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2013年8月の記事

2013年8月31日 (土曜日)

ロッド者にとっては堪らない

68歳にして、全英ヒットチャート1位に輝く。15年ぶりに作詞作曲を自ら手がけたオリジナル・アルバム。原点回帰と言うか、1970年代の彼の若かりし頃のトレンドに立ち返った様な曲作り、音世界。初めて聴いた時、感動した。1970年代の音世界を思い出した。

そのロック・アルバムとは、Rod Stewart『Time』(写真左)。邦題は『タイム 〜 時の旅人 〜 』。2013年5月のリリース。初めて聴いた時、ここまで、1970年代のテイストを再現してくるとは、思ってもみなかった。嬉しい不意打ちである。聴き進めるにつれ、目頭が熱くなる想いである。

このところのロッドは、ボーカリストとしての活動に徹していた。ジャズ・スタンダードや、ロック・スタンダード、ソウル・スタンダードのカバーアルバムを続けざまにリリース。しかも、これがなかなかの内容で、セールス的にも成功を収めている。

まあ、ロック・ファンの評価基準はオリジナル至上主義なので、このロッドのカバーアルバムについては、辛口の評価が多くを占める。音楽ビジネスに魂を売った男とも呼ばれた。う〜ん、ちょっと極端やなあ(苦笑)。もともと、ロッドの本質はボーカリストやからなあ。ボーカリストとしては、スタンダード曲のカバーをしたくなるのは必然と思えるのだが、世間の風は厳しいなあ。

さて、この『Time』というアルバム、完全に、ロッドの原点回帰なアルバムである。アルバム冒頭のシングル・カットもされた「She Makes Me Happy」なんて、こりゃあ反則でしょう(笑)。
 

Rod_stewart_time

 
前奏のギターからして、アイリッシュ、もしくはケルト風な音世界で、1970年代前半のフォーク・ロック調。そう言えば、米国に渡る前の、マーキュリー時代のロッドのソロ作は、どれもが要所要所で、アイリッシュ、もしくはケルト風な音世界で決めており、これが、実に心の吟線に響く。でも、ここまで原点回帰するとは思わんかった。冒頭の「She Makes Me Happy」だけで、もう涙涙である。

そして、なんとまあ、アルバム全編において、アイリッシュ、もしくはケルト風、加えて、スコットランド風な音世界が散りばめられており、フォーク・ロックから、ブリティッシュ・ロックンロール風の、いわば「フェイセズ」時代の音世界に近い、1970年代前半のロッドの音世界に非常に近い雰囲気。これには「参った」。

ちなみに、アイリッシュ、もしくはケルト風な音世界、若しくはスコットランド風な音世界は、僕は大のお気に入りの一つで、このブリティッシュな音世界は、聴いていて震えが来るくらいだ。そして、その大好きな音世界が、このRod Stewart『Time』というアルバムの中に満載なのだ。もう嬉しくて嬉しくて(笑)。

21世紀に入って、2013年。ここに来て、ロッド・スチュワートのアルバムの中で、長年のヘビロテになるであろう、お気に入りな内容のアルバムに出会えるとは。長生きはしてみるものである(笑)。

ロッドも68歳。年齢を重ねたことで、このアルバムでは、彼の歌唱も肩の力が良い感じで抜けており、どの曲においても、彼の歌唱は抜群の内容である。ケルト風、アイリッシュ風、スコットランド風など、ルーツ・ミュージック・テイストのロックあり、はたまた、ロッドお得意の思いっきり甘いバラード風の曲もあり、往年のロッドの集大成という雰囲気の内容が、ロッド者にとっては堪らない。

 
 

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2013年8月30日 (金曜日)

メルドーを感じるに最適な盤

今日、ジャズCDのデータベースを最新にした。このところ、精神的に余裕が無かったので、データベースの更新が滞ってしまった。今日は約5時間を使って、やっとのことで、ジャズCDのデータベースが最新になった。満足満足。

ジャズのデータベースを更新していて、つくづく思ったのだが、ジャズのスタイル、トレンドの変遷って面白い。それぞれの時代時代によって、ジャズの演奏のスタイルには流行り廃りが確実にある。

ここ5年来のジャズ・ピアノのトレンドは、確実に、この人のスタイルが中心になっているように思える。この人とは「Brad Mehldau」。1970年8月生まれ。今年で43歳。ジャズ界での中核をなすピアニストの一人である。この人のピアノは、確実に今のジャズ・ピアノのトレンドを担っていると思う。

この人のピアノは、意外と評論家には受けが悪い。ブラッド・メルドーのピアノの個性は、それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性のショーケース的なところ。この「ショーケース的なところ」が「あかん」のやろなあ。でも、ジャズが出現して、最早100年が経とうとしているこの時代、たった一つの個性で勝負できるほど、ジャズの世界は甘くないし、個性のネタは尽きている。

まあ、評論家っていうのは、自分でピアノを弾く訳では無いので、結構、勝手で適当なことを言うのは仕方が無い。少しでもピアノが弾ければ、個性を発揮する為のテクニックがどれだけ必要なのかが良く判って、ジャズ・ピアニストは、確実にリスペクトの対象になる。そういう意味で、ジャズを評論するには、やはり少しでも楽器が弾けた方が良いし、少なくとも、ミュージシャンに対して、リスペクトの念は欠かさないことが大切なんだろう。
 

Ode

 
しかし、そんな評論家受けのちょっと悪いことなど、お構い無しに、現在の若手〜中堅どころのジャズ・ピアノは、彼のスタイルに追従し、彼のスタイルに端を発したバリエーションの展開が主流だと感じている。ブラッド・メルドーは、言わば、ミュージシャンズ・ミュージシャンなんだ、と僕は感じている。

ブラッド・メルドーの非凡なところは、その「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」が単なる物真似になっていないところ。そして、個性のごった煮的雰囲気なんだが、演奏のトーンがバラバラにならずに「一貫性」を保っている。「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」を自らのものにして、自らの個性を反映し、一貫性を保った、独特の弾き回しになっている。

そんなメルドーの現時点での最近作の一枚が『Ode』(写真左)。このリーダー作は、メルドーの個性を感じるのに最適なアルバムだと思っている。トリオの最近作とは言っても、収録された全11曲中8曲は2008年、3曲は2011年と録音時期に幅があり、この7年間におけるトリオ活動の集大成の様な内容になっている。

ちなみにパーソネルは、Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)。鉄壁のピアノ・トリオである。非常に柔軟度の高い、それでいて、リズム&ビートは、メインストリーム・ジャズのど真ん中を行く、明らかに正統なもの。奇をてらったところは全く無い。この正攻法なインプロビゼーションが、このトリオの素晴らしいところ。

今までも、これからも、ブラッド・メルドーのピアノからは目が離せない、というか、耳が離せない。確実に現代ジャズ・ピアノのトレンドを形成し、錬成していく様を確認することは、ジャズ者にとって、新しいアルバムがリリースされる毎の楽しみである。 

 
 

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2013年8月29日 (木曜日)

胸のすくようなハード・バップ

胸のすくような「ハード・バップ」、ハード・バップの究極形のひとつ「モード・ジャズ」の優れた内容の一枚。このアルバムを初めて聴いた時、思わず唸った。そして、そう感じた。

このアルバムを初めて聴いた時、聴き進めるにつけ、あれっ、と思う。その優れた内容ゆえ、リリース当時は、このアルバムの演奏は、米国東海岸の優秀どころのセッションだと決めつけて聴いていた。

が、聴き進めるうちに、そこはかとない繊細感、キッチリと折り目正しいユニゾン&ハーモニー、細部にまで行き届いたテンション、絶妙な間の取り方、どれもが何だか日本人の演奏みたいやなあ、と思い、なんと素晴らしい米国東海岸の優秀どころのセッションなんだ、と思ってパーソネルを見たら、なんと日本人のセッションでした(笑)。嬉しい驚きでした。

そのアルバムとは、森山威男『hush-a-bye』(写真左)。1978年2月27日の録音。ちなみにパーソネルは、小田切一己(ts, ss), 板橋文夫(p), 望月英明(b), 森山威男(ds), 向井滋春(tb)。当時の森山威男のレギュラー・グループに向井滋春が客演したクインテット構成。

実に内容のある素晴らしいモーダルな演奏だと思います。実に硬派で、実に硬質なハード・バップがアルバム全編で繰り広げられます。ドラマーの森山威男がリーダーで、このドラマーのリーダーの下、非常に優れたグループ・サウンドが展開されます。森山威男のリーダーシップの成せる技でしょう。
 

Hash_a_bye_2  

 
板橋文夫のピアノが個性的で良い。鬼気迫るテンションで、モーダルなフレーズとモーダルなビートを弾きまくる。ハービー・ハンコックのモーダルなピアノに、日本人の感性を注入したようなピアノ。素晴らしいテクニックと凄まじいテンションで、弾きまくる板橋文夫。このアルバムでの聴きどころのひとつです。

向井滋春のトロンボーンも良い。純ジャズな向井滋春のトロンボーンは素晴らしい。テクニック、展開、歌心、いずれも申し分無く、ブリブリブリとトロンボーン独特の「煌めく様なブラスの響き」に感じ入る。単純に上手いなあ、と感心する。そして、日本人として、なんだか胸を張りたくなる。

サックスの小田切一己も良い。しかし、この小田切一己、31歳の若さで亡くなってしまった。このアルバムは、29歳の時の録音。このアルバムの録音の2年後、小田切一己は鬼籍に入ってしまった。実に残念である。

勿論、ドラムの森山威男、ベースの望月英明も良好です。というか、素晴らしいです。二人のリズム&ビートのドライブ感は、日本人ジャズの最高峰のひとつでしょう。米国や欧州のジャズには無い、細部にまで行き届いたテンション、絶妙な間の取り方が個性です。特に、米国ジャズでは、このリズム&ビートは出せない。

