小説を題材に展開される音楽組曲
このアルバムには、なかなか縁が無かった。リリースされたのは2006年。手に入れないと手に入れないと、と思っていつつ、はや7年の月日が過ぎた。
そうこうするうちに、CDショップに在庫が無くなり、ネットショップでも在庫が危うい状態に。いかん、焦りに焦ってやっとのことで手に入れた。そういうアルバムって、時々あるよな。
そのアルバムとは、Chick Coreaの『The Ultimate Adventure』(写真左)。SF作家ロン・ハバードの同名の小説を題材に展開される音楽組曲。この「小説を題材に展開される音楽組曲」という件が、どうも気になって、手の伸びが鈍った。だってジャズでっせ。プログレじゃないんだから。
ジャケット・デザインからして、ジャズっぽく無い。これではまさに「プログレ」ではないか(笑)。どうしても、このSF作家ロン・ハバードの同名の小説を題材に展開されるという音楽組曲の音世界がイメージ出来なくて困った。だって、どう考えても、これはジャズでっせ(笑)。
でも、廃盤になって入手困難になっては困る。僕の大のお気に入りのジャズメン、チックのリーダー作である。ということで、やっとのことで手に入れた。
ちなみに主なパーソネルをピックアップすると、Chick Corea (p), Steve Gadd, Vinnie Colaiuta, Tom Brechtlein (ds), Airto Moreira, Hossam Ramzy, Rubem Dantas (perc), Carles Benavent (el-b), Hubert Laws (fl), Frank Gambale (ac-g), Tim Garland (b-cl,ts), Jorge Pardo (fl,sax)。う〜ん、なかなか良いメンバーを選択しているなあ。やはり、このアルバムは期待出来る。
で、やっぱり素晴らしい内容でした。特に、主役のチック・コリアのキーボード・ワークが秀逸。シンセの使い方、フェンダー・ローズの弾き方、やっぱりエレピを弾かせたら最高峰、エレピの天才チック・コリアである。様々な音色、拡がり、揺らぎ、伸び。縦横無尽、変幻自在、幽玄夢幻、硬軟自在。こんなにエレピって表現力があったんだ、と再認識させてくれる、チックのキーボード・ワークである。
そして、サイドメンの中では、フルートのヒューバート・ロウズが傑出している。エレピのアンサンブルに実に良く合うフルートの音色である。特に、フェンダー・ローズに良く合う。テクニック確かで、ジャジーな音色のロウズのフルート。このアルバムでのロウズは素晴らしい。
収録された曲は、それぞれ曲調は違っても、基本となる音世界はアルバムを通して一定していて、通して聴くのに相応しいトータル・アルバムです。さすがはチック、優れた作曲能力である。緩むこと無く、様々な音色と表情を持って、SF作家ロン・ハバードの同名の小説を題材に展開される音楽組曲。この企画は成功している。
チックのファン、いわゆる「チック者」でしたらマスト・アイテムでしょう。アルバムの演奏のそこかしこに、チックの手癖、音の特徴、タッチの個性が散りばめられており、加えて、チックの十八番である「スパニッシュ・フレーバー」が炸裂する楽曲も何曲かあって、実に楽しめます。なんせ、冒頭の前奏を聴くだけで、チックと判ります。それほど、チックの個性がこのアルバムには溢れています。
さすがにジャズを基調とした演奏なので、プログレの様な「キャッチャーで判り易いフレーズ」はあまり無く、一捻りも二捻りしたジャズらしい複雑なフレーズが実に「大人の雰囲気」です。大人のフュージョン・ジャズとして、往年のプログレ・マニアの方々にも、是非一聴をお勧めしたいアルバムです。
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