足いくものがある。とにかく上手い。このグループのベースは、ピチカート奏法を基本としたウォーキング・ベースのみならず、ジャズ出身のベーシストが、時に不得意とする「ボウィング」(弓で弾く奏法)も披露するが、音程は確かで美しい。

さて、演奏する曲は、自作とジャズ・スタンダードがほとんど半々の選曲。どの曲も、まずはジャズとクラシック両刀使いの3台のチェロが決め手で、クラシカルな、それでいてどこかエキゾチック、ほのかにエスニックな、チェロのアンサンブル。これがこのアルバムの全体の雰囲気を「バシッ」と決めている。

そして、ニールス・ラン・ドーキーの「ガラスのナイフ」の様なピアノ。チェロとの相性抜群の「スパッと切れるような奏法」を持つピアニスト。そして、ベーシストはジャズ演奏では珍しい、女性ベーシストが大胆にビートを刻む。高音域を主に受け持つピアノ、中音域を充実させるチェロ、低音域はもちろんコントラバスがガッチリ担当する。

やはり、この構成の面白さは「ジャズ・スタンダード曲」で最大限に発揮される。ジャズ・スタンダード曲では、 曲自体にジャズ特有のブルージーな雰囲気がほのかに漂い、チェロ3台の室内楽的な雰囲気とうまくブレンドして、実に高尚で優雅なジャズ演奏となるのだ。

特に、9曲目「Kelly Blue」。ファンキー・ジャズの代表的銘曲。ファンキーの音の雰囲気って、クラシックの音の雰囲気から、180度正反対の雰囲気を持つ曲調だと思うのですが、これが実に良い雰囲気。実に優雅で、高貴な香りのするジャズに仕上がっているのが、実に面白いです。

他の収録曲もアレンジがばっちり決まっていて、聴き甲斐のある演奏ばかりです。ニールス・ラン・ドーキーのピアノも好調で、弦楽器中心のジャズなんで、ちょっと「キワモノ」的な危険な雰囲気がするのですが、どうして、このアルバムはそんなことは全くありません。ちょっと変わり種のジャズとして十分に鑑賞に耐える優れものです。

CDでは廃盤状態で中古品を探すしか無いのですが、ダウンロードサイトからは入手可能です。コンテンポラリー・ジャズの「ひねりを効かせたアルバム」の一枚として、ご一聴をお勧めしてます。まさに「こんなアルバムあったんや」です(笑)。

 
 

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2013年9月26日 (木曜日)

アキコ・グレースのセカンド盤

しばらく聴かなかったピアノ・トリオ。今の耳で聴き直してみるシリーズ。デビュー当時、鳴り物入りで登場したアキコ・グレース。今でもしっかりと自分の音を奏でつつ、着実な活動を続けている。そんな彼女のセカンドアルバムを聴いてみる。

改めて、Akiko Grace『Manhattan Story』(写真左)。2002年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Akiko Grace (p), Larry Grenadier (b), Bill Stewart (ds)。

デビュー盤で、恐らくレコード会社の差し金だったのだろう、ベースに人気ベーシストRon Carterを起用したのだが、これがアキコ・グレースのピアノに全く合わなかった。よって、今回、Larry Grenadierにチェンジしたのは正解だろう。などとパーソネルを眺めて、聴く前に類推したりする。そして、CDプレイヤーの再生スイッチを入れる。

ん〜、良くなりましたね。2枚目のリーダーアルバムということでリラックスできたのか、それともベースが、かの巨匠ロン・カーターから替わって、若い同世代のラリー・グレナディアとの相性が良かったのか、ノビノビと演奏しているのが良く判る。なんせ、デビューアルバムは全編に渡って、少しぎこちなかったからね。

一言で言うと、アキコ・グレースのピアノの個性、きめ細やかさと大胆さ、激しさと優しさが旨く表現されている。現代ジャズを代表するパット・メセニーやブラッド・メルドーのサイドを務める実力世界最高峰のベーシスト&ドラマーをバックに従え、演奏される曲ごとに硬軟自在、豊かで様々な表現を見せてくれる。
 

Manhattan_story

 
このアルバムのリリース時点では、アキコ・グレースはまだまだ若手の部類なので、最上級とは言い難いが、オリジナル曲のほか、エリック・クラプトンの「Change the World」など興味深い選曲もあって、聴いていて楽しく、しっかりとしたアルバムとなっている。

1曲目からガツーンとやってくれる「Libido〜Mediterranean Sundance」。速いテンポと印象的なフレーズで、最初は違和感を感じるかもしれないが、これが結構、聴き込んで行くにつれ、だんだん、だんだん「クセ」になる。

3曲目の「Fly Me to the Moon」は、ジャスでは有名なスタンダードだが、これがシットリとしていて、落ち着いた、なかなかの演奏。若くしてスタンダードが旨いピアニストは先が楽しみだが、アキコ・グレースも例外では無い。
 
8曲目の「Over the Rainbow」は、映画「オズの魔法使い」のテーマソング。アキコ・グレースの抒情的な演奏が美しい。この浮遊感のある抒情的なタッチが、彼女のその後の「メインの個性」になっていく。

9曲目は、セロニアス・モンクの「Bemsha Swing」のテーマのユニークさとアキコ・グレースの硬派な演奏のギャップが楽しく、11曲目の「Song for Bilbao」は、人気ギタリスト、パット・メセニーの作曲。エネルギー溢れる演奏で、実に若々しい。

とにかく、デビューアルバムとは似ても似つかぬ、アキコ・グレースの個性を全面に出したアルバムといえる。このアルバムで、アキコ・グレースは、スタートラインに立った、そんな感じがするセカンド盤。なかなかの好盤である。

 
 

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2013年9月25日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・8

この季候の良い季節の昼下がり、読書しながら、お茶を飲みながら、耳を傾けるにちょうど具合の良いジャズは「ピアノ・トリオ」。

多々ある「ピアノ・トリオ」の中で、今回のアルバム選定のポイントは、バーチャル音楽喫茶『松和』のマスターがお勧めする「過ごしやすい秋の昼下がりにピッタリの、ちょっとマニアックな女性ジャズ・ピアニスト」。今日は昨日に続き2人目のご紹介。

今日はRachel Z(レイチェルZ)。レイチェルZの本名は「レイチェル・C・ニコラッソ」。アメリカはNYの生まれ。バークリー音楽大学、ニュー・イングランド音楽院を経て、プロデビュー。80年代末に、マイク・マクニエリに認められて、人気フュージョンバンド、ステップス・アヘッドのメンバーとなって、認知度が飛躍的にアップした。しかし、日本盤としてのアルバムリリースがほとんど無いことが影響して、日本での認知度は今も「イマイチ」。

続いて1995年、ウェイン・ショーターの7年ぶりの新作となった「ハイ・ライフ」に全面参加。このアルバムの中でのレイチェルZは、キーボードとオーケストレーションを担当、高い評価を受けている。また、このショーターのアルバムは、グラミー賞のベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバムを受賞し、更にレイチェルZ自身の評価も高まった。

さて、そんなレイチェルZが、2003年夏にリリースしたピアノ・トリオ盤がこの『First Time Ever I Saw Your Face(邦題:愛は面影の中に)』(写真左)である。2003年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Rachel Z (p), Nicki Parrott (b), Bobbie Rae (ds)。

アルバム名の「愛は面影の中に」は、1971年、ロバータ・フラックがヒットさせたグラミー賞受賞曲。今回ご紹介するこのアルバムの最大の特徴は選曲のユニークさ。ロック系アーティストの楽曲を中心とした選曲は、とにかく取っつきやすいし、聴きやすい。

アルバムの冒頭を飾る「Time To Say Goodbye」は、オルタナティヴ・ロックの人気バンド、ニルヴァーナの1993年作『イン・ユーテロ』収録曲。2曲目の「Crestfallen」は、1990年代を代表するシカゴのオルタナティヴ・バンド、スマッシング・パンプキンズ、1998年の『アドア』収録曲。3曲目の「Fragile」は、ジャズミュージシャンの間での人気曲で、近年、ジャズ・スタンダード化されつつある、スティングの名曲。
 

Rachelz_first_time

 
4曲目「In The Wee Small Hours Of The Morning」は、かの名ボーカリスト、フランク・シナトラの名唱で有名なジャズ・スタンダード曲。5曲目の「First Time Ever I Saw Your Face(愛は面影の中に)」は、先に挙げたように、1971年ヒットのロバータ・フラックの名曲。

6曲目の「Hurt」は、ヘビーなロックサウンドが特徴のナイン・インチ・ネイルズの曲。7曲目は、アンドレア・ボッチェリの歌でヒット、日本ではサラ・ブライトマンの名唱で知られるナンバー。8曲目「Autumn Leaves」は言わずもがなのジャズ・スタンダード(笑)。9曲目の「Don't Give Up」は、元ジェネシスの鬼才ピーター・ガブリエルの1986年の代表作「ソー」収録。

と、9曲中7曲までが、ロック・ポップス畑の優秀曲をカバー・アレンジしているわけで、なかなかに面白く、なかなかに聴き応えがある。ジャズ・スタンダードばかりだと、なんだかマンネリしているようで飽きやすいが、この様に、ロック・ポップス畑の最近の優秀な楽曲からのセレクトだと、旋律の響きがまず新鮮でワクワクする。

しかしながら、ロック・ポップス畑の最近の優秀な楽曲からのセレクトは、その楽曲を基にした、かなりのアレンジ能力が必要となり、どこの誰でもが、最近のロック・ポップスの楽曲をジャズに取り入れることが出来るわけではない。

そういう点で、このレイチェルZのトリオ盤のアレンジは実に優れている。ロック・ポップス畑の優秀曲を、実に旨くアレンジしている。「どこかで聴いたことのある旋律だ」と思うんだが、この演奏の元曲はこれですよ、って教えてもらわないと判らないくらい、上手くジャズ化しているのだ。しかも、曲の選択が良いのだろう、どの曲も実に聴き易く出来ている。

レイチェルZのピアノについて一言。テクニックでピラピラ聴かせるタイプでも無く、メリハリをつけるために「ガゴーン、ズゴーン」とパワーで突っ走るタイプでも無く、レイチェルZのピアノは、ピアノの幅、いわゆるスケールで聴かせるピアノだ。演奏の幅の広さと奥行きと響きで聴かせる、実に味のあるピアノ。それと、最後になるが、ドラムのボビー・ラエがとても素晴らしいことを付け加えておく。

この季候の良い季節の昼下がり、新鮮な響きのするピアノ・トリオ。意外とオツなモノですよ。

 
 