ジャケット・デザインも懐かしい。この飛行機の翼のアップをあしらったデザインは、発売当時から大のお気に入り。ちょっとジャズらしからぬデザインではあるが、このアルバムの演奏内容にフィットしてはいますね。このジャケットは、LPサイズで持っていたい、とても見栄えのするデザインです。ジャケ買いOKですね(笑)。

 
 

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2013年8月28日 (水曜日)

Coco d'Or in SUMMER

楽しいアルバムである。第1作の『Coco d'Or』も楽しいアルバムだったが、 セカンド盤『Coco d'Or 2』(写真)は「Coco d'Or in SUMMER」って雰囲気で、ボサノバ、ラテン、レゲエ、サンバ などをCoco d'Or風に取り入れた、実に夏らしいアルバムに仕上がっている。2006年7月のリリース。

全体的な雰囲気は「清々しい、爽やか、明るい、楽しい、そして、ちょっと大人っぽくて、ジャジー」な雰囲気で、ヒロちゃんの声の雰囲気がピッタリと合った感じが心地良い。確かに夏らしいアルバムだが、 ヒロちゃんのボーカルがスッキリしたノビのある、キュートなボーカルなので(ベタ褒め過ぎですかね・笑)、これは季節を問わない感じ。

元気が欲しい時、特に朝の仕事始めのオープニングになんか良いねえ。バーチャル音楽喫茶『松和』が実在するなら、このアルバムを暫くオープニングに使ってるだろうなあ。えっ、ヒロちゃんって誰よ、って。そうそう、ヒロちゃんって、あのSPEEDのボーカルのHiroのこと。

それぞれの曲のアレンジは、前作同様、生バンド・テイストとクラブ・テイストのアレンジを絶妙に織り交ぜた内容に仕上がっており、幅広い世代に対応している。

ジャズ・スタンダードな「What a wonderful world」、R&Bの名曲「Killing Me Softlly With His Song」からレッチリの「By the way」まで、色とりどりの楽曲を鈴木明男バンド、フライドプライド、COLDFEET、福富幸宏、FPM、Soul Bossa Trioなど最高に豪華なアーティストとのコラボレーションによって、スタイリッシュでテンポのいいサウンドにアレンジ。

特に冒頭1曲目のアップテンポの「What a wonderful world(この素晴らしき世界)」、この曲、サッチモ(ルイ・アームストロングのニックネーム)の十八番なんだが、この曲をヒロちゃんがどういう風に唄いこなすのか、聴く前は少し心配だったのだが、嬉しくも杞憂に終わった。これ、アレンジの勝利やね。このアレンジは、確かにヒロちゃんのボーカルが、しっかりと活きるアレンジ。スピード感もあり、コンテンポラリーな雰囲気がたまらない。良い曲というのは、どんなアレンジにも映えるというが、この曲が良い例。
 

Coco_dor_2

 
2曲目「La-La Means I Love You(ララは愛の言葉)」を、こんなオーソドックスなアレンジで、ヒロちゃんのボーカルで唄われたら、もう頬は緩みっぱなし。この曲を選んだのは誰だろう。いや~、粋な曲を選んだものだ。広がりのある、明るい雰囲気のアレンジは、夏真っ只中より、この晩夏の季節にピッタリかも。

3曲目は、スチールパンの音も楽しい、もう雰囲気はジャマイカ。この「Ay! Cosita Linda」はアレンジが秀逸で、従来のジャマイカの雰囲気コテコテではない、スカっと爽やかな、ちょっとオシャレな感じがとても良い。これもアレンジの勝利やね。これだけ手垢のついたジャマイカ風の音楽をこれだけオシャレに聴かせてくれるなんて、思わず感心することしきり。

そして、絶品は5曲目の「Time After Time」。このスローバラードを、ヒロちゃんは、実にシットリと、大人っぽく唄ってみせる。ちょっとキュートで、ちょっとコケティッシュなボーカルは、このアルバム中でも秀逸なものでしょう。アレンジも、バイオリンと生ギターで、実にジャジーな雰囲気溢れるアレンジなっており、素晴らしいの一言。

7曲目のカーペンターズの歌唱で有名な「(They Long To Be) Close To You(遙かなる影)」や、10曲目のロバータ・フラックの歌唱で有名な「Killing Me Softly With His Song(やさしく歌って)」は、若かりし頃、ラジオの深夜放送などで、リアルタイムに聴いた僕にとっては懐かしいの一言なんだが、これがどうして、なかなか新しい感覚のコンテンポラリー・ジャズ的なアレンジが施されていて、原曲の単なるカバーに陥らず、オリジナリティーのある演奏になっているのは立派。

SPEEDを経て、ソロとしても活躍中のヒロちゃん。そんな彼女が15歳のときに初めて触れて、心を弾ませてしまった音楽、それがジャズだったらしいのだが、全編に渡って、そんな彼女の「ジャズ大好き」な感じのボーカルは、前作にも増して良い雰囲気を出している。確実に、前作より上手くなっている。

第1作の『Coco d'Or』が出た後、何かと忙しい彼女に2作目を出せる余裕があるだろうか、と不安だったのだが、こうやって、ヒロちゃんは2作目を出した。立派である。2作とも「Coco d'Or」的な個性をしっかりと持ったアルバムに仕上がっているのだから、いやはや、大したもんである。

 
 

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2013年8月27日 (火曜日)

異業種交流なジャズ・ボーカル

思い起こせば、2004年8月のことになる。今は廃刊となったスイングジャーナル7月号のディスク・レビューを見てビックリ。あのSPEEDの「hiro」が、ジャズ・ボーカルのアルバムを出したとあるではないか。いや〜、当時、本当にビックリしたなあ。

SPEEDと言えば、デビュー当時、小学生の4人の女の子ボーカル集団。ツイン・ボーカル+ツイン・バック+ダイナミックな踊り+年齢にしてはきわどい歌詞、であっという間に人気者となった、あのSPEEDである。

その SPEEDの背の高い方のボーカルが「hiro」。僕の場合、SPEEDが全国的に売れる前、日テレ系の歌番組「夜もひっぱれ」でデビューした時から見ているので、「hiro」よりは「ヒロちゃん」の方が呼びやすいので、以降は「ヒロちゃん」と呼ばせていただく。

さて、前置きが長くなったが、このヒロちゃんのジャズ・ボーカルなかなかいける。 そのアルバムのタイトルは『Coco d'Or(ココドール)』(写真左)。

歌謡曲系Jポップのボーカルが、テクニックが必要で歌いこなしが難しいジャズ・ボーカルができるんかなあ、と懸念してしまうのだが、それは間違い。当時より乱発気味の、日本女性ジャズ・ボーカリストの中に入れても、ちょっと抜きん出ている存在なのだ。

このアルバムのプロデューサー陣が凄い。凄いプロデューサー達が寄ってたかって、ヒロちゃんにジャズを、ってな感じ。鈴木明男・島健・須永辰緒・福富幸宏・奥原貢・中塚武・Suitcase Air Line(スーツケース・エアーライン)・Fried Pride(フライド・プライド)・COLD FEET(コールドフィート)とそうそうたるメンバー。これだけでも、このアルバムは成功を約束されたようなものだ。
 

Coco_dor_2

 
いくらプロデューサーが優秀でも、歌い手が悪ければどうしようもないのだが、ヒロちゃんの場合、これが秀逸。最近デビューしてくる日本女性のジャズ・ボーカルって、大多数が昔のジャズ・ボーカルのイメージを引きずっていて、お色気があって、粘り着くようで少しだけくどい、そんな感じのボーカルばかりで、どうやって聴いてみても、今の時代にはちょっと違和感のある雰囲気が多い。

が、さすがは当時20才だったヒロちゃん、 Jポップの歌い手だけあって、「粘り着く」部分と「くどい」部分が良い意味であっさりしていて、お色気の部分は明るく健康的。しかも、ちょっとほのかにコケティッシュな雰囲気を漂わせている。健康的で聴きやすいが、ジャズ・ボーカルの基本はしっかりと押さえているボーカルである。

今月は8月。ボサノバ・ジャズの季節なので、1曲ご紹介。8曲目にかのボサノバの名曲「The Girl From Ipanema」が入っていて、これがなかなか味わいのある「The Girl From Ipanema」なのだ。

どこに味わいがあるかというと、ヒロちゃんのボーカルの特性である「ハリのある明るいパンチの効いた」ボーカルで「The Girl From Ipanema」を歌うと、もともとは物憂げでちょっとエロティックな「The Girl From Ipanema」が、健康的で明るい曲に変身するのだ。

僕はこっちのほうがいいなあ。例えて言えば、常夏のハワイやグレート・バリアリーフでの「The Girl From Ipanema」って感じが実に良い。

他の曲も、選曲もバリエーションに富んでいて楽しいし、ヒロちゃんのボーカルもなかなかのもの。若手Jポップのボーカリストがジャズに挑戦し、成果を出したという事実については、ほんとにビックリ。 これから、この様な異業種交流(?)がどんどん出てくれば楽しいですよね。

それから、アルバム・ジャケットはなんとあの水森亜土(ああ懐かしい・・・)のイラストです。

 
 

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2013年8月25日 (日曜日)

太田裕美の「夏のアルバム」

今を去ること30数年前、僕の大学時代、僕は「太田裕美」のファンだった。今でもしっかりとファンである。彼女の特徴あるボーカルが大好きで、実は彼女のアルバムは、ほとんど全て所有している。

