異業種交流なジャズ・ボーカル
思い起こせば、2004年8月のことになる。今は廃刊となったスイングジャーナル7月号のディスク・レビューを見てビックリ。あのSPEEDの「hiro」が、ジャズ・ボーカルのアルバムを出したとあるではないか。いや〜、当時、本当にビックリしたなあ。
SPEEDと言えば、デビュー当時、小学生の4人の女の子ボーカル集団。ツイン・ボーカル+ツイン・バック+ダイナミックな踊り+年齢にしてはきわどい歌詞、であっという間に人気者となった、あのSPEEDである。
その SPEEDの背の高い方のボーカルが「hiro」。僕の場合、SPEEDが全国的に売れる前、日テレ系の歌番組「夜もひっぱれ」でデビューした時から見ているので、「hiro」よりは「ヒロちゃん」の方が呼びやすいので、以降は「ヒロちゃん」と呼ばせていただく。
さて、前置きが長くなったが、このヒロちゃんのジャズ・ボーカルなかなかいける。 そのアルバムのタイトルは『Coco d'Or(ココドール)』(写真左)。
歌謡曲系Jポップのボーカルが、テクニックが必要で歌いこなしが難しいジャズ・ボーカルができるんかなあ、と懸念してしまうのだが、それは間違い。当時より乱発気味の、日本女性ジャズ・ボーカリストの中に入れても、ちょっと抜きん出ている存在なのだ。
このアルバムのプロデューサー陣が凄い。凄いプロデューサー達が寄ってたかって、ヒロちゃんにジャズを、ってな感じ。鈴木明男・島健・須永辰緒・福富幸宏・奥原貢・中塚武・Suitcase Air Line(スーツケース・エアーライン)・Fried Pride(フライド・プライド)・COLD FEET(コールドフィート)とそうそうたるメンバー。これだけでも、このアルバムは成功を約束されたようなものだ。
いくらプロデューサーが優秀でも、歌い手が悪ければどうしようもないのだが、ヒロちゃんの場合、これが秀逸。最近デビューしてくる日本女性のジャズ・ボーカルって、大多数が昔のジャズ・ボーカルのイメージを引きずっていて、お色気があって、粘り着くようで少しだけくどい、そんな感じのボーカルばかりで、どうやって聴いてみても、今の時代にはちょっと違和感のある雰囲気が多い。
が、さすがは当時20才だったヒロちゃん、 Jポップの歌い手だけあって、「粘り着く」部分と「くどい」部分が良い意味であっさりしていて、お色気の部分は明るく健康的。しかも、ちょっとほのかにコケティッシュな雰囲気を漂わせている。健康的で聴きやすいが、ジャズ・ボーカルの基本はしっかりと押さえているボーカルである。
今月は8月。ボサノバ・ジャズの季節なので、1曲ご紹介。8曲目にかのボサノバの名曲「The Girl From Ipanema」が入っていて、これがなかなか味わいのある「The Girl From Ipanema」なのだ。
どこに味わいがあるかというと、ヒロちゃんのボーカルの特性である「ハリのある明るいパンチの効いた」ボーカルで「The Girl From Ipanema」を歌うと、もともとは物憂げでちょっとエロティックな「The Girl From Ipanema」が、健康的で明るい曲に変身するのだ。
僕はこっちのほうがいいなあ。例えて言えば、常夏のハワイやグレート・バリアリーフでの「The Girl From Ipanema」って感じが実に良い。
他の曲も、選曲もバリエーションに富んでいて楽しいし、ヒロちゃんのボーカルもなかなかのもの。若手Jポップのボーカリストがジャズに挑戦し、成果を出したという事実については、ほんとにビックリ。 これから、この様な異業種交流(?)がどんどん出てくれば楽しいですよね。
それから、アルバム・ジャケットはなんとあの水森亜土(ああ懐かしい・・・)のイラストです。
大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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