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2013年9月24日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・7

涼しくなった。今朝などは半袖では肌寒い。薄い長袖が欲しいくらい。いよいよ来週辺りから半袖は「蔵の中」かな。今年の夏は酷暑だった。9月に入っても、長く暑さが長引いた。やっと過ごしやすい季節、秋の到来を感じる。

過ごしやすい季節は、ジャズなどの音楽鑑賞や読書などに具合が良い。この季候の良い季節の昼下がり、読書しながら、お茶を飲みながら、耳を傾けるにちょうど具合の良いジャズは「ピアノ・トリオ」。

多々ある「ピアノ・トリオ」の中で、今回のアルバム選定のポイントは、バーチャル音楽喫茶『松和』のマスターがお勧めする「過ごしやすい秋の昼下がりにピッタリの、ちょっとマニアックな女性ジャズ・ピアニスト」です。

今日の「マニアックな女性ジャズ・ピアノ」は、大野智子。大野智子は、米国ニュージャージー州在住。NYと時々日本に里帰りして、現在も活動している女性ピアニスト。
 
1997年に遡る。ピアノ・トリオの特集を見ていて、このアルバムのジャケットを見て「おおっ」って感じで、ジャケ買いしてしまいました(笑)。良い意味でジャズのアルバムらしからぬ、なかなかビジュアルなジャケット で、これだけでも中身は保証されたようなもんで(笑)。

そのアルバムとは、大野智子『Powder Blue(パウダー・ブルー)』(写真左)。大野智子の初リーダー・アルバム。1997年のリリース。ちなみにパーソネルは、大野智子 (p), Joe Martin (b), Jorge Rossy (ds)。
  

Powder_blue

 
女性ピアニストらしい優雅さに加えて、芯の通ったツブだちの良いタッチが特徴的で、ピアニストとしても確かなテクニックをしっかりと持っている。とにかく、ピアノの響きが綺麗なのだ。そして、それに寄り添うように、リズム・セクションも繊細に、それでいてテンション良く、しっかりと 大野のピアノをサポートする。
  
このアルバムの収録曲は全て大野のオリジナル。美しいメロディを持ったオリジナルが耳に心地良い。どの曲も3分30秒〜5分30秒程度の小曲で占められるのだが、そんな曲の長さのことなど気にならないほど、印象的な演奏ばかりなのだ。

この大野智子のトリオは、どちらかといえば、フュージョン系のピアノ・トリオで、もしかしたらインプロビゼーション部分も楽譜に落ちているかもしれない感じなのだが、そんなことは全く気にならない。それほど、それぞれの曲の旋律がとても印象的で、とても聴きやすい。

冒頭はリリカルで響きの印象的なピアノが素敵な「Shadows Of Spring」から始まり、2曲目の「Samba De Sorvete」は、その名のとおり、軽快なサンバのリズムに乗った疾走感溢れるトリオ演奏、 3曲目「Visa Fran Utamyra」は、フュージョンぽくて、しかし、そこはかとなくジャジーなスイング感溢れる演奏。この冒頭から3曲の雰囲気がこのアルバムの全てを語る。

このアルバムは、米国の西海岸フュージョン・ジャズの雰囲気に通ずるものがありますね。最近のフュージョン・ジャズって、無国籍っぽい、テクニック先行・聴き易さ優先の判りにくいアルバムがよくありますが、このアルバムは、個性がしっかりしていて、米国の西海岸の爽やかな風と眩しい太陽、っていう雰囲気が溢れています。

フュージョン・ジャズ系ピアノ・トリオの好きな方には無条件でお勧め。現在、廃盤で新品は手に入りませんが、中古品を取り扱うAmazon.co.jpなどで、意外と安価に手に入れることが出来ます。

 
 

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2013年9月23日 (月曜日)

ちょっと入手しにくいけれど...

一昨日から、ジャズ・ギターの雄、ウェス・モンゴメリーの特集の様な展開になっている、我がバーチャル音楽喫茶『松和』のブログですね(笑)。秋の夜長にはジャズ・ギターの音色が良く似合うということで、今日もウェスのアルバム紹介です。

ウェス・モンゴメリーの個性である「親指によるピッキング」+「オクターヴ奏法」+「コード奏法」を心ゆくまで感じ取れ、心ゆくまで楽しめるアルバムがもう一枚あります。ちょっと手に入れにくいCDなんですが、ウェス・モンゴメリーのライブの神髄を感じるには欠かせないアルバムだと思うので、ここでご紹介しておきます。

そのアルバムとは、Wes Montgomery『Solitude』(写真左)。1965年3月、パリでのライブ録音。ウェス・モンゴメリーのグループは、パリのファンから大歓迎を受けました。

このコンサートは、ORFT(Organisation de Radio et Television de France)、つまり 「フランス国営ラジオ・テレビ機構」が収録・放送に係わったというのは、有名な話である。大衆音楽としてのジャズでは無く、芸術としてのジャズとして受け入れられた訳ですね。
 

Wes_solitude

 
当然、ウェスをはじめ、演奏メンバーからすると嬉しいし、気合いが入る。このライブのメンバー構成は、Wes Montgomery (g)、Harold Mabern (p)、Arthur Harper (b)、Jimmy Lovelace (ds)、Johnny Griffin (ts) というクインテット構成。当時29歳の雄弁な若手ピアニスト、ハロルド・メイバーンの参加が目を惹きます。

このメンバーこの環境で、演奏内容は良いに決まってるいますよね。アルバム構成は2枚組みなんですが、冗長なところは全く無く、余計な贅肉のようなアレンジも無し。シャープでノリノリの演奏が繰り広げられています。

ライヴ・アルバムでグリフィン参加。このライブ盤『Solitude』って、そうそう、昨日ご紹介した、あのウェスの驚異的なテクニックを堪能出来るライブ名盤『フル・ハウス』の続編みたいなもんですから、その内容については「推して知るべし」でしょう。

良いですよ。このアルバム。ウェスのギターが好きになったら、手に入れにくいアルバムではありますが、頑張って手に入れてみて下さい。それだけの価値があるアルバムです。

 
 

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2013年9月22日 (日曜日)

ウエスはライブで輝きを増す

ウエスのアルバムを聴いていて、彼の個性である「親指によるピッキング」+「オクターヴ奏法」+「コード奏法」には、ただただ脱帽するばかりである。

ちなみに「親指によるピッキング」とは、ピックを一切使わず、親指で弦を弾くことです。この独特の奏法によ り生み出されるインパクトのあるその音色は、ウェス独特の雰囲気を演出しています。

「オクターブ奏法」とは、一つの弦でメロディーを弾くのではなく、1オクターブ離れた二つの音を同時に弾いて、ユニゾンによるメロディーを綴るというもので、それまでのギタリストが試みたことがなかったものです。

「コード奏法」とは、複雑なコードを駆使しながら、リズミックなフレーズをコードで綴ってゆくというもので、これは大変なテクニックを必要とします。聴いていても、これは複雑なことをしてるよな〜、って感心してしまいます。

その彼の個性である「親指によるピッキング」+「オクターヴ奏法」+「コード奏法」は、ライブで更に輝きを増す。その一例が このライブ盤。Wes Montgomery『Full House』(写真左)。カリフォルニア・バークレーにあった「ツボ」というライブ・ハウスでのライブ録音である。
 

Full_house

 
1962年6月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Johnny Griffin (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。グリフィンのテナーが入ったクインテット構成です。

ちなみに、このライブ・セッションで、ウエスがリズム・セクションに起用した、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)の3人は、当時、マイルス・デイヴィスのバックを支える名手達。主役のウェスを思いっきり煽るような、ノリノリのバッキングを繰り広げています。また、グリフィンのテナーはウエスとの相性も良く、エキサイティングなプレイの連続で、我々を楽しませてくれます。

このライブ盤では、スタジオ録音以上のドライブ感で、ウエスの個性である「親指によるピッキング」+「オクターヴ奏法」+「コード奏法」が炸裂しています。炸裂しまくりです。凄い演奏です。くどくど理屈を並べる前に、まずは一聴を。 これこそ「百聞は一聴にしかず」です。

ちなみにここで裏話をひとつ。アルバム・タイトルでもある、冒頭の「Full House」の曲名の由来なんですが、これは当夜、彼らが演奏したライブ・ハウス「ツボ」が聴衆で埋まったところから、この題名が付けられたとのこと。トランプの「フル・ハウス」とは全く関係が無いそうです(笑)。

 
 

大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年9月21日 (土曜日)

秋の夜長にジャズ・ギターの音色

昨日、ジョージ・ベンソンのライブ盤について語った折、ジャズ・ギターの雄、今は亡きウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)の名前が出てきて、突如として、このウェス・モンゴメリーが聴きたくなった。

先週の3連休の台風来襲から台風一過を境に、一気に秋の気配が濃厚になりました。夜になると、いつの間にか虫の声が賑やかになりました。そんな秋の夜の空気には、ジャズ・ギターのシンプルな音色が映えます。秋の夜長にジャズ・ギターの音色が良く似合う。

『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』(写真左)。ウェス・モンゴメリーと言えば、まずはこのアルバムでしょう。1961年1月26〜27日の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Tommy Flanagan (p), Percy Heath (b), Albert Heath (ds)。ウェス・モンゴメリーの最高潮の時期のアルバム。

彼の個性である「親指によるピッキング」「オクターブ奏法」「コード奏法」が随所に散りばめられており、このアルバムは、ウェスのギター・テクニックの「ショーケース」のようなアルバムでもある。
 

The_incredible_jazz_guitar_3  

 
ジャズ・ギター界を、オクターブ奏法という革命的な奏法で震撼とさせながらも、そのプレイの余りの革新性が故に、とうとう正統なフォロワーが一人も現れなかったという、孤高のギタリスト。ワン・アンド・オンリーな存在がここにある。

このアルバムに収録されているどの曲もが優れた演奏で、ただただ手放しで褒めるのみ。冒頭「Airegin」における、あまりに素晴らしく、口をあんぐり開けてしまいそうな、それはそれは素晴らしい超絶技巧のテクニック。

2曲目「D-Natural Blues」や5曲目「West Coast Blues」での、ご機嫌でノリの良い、黒光りするブルース・フィーリング。そして、3曲目の「Polka Dots and Moonbeams」でのオクターブ装法によるバラード演奏、ラストの「Gone With the Wind」での歌心溢れるフレーズ。

ジャズ愛好家の方々から「出来が良すぎて面白くない」という変な評価を時々いただくアルバムであるが、ジャズ初心者の方に、ジャズ・ギターの代表的な演奏を思いっきり感じてもらえる、素晴らしい名盤だと思います。

