この盤を聴きながら夏を送り出す
我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日はこの特集のラスト。70年代Jポップとしては「ちょっと反則」ですが(笑)、1980年に遡ります。
最初の出会いはFMから流れてきた「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」。日本人が英語で歌っていることは歌の発音で判る。でも、音のスピリッツは「ロックンロール&ブルース」。こんなロックンロール&ブルースな演奏が、日本人の手で創られる、そんな時代になったんだ。なんか万感の想いを抱いた事を覚えています。
聴いて次の日、即入手。そのアルバムとは、柳ジョージ&レイニーウッドがアトランティック・レーベル移籍後の1980年にリリースした通算5作目のオリジナル・アルバム。『Woman And I... Old Fashioned Love Songs』(写真)。金色の変則見開きジャケットに入った2枚組。実に渋いジャケット。
中身は、柳ジョージ&レイニーウッドの「渾身のロックンロール&ブルース」。とにかく渋い。日本人が日本人として、ロックンロール&ブルースをやっていることは聴けば直ぐに判る。でも、決して無理はしていない。日本人が日本人としてオリジナルなロックンロール&ブルースをやる。そんな吹っ切れた格好良さが、このアルバムには充満していた。
まず、カバーが格好良い。冒頭の「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」「ユーブ・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー」「テネシー・ワルツ」。どのカバー曲も実に格好良い。日本人が日本人に誇りを持ってカバーするR&Bな名曲の数々。実に聴き応え満点。
他の曲も格好良い。スタイリストな「ロックンロール&ブルース」。例えば「ハーバー・フリーウェイ」。その歌詞が格好良い。う〜ん、まるで映画の1シーンのようだ。爽快感溢れる明るいロックンロール。実にハードボイルドである。
昔この道を いつも違う女の 肩に手をあて 口説きながら走ったぜ
バック・ミラーに映った女の顔を 俺は今でも一人ずつ覚えてる
過ぎた日々の谷間に 生きつづける女達よ
俺はいまでも一人でいるけど お前達が好きさ
そして、聴けば常に感動し、思わず目頭を熱くする名曲中の名曲。「青い瞳のステラ、1962年夏…」。前奏のシンセの吹き上げるような音から心の吟線に響きまくる。そして、シンセにバックで絡むストリングスが実にR&Bっぽくて良い。
そして、この「青い瞳のステラ、1962年夏…」を聴く度に、晩夏の昼下がり、少し暖まった海風に吹かれながら、昼下がりの太陽を見上げ、未だ見ぬ米国に思いを馳せ、FMから流れるR&Bに聴き耳を立て、ゆく夏に一抹の淋しさを感じて、黙ったまま空を見上げる僕達がいる。
赤いキャンディ 包んでくれたのは 古いNewspaper
白いペンキ 何度も塗りかえす 夏の風の中で
今頃 故郷のテネシーあたり 刈り入れ時さとカタコト交りで
バルコニーから覗くあんたは ブロンドさえも 色褪せていた
派手な化粧 振り撒くオー・デ・コロン 自慢の胸のペンダント
俺の髪を撫でまわしながら 開けてみせた写真
もう一度 船に乗る夢ばかり 風邪をひいた日に うわ言のように
好きなブルース かけてた夜は きまって夜明けに すすり泣いてた
After midnight 哀しみは 永遠の眠りについたかい
しみじみと歌い上げる「しゃがれた声」の柳ジョージが実に印象的だった。聴けば必ずしみじみし、聴けば必ず胸がジーンとする。実に男気のある、実に説得力のある、実に風景のある絶唱だった。まさに、ゆく夏、晩夏の季節にぴったりの名曲である。
僕にとって、この柳ジョージ&レイニーウッド『Woman And I... Old Fashioned Love Songs』は、夏のR&B盤である。湿度の高い、うだるような夏にも耐える、日本人の日本人によるロックンロール&ブルース。この盤を聴きながら夏を送り出す。いつもながら、なかなかに良いものだ。
大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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