デビュー初期の頃の歌謡曲時代、「雨だれ」「たんぽぽ」「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」の時代も大好きだ。特に、「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」は大好きで、今でも同世代で行くカラオケでは、思わず歌ったりする(笑)。

ニューミュージック時代の太田裕美のオリジナル・アルバムは、僕にとっては「絶品揃い」である。『12ページの詩集』あたりからのオリジナル・アルバムはいずれも愛聴盤である。ニューミュージック系の歌世界と太田裕美のボーカルが絶妙にマッチしていて、僕は大好きだ。

シングルのみの楽曲も大好きだ。「しあわせ未満」「青空の翳り」「南風 - SOUTH WIND -」「恋のハーフムーン」などなど、絶品揃えである。特に、ニューミュージック系からシティ・ポップ系のシングルは、歌詞・作曲・アレンジ含めて実に出来が良い。

そんな太田裕美のアルバムの中で、夏のアルバムとして、愛聴しているアルバムがある。1979年6月リリースの10thアルバム『Feelin' Summer』(写真左)。このアルバム、太田裕美のアルバムの中でも、ちょっと異色のアルバムで、ヒット曲をバンドルしていない、全て、オリジナル曲で揃えている。同時期発売のシングル「青空の翳り」「シングルガール」も収録していない。

タイトル通り夏のイメージ満載のアルバムである。収録された楽曲の雰囲気も、歌謡曲な雰囲気が完全に払拭されて、ニューミュージック系からシティ・ポップ系作品で固められており、これが実にマニアの心をくすぐる内容で、「太田裕美とそのスタッフってスゲーなー」と、当時、思いっきり感心しました。
 

Hiromi_ohta_feelin_summer

 
マニア的に語ると、ソロ・デビュー前の浜田金吾の楽曲を積極的に起用、アレンジには、当時、新進気鋭の戸塚修を起用していているところなどが実にニクイ。当時、流行のニューミュージックの先を行く、シティ・ポップの雰囲気を先取りしている内容が実にニクイ。

同時にボーカルのスタイルも少し変えていて、歌謡曲・アイドル路線の延長線上の「舌足らずの甘ったるい歌声」を押さえつつ、太田裕美本来の、力強くて素直で伸びやかな高音が素敵なボーカルが前面に押し出されています。これには、ビックリしました。でも、このアルバム以降の太田裕美本来のボーカルはとても個性的で良い感じです。 

ミディアム・テンポで、眩しい日差しと気怠い昼下がりの日陰感のイメージがしっかりと詰まっていて、夏のシティ・ポップなアルバムとして、かなり上出来な内容です。ただ、同時期発売のシングル「青空の翳り」(写真右)、「シングルガール」など、アルバムの核となる「メリハリの強い曲」が無い分、インパクトにはちょっと乏しい内容にはなっています。

でも、それが良いんですね。アルバム全体のトーンが整っていて、トータルアルバムとして実に良い雰囲気です。地味そうで、実は聴き込んでいくと意外と聴き甲斐のアルバムで、長年聴き続けることができる「長年に渡るヘビロテ盤」になっています。今の耳で聴くと、70年代後半のシティ・ポップ系の佳作として、とても良い内容に改めて感心します。

ちなみにこのアルバム・ジャケットの裕美さんの写真、すごく可愛い。リリース当時から、僕のお気に入りナンバーワンのジャケットで、これは絶対にLPサイズで持っていたいですね。大学当時、ジャケットを部屋に飾っていたことを思い出しました(笑)。

 
 

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2013年8月24日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・24

蒸し暑い日が続きます。ちょっとマニアックなピアノ・トリオに「涼」を求める。こだわりジャズレーベル「澤野工房」が推薦の一枚。幻の名盤としてコアなジャズファンたちの間で垂涎の的だった一枚。

Vladimir Shafranov『White Nigths』(写真左)。1990年の録音。ちなみにパーソネルは、Vladimir Shafranov (p), George Mraz (b), Al Foster (ds)。ベースがジョージ・ムラーツ、ドラムスがアル・フォスターという組み合わせも良し。

とにかく、ジャズ・ピアノ・トリオの理想的な姿がここにもあったりする。日本ではマイナーな存在、恐らく、一般のジャズファンの方々は全く知らないのではないか、と思われるウラジミール・シャフラノフ。ロシア生まれでフィンランド在住の人気ピアニスト。

ウラジミール・シャフラノフ・トリオのジャズは、実に味わいのある、とりわけこのアルバムをお酒にたとえるならば、まさに微妙なバランスの上に成り立った美酒、レアもののフルボディなワインっといった感じ。

そして、この『White Nigths』、幻の名盤としてコアなジャズファンたちの間で垂涎の的だった。澤野工房によって復刻リリースされ、ついには大手CDショップで見事ジャズ部門売れ行きNo.1に輝いた、との伝説もあるこのアルバム、これはもう澤野工房を象徴する1枚だ。 
 
White_nights
 
スタンダードもほどよく(センスのいいセレクトで)入っていて、メロディアス、かつ、流れすぎず格調高く、それでいて、とってもスインギー。北欧らしいクリスタルな響きが印象的。端正で太い、弾力のあるリズム・セクション。

通だろうが、ビギナーだろうが、すぐに、するっと楽しめるところが、このアルバムの優れたところ。聴いて飽きないアルバム、つまり名盤の基本。
 
確かに、このアルバム、実はどこから聴いても聴けるのだ。途中で止めちゃってもいいし、好きな曲だけチョイスして聴いても良いし、CD時代の代表のようなアルバムであるともいえる。

言い換えると、一曲一曲の完成度が高いのだ。逆に、全14曲を一気に聴き通すと、胃にもたれてしまうような、ちょっと「コッテリ」したジャズ・ピアノ・トリオのアルバムです。体調万全の時では無いと、通して聴く事は厳禁です(笑)。

「良し、今日はジャズを聴くぞ」と気合いを入れて、構えて聴くようなジャズではない、気楽に聴けて、気楽に感動できる。こんなジャズも必要です。

 
 

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2013年8月23日 (金曜日)

思わずホッとするアルバムです。

こういうアルバムを耳にすると、思わずホッとする。音は古い。1950年代の録音というのが直ぐ判る。でも、その音の古さは心地良い音の古さ。我がバーチャル音楽喫茶『松和』のまずまずのステレオセットで、そこそこのボリュームで聴き進めると、なんだか心がホッとする。

演奏の展開は、暫く聴けば直ぐ判る。バリバリのハードバップ。アレンジの具合を聴けば、このハードバップは、米国西海岸のハードバップということが良く判る。録音のまずまずの古さとハードバップのアレンジの具合を聴いて、このアルバムの録音時期は1950年代半ばということを感じる。

そのアルバムとは、Bethlehemレーベルからリリースされた『Red Mitchell (Bethlehem)』(写真左)。1955年の録音になる。このアルバムは2つのセッションから構成されています。

ひとつが、Red Mitchell (b), Hampton Hawes (p), Chuck Thompson (ds),Joe Maini (as,ts), Conte Candoli (tp) のクインテット編成(A面B面の奇数曲)。もうひとつが、Red Mitchell (b), Hampton Hawes (p), Chuck Thompson (ds) のトリオ編成(A面B面の偶数曲)。

2つのセッションから成るアルバムではあるが、演奏内容は、全て、徹頭徹尾、ハードバップ。それも、米国西海岸ジャズのハードバップ。アレンジがお洒落で、爽快感が素敵な米国西海岸ハードバップ。良い雰囲気で、聴き進める度に「惚れ惚れ」します。
 

Red_mitchell_bethlehem_2

 
レッド・ミッチェルは、米国西海岸ジャズで活躍したベーシストです。レッド・ミッチェルの「Red」は、彼の赤毛が由来。堅実でテクニック溢れる伸びやかなウォーキング・ベースが最大の特徴。ピッチもバッチリ合っているし、テクニックも確か。僕は、レッド/ミッチェルのベースが大好きだ。収録された楽曲は以下の通り。

A
1.Jam For Your Bread
2.Where or When
3.Section Blues
4.Duff
5.Ornithology

B
1.Will You Still be Mine
2.I'll Never be the Same
3.East Coast Outpost
4.You Go to My Head

クインテットの演奏とトリオの演奏が交互に来る様に配置された、なかなか気の利いたプロデュース。このアルバムはさすが、ベーシストのリーダー作だけあって、各曲にベースのソロがあり、どの曲もベースの音がちょっと大きく聴こえる。レッド・ミッチェルの端正なベースラインが見事。

アメリカン・ドリームの裏側にある、構造的格差社会の米国に失望したミッチェルは、第二の人生の舞台に、平等社会スエーデンを躊躇なく選んだレッド・ミッチェル。このアルバムには、そんな誠実な彼のウォーキング・ベースが担当できる。ハードバップのベースとは「かくあるべし」な、レッド・ミッチェルの佳作です。お勧め。

 
 

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2013年8月22日 (木曜日)

フリー・ジャズな「音楽絵巻」

フリー・ジャズは「取っつき難い」。ジャズ者初心者の方には、はっきり言って重荷だろう。無手勝流に、好き勝手に吹きまくり、弾きまくるフリー・ジャズ。基本的に不協和音の塊である。しかも、リズム&ビートも柔軟かつ自由度が高い。特に、クラシック中心の音楽教育を受けてきた方には、はっきり言って苦痛だろう。

しかし、ジャズを長年聴き込んでいくと、この「取っつき難い」フリー・ジャズが、憑きものが取れたように、ある日突然、聴くことが苦痛でなくなる瞬間がやってくる。僕は、ジャズを聴き始めて、20年位経った頃だった。ある日、突然、不協和音が気にならなくなり、好き勝手に吹きまくり、弾きまくるフレーズに耳が慣れ親しむ様になった。