ジャケットのウェス・モンゴメリーの顔写真が、ちょっと「いかつい」ですが、ビビらずに手にとってみて下さい。

 
 

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2013年9月20日 (金曜日)

邦題に惑わされてはいけない

フュージョン・ジャズのギタリストの中で、ジョージ・ベンソン(George Benson)は、長年の僕のお気に入りの一人。

1964年のデビュー。ウェス・モンゴメリー直系のギタープレイで頭角を現し、かのマイルス・デイビスのバンドにも呼ばれたことがある、デビュー当時は先進気鋭の純ジャズなギタリスト。

1970年代のフュージョン全盛時代には、ディスコ〜アダルト・コンテンポラリーと、常にその時代の流行を自身の作品に取り込み、加えて、魅力的な歌声で渋く聴かせるボーカルと併せて、どちらかと言えば、ジャズ・ギタリストというよりは、ブラック・コンテンポラリー・ミュージックのアーティストとして一世を風靡しました。

彼のデビューから40年以上に渡ってヒット作品を生み続けている、そのタレントは素晴らしいの一言。でも、彼の根っこは常にジャズで、いつの時代の演奏にもその底辺に流れるジャジーな雰囲気に惹き付けられます。

そんな彼のライブ盤の中での大のお気に入りが、George Benson『Weekend in L.A.』(写真左)。邦題は『メローなロスの週末』。ソフト&メロウが横行した時代の、実に趣味の悪い邦題である(笑)。

アルバム『Breezin'』によって、そのソフト&メロウな名演名唱でメジャーとなったベンソン。当時、米国ではフュージョン・ブームの真っ只中で、ベンソンなどは、相当「引っ張りだこ」な人気だった。その「引っ張りだこ」の人気の中、そのライブの様子をアルバム化したのが、この『Weekend in L.A.』。

さすが、ライブ盤だけあって、ベンソンは、結構、本職のギターを弾きまくっている。これが、この盤の最大の魅力。
 

Weakend_in_la

 
実は『Breezin'』以降の彼のスタジオ録音のアルバムは、ソフト&メロウ+AORな雰囲気を全面に押し出して、ジャジーな雰囲気は、どっかへ行ってしまったような内容が多くなり、ジャズ・ギタリストのベンソンを聴きたい向きには「どうだかな〜」っていう感じだった。

そこで、このライブ・アルバムである。1曲目の「Weekend in L.A.」 から、ベンソンはギターを弾きまくっている。これが、なかなかテクニックもあり、ファンキーで爽やかなタッチで、僕はこのアルバムでベンソンのギターを見直した。

彼の看板である「ソフト&メロウ+AORな歌唱」も随所に盛り込まれて、2曲目の「On Broadway」など、適度にファンキーで適度にソフトで、ベンソン以外にはなかなか出来ない、ベンソンの優れた個性がここにある。3曲目の「Down Here on the Ground」なんかは、もう、ジャズ〜フュージョンの域を越えて、これはもうAORやね。ジャジーな雰囲気のAORである。

10曲目には「We All Remember Wes」なる曲もあって、この曲を聴くと、クロスオーバー時代のウエス・ モンゴメリーを思い出す。この演奏を聴くと、ベンソンは、ウエス・モンゴメリーに多大な影響を受けたジャズ・ギタリストだということが良く判るし、ベンソンは、ウエスを敬愛していることがとても良く判る。なんとも微笑ましい演奏である。

このライブ盤は、ベンソンが「フュージョン+ソフト&メロウ+AOR」的な、上手く時代の流れに乗った、単なる「流行歌手」では無いことを証明している。

彼のギター・ソロは、単に、流行のフュージョン・ ミュージシャンに留まるものでは無い。ベンソンの演奏は、しっかりとジャズに根を下ろしていて、そのジャズの礎の上に「フュージョン+ソフト&メロウ+AOR」的な演奏を繰り広げているのだ。僕は、そういうベンソンがお気に入りである。

 
 

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2013年9月19日 (木曜日)

Bob Jamesの魅力的ライブ盤

CD庫の棚卸しをしていると、時々「あれ、足らない」と思って探すが、実は元々所有していなかった、ということがたまにある。また、その元々所有していなかったアルバムが内容の優れたアルバムだと、「なんでもってへんのかなあ」と愕然としたりする。主原因は、LPからCDへの移行漏れ。

このアルバムもそんなアルバム。今回のCD庫の棚卸しの際、実は元々所有していなかったことに気が付いた。Bob James『All Around the Town』(写真左)。1980年リリース。フュージョン・ジャズ時代の、ボブ・ジェームズ絶頂期のライブの記録である。

ライナーノーツやアルバムのコメントを読むと、このライブ盤の音源は、1979年のクリスマス前の4日間、NYの3つの会場で、それぞれ異なった編成と趣向で、ボブ・ジェームスの音楽を表現するというライブ企画からチョイスされたライブ音源であることが判る。

その3つの異なった編成と趣向とは、以下の通りになる。

・ボトムライン(レギュラー・バンド)
 Bob James (kb), Mark Colby (ts), Hiram Bullock (g), Wilbert Longmire (g),
 Gary King (b), Idris Muhammad (ds)

・タウンホール(アコースティック・バンド)
 Bob James (p), Joanne Brackeen (p), Richard Tee (p), Eddie Gomez (b),
 Billy Hart (ds), Steve Gadd (ds)

・カーネギホール(ビック・バンド)
 Bob James (kb), Mike Lawrence (tp), Ron Tooley (tp), Tom Browne (tp),
 Dave Taylor (tb), Jim Pugh (tb), Tom Scott (as), Mark Colby (ts),
 George Marge (ts), Earl Klugh (g), Gary King (b), Idris Muhammad (ds)
 

Bob_james_all_around

 
どの編成も魅力的だが、フュージョン・ジャズ全盛の1979年にアコースティック・バンドとビッグ・バンドの趣向が興味を引く。特に、アコースティック・バンドの編成は、ボブ・ジェームス、ジョアン・ブラッキーン、リチャード・ティーというタイプの異なるピアニストが、アコースティック・ピアノ3台の連弾で対応するというもの。フュージョン・ジャズがベースのビッグ・バンド編成のライブというのも、意外とありそうであまり無いので興味津々。

収録曲と「編成と趣向」の関係は以下の通り。

Disc1
1. Touchdown (Carnegie Hall)
2. Stompin' at the Savoy (Town Hall)
3. Angela (Theme from "Taxi") (Bottom Line)
4. We're All Alone (Carnegie Hall)

Disc2
1. Farandole (Le'arlesienn Suite #2) (Carnegie Hall)
2. Westchester Lady (Bottom Line)
3. The Golden Apple (Town Hall)
4. Kari (Carnegie Hall)

特に、タウンホールのアコースティック・バンド編成、ボブ・ジェームス、ジョアン・ブラッキーン、リチャード・ティーとタイプの異なる三人のピアニストが、グランドピアノを並べて演奏した「Stompin' at the Savoy」「The Golden Apple」が良い。意外とメインストリーム・ジャズっぽい演奏が、実に硬派で良い。

他の編成での演奏も、フュージョン・ジャズ全盛の時期のライブなので、ソフト&メロウな演奏が続くと思いきや、意外とハードでタイトな演奏が実に爽快である。ボブ・ジェームスのアルバムに収録された有名曲がズラリ。とても楽しい内容です。

フュージョン・ジャズ全盛時代のライブ盤なので、たいしたことないのでは、とお思いの方、とんでも無いですぜ。ハードでタイトで、意外とメインストリーム・ジャズ風な演奏に惚れ惚れします。

 
 

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2013年9月18日 (水曜日)

贈り物の様なリイシュー盤だ

ジャズのアルバムのリイシューというのは、欲しいなあ、聴いてみたいなあ、と思っていたアルバムが、何の前触れも無しに、突然、リイシューされたりするので、一時たりとも、毎月のリイシュー盤の情報チェックは欠かせない。

今回リイシューされたこのライブ盤も、そんな何の前触れも無しに、突然、リイシューされた、ジャズの神様からの贈り物の様なライブ盤である。Gary Burton『Live in Tokyo』(写真左)。1971年6月の来日時、東京サンケイホールでライブ収録されたものである。待望の世界初CD化。ちなみにパーソネルは、Bill Goodwin (ds), Tony Levin (el-b), Sam Brown (el-g), Gary Burton (vib)。

ゲイリー・バートンと言えば、4本マレット奏法をより高度に開拓・確立させた、ジャズ・ヴァイブ奏法のイノヴェーター。ヴァイブが旋律楽器として、ピアノなどと比べて、遜色なく同一レベルで、インプロビゼーション出来る事を立証したヴァイブ奏者である。

さて、1971年のゲイリー・バートンといえば、RCAレーベルからAtlanticレーベルに、当時の流行の「ジャズ・ロック」をベースに、ややフリー寄りの自由度の高いインプロビゼーションを弾きまくった、かなり「尖った」アルバムを発表していた頃。
 

Gary_burton_live_in_tokyo

 
冒頭の「Ballet / バレエ」からガンガンに飛ばすゲイリー・バートン。そして、それに呼応するように、ジャズ・ロックな雰囲気満載のエレギを弾きまくるサム・ブラウン。エレベのトニー・レビンも負けてはいない。ブンブンとロックなベースを弾きまくって、フロント陣に対抗。そして、ドラムのビル・グッドウインが、リズム&ビートをしっかりと押さえ、演奏全体を支えるという図式。

3曲目の「Sunset Bell / サンセット・ベル 」のバートンのソロなどは、後のECMレーベル時代の内省的でクリスタルな音世界を予言するような演奏。このソロは明らかに「ジャズ・ロック」では無い。

4曲目の「The Green Mountains」の8ビートで、ジャズ・ロック的にグイグイ進んでいきつつ、あちらこちらで転調がしまくる。転調好きの僕としては、思わず仰け反りそうになる演奏には、もうメロメロ。演奏全体の浮遊感も魅力的。

1971年と言えば、僕はまだ中学一年生。やっと英国や米国のポップスを好んで聴く様になったくらいなんで、まだまだジャズの世界に足は踏み入れてはいなかったのだが、当時、ジャズに親しんでおれば、このライブは生で聴きたかったなあ。それほど、躍動感と爽快感に満ちたライブ演奏です。聴衆の反応も熱い。

ゲイリー・バートンのマニアの方には、絶対のマストアイテム。ジャズ・ロックの優秀盤としても絶対のお勧め。こんなライブ盤が突如として、世界初CD化リイシューされたりするから、ジャズのアルバム・コレクションは止められない。

