胸のすくようなハード・バップ
胸のすくような「ハード・バップ」、ハード・バップの究極形のひとつ「モード・ジャズ」の優れた内容の一枚。このアルバムを初めて聴いた時、思わず唸った。そして、そう感じた。
このアルバムを初めて聴いた時、聴き進めるにつけ、あれっ、と思う。その優れた内容ゆえ、リリース当時は、このアルバムの演奏は、米国東海岸の優秀どころのセッションだと決めつけて聴いていた。
が、聴き進めるうちに、そこはかとない繊細感、キッチリと折り目正しいユニゾン&ハーモニー、細部にまで行き届いたテンション、絶妙な間の取り方、どれもが何だか日本人の演奏みたいやなあ、と思い、なんと素晴らしい米国東海岸の優秀どころのセッションなんだ、と思ってパーソネルを見たら、なんと日本人のセッションでした(笑)。嬉しい驚きでした。
そのアルバムとは、森山威男『Hush-A-Bye』(写真左)。1978年2月27日の録音。ちなみにパーソネルは、小田切一己(ts, ss), 板橋文夫(p), 望月英明(b), 森山威男(ds), 向井滋春(tb)。当時の森山威男のレギュラー・グループに向井滋春が客演したクインテット構成。
実に内容のある素晴らしいモーダルな演奏だと思います。実に硬派で、実に硬質なハード・バップがアルバム全編で繰り広げられます。ドラマーの森山威男がリーダーで、このドラマーのリーダーの下、非常に優れたグループ・サウンドが展開されます。森山威男のリーダーシップの成せる技でしょう。
板橋文夫のピアノが個性的で良い。鬼気迫るテンションで、モーダルなフレーズとモーダルなビートを弾きまくる。ハービー・ハンコックのモーダルなピアノに、日本人の感性を注入したようなピアノ。素晴らしいテクニックと凄まじいテンションで、弾きまくる板橋文夫。このアルバムでの聴きどころのひとつです。
向井滋春のトロンボーンも良い。純ジャズな向井滋春のトロンボーンは素晴らしい。テクニック、展開、歌心、いずれも申し分無く、ブリブリブリとトロンボーン独特の「煌めく様なブラスの響き」に感じ入る。単純に上手いなあ、と感心する。そして、日本人として、なんだか胸を張りたくなる。
サックスの小田切一己も良い。しかし、この小田切一己、31歳の若さで亡くなってしまった。このアルバムは、29歳の時の録音。このアルバムの録音の2年後、小田切一己は鬼籍に入ってしまった。実に残念である。
勿論、ドラムの森山威男、ベースの望月英明も良好です。というか、素晴らしいです。二人のリズム&ビートのドライブ感は、日本人ジャズの最高峰のひとつでしょう。米国や欧州のジャズには無い、細部にまで行き届いたテンション、絶妙な間の取り方が個性です。特に、米国ジャズでは、このリズム&ビートは出せない。
ジャケット・デザインも懐かしい。この飛行機の翼のアップをあしらったデザインは、発売当時から大のお気に入り。ちょっとジャズらしからぬデザインではあるが、このアルバムの演奏内容にフィットしてはいますね。このジャケットは、LPサイズで持っていたい、とても見栄えのするデザインです。ジャケ買いOKですね(笑)。
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