そして、フリー・ジャズを聴くことが苦痛で無くなると、フリー・ジャズって、よくよく聴くと、幾つかの確かな「決めごと」の上に成り立っていることに気が付く。決めごとだらけ、酷いときには、ほぼフリーキーな旋律を譜面に落としているケースもあれば、必要最低限の決めごとだけで、あとは好き勝手にどうぞ、というケースもあるらしい。

例えば、このCecil Taylor Unitの『Akisakila - Cecil Taylor Unit In Japan』(写真左)などは、フリー・ジャズとは言っても、巧妙に、フリーな演奏に関する幾何学的な「決めごと」が集まった、壮大でフリー・ジャズな「音楽絵巻」である。フリーに演奏しているんだが、やはりそこは「音楽」として、フレーズの構成としてのアプローチを感じとれるところが、セシル・テイラーのフリー・ジャズの個性。
 

Akisakila1

 
1973年5月22日、東京の厚生年金大ホールでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Cecil Taylor (p), Andrew Cyrille (ds), Jimmy Lyons (as)。このアルバムのジャケットは「煮えたぎっている水銀」。まさに、セシル・テイラーのフリー・ジャズのイメージ。良いデザインだ。

この『Akisakila』というアルバム、1曲が40分から41分程度と、なにしか「長い」。普通に、無手勝流に好き勝手に吹きまくり、弾きまくっていたら、さすがに40分は続かない。まず、好き勝手に吹いていたり、弾いていたら、絶対にマンネリする。そんなに人間、様々なパターンのフレーズが出る訳が無い。

フリー・ジャズ的な演奏を40分も繰り広げて、しかも聴き手を飽きさせずに、しっかりと終わりまで聴かせ続けるのだ。よく聴いていると、そのフリーな演奏に関する幾何学的な「決めごと」に気が付き始める。そして、その「決めごと」になんとなく気が付き始める頃には、フリー・ジャズを聴くことが苦痛でなくなっているのだ。

ジャズ者にとっては、難度の高いフリー・ジャズなアルバムではある。しかし、ジャズのスタイルの拡がり、ジャズの奏法のバリエーションを理解するには、フリー・ジャズは避けて通れません。クラシックの世界でバルトークを経験して、それが「音楽」として十分に理解できる感性があれば、フリー・ジャズは問題無く聴くことが出来る資質があると思います。

ジャズを聴き始めて、10年程度経ったら、フリー・ジャズにチャレンジしていただきたいですね。でも、無理はいけません。ジャズを聴き始めて直ぐにフリー・ジャズにチャレンジするのは危険です。頃合いを見て、徐々にフリー・ジャズに挑戦していって下さいね(笑)。

 
 

大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年8月21日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・23

ジャズには、ジャズ・ジャイアントが生涯を通じて、時代時代でリリースした名盤もある。一流ミュージシャンが才能の輝きを見せた名盤もある。そして、時代のトレンド、時代の空気を反映した名盤もある。

このアルバムは、時代のトレンド、時代の空気を反映した名盤である。Gary Thomas『While The Gate Is Open』(写真左)。1990年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Kevin Eubanks (g), Renee Rosnes (p, syn), Dave Holland (b), Anthony Cox (b), Dennis Chambers (ds)。

ゲイリー・トーマスは、1961年6月10日、ボルティモア生まれ。今年で52歳になりました。なんだ僕と同じ世代やったんですね。ふ〜ん、そうなんや。1986年末からマイルス・デイビスのグループに1987年3月まで在籍。たった4〜5ヶ月だったみたいで、ちょっとマイルスはお気に召さなかったみたいですね。その後ジャック・デジョネットの「スペシャル・エディション」に参加。

こうやって改めて振り返って見ると、トーマスの20歳台は、なかなか輝かしい経歴です。確か、当初は新伝承派でしたが、スペシャル・エディションの参加などを経て、M-BASE派へと変化していったようです。M-BASE派とかブルックリン派とかいう括りで評価されるケースが多いですね。

ちなみに、M-BASE理論とは、変拍子の複雑なリズムを取り入れ、バップやモードというジャズの伝統的な語法を使用しないで演奏形式の革新を目指したもので、ジャズを基調に,ラップやソウル,ファンク音楽やエスニック音楽など,その時代時代で隆盛を極めた音楽スタイルを取り入れたジャズといって良いかと思います。なんだか、エレ・マイルスに似てますね。

この『While The Gate Is Open』は、そんなM-BASE派のゲイリー・トーマスが、1990年に録音した、明らかに異色作と言えるスタンダード集です。まず、M-BASE派のジャズメンがスタンダードをやること自体、異色です。バップでもモードでも無い演奏形式の下で、ジャズ・スタンダードをやる。リリース当時は、どうしても良いイメージが出来なくて、購入を躊躇いました。
 

While_the_gate_is_open

 
しかし、遅まきながら、最近、やっとのことで手に入れました。聴いて見ると、どこが異色作なのか、という風情の、実にメインストリームしたジャズが展開されています。

時代が進んだのでしょうね。1990年当時は、結構、このアルバムの音は革新的だったと思います。今の耳でも、ちょっとだけ新しさを感じますものね。今から20数年前だったら、これは結構賛否両論を生んだ「問題作」でもあったかと思います。

その新しさを感じるのが、冒頭の「Strode Rode」。リズム&ビートは、確かにバップでも無くモードでも無い、変則拍子を基調としたポリリズム。そこにハードボイルドなテナーが乗ってくる。テナーの吹き方も、バップでも無いしモードでも無い。トーマス独特なブロウ。バッキングを務めるピアノは「エレピ」。エレギのフレーズも革新的。この「Strode Rode」を体験するだけでも、このアルバムの価値がある。

このアルバムには、M-BASE派の考える「スタンダードな演奏」がギッシリと詰まっている。実に個性的で、実に魅力的だ。フリーキーな展開も見え隠れするが、決して歌心は忘れない。このアルバムでのトーマスのテナーは立派だ。

最近は、リーダー作も無く、なんだか鳴かず飛ばずな感もあるゲイリー・トーマスではあるが、このアルバムがある限り、ゲイリー・トーマスの名前は忘れない。このアルバムは、1990年という時代のトレンド、1990年という時代の空気を反映した名盤である。それが証拠に、1990年度のスイングジャーナルジャズ・ディスク大賞の「金賞」にも選ばれている。この「金賞」受賞は至極納得。

スイングに欠けると言われるM-BASE派のジャズであるが、この盤は、ジャズ・スタンダードを題材としているので、テーマ自体がスインギーで、演奏全体にも、ほんのりとスイング感が見え隠れする。これが堪らない。これが、この盤の魅力である。

 
 

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2013年8月20日 (火曜日)

小説を題材に展開される音楽組曲

このアルバムには、なかなか縁が無かった。リリースされたのは2006年。手に入れないと手に入れないと、と思っていつつ、はや7年の月日が過ぎた。

そうこうするうちに、CDショップに在庫が無くなり、ネットショップでも在庫が危うい状態に。いかん、焦りに焦ってやっとのことで手に入れた。そういうアルバムって、時々あるよな。

そのアルバムとは、Chick Coreaの『The Ultimate Adventure』(写真左)。SF作家ロン・ハバードの同名の小説を題材に展開される音楽組曲。この「小説を題材に展開される音楽組曲」という件が、どうも気になって、手の伸びが鈍った。だってジャズでっせ。プログレじゃないんだから。

ジャケット・デザインからして、ジャズっぽく無い。これではまさに「プログレ」ではないか(笑)。どうしても、このSF作家ロン・ハバードの同名の小説を題材に展開されるという音楽組曲の音世界がイメージ出来なくて困った。だって、どう考えても、これはジャズでっせ(笑)。

でも、廃盤になって入手困難になっては困る。僕の大のお気に入りのジャズメン、チックのリーダー作である。ということで、やっとのことで手に入れた。

ちなみに主なパーソネルをピックアップすると、Chick Corea (p), Steve Gadd, Vinnie Colaiuta, Tom Brechtlein (ds), Airto Moreira, Hossam Ramzy, Rubem Dantas (perc), Carles Benavent (el-b), Hubert Laws (fl), Frank Gambale (ac-g), Tim Garland (b-cl,ts), Jorge Pardo (fl,sax)。う〜ん、なかなか良いメンバーを選択しているなあ。やはり、このアルバムは期待出来る。
 

Ultimate_adventure

 
で、やっぱり素晴らしい内容でした。特に、主役のチック・コリアのキーボード・ワークが秀逸。シンセの使い方、フェンダー・ローズの弾き方、やっぱりエレピを弾かせたら最高峰、エレピの天才チック・コリアである。様々な音色、拡がり、揺らぎ、伸び。縦横無尽、変幻自在、幽玄夢幻、硬軟自在。こんなにエレピって表現力があったんだ、と再認識させてくれる、チックのキーボード・ワークである。

そして、サイドメンの中では、フルートのヒューバート・ロウズが傑出している。エレピのアンサンブルに実に良く合うフルートの音色である。特に、フェンダー・ローズに良く合う。テクニック確かで、ジャジーな音色のロウズのフルート。このアルバムでのロウズは素晴らしい。

収録された曲は、それぞれ曲調は違っても、基本となる音世界はアルバムを通して一定していて、通して聴くのに相応しいトータル・アルバムです。さすがはチック、優れた作曲能力である。緩むこと無く、様々な音色と表情を持って、SF作家ロン・ハバードの同名の小説を題材に展開される音楽組曲。この企画は成功している。