 
 

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2013年9月17日 (火曜日)

「ハードバップ復古」の記録

このアルバムのジャケットを見る度に、初めてこのアルバムを聴いた時の「胸のときめき」を思い出す。

「新生ブルーノート」からリリースされたOTBの『Out of the Blue』(写真左)。1985年6月の録音。「新生ブルーノート」企画によるこの「OTB」と言うグループは、当時無名で優秀なミュージシャン達を度重なるオーディションを経て選定した、当時の若手ジャズメンの精鋭部隊である。

ちなみにその選ばれたパーソネルは、Michael Phillip Mossman (tp, flh), Kenny Garrett (as), Ralph Bowen (ts), Harry Pickens (p), Robert Hurst (b), Ralph Peterson (ds)。グループの実質的なリーダーは、トランペットのマイケル・モスマン(Michael Phillip Mossman)と、ドラムスのラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson・写真右)。

プロデュースは、マイケル・カスクーナ(Michael Cuscuna)が担当。録音は、ルディ・バン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)と、新生ブルーノートとして「鉄壁の布陣」。

そして、その音はと言えば、完璧なまでのコンテンポラリーなハードバップ。優れたアレンジの下での一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーとフリー寄りのモーダルな自由度の高いインプロビゼーション。これぞ、1985年時点でも、最も新しいハードバップ・ジャズの音世界のプロトタイプであった。
 

Out_of_the_blue

 
1980年代に入って、フュージョン・ジャズが衰退し、それに呼応するように始まった「ハードバップ復古」のムーブメント。トランペットの神童と異名を取ったウィントン・マルサリスを中心とする新鋭ジャズメンと、古く1950年代から1960年代とハードバップやファンキージャズで活躍したベテラン・ジャズメンとがごった煮になって推進した「ハードバップ復古」。

一番、象徴的な出来事が、タウンホールでの「ブルーノート復活・お披露目ライブ・コンサート」の開催。1985年の出来事だったと記憶する。ジャズ雑誌にて、この「ブルーノート復活・お披露目ライブ・コンサート」の報に触れ、胸がときめいたことを思い出す。遂に、ジャズはメインストリームに帰ってきた、と。

そして、リリースされた、このOTBの『Out of the Blue』。彼らの演奏するハードバップは、時代にマッチした、新しい響きを満載した、それはそれは魅力的な内容を誇るものだった。とにかく、1985年当時は繰り返し聴いたものだ。ジャケットもブルーノートらしい洒落たものだったし、音の響きも往年のブルーノートを想起させるものだった。

「ハードバップ復古」。何も革新性の高いジャズだけが最先端のジャズでは無い。過去のスタイルを焼き直し、時代の最先端のスタイルやトレンドを織り交ぜることで、ハードバップも新しい、時代の最先端の響きを有することが出来ることを、この「ハードバップ復古」の一連のムーブメントが教えてくれた。

この「ハードバップ復古」が、ジャズとして「前進」なのか「後退」なのか、人それぞれ評価はあろうが、このOTBの『Out of the Blue』に詰まっている音は、紛れもなく1985年時点での、ジャズのトレンドの記録なのだ。今の耳で聴いても、なかなか洒落たハードバップを展開していて、なかなか聴き応えがある。今回、再発されて目出度し目出度し、である。

 
 

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2013年9月16日 (月曜日)

懐かしいロックアルバムに再会

今年の8月の終わりから、大震災以降、遅々として進まなかった、1970年代ロックのデータベースの再構築を進めている。昨日で、ほぼ90%の入力が完了。やっと、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で保有している、1970年代ロックのアルバムの全てが把握出来る様になった。

この1970年代ロックのデータベースを再構築する際、CD庫の棚卸しも同時に進めている。CD庫は大震災で崩壊し、大打撃を受けたが、とりあえず、仮の収納で急場を凌いだ。その後、2回に渡る大病、しかも昨年12月には大手術を受けたこともあって、CD庫の棚卸しも遅々として進んではいなかった。

CD庫の棚卸しをしていると、懐かしいアルバムに出会ったりする。暫く、目にしなかったアルバムに再会したりもする。良い思い出のあるアルバムもあれば、あまり印象の良く無いアルバムもある。この歳になると、どちらも懐かしい思い出で、愛おしい想いだけが印象に残る。

一週間ほど前、プログレッシブ・ロックのアルバムの棚卸しをしていた時、イタリアン・プログレの雄・PFM(Premiata Forneria Marconiの略称)のアルバムに出くわした。今を去ること35年ほど前、高校時代にずいぶんお世話になったプログレバンドのPFM。そのPFMのアルバムの中に久しく顔を見ていないアルバムがあった。

1975年発表のPFM『Chocolate Kings』(写真)。 ライヴ盤『Cook - Live In USA』やコンピレーション盤『Award-Winning Marconi Bakery』等を経て、オリジナル・スタジオ・アルバムとして六作目となる僕にとって、。この『Chocolate Kings』は、あまり印象の良く無いアルバムになる。まあ、今となっては懐かしい思い出なんだけどね。
 

Chocolate_kings

 
このアルバムが発売された頃は、僕はいっぱしの「プログレ小僧」となっていて、このPFMの新作を期待して待っていた。そして、FMの番組でオンエアされるのを、珍しくステレオの前に座って、ジッと聴き耳を立てていたのを覚えている。が、聴き終えて、ガッカリした。今から振り返れば、懐かしい思い出である。

この新作に向けて、英語によるヴォーカルを強化する為に、ACQUA FRAGILE のベルナルド・ランゼッティを新メンバーに迎えた。これが失敗の元だろう。声の質が如何にもロックな感じで繊細さの微塵もない。ただ大声を出して、平坦に歌っている感じで、すごく平凡な感じがする。

力技的な演奏力を前面に出した豪快なイメージのアルバムであり、今までの「売り」だった、クラシカルで、繊細かつ幽玄な世界は全く消え失せていた。どうして、こんなイメージ・チェンジを図ったのだろう。米国進出を焦ったのか。でも、このアルバムは「痛烈に米国を皮肉った」アルバムなんだよな。この歌詞の内容で、米国で売れるはずがない。

この『Chocolate Kings』は、PFMの本来の良さが失われたアルバムである。1975年、今から思えば、この時期がプログレ衰退の始まった年だった。そして、PFMも自らの良さを捨て去って、凡庸なバンドへと衰退した。この『Chocolate Kings』を聴いて、失望して以来、PFMは聴かなくなった。そんな象徴的なアルバムである。

でも、PFMは、僕に英国や米国以外の国にも優れたロック・バンドがいて、それらのバンドは、当然、自分たちの国の過去からの音楽遺産を踏襲して、それぞれが独自の音世界を形成している、ということを教えてくれた。

今聴いても、デビュー当時から1975年までのPFMには素晴らしいものがある。こんなバンドを、多感な高校時代、リアルタイムに体験できたことは幸せなことだったと思っている。

 
 

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2013年9月15日 (日曜日)

西海岸の清純派SSWのライブ盤

西海岸ロック歌姫の筆頭、リンダ・ロンシュタットにたくさんの曲を提供していた、米国西海岸の清純派SSWのカーラ・ボノフ(Karla Bonoff)。

このリンダとボノフって実に対象的で、リンダが薔薇の花とすれば、カーラは百合の花。リンダが明るい人気者なら、カーラは内気で目立たない、でもしっかり者のタイプ。同じ曲を歌っても、リンダはパンチがあって天真爛漫、カーラはひっそりと清楚な佇まい。僕は、この「清楚な佇まい」って感じのカーラの方が好きですね。

カーラ・ボノフについては、日本においては、知る人ぞ知るというか、米国西海岸ロック通である粋なウエストコースト者の中で、密かに愛されている様な、実に「マニア」な存在だった気がする。『Restless Nights(ささやく夜)』(2012年10月6日のブログ参照・左をクリック)は、AORブームに乗って、日本でもある程度売れたが、カーラの名前が日本においてメジャーになった訳では無い。

1988年にリリースした『New World』以来、オリジナル・アルバムをリリースしていないカーラでしたが、2007年10月、久々のオリジナル・アルバムとして、2枚組ライブアルバム『Karla Bonoff / Live』(写真左)をリリースしています。

Amazon.co.jpをふらふら徘徊していて見つけた時は即買いでしたねえ。収録曲を見渡せば、オール・タイム・ベストと言ってよい曲を集めた、カーラにとっても初のライヴ盤じゃないですか(「Restless Nights」が未収録なのは残念だけど)。

ヒット・アルバム『Restless Nights』が1979年のリリースでしたから、それから、28年を経てのライブ盤のリリースです。確か、カーラは1951年12月生まれですから、2007年だと、カーラは56歳になります。『Restless Nights』は1979年なので、カーラは28歳。
 

Karla_bonoff_live

 
時の流れというのは残酷なものなので、カーラが悪い方に変わっていたら嫌やなあ、と思いながら、恐る恐るCDプレイヤーのスタートスイッチを押したわけですが、スピーカーから流れてくるカーラの歌声が以前と変わらない、透明感溢れる、伸びのある暖かなヴォーカルなのでホッとしました。

このカーラの透明感溢れる、伸びのある暖かなヴォーカルは、デビュー盤の『Karla Bonoff』(2009年3月28日のブログ参照・左をクリック)と合わせて愛でたいですね。カーラの「ひっそりと清楚な佇まい」が実に素敵です。

このライブは、米国西海岸ロック&ポップスのファンであれば、マストアイテムでしょう。さすがに、28年ぶりのオリジナル・アルバムでしたから、このライブ盤はレコード会社を通じての発売ではありませんでした(カーラ個人の販売)。今でもカーラの個人販売のようです。まあ、このカーラのライブ盤を日本盤としてリリースする強者は日本のレコード会社には居ないでしょうね。
 
ダウンロードサイトにはアップされているみたいなので、輸入盤として入手するか、ダウンロードサイトから入手するかのどちらかになります。でも、今の日米のレコード会社って、こういう内容のある盤を積極的に扱えないとは淋しい限りやなあ。

しかし、このライブ盤には「感動した」。カーラの歌と演奏をガッチリと引き立てるバックに支えられ、今でも全く衰えを知らない彼女のボーカルを、ライブで、しかもこんな良好な音質で聴けるなんて、いや〜、思いもしませんでした。長生きはしてみるものですなあ(笑)。

 
 

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2013年9月14日 (土曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・6

