フリー・ジャズな「音楽絵巻」
フリー・ジャズは「取っつき難い」。ジャズ者初心者の方には、はっきり言って重荷だろう。無手勝流に、好き勝手に吹きまくり、弾きまくるフリー・ジャズ。基本的に不協和音の塊である。しかも、リズム&ビートも柔軟かつ自由度が高い。特に、クラシック中心の音楽教育を受けてきた方には、はっきり言って苦痛だろう。
しかし、ジャズを長年聴き込んでいくと、この「取っつき難い」フリー・ジャズが、憑きものが取れたように、ある日突然、聴くことが苦痛でなくなる瞬間がやってくる。僕は、ジャズを聴き始めて、20年位経った頃だった。ある日、突然、不協和音が気にならなくなり、好き勝手に吹きまくり、弾きまくるフレーズに耳が慣れ親しむ様になった。
そして、フリー・ジャズを聴くことが苦痛で無くなると、フリー・ジャズって、よくよく聴くと、幾つかの確かな「決めごと」の上に成り立っていることに気が付く。決めごとだらけ、酷いときには、ほぼフリーキーな旋律を譜面に落としているケースもあれば、必要最低限の決めごとだけで、あとは好き勝手にどうぞ、というケースもあるらしい。
例えば、このCecil Taylor Unitの『Akisakila - Cecil Taylor Unit In Japan』(写真左)などは、フリー・ジャズとは言っても、巧妙に、フリーな演奏に関する幾何学的な「決めごと」が集まった、壮大でフリー・ジャズな「音楽絵巻」である。フリーに演奏しているんだが、やはりそこは「音楽」として、フレーズの構成としてのアプローチを感じとれるところが、セシル・テイラーのフリー・ジャズの個性。
1973年5月22日、東京の厚生年金大ホールでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Cecil Taylor (p), Andrew Cyrille (ds), Jimmy Lyons (as)。このアルバムのジャケットは「煮えたぎっている水銀」。まさに、セシル・テイラーのフリー・ジャズのイメージ。良いデザインだ。
この『Akisakila』というアルバム、1曲が40分から41分程度と、なにしか「長い」。普通に、無手勝流に好き勝手に吹きまくり、弾きまくっていたら、さすがに40分は続かない。まず、好き勝手に吹いていたり、弾いていたら、絶対にマンネリする。そんなに人間、様々なパターンのフレーズが出る訳が無い。
フリー・ジャズ的な演奏を40分も繰り広げて、しかも聴き手を飽きさせずに、しっかりと終わりまで聴かせ続けるのだ。よく聴いていると、そのフリーな演奏に関する幾何学的な「決めごと」に気が付き始める。そして、その「決めごと」になんとなく気が付き始める頃には、フリー・ジャズを聴くことが苦痛でなくなっているのだ。
ジャズ者にとっては、難度の高いフリー・ジャズなアルバムではある。しかし、ジャズのスタイルの拡がり、ジャズの奏法のバリエーションを理解するには、フリー・ジャズは避けて通れません。クラシックの世界でバルトークを経験して、それが「音楽」として十分に理解できる感性があれば、フリー・ジャズは問題無く聴くことが出来る資質があると思います。
ジャズを聴き始めて、10年程度経ったら、フリー・ジャズにチャレンジしていただきたいですね。でも、無理はいけません。ジャズを聴き始めて直ぐにフリー・ジャズにチャレンジするのは危険です。頃合いを見て、徐々にフリー・ジャズに挑戦していって下さいね(笑)。
大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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こんにちは。
何時も楽しく拝見させて頂いて居ます。
Jazzを聴き始めて51年になりますが、フリージャズは苦手です…と云うか聴き始めで「あっ…駄目…」と云う状態になって仕舞います。
聴いている方の姿を拝見して、何を聴いているのかな…と何時も訝しく思って仕舞います。
まだ、初心者なんでしょうね(笑)
投稿: musselwhite | 2013年8月23日 (金曜日) 11時27分