チックのファン、いわゆる「チック者」でしたらマスト・アイテムでしょう。アルバムの演奏のそこかしこに、チックの手癖、音の特徴、タッチの個性が散りばめられており、加えて、チックの十八番である「スパニッシュ・フレーバー」が炸裂する楽曲も何曲かあって、実に楽しめます。なんせ、冒頭の前奏を聴くだけで、チックと判ります。それほど、チックの個性がこのアルバムには溢れています。

さすがにジャズを基調とした演奏なので、プログレの様な「キャッチャーで判り易いフレーズ」はあまり無く、一捻りも二捻りしたジャズらしい複雑なフレーズが実に「大人の雰囲気」です。大人のフュージョン・ジャズとして、往年のプログレ・マニアの方々にも、是非一聴をお勧めしたいアルバムです。

 
 

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2013年8月19日 (月曜日)

何でも出来るって困るなあ

今やジャズ界の大御所ドラマー、スティーヴ・ガッド。1945年4月生まれだから、今年でもう、還暦をとうに超えて68歳。もうそんな歳になるんやなあ。僕がジャズを聴き始めたのが1978年。ガッドは33歳だった。

今でも覚えてる。初めて聴いたガッドのドラミング。33歳のガッドは凄かった。デジタルチックで正確なビート。4ビートにも8ビートにも16ビートにも柔軟に対応する、縦ノリのスインギーなドラミング。新しかった。それまでの横ノリのスインギーなドラミングとは全く異なった、新しいビート。

4ビートにも8ビートにも16ビートにも柔軟に対応する、凄く柔軟性の高いドラマーである。ジャズのみならず、ロックやポップスの世界からもオファーが舞い込む。ずっと引っ張りだこ、ファースト・コールなドラマーの一人。今でも、ガッドの縦ノリのドラミングは貴重。フォロワーが出そうで出ない、唯一無二な個性的なドラミング。

そんなガッドが、1988年、ガッド・ギャングでの2ndアルバム『Here & Now』以来、25年ぶり(2013年時)のスタジオ録音となるリーダー・アルバムをリリースした。そのアルバムとは『Gaddtude(邦題:ガッドの流儀)』(写真)。

ガッド自身のプロデュースのもと、自ら率いる新グループでレコーディング。ちなみにパーソネルは、Steve Gadd(ds), Larry Goldings(kb), Michael Landau(g), Jimmy Johnson(b), Walt Fauler(tp,fh) 。

うむむむ、ガッド以外、聞いたことあるような名前をあるが、基本的に知らない顔ばかり(汗)。でも、出てくる音は非常に素性の良 いもの。特に、キーボードとエレギの音が若々しくて、テクニック豊かで実に良い。
 

Gadditude

 
アルバムの内容は、と言えば、様々なスタイルのジャジーな演奏が展開される。25年ほど前のちょっとポップなエレクトリック・マイルスな演奏もあれば、フュージョン・ジャズ真っ只中の演奏もあれば、ガッドお得意のR&Bフレイバーなファンキー・フュージョンあり、コンテンポラリーでモーダルなエレクトリック・ジャズありで、「ガッドの流儀」で様々なスタイルのジャズを聴かせてくれる。

しかしなあ。様々なスタイルのジャズを聴かせてくれるのは良いが、アルバム・コンセプトとして、一本筋が通ったところが無い、中途半端な物足りなさは否めない。

何でも出来まっせ、と言わんばかりのガッドの適応力だが、何でも出来るところを聴かされてもなあ。これなら、ガッド・ギャングでの、コッテコテのR&B志向なフュージョン・ジャズの方が、しっかりと筋が通っていて魅力的だった。 

確かに、ガッドのドラミングは上手い。今回のアルバムでは、メインストリーム・ジャズ的なアプローチな演奏が多い分、ガッドの程良く抑制された、渋いドラミングが魅力的ではあるが、何でも出来るって感じは、なんだか、後になってあまり印象に残らない。

それぞれの演奏はとても素晴らしい。どの演奏も水準の上をいくものばかり。ジャズのアルバムを聴き込む合間に、さり気なく流すのにピッタリな、演奏的にはバラエティに富んでいて、聴いていて、とても楽しいアルバムではある。

でも、じゃあ、このアルバムで、リーダーのガッドは何を表現したかったのか、ということに思いを馳せると、思わず首を傾げたくなる、実に困ったアルバムでもある。やはり、ドラマーのリーダー作というのは難しいもんやなあ、と改めて思う松和のマスターである。

 
 

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2013年8月18日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・45

久し振りに「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ。ネットでも、ジャズ盤紹介本にも、ほとんど紹介されることのないアルバムなんだが、特に、ガーランドのファン、いわゆる「ガーランド者」には、涙無くして聴くことの出来ない盤である。この盤には、溌剌とした晩年のガーランドがいる。

そのアルバムとは、Red Garland『Feelin' Red』(写真)。1978年5月15日の録音。ガーランドは、1984年4月に逝去しているから、ガーランドの晩年、逝去の6年前の録音になる。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Sam Jones (b), Al Foster (ds)。ジャケットのデザインは最低2種類あるので、戸惑うことの無い様に(笑)。

以下の様に収録曲を並べると、いやいや、大スタンダード曲がズラリと並ぶ。これだけの大スタンダード曲を、ブロックコードな左手とシングルトーンな右手で演奏するのである。恐らく、カクテル・ピアノっぽくなる。しかも、ガーランドも晩年の1978年の録音。ちょっと手を出すに躊躇われる内容である。

1. It's All Right With Me       
2. You Better Go Now       
3. On A Clear Day       
4. Going Home       
5. The Second Time Araound       
6. I Wish I Knew       
7. Cherokee
 

Feelin_red

 
しかし、である。これが意外にも、ガーランドが溌剌と演奏しているのだから、ジャズって面白い。1950年代後半から1960年代前半。ハードバップなピアノで、バリバリ弾いていた頃と比べても遜色の無い、全体の雰囲気としては、1978年のこの『Feelin' Red』の方が覇気があって、ドライブ感が増している感がある。

まあ、よく聴くと、シングルトーンな右手がちょっともつれたり、ミスタッチしたりしているが気にしない。左手のブロックコードの入るタイミングもちょっとだけズレるところがあったりするが、それも気にしない。

このアルバムには、ちょっと荒々しくなってはいるが、そのドライブ感といい、その歌心ある右手のシングルトーンといい、在りし日のガーランドがいるようだ。

ネットでも、ジャズ盤紹介本にも、ほとんど紹介されることのないアルバムなんだが、意外とまとまった内容に感心する。特に、ガーランドのファン、いわゆる「ガーランド者」には、涙無くして聴くことの出来ない盤である。

この盤には、溌剌とした晩年のガーランドがいる。決して、ジャズ・ピアノの歴史に残る盤では無いが、ジャズ・ピアノのマニアには、実に滋味溢れるピアノ・トリオ盤です。ジャズ者中級から上級者向け。

 
 

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2013年8月17日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その18

京都の大文字の送り火が終わり、お盆を過ぎて、少しずつ日が短くなっているのを感じ、そして、真夏に無い、朝夕の吹き抜ける風を感じると、「ああ、もう今年も夏は終わりやなあ」としみじみしてしまう。一昨日くらいから、朝夕、少し風が吹き抜けるようになって、ゆく夏を送るという感じになってきた。

晩夏の季節も、やはり「夏はボサノバ」である。ボサノバのノンビリ、ホンワカ爽やかな雰囲気は、晩夏のちょっと物寂しい季節にもピッタリとフィットする。

米国のウエスト・コースト系クール・ジャズを代表する盲目のピアニスト、ジョージ・シアリング。「ラウンジ・ピアノ」とも形容される、彼の小気味よいタッチと流れるようなフレーズが、意外と僕は好きだ。まあ、日本ではあまり評価されていないというか、話題に上らないというか、どうしても日本では、ウエスト・コースト系のジャズメンは分が悪い。

シアリングは、作曲家としても優れていて、大スタンダードな「バードランドの子守歌」を始め、「コンセプション」など有名曲をつくっています。2011年2月に惜しくも鬼籍に入ってしまいました。享年91歳。

さて、そんなジョージ・シアリングがボサノバ・ジャズに手を染めたアルバムがあります。タイトルが『George Shearing Bossa Nova』(写真左)。CAPITOLレコードからのリリース。1963年の作になります。1963年と言えば、ボサノバ・ジャズのブーム、真っ只中。クール・ジャズを代表するピアニスト、ジョージ・シアリングまでもが、ボサノバ・ジャズに手を染めさせた訳です。
 

Geoge_shearing_bossa_nova

 
ジョージ・シアリングの洒落たボサ・ノヴァ・アルバム。アレンジはクレア・フィッシャー。「ラウンジ・ピアノ」の代表格、ジョージ・シアリングのピアノがボサノバ・ジャズに良く似合う。ボサノバ独特のフレーズが、ストリングスをバックに、クッキリと浮かび上がる。

一聴しただけでは、ストリングスのアレンジが、とてもポップで、少しばかり甘ったるくて、イージー・リスニングの様な風情に、ちょっと戸惑うが、主役のジョージ・シアリングのピアノが、イージー・リスニングなバックに流されること無く、しっかりとジャジーなので、このボサノバ・ジャズ盤は、ギリギリではあるが、ジャズのアルバムとして成立している。

収録された曲は、どの曲も魅力的なものばかり。お馴染み「 One Note Samba (Samba De Una Nota So)」や「Desafinado」「Samba Da Borboleta (Butterfly Samba)」「Manha De Carnaval (Morning of the Carnival)」など、ボサノバの定番曲から、ボサノバなアレンジがぴったりとフィットするスタンダード「On Green Dolphin Street」など、ソフィスティケイトされたアレンジが素敵な演奏がギッシリと詰まっています。