晴れていれば、外は陽射しが一杯に振り注ぎ、室内は静かな時間が流れていく。雨が降っておれば、優しい雨音を聞きながら、室内は静かな時間が流れていく。そして、ジャズ喫茶のお店の中は、人がまばら。皆、本を読むか居眠りをするかで、午後の昼下がりのひとときを潰している。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯が僕は大好きだ。

そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」には、その雰囲気を壊さない、それなりのジャズ盤を流したい。決して、穏やかな時間の雰囲気を壊すこと無く、穏やかな時間を慈しむように流れていくジャズ。ピアノ・ソロなんて、「午後の昼下がり」の時間帯にピッタリなんだが、穏やかな時間の雰囲気を壊すこと無く、穏やかな時間を慈しむように流れていくピアノ・ソロということになると、その選択肢は意外と狭くなる。

不思議な傾向なんだけど、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このCDボックス盤のアルバムを無作為にかけることが多い。そのCDボックス盤とは、Keith Jarrett『Sun Bear Concerts』(写真左)。

この『サンベア・コンサート』、発売当初は、LPレコード10枚組ボックス盤。キース・ジャレットの日本縦断ソロ・コンサート・ツアーの集大成。1976年11月、ソロ・ピアノによる即興演奏で全国7都市を巡演、8公演をこなすという超人的なプロジェクト。

この全国ツアーの模様をすべて録音しようという遠大な企画は、当時、ECMの日本販売代理店だったトリオ・レコードから提案なんですね。いわば日本主導で実現した快挙だったわけです。最終決定権も持つのは、もちろんECMレーベル・オーナーのマンフレート・アイヒャー。この辺の事情は、稲岡邦彌さんの著書『ECMの真実』でどうぞ(ネタバレになるからなあ・笑)。

さて、ツアーは京都を皮切りに、福岡、大阪、名古屋、東京(2回公演)、横浜、札幌の計7都市で行われ、そのうちアルバムに収録されたのは、11月5日京都(京都会館)、8日大阪(大阪サンケイホール)、12日名古屋(愛知文化講堂)、14日東京(中野サンプラザ)、18日札幌(札幌厚生年金会館)の5回の公演です。

発売当時は10枚組LPで、全部通して聴くと7時間ぐらいです。しかも重いのなんのって(笑)。超重量級のボックス盤でした。当時、1人のピアニストの数日間のソロ・コンサートの記録だけで、LP10枚組の超重量級ボックス盤にはビックリしました。当時学生の身分では流石に買えない。そして、それがかなりの勢いで売れているのを見て驚きは2倍(笑)。
 

Sun_bear_concerts

 
ちなみに、タイトルの「サンベア(Sun Bear)」というのは、「ヒグマ=(日:Sun+羆:Bear)」の言葉遊びからつけられたそうである(キースとアイヒャーがこの「Sun Bear」をえらく気に入ったらしい)。

CDになって、6枚組ボックス盤となった。全8公演の内、本作に収録されたのは京都(京都会館)、大阪(サンケイホール)、名古屋(愛知文化講堂)、東京(中野サンプラザ)、札幌(厚生年金ホール)の5公演。各会場の演奏がそれぞれ1枚のCDに収められていて、6枚目には札幌・東京・名古屋におけるアンコール演奏が一括して収録してある。

ただ、なにせこのボリュームですから、この『サンベア・コンサート』は、やはり万人向きとはいえませんね。通常BGMのようにジャズを聞く人には、このCDボックス盤は「重い」と思います。BGMとして聴くのであれば、『ソロ・コンサート』や『ケルン・コンサート』などの単品セットの方が聴きやすいのでは、と思います。

それでも、この『サンベア・コンサート』のソロ・ピアノはなかなかの内容を伴っているので、とにかく聴き進めたい、全部聴きたい。ということで、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で考案した、この超重量級のボックス盤『サンベア・コンサート』のとっておきの聴き方を伝授いたしましょう。

まず、ボックス盤の箱からCDを出す。そして、CDラックに収める。それぞれのCDを「単品CD」として楽しむ。はい、これでOK(笑)。「6枚1セット」という「呪縛」から自らを解き放って、CD6枚1セットのボックス盤なんだから絶対に「全てを聴き通さなければならない」と思い込まないことです。

「今日は大阪、明日は京都か東京か、はたまた明後日は札幌か」なんて、日を変えて収録された公演別に聴いていくと、意外と楽しみながら、この超重量級のボックス盤を聴き通すことが出来る。穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯に、都度一枚一枚くじ引きのように、このボックス盤のアルバムを適当に選択して聴き進めていく。意外とこれが「はまる」。

静的な美しさがしみじみする京都、リラックスした雰囲気で弾きまくる札幌、ダークでリズミカルなエンディングの東京、上品でクラシカル大阪、儚い美しさ漂う名古屋。どの地域の演奏も、それぞれ個性があって甲乙付けがたい。

ソロ・ピアノの名手、キース・ジャレットの面目躍如のボックス盤である。どの都市でのソロ・ピアノも、穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯にピッタリの、キースの『サンベア・コンサート』である。

 
 

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2013年9月13日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・5

夏の終わり、夏の暑さが戻ってきたような「真夏日」が出現することがある。外は蒸し蒸し、陽射しは強い。それでも、日陰に入ると少し風が涼しく感じるのは9月ならではの雰囲気。

9月に相応しくない、強い日差しと蒸し蒸しした湿気を避けるには、喫茶店の昼下がりは最適な空間。緩やかに静かに時が流れていく。そんな喫茶店の空間には、ピアノのブルージーなフレーズが相応しい。

そんなブルージーなピアノのフレーズがご機嫌なアルバムが、Wynton Kellyの『Piano』(写真左)。原題はシンプル過ぎる(笑)。『ウイスパー・ノット』の邦題で有名なウィントン・ケリーの佳作。1958年1月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。

ケリー、チェンバース、フィリージョーの仲良しトリオに、ブルージーなギターが素敵なケニー・バレルが加わるカルテット構成。ケリーのブルージーなピアノに、これまたブルージーなバレルのギターが交わる。

この雰囲気が喫茶店の昼下がりにピッタリ。バレルの参加を得て、収録曲のスタンダードの美しいメロディの中に漂うブルージーな哀感をじっくりと楽しめる。

しかし、ケリーというピアニストは器用というか、感性豊かというか、客演するミュージシャンの特性に応じて、微妙にピアノのバッキングの雰囲気を変えることが出来るのだ。
 

Wynton_kelly_piano

 
今回の客演は、ミスター「ミッド・ナイト・ブルー」と異名を取るケニー・バレル。バレルのギターはブルージー、かつ、そこはかとなくファンキー。このバレルの特性である「ブルージー」にビビットに反応して、このアルバムでのケリーのピアノは、コッテコテに「ブルージー」。

すると面白いことに、バレルとケリーのブルージーさを際だたせるようなバッキングを、ベースのチェンバースとドラムスのフィリー・ジョーがやるのだ。

う〜んプロやねえ、職人やねえ。なるほど、ケリーにしろ、チェンバースにしろ、フィリー・ジョーにしろ、あの帝王マイルスが手元に置くわけだ。 よって、このアルバム、ケリーの他のどのアルバムよりも、ケリーのブルージーさが際だっている。

1曲目の「ウィスパー・ノット」の名演は言うに及ばず、3曲目の「ダーク・アイズ」、5曲目の「イル・ウインド」などは、バレルのブルージーなギターと、ケリーのブルージーでありながら、ドライブ感豊かに明るく跳ねるような、それでいて、そこはかとなく漂う「翳り」が何とも言えず良い。

しっとりと落ち着いた、それでいて、キッチリとハードバップしていて、とても良い演奏です。6曲目の「ドント・エクスプレイン」などは、心からリラックスして、思わず儚く消え入ってしまいそうな感覚を覚えるほどの名演だ。メンバー全員が一丸となった、そのコッテコテにブルージーで心地よいスローな演奏は、喫茶店の昼下がりにピッタリです。

 
 

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2013年9月12日 (木曜日)

音楽のジャンルには意味が無い

ジャズとか、ロックとか、ニューミュージックとか、ソウルとか、クラシックとか、何かと人は音楽をジャンル分けしたがる。そういう僕も「音楽のジャンル分け」をし続けて来た。

ジャンル分けが全面的に悪いとは思わない。ジャンル分けの良いところもある。その盤がどういう傾向の音なのか、聴く前に類推することが出来る。しかし、自分の好みで無いジャンルの音楽については実際に音を聴いて感じて確かめることをしない、という、ジャンル分けの悪い面もある。

まあ、音楽の基本は「自分の耳で聴き感じること」なので、ジャンル分けには意味がないことなのかも知れない。それでも、21世紀になっても、CDショップ、ネットショップ、どこでも、音楽のジャンル分けは存在し続けている。

しかし、こういうアルバムの音世界を体験すると、やっぱり「音楽のジャンルには意味が無い」と思ってしまう。そのアルバムとは、フィービー・スノウのセルフタイトル盤『Phoebe Snow』(写真左)。邦題は『サンフランシスコ・ベイ・ブルース/ブルースの妖精フィービ・スノウ』。1974年のリリース。フィービー・スノウのデビュー盤である。

フィービー・スノウとは、ニューヨーク出身のシンガーソングライター。ジャズ、ブルース、ソウル、カントリー&ウエスタン、ゴスペルなどの米国ルーツ・ミュージックをベースとしたアーバンな音作りは彼女の個性。特に、ジャズ、ブルースを基調とした楽曲作りに秀でている。

参加ミュージシャンも実にユニーク。そのユニークなパーソネルを、例えばジャズ畑からピックアップすると、Ron Carter (b), Steve Gadd (ds), Chuck Israels (b), Bob James (org, key), Ralph MacDonald (perc), Zoot Sims (ts), Teddy Wilson (p)。ロック畑からは、Dave Mason (g) なんかも参加している。
 

Phoebe_snow

 
しかし、このアルバムに詰まっている音は、決して、ジャズでもクロスオーバーでも無い。また、ロックでも無いし、ソウル・ミュージックでも無ければ、単純なポップスでも無い。あくまで、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたアーバン・ポップな音であり、その音はとても個性的だ。

このフィービー・スノウのデビュー盤を聴くと、つくづく「音楽のジャンルには意味が無い」なあ、と思う。

この「音楽のジャンルには意味が無い」の論拠となる面白い現象として、1974年の米国ビルボードの北米ヒットチャートを振り返ると、このフィービー・スノウのセルフタイトル盤『Phoebe Snow』は、Black Albumsのジャンルで22位、Jazz Albumsのジャンルで17位、Pop Albumsのジャンルで4位となって、複数の音楽ジャンルに跨がって、評価されていたことが良く判る。

