奇跡のレイドバック・サウンド
暑いですね〜。これだけ暑いと音楽を聴くなんて行為自体が、面倒くさくて避けたくなりますよね。僕もさすがにここまで暑いと、聴く音楽についても、その選盤をちょっと考えます。ちょっとした選盤の工夫で、夏の暑さを緩和したりすることが出来るので、今日の猛暑などは、音楽喫茶のマスターとしては、選盤の妙を発揮する腕の見せ所でもあります。
我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムを幾枚か、ご紹介したいと思います。ジャズが中心の我がバーチャル音楽喫茶『松和』ですが、「70年代Jポップ」も意外と得意ジャンルなんです。
それでは第一弾は、久保田麻琴と夕焼け楽団 『サンセット・ギャング』(写真左)です。1974年のリリースで、リリース当時は「久保田麻琴 II」でしたが、今日では、本作が久保田麻琴と夕焼け楽団のファースト・アルバムとして認知されています。
このアルバム、「レイドバック」という形容がぴったりの、アルバム全体の「のんびりと寛いだ」ユッタリとしたロックな演奏が実に魅力です。こんな「レイドバック」なロックが日本にあったとは、日本人が演奏しているとは、初めてこのアルバムを聴いた高校生当時、とにかくビックリしました。
「レイドバック(laid-back)」というのは「くつろいだ、のんびりとした、ゆったりした」という意味です。1973年発表のグレッグ・オールマンのファースト・ソロアルバムのタイトルに使用され、「くつろいだ、のんびりとした、ゆったりした」という意味を持つタイトル名は、一躍時代のキーワードにもなりました。
さらに1974年にエリック・クラプトンが、これもリラックス感たっぷりの『461 オーシャン・ブールヴァード』を発表し、肩の力を抜いたような演奏スタイルに注目が集まりました。緊張したサウンドとは全く正反対のものであり、この気負わずのんびりと、ゆったりとリラックスしたロックは、一躍、当時のトレンドになりました。
そんな1974年に、いち早く、その「レイドバック」なロックを取り入れ、ハワイなど南国をイメージしたトロピカルなムードが色濃く漂う、実に個性溢れる和製ロックを展開しています。ちなみに、当時のメンバーは久保田麻琴(ヴォーカル、ギター)、恩蔵隆(ベース)、藤田洋麻(ギター)、井上憲一(ギター)の4人。
この久保田麻琴と夕焼け楽団は、アメリカの南部〜ブルース〜ニューオーリンズ・サウンドに根ざした米国ルーツ・ロック、極楽トロピカルなスカ・サウンド、そして、カリビアンなレゲエ・ビートをいち早く取り入れ、当時はまだまだ耳慣れないサウンド&ビートがてんこ盛りの、今から振り返ると、時代の最先端を走っていた凄いバンドだった訳です。
しかし、まだまだ、日本のロックの評価が低かった時代です。その存在はマイナーでした。僕がこの久保田麻琴と夕焼け楽団を知ったのは、1975年の夏。映画研究部の後輩のYが部室に持ち込んだのが、久保田麻琴と夕焼け楽団との最初の出会いでした。
その持ち込まれたアルバムは、ズバリこの『サンセット・ギャング』。ゴジラのジャケットを見るなり、これはパチモンか、と思いましたが、この盤から出てくる音を聴いて、思わず「しばし沈黙」。先輩達共々、度肝を抜かれました。こんな「レイドバック」なロックが日本にあったとは、日本人が演奏しているとは、驚きでした。はっきり言って、クラプトンより上手くて良い(笑)。
今の耳にも十分に響く、素晴らしくレイドバックな日本ロックです。「たそがれのメイク・ラヴ・カンパニー」「小舟の旅」など名曲がズラリ、レイドバックした「ルイジアナ・ママ」や「バン・バン・バン」などのカバー曲も実に良い雰囲気です。
しかし、こういう70年代の日本ロックの名盤が、CDでリイシューされる、現代の日本の音楽シーンは素晴らしいですね。日本のロックが劣等感を持っていた時代、そんなことはお構いなしに、こんな素晴らしいロック盤がリリースされていた訳です。70年代の日本のロックを再評価すべし、ですね。
大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
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