イージーリスニングな演奏の中に佇む、ジョージ・シアリングの、ポップではあるが、しっかりとジャジーなピアノ。とてもポップで、少しばかり甘ったるいアレンジのお陰で、もはやこの演奏はボサノバとしては成立しないけど、ライトなボサノバ・ジャズとしては、なかなかの内容ではないかと思います。

ちょっと甘いけど、ジョージ・シアリングの「ラウンジ・ピアノ」を愛でるにピッタリな「ボサノバ企画盤」だと思います。

 
 

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2013年8月16日 (金曜日)

この盤を聴きながら夏を送り出す

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日はこの特集のラスト。70年代Jポップとしては「ちょっと反則」ですが(笑)、1980年に遡ります。

最初の出会いはFMから流れてきた「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」。日本人が英語で歌っていることは歌の発音で判る。でも、音のスピリッツは「ロックンロール&ブルース」。こんなロックンロール&ブルースな演奏が、日本人の手で創られる、そんな時代になったんだ。なんか万感の想いを抱いた事を覚えています。

聴いて次の日、即入手。そのアルバムとは、柳ジョージ&レイニーウッドがアトランティック・レーベル移籍後の1980年にリリースした通算5作目のオリジナル・アルバム。『Woman And I... Old Fashioned Love Songs』(写真)。金色の変則見開きジャケットに入った2枚組。実に渋いジャケット。

中身は、柳ジョージ&レイニーウッドの「渾身のロックンロール&ブルース」。とにかく渋い。日本人が日本人として、ロックンロール&ブルースをやっていることは聴けば直ぐに判る。でも、決して無理はしていない。日本人が日本人としてオリジナルなロックンロール&ブルースをやる。そんな吹っ切れた格好良さが、このアルバムには充満していた。

まず、カバーが格好良い。冒頭の「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」「ユーブ・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー」「テネシー・ワルツ」。どのカバー曲も実に格好良い。日本人が日本人に誇りを持ってカバーするR&Bな名曲の数々。実に聴き応え満点。

他の曲も格好良い。スタイリストな「ロックンロール&ブルース」。例えば「ハーバー・フリーウェイ」。その歌詞が格好良い。う〜ん、まるで映画の1シーンのようだ。爽快感溢れる明るいロックンロール。実にハードボイルドである。
 

昔この道を いつも違う女の 肩に手をあて 口説きながら走ったぜ
バック・ミラーに映った女の顔を 俺は今でも一人ずつ覚えてる
過ぎた日々の谷間に 生きつづける女達よ
俺はいまでも一人でいるけど お前達が好きさ
 

Woman_and_i

 
そして、聴けば常に感動し、思わず目頭を熱くする名曲中の名曲。「青い瞳のステラ、1962年夏…」。前奏のシンセの吹き上げるような音から心の吟線に響きまくる。そして、シンセにバックで絡むストリングスが実にR&Bっぽくて良い。

そして、この「青い瞳のステラ、1962年夏…」を聴く度に、晩夏の昼下がり、少し暖まった海風に吹かれながら、昼下がりの太陽を見上げ、未だ見ぬ米国に思いを馳せ、FMから流れるR&Bに聴き耳を立て、ゆく夏に一抹の淋しさを感じて、黙ったまま空を見上げる僕達がいる。
 

赤いキャンディ 包んでくれたのは 古いNewspaper
白いペンキ 何度も塗りかえす 夏の風の中で
今頃 故郷のテネシーあたり 刈り入れ時さとカタコト交りで
バルコニーから覗くあんたは ブロンドさえも 色褪せていた

派手な化粧 振り撒くオー・デ・コロン 自慢の胸のペンダント
俺の髪を撫でまわしながら 開けてみせた写真
もう一度 船に乗る夢ばかり 風邪をひいた日に うわ言のように
好きなブルース かけてた夜は きまって夜明けに すすり泣いてた

After midnight 哀しみは 永遠の眠りについたかい
 

しみじみと歌い上げる「しゃがれた声」の柳ジョージが実に印象的だった。聴けば必ずしみじみし、聴けば必ず胸がジーンとする。実に男気のある、実に説得力のある、実に風景のある絶唱だった。まさに、ゆく夏、晩夏の季節にぴったりの名曲である。

僕にとって、この柳ジョージ&レイニーウッド『Woman And I... Old Fashioned Love Songs』は、夏のR&B盤である。湿度の高い、うだるような夏にも耐える、日本人の日本人によるロックンロール&ブルース。この盤を聴きながら夏を送り出す。いつもながら、なかなかに良いものだ。

 
 

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2013年8月15日 (木曜日)

アメリカン・フィーリングが秀逸

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日は1979年に遡ります。

1979年と言えば、日本の音楽シーンは、ニューミュージック・ブームの真っ只中。ニューミュージックとは、都会的な情景を織り交ぜたポップ調のサウンドを基調とするシンガーソングライターによる作品群である。

1970年代半ばより、明らかにニューミュージック時代生まれのグループや楽曲が出てきた。フォークや歌謡曲の洗礼を受けていない、ニューミュージックをやることを目標に出てきた連中。ヤマハ主催のポピュラーソング・コンテスト(ポプコン)で頭角を現わすことが多かったですね。

サーカスというコーラス・グループがある。デビュー当時は3人姉弟と従姉で結成され、その明らかにニューミュージックしたコーラスとバックの演奏は、一躍、スターダムにのし上がる。デビューシングルは『Mr.サマータイム』。懐かしいですね。大人の雰囲気を漂わせた、洒落て垢抜けたコーラスワークとジャジーな演奏が魅力的でした。

そして、1979年5月にセカンド・アルバム『ニュー・ホライズン』(写真左)をリリースする。僕は、このセカンド盤が一番気に入っている。1979年の夏は、このセカンド盤『ニュー・ホライズン』がヘビー・ローテーション。

垢抜けたコーラス・ワークが素敵である。とにかく上手い。日本のコーラス・グループでありながら、ライトでポップな感覚が素晴らしく、決してウェットにならず、チープに陥らない。カラッと乾いた米国西海岸の様な爽快感が特徴。日本語で歌っていても、リズム感が良く、ベタにならない。実に爽やかなコーラス・グループである。
 

New_horizon

 
バックバンドのメンバーも凄い。ドラムに村上秀一・高橋幸宏、ベースに小原礼、ギターに鈴木茂、キーボードに坂本龍一、パーカッションに斉藤ノブなどなど、錚々たるメンバーがバックを務める。これだけのメンバーがバックを演るのである。サラッとしているけど、よくよく聴くと、なかなか中身の濃い演奏を繰り広げている。そりゃあそうやろな、これだけのメンバーやもんな。

坂本龍一のアレンジが爽やかな、ライトで明るいディスコ・チューンの「MOVING」、これぞ和モノ・ソフトロックな「思い出のサーフ・シティー」、ライトなファンクネスが心地良い「愛のキャンパス」、ソフト&メロウなグルーヴがたまらない「六月の花嫁」、レゲエなリズムが明るく楽しい「夏の恋人」。夏にピッタリの爽快感あふれるコーラス曲が目白押し。

しかし、やっぱり一番はこの曲でしょうね。「アメリカン・フィーリング」。この曲は大好きです。歩くテンポのシンプルな出だしから、コーラスが少しずつ重なりながら旋律を奏で、そして、中間の短いリフを経て「サビ」のコーラスの展開。「今〜私は、コバルトの風〜、フィーリン・イン・アメリカ、イン・アメリカ〜」。

歌詞良し、曲良し、アレンジ良し。とにかく爽やかなコーラスに、とにかくポジティンブでメジャーな旋律。翳りなど全く無い、米国西海岸の陽光降り注ぐ様な、煌びやかな展開。この曲は、これぞニューミュージックと感じる、ニューミュージックの特徴・個性をギッシリと詰め込んだ、ニューニュージックというジャンルを代表する楽曲でしょう。

JAL「COME TO AMERICA '79」のキャンペーン・ソングでしたねえ。このCMのバックに流れる「アメリカン・フィーリング」を聴く度に「米国に行きて〜なあ」と強く思ってました。そして、この曲、あの坂本龍一が編曲を手掛けていて、1979年第21回日本レコード大賞編曲賞を受賞しました。これには、当時、ビックリしたなあ。

サーカスのセカンド盤『ニュー・ホライズン』、良いアルバムです。そして、この盤のカラッと乾いた米国西海岸の様な爽快感は、夏にピッタリのアルバムです。

 
 

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2013年8月14日 (水曜日)

喜納昌吉&チャンプルーズの音世界

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日も、70年代Jポップとしては「ちょっと反則」ですが(笑)、1980年に遡ります。

僕にとっての、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバム、とくれば、沖縄出身の喜納昌吉&チャンプルーズは外せません。1976年に結成された喜納昌吉&チャンプルーズ。あの「ハイサイおじさん」が沖縄で大ヒット。そして、1977年、東京デビュー。ファーストアルバム「喜納昌吉とチャンプルーズ」をリリース。

この「ハイサイおじさん」を初めて聴いた時は「パチモンか?」と思いました。でも、よく聴くと「オフビートの2拍子」で、雰囲気は沖縄民謡。

当時、ボブ・マーリーとエリック・クラプトンのお陰で「レゲエ」のオフビートの2拍子を体験していたので、沖縄民謡独特のオフビートの2拍子には違和感は感じませんでした。逆に沖縄民謡独特の旋律が心地良い。

しかし、僕の周りの反応ははっきりと2分されました。我が映研での「ハイサイおじさん」の反応は、まず「奇異の目で僕を見て、苦笑いしながら、首を横に振って部室から出て行く」組と「思わずニンマリしながら、オフビートの2拍子に乗って、思わず踊り出す」組とハッキリ分かれました。