1曲目の「Good Times」から個性的。唯一無二、フィービー・スノウでしか出せない音であり、フィービー・スノウでしか歌えない、独特なジャジーでブルースな雰囲気。今の言葉で評するなら「クール」。日本語で評するなら「粋で渋い」。言い換えると、米国で無いとニューヨークで無いと生まれ得ない、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたアーバンな音。

この音世界、やはり「自分の耳で聴いていただく」しか無いですね。「音楽のジャンルには意味が無い」と感じる盤って、やっぱり文字に表現するのは難しいですね。でも、良いですよ。永遠のエバーグリーン。クールで粋で渋い。ジャズ者の方々にも、十分、お勧め出来る内容です。

 
 

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2013年9月11日 (水曜日)

『Africa/Brass』の正統な後継

ジョン・コルトレーンのアルバムに『Africa/Brass』というアルバムがある。タイトル曲「Africa」では、冒頭、野性的な咆吼や呪術的な響きを管楽器中心に表現していて、ちょっと「引く」。当時の米国黒人が意識していた遠い故郷「アフリカ」を安易にイメージさせるに十分な、ちょっと「ベタ」なアレンジがユニーク(2009年9月28日のブログ参照・左をクリック)。

このコルトレーンのアフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開については、アレンジを煮詰めていけば十分に成立するレベルの高いものであった。特に、後の「ワールド・ミュージック」のエッセンスを先取りしたような内容は、今から振り返れば、さすがはコルトレーンと言うべきものであった。

しかし、この『Africa/Brass』のセッションでは、コルトレーンのリーダー・アルバムでありながら、エリック・ドルフィー指揮のオーケストラを愛でることになるという、「軒下を貸して母屋を乗っ取られた」ような状態になってしまったので、コルトレーンは、アフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開を追求することは無く、フリー・ジャズにひた走ってしまった。

コルトレーンの伝説のカルテットのピアニストに、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)がいる。実は、このタイナーが、アフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開を、コルトレーンの代わりに追求することとなる。1968年のセッションから暫く、このアフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開を追求することになるのだ。

その一連のアルバムの中で、一番、その雰囲気濃厚なアルバムが、McCoy Tyner『Asante』(写真左)。1970年9月の録音になる。ちなみにパーソネルは以下のとおり。

McCoy Tyner (p, wooden-fl), Andrew White (as, oboe), Ted Dunbar (g), Buster Williams (b), Billy Hart (ds, African-perc), Mtume (cong, perc), "Songai" Sandra Smith (vo), Herbie Lewis (b), Freddie Waits (ds, timpani, chimes), Hubert Laws (fl), Gary Bartz (as, ss)。
 

Asante

 
ウッド・フルートやオーボエを交え、アフリカン・パーカッションを活用しつつ、アフリカン・ネイティブなボーカルを織り交ぜ、コルトレーンが追求することが無かった、アフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的な演奏が展開されている。 

特に、冒頭のタイトル曲「Asante」がその雰囲気満載。アフリカン・アメリカンの心の音世界、アフリカン・ネイティブな音世界を上手く取り入れ、非常に上手くアレンジしている。タイナーのパーカッシブなピアノも、アフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開の中では実に効果的に響き、ヒューバート・ロウズのフルートも実に官能的だ。

アフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開のタイナーのアルバムとしては、1970年代より『Sahara』を推されることが多いが、どうしてどうして、僕は、この1968年から1970年までの、ブルーノートのセッションの方が優れていると思う。

残念なことは、このブルーノート・レーベルに残された、タイナーのアフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開のアルバムである「Expansions」「Cosmos」「Extensions」「Asante」が、日本においてなかなか入手が難しいこと。特に、「Expansions」「Cosmos」は廃盤になって久しい(というか「Cosmos」はCD化されたことが無いのでは)。

後の「ワールド・ミュージック」のエッセンスを先取りしたような、アフリカン・ネイティブな音世界をミックスした「ビッグバンド・ジャズ」的展開は、今の耳にも十分に耐え、新しい響きのように感じる。絶対に再評価すべき、タイナーのブルーノートの諸作である。

 
 

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2013年9月10日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・4

昼過ぎて、ちょっと時間の流れが緩やかに感じる午後の昼下がり。今日の音楽喫茶『松和』の昼下がりは、夏の終わり、カラッと晴れ上がった昼下がり。陽射し豊か、青い空白い雲。喫茶店の中だけ、静かに時が流れていく。

もう新しい話題では無いが、1980年代から1990年代にかけて活躍した男性シンガーソングライター、大江千里がジャズ・ピアニストに転身した。もともとピアニストでは無い大江千里。ジャズ・ピアノは、ポップス系の我流の弾き語りピアノとは訳が違う。大丈夫なのか。心から心配になった。

そして、月日が流れて、大江千里のジャズ・ピアノを初めて耳にしたのは、このデュオ盤が最初になる。河上修 & 大江千里『Duo』(写真左)。2010年12月のリリース。2007年から渡米して、ジャズを勉強していた成果がこのデュオ盤に詰まっている。

大江千里のピアノは個性的。どこかで聴いた様な雰囲気なんだが、リズム&ビートとタイムの取り方が独特なので、意外と大江千里独自の個性として成立している。

テクニックはそこそこ。でも、テクニックがそこそこでも、意外と味のあるジャジーなピアノを聴かせる。リリカルで内省的。一聴するとビル・エバンスを想起するが、タッチがあっさりしているのと、リズム&ビートとタイムの取り方が違うので、全く別物に聴こえる。
 

Oe_kawakami_duo

 
まだ全面的に自信を持てないのか、ちょっと心許ない部分をほんの少しだけ覗かせているところが、初々しくて良い。そんな初々しいところを、河上修が堅実かつ野太く、雄弁なベースでガッチリとサポートしている。このデュオ盤での河上修のサポートは抜群。大江千里も安心してフレーズを紡いでいく。

収録曲がこれまた渋い。実にデュオ向きの、実に渋い選曲だ。収録曲は以下のとおり。

1. Stella By Starlight
2. All The Things You Are
3. Our Love Is Here To Say
4. In A Sentimental Mood
5. Dede Dream
6. Black Orpheus
7. Joya
8. Anthropology

リリカルに内省的にスタンダードの旋律を紡ぎ上げ、インプロビゼーションを展開していく大江千里のピアノは素敵だ。そして、その大江千里をガッチリとサポートする河上修のベースは、これまた、とても素敵だ。

夏の終わり、カラッと晴れ上がった昼下がり。陽射し豊か、青い空白い雲。喫茶店の中だけ、静かに時が流れていく。そんな喫茶店の空間に、ピアノとベースのデュオがリリカルに内省的にフレーズを紡ぎ上げていく。緩やかな素敵な時間が流れていく。

 
 

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2013年9月 9日 (月曜日)

フュージョン時代の最後の煌めき

フュージョンという言葉が、今の様に単なる音楽のスタイルを規定する「名詞的な扱い」ではなく、 フュージョンという言葉そのものがジャズであり、フュージョンという言葉そのものが「ジャズにおける先進的なムーブメント」だった時代がある。

1970年代がそうなのだが、特に、1970年代半ばの頃、このフュージョン・ジャズの成熟期であり音楽的にもピークだった。ビジネス的には、1970年代後半までズルズルと引きずる訳だが、 ビジネス的に成熟すればするほど、音楽的には徐々に退廃していった。

フュージョン・ジャズがビジネス的に下り坂になり、音楽的な退廃が決定的になりつつあった1980年に、フュージョン・ジャズの仕掛け人のひとり、 クリード・テイラーが突如として、オールスター・ジャム・セッションを招集した。そのスーパー・セッション・バンドが、今回、ご紹介する「フューズ・ワン」である。

振り返れば、「フューズ・ワン」 というスーパー・セッション・バンドは、フュージョン・ジャズの最後の煌めきの様なバンドだと僕は感じている。 実際、このアルバムが制作された1980年以降、フュージョン・ジャズは、更なる衰退の一路を辿っていくこととなる。ここでは、そのフュージョン・ジャズ最後の煌めき的な、スーパー・バンドの名盤をご紹介しましょう。

Fuse One『Fuse』(写真左)。CTIレーベルの主催者、クリード・テイラーのプロデュースによるオールスター・セッション第1弾。1980年のリリース。

1980年といえば、1970年代前半から半ばにかけて盛り上がり、一世を風靡した「フュージョン・ジャズ」が、1970年代後半、どんどんコマーシャルになり「形骸化」、オーディエンスから徐々に飽きられつつあった、いわゆる「斜陽の時代」である。
 

Fuse_one_fuse

 
その「斜陽の時代」に、フュージョン・ジャズの仕掛け人の第一人者であるクリード・テイラーが、この「フューズ・ワン」というオールスター・セッション・グループを編成し、この「フューズ」というアルバムを世に出したというのは、実に象徴的だ。

とにかくメンバーが凄い。ベースはスタンリー・クラークとウイル・リー、ギターはラリー・コリエルと ジョン・マクラフリン、サックスはジョー・ファレル、ドラムスはトニー・ウイリアムスとレニー・ホワイト、などなど、フュージョン界でのビッグ・ネームばかり。

しかも、この手のスーパー・セッション的アルバムは、往々にして顔ぶれが豪華だけで、内容が散漫な看板倒れのアルバムが多いのだが、このアルバムは珍しく、それぞれが自己主張しつつも、しっかりとグループ・サウンズを意識した、ひとつのアルバムとして、しっかりとした内容になっている。

まずは、フュージョンならではのテクニック抜群でイケイケの名曲達。1曲目の「グランプリ」や5曲目の「ダブル・スチール」などは、印象的な旋律とそれぞれのメンバーの職人芸的なソロが相まって、スピード感と安定感が抜群の名演だ。ちなみに、5曲目の「ダブル・スチール」は、1980年当時、TDKのTVコマーシャルで使用されヒットしましたね〜。

7曲目の「タクシー・ブルース」は、ファンキーなシャッフル・ナンバーで、とにかく、ノリノリのイケイケ的演奏で楽しい。うって変わって、なかなかに渋い佳曲が、2曲目の「ウォーター・サイド」。哀愁溢れるブラジリアン・テイストが心地良い。また、3曲目の「サンシャイン・レディ」は、あのファンキーなエレクトリッ ク・ベースで有名なスタンリー・クラークの作品で、意外にも、とても優しく清々しい。

この『Fuse』というアルバムは、フュージョン時代の最後の煌めきの様な位置づけを担ったアルバムだったと僕は思う。実際、このアルバムが制作された1980年以降、フュージョンは、衰退の一路を辿っていくこととなる。

しかし、このアルバムは、フュージョンのオールスター・セッションとして未だに輝いている。正直言うと、このアルバム、今聴いても結構いけてて、なんだかホッとしました。

 
 

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2013年9月 8日 (日曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・3

昼過ぎて、ちょっと時間の流れが緩やかに感じる午後の昼下がり。今日の音楽喫茶『松和』の昼下がりは、雨の日の昼下がり。

雨がしとしと降っている。その雨のせいか、ジャズ喫茶のお店の中は、人がまばら。雨音だけが室内に響き、そんな穏やかな時間がゆったりと流れていく「午後の昼下がり」の時間帯。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」には、その雰囲気を壊さない、それなりのジャズ盤を流したい。

雨の日の静かで穏やかな昼下がり。やっぱり、ここは「穏やかで優しいジャズ・ギター」が良い。今日はジム・ホールのエレギの音を愛でてみたい。

今をときめく人気No.1ギタリストのパット・メセニー。このNo.1ギタリストが、敬愛してやまない、お気に入りのギタリストが、この「ジム・ホール」。この「ジム・ホール」、そもそもリーダー作が少なく、それゆえ、ギタリストとしては地味な存在。

例えば、パット・メセニーの若いファンの中でも、この「ジム・ホール」の名前を知らない方が多い。しかしながら、パットのファンであれば、先にご紹介した『It's Nice To Be With You - Jim Hall in Berlin』(7月15日のブログ・左をクリック)を聴けば、なぜ、パットがジム・ホールの大ファンなのか、至極、納得いく方が多いのではないか。

ギター・シンセサイザーなどを駆使した「派手な」メセニーを聴けば「?」だが、6玄ギター1本で、シンプルに、かつ、鯔背に弾きこなすメセニーのギターの音を聴けば、いかに、メセニーが、この「ジム・ホール」を尊敬し、アイドルとしてきたかが良くわかる。
 

Jim_hall_pat_metheny_2

 
このメセニーお気に入りのギタリストであり、敬愛してやまない先輩ギタリストである「ジム・ホール」とのデュオがこのアルバム『Jim Hall & Pat Metheny』(写真)である。

このデュオ・アルバム、先にジム・ホールの名前が先に来ているが、単にパットより先輩で、パットの敬愛するギタリストなので、先に名前を譲っているわけではない。このアルバムでは、明らかにジム・ホールが、パットをリードし、圧倒しているのだ。

そりゃあ、パットだって黙っちゃいないが、要所要所ではジム・ホールがビシッときめて、ぐいぐい、パットを引っ張っている。そして、パットは、敬愛する「先生」であるジム・ホールの後を神妙についていく。そして、パットはその卓越したテクニックと歌心で、ジム・ホールのギターをしっかりとバッキングする。

とにかく全編美しく、時に幽玄、時にダイナミックに、時に緩やかに、時に静謐に、ジャズ・ギターの全てのテクニックと美しさが、このデュオに凝縮されている。このアルバムに詰まっている、ジム・ホールとパット・メセニーの「穏やかで優しいジャズ・ギター」の音が、雨の日の静かで穏やかな昼下がりにピッタリ。

でも、単に「穏やかで優しいジャズ・ギター」で留まってはいませんぜ。聴き耳立て出したら、終わりまで一気に聴き通してしまうくらい、ジム・ホールとパット・メセニーも適度なテンションを張りながら、結構、硬派な純ジャズ・ギターのフレーズを弾きまくっています。

 
 

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2013年9月 7日 (土曜日)

寺井尚子は「硬派」が似合う。

昨日ご紹介した『Princess T』で完璧なフュージョン・アルバムに転身し、その後、今までの活動の総括的なライブアルバム『NAOKO LIVE』(2011年6月23日のブログ参照・左をクリック)を出したことで、寺井尚子の活動の第一幕は閉じた感があった。

次なる新たな展開は何か。実はあんまり期待はしていなかった。大レコード会社のイメージ先行型の販売展開は、ミュージシャン本人の意思に関わらず、常軌を逸した形となり、ひいては演奏家の個性と才能をつぶしがちなのだが、寺井尚子もその波に飲み込まれたかに見えたからだ。

が、しかし、この4th.アルバム『All For You』(写真左)はその不安をうち消して余りあるアルバムに仕上がっている。リリース当時、ホッと安堵したことを覚えている。

再び「硬派な純ジャズ的雰囲気をバイオリンで力ずくって感じ」を引っさげ、耳に優しいフュージョン的な演奏も「硬派なフュージョン・ジャズ」で押し通し、演奏家としての意志の強さがしっかりと感じられる、素晴らしい演奏の数々がこのアルバムの中に溢れんばかりに詰まっている。
 

All_for_you

 
その「強さ」は冒頭の2曲で感じ取ることができる。1曲目「おいしい水」はボサノバの名曲。しっかりと純ジャズよろしく、寺井はアドリブを繰り広げていく。

2曲目は「ビ・バップ」。ビ・バップの創始者の一人ディジー・ガレスピーの名曲で、この演奏こそが、このアルバムのハイライトで、バイオリンの純ジャズの名演として記憶されるべき名曲と思う。実に硬派な演奏で、胸がすくような名演だ。

4曲目と6曲目は、アコーディオンの名手リシャール・ガリアーノとの競演。これが「目からウロコ」で、 バイオリンとアコーデオンは実に良く合う。

前に『バイオリンの音色の最大の特色は「哀切感」である』ってなことを書いたが、この「哀切感」が、アコーディオンの音色に増幅されて、さらに浮き出てくるのだ。これって「ジャズ」しているよなあ。「ジャズ」以外なにものでもない、この組み合わせの妙。ドビュッシーの「月の光」も、展開部はジャズしていて良し。

このアルバムでの寺井尚子は、良い意味で、純ジャズとフュージョンのいいとこ取りをしている。バイオリンという楽器の性質がそうさせるのだろう。

 
 

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2013年9月 6日 (金曜日)

フュージョン・ジャズに早変わり

1作目・2作目と、純ジャズとフュージョンを上手くハイブリットさせた、ジャズ・バイオリンの佳作を世に出した寺井尚子。

さて3作目は如何に、と思いきや、かのフュージョン・ギターの大御所、リー・リトナーをプロデューサーに迎えて、大フュージョン大会のアルバムを世に出したのだった。いや〜、これはこれは、明らかに商業主義に走った、寺井尚子を「ジャズ・プリンセス」に祭り上げた内容と相成った。

この3枚目のアルバムは『Prinsess T』(写真左)。Tは寺井のイニシャルの「T」なんでしょうが、いかにも大手レコード会社の悪ノリ。「イメージ路線一直線」ってな感じがなんだか気持ち悪いタイトルである。しかも、ジャケットの寺井の格好って、これでは、完全に「アイドル」のノリではないか(笑)。

リー・リトナーがプロデューサーなので、内容としては前2作と異なり、 完全にフュージョン基調のアルバム内容になっていて、純ジャズの路線は微塵もない。

ファースト盤『シンキング・オブ・ユー』の硬派な純ジャズ的雰囲気である、「バイオリンで体育会系のノリで硬派な純ジャズ」って感じを期待すると見事に裏切られる。
 
プロデューサーのリー・リトナーは、プロデューサー業に加えて、自らもほとんどの曲でギターを弾く気の入れよう。まあ、寺井のような女性が相手だと気合いが入るのは、男であれば皆同じ(笑)。
 

Princess_t

 
アルバム全編に渡り、耳当たりの良い、実に心地よいフュージョン的演奏がぎっしり。ウエザー・リポートの名演で有名な「ブラック・マーケット」も、ソニー・ロリンズの大名曲「セント・トーマス」も、そのオリジナルの硬派な雰囲気は微塵も無く、耳当たりのよいフュージョンに大変身。

しかしながら、演奏の内容自体は密度が濃く、アレンジも優れており、フュージョン全盛時によくあった、単に耳当たりが良いだけのフュージョン演奏とはまったく違う、実に良質なフュージョンがこのアルバムに溢れている。それが救いと言えば救いである。

この盤、スピーカーの前で相対して聴くアルバムではなく、生活のBGMとして聴くというスチュエーションがぴったりのアルバムではある。

でも、僕は不満。やはり、バイオリンという、ジャズの中で、実にユニークな存在の楽器をソロ楽器として引っさげ、ジャズ界に殴り込みをかけたような「硬派」的雰囲気が失われたのは実に惜しい。

この盤だけ聴いて、フュージョンなバイオリン・ジャズも良し、とすれば、それはそれで幸せなんだが、こちらは、1作目・2作目と、純ジャズとフュージョンを上手くハイブリットさせた、ジャズ・バイオリンの佳作を経験している。

このまま、寺井尚子もジャンル不明な「癒し系」の音楽にひた走るのか、と、ちょっと寂しさを感じる内容なのは正直なところではある。

 
 

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2013年9月 4日 (水曜日)

寺井尚子の初期の傑作アルバム

ファースト・アルバム『Thinking of you』(2011年7月19日のブログ・左をクリック)は、デビューアルバムだけに、積極果敢、「なにがなんでも頑張るぞ」的な初々しさと、チャレンジ精神が旺盛だった。そのがむしゃら感と硬派な純ジャズな雰囲気が魅力の好盤だった。

続くセカンド・アルバム『Pure Moment』(写真左)は、1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、寺井尚子 (vln), 奥山勝 (p,syn), 池田達也 (b), 藤井摂 (ds), 横山達治 (conga)。オール日本人のメンバーで、充実の演奏を繰り広げている。

このセカンド・アルバムは、客観的かつ冷静に「ジャズにおけるバイオリン」を最大限活かすには、どの様な選曲が良くて、どの様なアレンジが良いのか、じっくり考えて作られている。そして、細部に渡ってきめ細やかな配慮が行き届いた、充実度の高いアルバムに仕上がっている。

「ジャズにおけるバイオリン」を最大限に活かすには、と検討した一つの結果が、ラテン・フレーバーだったのだろう。ラテン音楽を下敷きにした、1曲目の「Adios Nonino」と、5曲目の「Spain」が素晴らしく、バイオリンの音色が、その曲想にマッチしている。
 

Pure_moment_1

 
特に、チック・コリア作の「Spain」は、バイオリン演奏における、苦手な音階の部分を上手くアレンジで処理しながら、バイオリン演奏が映える音階の部分は、堂々とバイオリン演奏の為に書かれたような、素晴らしい演奏が繰り広げられる。