僕と同級生のK、そして先輩のNさん、MUさん、後輩のYとWは「思わず踊り出す組」(笑)。押し並べて、女子は「首を横に振って部室から出て行く」組でした。それほど、この喜納昌吉&チャンプルーズの登場はインパクトが強かった。
 

Blood_line

 
そして、1980年6月。喜納昌吉&チャンプルーズの2枚目のアルバムに出会い、このアルバムは僕にとって、永遠の夏の名盤となりました。そのアルバムの名は『BLOOD LINE』(写真左)。沖縄系ワールド・ミュージック・ロックの傑作です。

喜納昌吉&チャンプルーズの音世界は、基本は、沖縄民謡をベースにしてはいますが、そこにロック、ブルース、レゲエ、スカなど、米国ルーツ・ロックからワールド・ミュージック系ロックを始めとして、様々な音楽の要素の入り交じった「ごった煮状態」な音世界が魅力。「チャンプルー」とは言い得て妙ですね。

この『BLOOD LINE』、ライ・クーダーと細野晴臣の参加が目を惹きます。というか、当時、パーソネルを見た時はビックリしました。二人ともバックで良い音を出してます。そして、喜納昌吉&チャンプルーズも絶好調。収録された曲も全てが良い。沖縄系ワールド・ミュージック・ロックが炸裂しまくりです。

収録曲で目を惹くのは「花(すべての人の心に花を )」。このアルバムが初出だと思うが、サラリとした、自然なアレンジのこのアルバムのバージョンは、僕の一番好きな「花」です。というか、僕は、「花」はこのアルバムのアレンジでしか聴きません。

この「花」のあまりにコッテリとしたアレンジ、あまりに感情移入したアレンジは好きではありません。このアルバムの「花」は、サラリとしていて「絶品」です。是非、皆さんに聴いた頂きたいですね。

「ジンジン」「アキサミヨー」「花のカジマヤー」「ニライカナイ」「イヤー・ホイ」 など、冒頭からご機嫌な曲が続きます。ハイテンポで明るい曲調な曲ばかりなのですが、決して暑苦しく無い。さすが、沖縄の民謡ロックです。爽快さが前面に出てきて、夏に聴くのにピッタリな雰囲気が実に良い。

喜納昌吉とチャンプルーズを「パチモン・バンド」と思うことなかれ。彼ら独特の、沖縄系ワールド・ミュージック・ロックが絶対的個性の唯一無二な存在です。特に、このセカンド盤の『BLOOD LINE』を一度は聴いて貰いたいなあ。収録時間はちょっと短いですが、日本のロックの名盤の一枚です。

 
 

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がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年8月13日 (火曜日)

日本のポップ・ロックの第一人者

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日は、70年代Jポップとしては「ちょっと反則」ですが(笑)、1980年に遡ります。

僕にとって、夏と言えば「山下達郎」でもある。山下達郎の出会いは、1978年12月リリースの『Go Ahead!』。このアルバムから、山下達郎との長い付き合いが始まった。1979年には、シングル「Ride On Time」の大ヒットによって、山下達郎も一躍メジャーな存在になった。確か日立マクセル・カセットテープのCMのタイアップ・ソングでしたね。

米国ポップ・ロックをベースとした山下達郎は、大学時代から、僕の大のお気に入りのミュージシャンの一人である。R&B、ポップス、ア・カペラ、ドゥーワップ、オールディーズのテイストを配した彼の楽曲は、聴いていて実に粋で格好良い。日本のポップ・ロックの第一人者と言っても良い存在である。

そんな山下達郎が粋なアルバム、というかカセットを出した、という噂が、いきつけの喫茶店中心に流れた。1980年の春のことである。なんと、そのカセットは、レコード店での店頭演奏向けに制作された販売促進用のためのアナログLPをベースにしたカセットとのこと。

A面はディスコのDJ風、B面はハワイのKIKIラジオ・ステーションの再現という内容。山下の曲の合間に、小林克也が担当したDJが入り、ノンストップで繋いでいくという構成。途中、英語に堪能な竹内まりやがDJとの掛け合いで入るという趣向もあるとのこと。これは欲しい。これは聴きたい。でも、LP全盛時代、小遣い叩いて、高いカセットを買うのもなあ、と思い悩んでいたら、友人のNがどこからか手に入れてきた。
 

Come_along

 
そのカセットとは『COME ALONG』(写真左)。山下達郎通算1作目のコンピレーション・アルバムである。カセットだけの発売ならという条件で商品化されたものである。後にLP化され、CD化もされた。2002年、RCA/AIR時代のカタログのリマスター再発の折にも、この『COME ALONG』はリマスターされた。目出度し目出度しである。

とにかく格好良い内容で、何回聴いても良い。A面は「ボンバー」「レッツ・ダンス・ベイビー」「ソリッド・スライダー」「愛を描いて(レッツ・キス・ザ・サン)〜 ドリーム・オブ・ユー」「ついておいでよ(フォロウ・ミー・アロング)〜 螢の光」「ラスト・ステップ」と、ディスコ・ティックでロックンロールな山下ワールド。

B面は「ラヴ・スペース」「ウインディ・レディ」「サーカス・タウン」「素敵な午後は」「ペーパー・ドール 〜 ザ・クッド・ビー・ザ・ナイト」「潮騒(ザ・ウィスパリング・シー)」と、 米国ポップ・ロックの世界がドバーッと押し寄せて来る。リゾート・サマーの陽光眩しい、キラキラと輝くAOR。

1980年夏、このカセット『COME ALONG』を友人にダビングさせて貰って、カセット・テレコで聴きながら、僕は北海道を周遊券一枚で1ヶ月彷徨した。この『COME ALONG』には、僕の学生時代の夏の想い出が一杯に詰まっている。

それ以来、何かにつけ、この『COME ALONG』を流した。特に、床に入って寝入るまでのBGMとして、この『COME ALONG』は大活躍。この『COME ALONG』には、僕の学生時代の想い出が一杯に詰まっている。

 
 

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2013年8月12日 (月曜日)

真夏の昼下がりに「センチ」やね

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日は、センチメンタル・シティ・ロマンス(略称「センチ」、以降「センチ」と略す)のセカンド盤をチョイス。

デビュー盤『センチメンタル・シティ・ロマンス』は、アメリカン・ウエスト・コースト・サウンドを基調にした、親しみやすく洗練された楽曲の中に、そこはかとなく日本的な情緒を漂わせているところが素敵だった。出て来る音は「西海岸」。

結成当時のメンバーは告井延隆(g), 中野督夫(vo), 細井豊(key), 加藤文敏(b), 田中毅(ds)の5人。この5人のうち、告井、中野、細井の3人は、現在もメンバーである。(2007年3月31日のブログ参照・左をクリック)。

大学時代、真夏の昼下がり。扇風機のかかった(エアコンでは無い・笑)薄暗い喫茶店の中で、外の厳しい焼け付くような陽射しを眺めながら、よく聴いたセンチのアルバムが『ホリデイ』(写真左)。1976年のセンチの2ndアルバム。レイドバックした西海岸ロックな音が心地良い。
 

Senti_holiday

 
ユッタリとしたテンポが実に良い。アップテンポな曲でも、少し早歩き程度の緩やかさ。米国西海岸ロックというと、爽快な疾走感溢れるアップテンポな楽曲というイメージがあるが、この『ホリデイ』でのセンチの音は違う。レイドバックしているのだ。レイドバップと言えば、米国南部のサザン・ロックの十八番。でも、センチは西海岸ロックのテイストで、しっかりとレイドバックする。

米国西海岸ロックのテイストは、告井のスティール・ギターの音で増幅される。カントリー・ロックなイメージが頭の中を吹き抜ける。この『ホリデイ』全編に渡って、この告井のスティール・ギターが凄く素敵なのだ。うっとり惚れ惚れする告井のスティール・ギター、そして、告井延隆&中野督夫、ふたりのストラトのツイン・リードギター、とにかく、ギター系が米国西海岸ロックなのだ。惚れ惚れするぜ。

デビュー盤『センチメンタル・シティ・ロマンス』は「初夏のアルバム」。このセカンド盤の『ホリデイ』は「真夏のアルバム」。レイドバックしたカントリー・ロックなテイストが、真夏の昼下がりにピッタリなのだ。ジリジリと焼け付くような昼下がりの陽射しを眺めながら、米国西海岸ロック・テイストなギターを聴く。

何と言っても、このアルバム全編の演奏のテンポが良い。ゆったりとゆっくり歩くようなテンポ。アップテンポな曲でも、少し早歩き程度の緩やかさ。このセカンド盤の『ホリデイ』は「真夏のアルバム」。大学時代から、確かに、真夏によく聴くセンチのセカンド盤である。

 
 

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2013年8月11日 (日曜日)

僕にとっては「夏のアルバム」

昨日より、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムをご紹介しています。さて、今日は、1978年に遡ります。

1978年夏、テレビのコマーシャルのバックで、聴いたことはあるが、どう考えても、CMのタイアップ・ソングなどに手を染めそうも無い、硬派なロック歌手の歌声が流れてきた。資生堂のCMソングでしたね。そう、矢沢永吉の「時間よ止まれ」。当時、ヒットチャートの一位にもなった名曲です。

この曲は懐かしい想い出で一杯の名曲です。1978年と言えば、辛くてしんどかった浪人時代を経て、晴れて大学生となった年。当時、珍しかったコンビニでバイトをしながら聴いた、FMから流れてきた「時間よ止まれ」。そして、彼女と初めて1対1でデートしたのも、この「時間よ止まれ」がヒットしていた頃だったなあ。デートの場所は大阪万博の「民博」でした(笑)。