6曲目の「Estate」だって、ほんのりとラテン調。こんなに、ラテン調のジャズがバイオリンに合うとはねえ。やはり、バイオリンの音色の最大の特色は「哀切感」であり、寺井尚子は、その「哀切感」を最大限に引き出しており立派だ。

それと、4曲目のスティングの名曲「Fragile」では、ピチカート奏法を披露する。冒頭の旋律は語りかけるようなピチカートで、静かに、そして力強く歌いかけながら、サビの展開部では朗々とボウイングで歌い上げていく。この展開はなかなか感動的だ。歌心溢れるその名演を是非とも皆さんも体験して下さい。

そして、7曲目では、なんと、あの宇多田ヒカルの名バラード、「First Love」を堂々と歌い上げるのだ。これはなかなかの演奏で、「今」のJポップ・シーンが、十分にジャズの素材として、将来、ジャズ・スタンダードとなりうる優れた楽曲を送出していることに感動を覚える。

この『Pure Moment』は彼女の初期の傑作である。純ジャズにおけるバイオリンがリーダーのアルバムとしても秀逸で、バイオリン・ジャズとして名演に位置する好盤だと僕は思う。

 
 

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2013年9月 3日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・2

昼ご飯時の喧噪が去って、人が少なくなる午後の昼下がり。ジャズ喫茶のお店の中は、人がまばら。皆、本を読むか居眠りをするかで、午後の昼下がりの一時を潰している。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」には、その雰囲気を壊さない、それなりのジャズ盤を流したい。

今日は、これ。岡安芳明『Beautiful Friendship』(写真左)。これは良い。ウォームで穏やかで柔軟な、ジャジーな雰囲気満載のジャズ・ギターが実に良い。2012年9月の録音。ちなみにパーソネルは、岡安芳明 (g), 香川裕史 (b), 高橋幹夫 (ds)。岡安のレギュラー・トリオである。

さて、リーダーのギタリスト「岡安芳明」とは誰か。1962年7月生まれ。ということは今年で51歳。う〜ん、僕よりも年下かあ。僕も歳をとったもんやなあ、とぼやいてみる(笑)。チャーリー・パーカーとウェス・モンゴメリーを聴いてジャズを志した、とある。見上げた心がけであり、それを実現するんやから全く凄い。

ウェスによってジャズ・ギターに開眼した岡安ではあるが、彼のジャズ・ギターのスタイルは「ケニー・バレル」である。このバレルを踏襲した岡安のギターが実に良い雰囲気だ。バレルのスタイルを踏襲するジャズ・ギタリストはそう多く無い。岡安は貴重な存在だ。なるほど、このアルバムのウォームで穏やかで柔軟な、ジャジーな雰囲気のギターは、バレルのスタイルの踏襲からくるのか。

そして、使用されているエレギが「Gibson Super 400」で暖かく柔らかい雰囲気が素晴らしい。そして、アコギは「ヤイリのフォークギター」で細やかで滑らかで耳に優しい。この2台のギターを駆使して、ウォームで穏やかで柔軟な、ジャジーな雰囲気を醸し出している。 
 

Beautiful_friendship

 
アルバムの収録曲もなかなか考えられた選曲で実に渋い。有名なスタンダードもあれば、ちょっと渋めの知る人ぞ知る感じのスタンダードもある。

そんな中でも、Vernon Dukeの名曲として名高い「Autumn in New York」(これ僕の大のお気に入り)、「Gibson Super 400」の暖かく柔らかな音でハードボイルドに迫る「Round Midnight」、ベースによるメロディからソロに入る、アレンジの勝利「You'd Be So Nice to Come Home to」など、思わず聴き入ってしまう演奏が満載。

加えて、このアルバム、全部で50分弱ですが、この長さが良い効果を出してくれています。「聴いていて長く感じず、躊躇わず繰り返し聴ける」。

最近、60〜70分収録の長時間のアルバムが多くて、ちょっと閉口するんですが、このアルバムの「全部で50分弱の長さ」が実に良い。なにも収録時間の長さ、収録曲の多さがアルバムの価値・評価に直結しないとは思うんですが、僕はこのアルバムを聴いて「その意」を強くしました。 

派手派手しい立ち回りとは全く無縁の、ウォームで穏やかで柔軟な、ジャジーな雰囲気満載のジャズ・ギターによるスタンダード集は聴きものです。特に、バレルを踏襲したジャズ・ギターによるハード・バップな演奏は耳に和みます。子犬をあしらったジャケットも可愛い。良いジャケットです。

本を読むか居眠りをするかで、午後の昼下がりの一時を潰しているジャズ者の方々は、絶対にこう言いながら、この盤のジャケットを見に来ますね。「マスター、この盤、なんていうアルバム?」。

 
 

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2013年9月 2日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・1

昼ご飯時の喧噪が去って、人が少なくなる午後の昼下がり。僕はこの「午後の昼下がり」の時間帯が大好きだ。

晴れていれば、外は陽射しが一杯に振り注ぎ、室内は静かな時間が流れていく。雨が降っておれば、優しい雨音を聞きながら、室内は静かな時間が流れていく。そして、ジャズ喫茶のお店の中は、人がまばら。皆、本を読むか居眠りをするかで、午後の昼下がりの一時を潰している。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯が僕は大好きだ。

そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」には、その雰囲気を壊さない、それなりのジャズ盤を流したい。決して、穏やかな時間の雰囲気を壊すこと無く、穏やかな時間を慈しむように流れていくジャズ。それは、やはり純ジャズなジャズ・ギターの柔らかくて穏やかで優しい音がピッタリでしょう。

例えば、最近、良く流すアルバムが、John Abercrombie and Eddie Gomez『Structures』(写真左)。2006年11月の録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g・写真右), Eddie Gomez (b), Gene Jackson (ds)。実にシンプルなトリオ構成。

このアルバム、目立ったキャッチャーな曲は無いんだけど、演奏全体の雰囲気は、モーダルな純ジャズで、3者3様、対等な立場に立ってのインタープレイが素敵なギター・トリオ。特に、ギターのジョン・アバークロンビーが、気持ちよさそうに弾きまくっている。
 

Abercrombie_structures

 
その気持ち良く弾きまくるアバークロンビーに絡むように、ベースのエディ・ゴメスが、これまたアコベの弾きまくる。この絡みが実に気持ち良い。そして、その絡みを支える様に、ジーン・ジャクソンのドラムが、これまた硬軟自在に叩きまくる。この3者3様のインタープレイが見事である。

アバークロンビーのエレギとゴメスのアコベの音が暖かく、とてもナチュラルに聴ける。ナチュラルすぎて、大人しい感じがして、ちょっと物足りなさも少々残る、なんて向きもあるが、どうしてどうして、録音が良いので、ナチュラルな演奏の中にも、しっかりと「芯」があって、最後まで飽きずに、楽しんで聴き通すことが出来る。

このエレギとアコベの暖かい音と、しっかりとアクセントになっているドラムのリズム&ビートとが相まって、演奏の「芯」をしっかり保持しつつ、実にウォームなインプロビゼーションになっている。これが、まあ、穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」にピッタリなのだ。

大向こうを張る、キャッチャーなフレーズやインプロビゼーションは無いけど、この盤の3者3様、対等な立場に立ってのインタープレイは結構聴きものです。特に、アルバム全体の柔らかでウォームな音は、耳に優しく、そして心に和む。

本を読むか居眠りをするかで、午後の昼下がりの一時を潰しているジャズ者の方々は、絶対にこう言いながら、この盤のジャケットを見に来ますね。「マスター、この盤、なんていうアルバム?」。

 
 

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2013年9月 1日 (日曜日)

実にお洒落なハードバップです

ドラマーとベーシストのリーダー作、その数は多くは無い。ドラマーとベーシスト、どちらもジャズ演奏では、リズム&ビートを担当する「縁の下の力持ち」的存在。リーダーとして前面に出て、その存在をアピールするには、一工夫、いや、二工夫ほど必要になる。

まず、リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっているか、若しくは、担当のプロデューサーが、リーダーのベーシストの何を表現したいかが明確になっていないと、良いセッション・アルバムにはなかなかならない。

そして、ドラムとベースは、旋律を展開するのが難しいリズム&ビート中心の楽器であるということ。ベースは旋律を奏でることは出来るが、低音中心の単音弾きになるので、基本的に「単調」。長時間、旋律中心のソロを続けると飽きが来てしまう危険性が高い。ベーシストのリーダー作が少ない所以である。

ここに、Leroy Vinnegar『Leroy Walks!』(写真左)というアルバムがある。曲によって、1957年7月15日と9月16日、そして、9月23日の録音に分かれるが、1957年の7〜9月の2ヶ月という短期間の録音なので、同一セッションと括っても問題は無いだろう。

ちなみに、パーソネルは、Gerald Wilson (tp), Teddy Edwards (ts), Victor Feldman (vib), Carl Perkins (p), Leroy Vinnegar (b), Tony Bazley (ds)。Contemporaryレーベルの作品なので、米国西海岸のジャズメン中心のセクステット編成となっている。
 

Leroy_vinnegar_walks

 
1957年の録音なので、ジャズ演奏のトレンドとしては、完璧ハードバップな内容である。それも、米国西海岸のジャズメン中心のハードバップなので、良くアレンジメントされ、ユニゾン&ハーモニーも心地良く、実にお洒落な、典型的な「米国西海岸ハードバップ」の演奏がギッシリ詰まっていて、聴いていてとても楽しい。

ここでのリーダーのベーシスト、ビネガーは、リーダーシップを発揮しつつ、このアルバムで何をやりたいかをハッキリさせている。つまりは「米国西海岸のハードバップをリラックスして楽しくやろう」がコンセプトだと想像出来る。本当に、どの曲も皆、実に楽しそうにハードバップをやっている。

ベーシストのビネガーがリーダーだ、ということは、通常のジャズ盤よりも、ベースの音量が少し高くミックスされていて、ベースの音が拾いやすいというところと、 収録曲毎に、短めのベースソロが必ず入るところで判る。この短めのベースソロが、実にお洒落で、ビネガーというベーシストが、テクニックに優れた、とても「良く歌う」ベーシストだということが良く判る。

特に、ビネガーはウォーキング・ベースに優れる。これは、このアルバムに収録された演奏の全てに反映されていて、なるほど、アルバムタイトルの「Walks」は、Walking Bass(ウォーキング・ベース)の「Walks」なのだということを理解する。

良質な米国西海岸のハードバップを感じることが出来て、なかなか良い内容のアルバムです。米国西海岸ジャズ独特の、程良くアレンジメントされた、実にお洒落なハードバップが、心地良く聴き易い、ちょっと小粋な内容が素敵なアルバムです。

 
 

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