さて、その「時間よ止まれ」を収録した、矢沢永吉の初期の名盤が『ゴールドラッシュ』(写真左)。キャロルのイメージ、ギンギンなロックンローラーのイメージを良い意味で払拭した、1970年代、矢沢永吉のひとつのピークを捉えた名盤です。

落ち着いた、粋で洒落たミッド・テンポな曲を中心に、要所要所に絶品のバラードが配置されていて、とにかく、日本を代表するロック・ボーカリスト、矢沢永吉の歌声を心ゆくまで堪能出来る、素晴らしい展開になっています。地味という声も聞かれますが、バックの演奏が落ち着いている分、矢沢永吉の歌声が前面に浮き出てきて、これはアレンジの妙として、良い方向に作用したと思っています。
 

Yazawa_goldrush

 
大ヒットした「時間よ止まれ」も良い出来ですが、絶品バラード「さめた肌」が素晴らしい出来です。「今日の雨」も良いなあ。ラストの「長い旅」は、聴く度にしみじみしてしまう、名曲中の名曲だと思います。というか、この『ゴールドラッシュ』に収録されている楽曲は全て良い出来です。

ちなみに、この『ゴールドラッシュ』には、あのYMOの坂本龍一と高橋幸宏が参加しています。なんと「時間よ止まれ」のキーボードは坂本龍一、ドラムは高橋幸宏だそうです。当時、この事実を知った時は、たまげましたね〜。「KISS ME PLEASE」のキーボードも坂本龍一。確かに、ちょっと違う。確かに良い意味で洒落てる。本当に、矢沢永吉って音楽に対して懐が深い。

矢沢永吉の1970年代のアルバムはいずれも「佳作揃い」ではあるが、この『ゴールドラッシュ』は、矢沢のソロ・キャリアで初めて、オリコン・チャート1位に輝いた盤であり、シングル盤としての、オリコン・チャート1位を記録した「時間よ止まれ」を収録していることもあって、1970年代矢沢の世界で、絶対に外せない名盤だと僕は思っている。

リリースされたのが1978年6月、そして、学生時代の懐かしい想い出が一杯詰まった、あの永遠の夏の名曲「時間よ止まれ」が収録されていることもあって、この『ゴールドラッシュ』ってアルバム、僕にとっては忘れる事の出来ない「夏のアルバム」です。

夏の夜、エアコンの効いた部屋の中で、バーボン片手に良く聴きます。そう、矢沢永吉の盤にはバーボンのロックが良く似合う、と思っています。ちょっと「キザ」ですかね(笑)。

 
 

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2013年8月10日 (土曜日)

奇跡のレイドバック・サウンド

暑いですね〜。これだけ暑いと音楽を聴くなんて行為自体が、面倒くさくて避けたくなりますよね。僕もさすがにここまで暑いと、聴く音楽についても、その選盤をちょっと考えます。ちょっとした選盤の工夫で、夏の暑さを緩和したりすることが出来るので、今日の猛暑などは、音楽喫茶のマスターとしては、選盤の妙を発揮する腕の見せ所でもあります。 

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このお盆休みの時期の特集として、夏の季節にピッタリな「70年代Jポップ」のアルバムを幾枚か、ご紹介したいと思います。ジャズが中心の我がバーチャル音楽喫茶『松和』ですが、「70年代Jポップ」も意外と得意ジャンルなんです。

それでは第一弾は、久保田麻琴と夕焼け楽団 『サンセット・ギャング』(写真左)です。1974年のリリースで、リリース当時は「久保田麻琴 II」でしたが、今日では、本作が久保田麻琴と夕焼け楽団のファースト・アルバムとして認知されています。

このアルバム、「レイドバック」という形容がぴったりの、アルバム全体の「のんびりと寛いだ」ユッタリとしたロックな演奏が実に魅力です。こんな「レイドバック」なロックが日本にあったとは、日本人が演奏しているとは、初めてこのアルバムを聴いた高校生当時、とにかくビックリしました。

「レイドバック(laid-back)」というのは「くつろいだ、のんびりとした、ゆったりした」という意味です。1973年発表のグレッグ・オールマンのファースト・ソロアルバムのタイトルに使用され、「くつろいだ、のんびりとした、ゆったりした」という意味を持つタイトル名は、一躍時代のキーワードにもなりました。

さらに1974年にエリック・クラプトンが、これもリラックス感たっぷりの『461 オーシャン・ブールヴァード』を発表し、肩の力を抜いたような演奏スタイルに注目が集まりました。緊張したサウンドとは全く正反対のものであり、この気負わずのんびりと、ゆったりとリラックスしたロックは、一躍、当時のトレンドになりました。
 

Sunset_gang

 
そんな1974年に、いち早く、その「レイドバック」なロックを取り入れ、ハワイなど南国をイメージしたトロピカルなムードが色濃く漂う、実に個性溢れる和製ロックを展開しています。ちなみに、当時のメンバーは久保田麻琴(ヴォーカル、ギター)、恩蔵隆(ベース)、藤田洋麻(ギター)、井上憲一(ギター)の4人。

この久保田麻琴と夕焼け楽団は、アメリカの南部〜ブルース〜ニューオーリンズ・サウンドに根ざした米国ルーツ・ロック、極楽トロピカルなスカ・サウンド、そして、カリビアンなレゲエ・ビートをいち早く取り入れ、当時はまだまだ耳慣れないサウンド&ビートがてんこ盛りの、今から振り返ると、時代の最先端を走っていた凄いバンドだった訳です。

しかし、まだまだ、日本のロックの評価が低かった時代です。その存在はマイナーでした。僕がこの久保田麻琴と夕焼け楽団を知ったのは、1975年の夏。映画研究部の後輩のYが部室に持ち込んだのが、久保田麻琴と夕焼け楽団との最初の出会いでした。

その持ち込まれたアルバムは、ズバリこの『サンセット・ギャング』。ゴジラのジャケットを見るなり、これはパチモンか、と思いましたが、この盤から出てくる音を聴いて、思わず「しばし沈黙」。先輩達共々、度肝を抜かれました。こんな「レイドバック」なロックが日本にあったとは、日本人が演奏しているとは、驚きでした。はっきり言って、クラプトンより上手くて良い(笑)。 

今の耳にも十分に響く、素晴らしくレイドバックな日本ロックです。「たそがれのメイク・ラヴ・カンパニー」「小舟の旅」など名曲がズラリ、レイドバックした「ルイジアナ・ママ」や「バン・バン・バン」などのカバー曲も実に良い雰囲気です。

しかし、こういう70年代の日本ロックの名盤が、CDでリイシューされる、現代の日本の音楽シーンは素晴らしいですね。日本のロックが劣等感を持っていた時代、そんなことはお構いなしに、こんな素晴らしいロック盤がリリースされていた訳です。70年代の日本のロックを再評価すべし、ですね。

 
 

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2013年8月 9日 (金曜日)

最近気になる「エバンス派」

エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)は、イタリアのピアニスト。1949年生まれですから、今年でもう64歳になりますね。演奏のキャリアもけっこう長いはずですが、私が聴き始めたのは、比較的最近のこと。最近では、実に気になるジャズ・ピアニストの一人です。

最近、よく聴くエンリコのリーダー作は『Live at the Village Vanguard』(写真左)。2010年7月7〜8日、ニューヨークは、ビレッジ・バンガードでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Marc Johnson (b), Paul Motian (ds)。

ベースがマーク・ジョンソン、ドラムがポール・モチアンという超強力な布陣。安心して委ねることが出来る、職人中の職人のリズム・セクション。このライブ盤を聴けば、このリズム・セクションの凄さが判る。モチアンがこのライブ盤の後、鬼籍に入ったのは実に残念なことであった。

このライブ盤を聴けば良く判る。ピエラヌンツィは、現在のジャズ・シーンにおける、モダンでコンテンポラリーなエバンス派の代表格でしょう。耽美的にテクニカルに良く鳴る右手と、絶妙な間を持って右手の旋律を支える左手のブロックコード。

ピアノを弾くスタイルはビル・エバンスを踏襲しているが、右手と左手のバランスとハーモニー、右手の展開と間の取り方は、ピエラヌンツィの個性の塊。決して、ビル・エバンスをなぞっている訳では全く無い。
 
Enrico_pieranunzi_the_village_vangu
 
ピエラヌンツィの旋律の響きは「欧州的」。クラシックに根ざした、硬質で端正なユニゾン&ハーモニーが実に欧州的。耽美的ではあるが、決して、抒情的に流されない、端正で破綻の無い、キッチリかっちりしたインプロビゼーションがピエラヌンツィのピアノの一番の個性です。

サイドメンも負けてはいません。伸び伸びとした鋼の様なベースを展開するジョンソンが凄く魅力的です。さすが、ビル・エバンスの最後のベーシストです。エバンス派ピエラヌンツィとの相性は抜群です。柔軟なソロを展開するジョンソンは聴きものです。

そして、恐らく、このライブ・パフォーマンスが生涯最後のベスト・パフォーマンスだったであろう、ポール・モチアンのドラムが最高です。さすが、レギュラーなビル・エバンス・トリオ最初のドラマー。微妙な間を意識したモダンで粋なドラミングは、ポール・モチアンならではのもの。唯一無二なドラミングは聴きものです。

ネットのあちらこちらで語られているように、確かに録音はちょっとなあ、という感じですが、ピエラヌンツィ・トリオの演奏内容については申し分ありません。現代のモダンでコンテンポラリーなエバンス派の代表的なパフォーマンスです。エバンス派のパフォーマンスの進化をしっかりと感じさせてくれるピエラヌンツィ・トリオ。

ジャズ・ピアノ者とビル・エバンス者の方々にはマスト・アイテム。ジャケットもそこはかとなく洒落ていて合格。こんなライブ盤がある日突然リリースされるのですから、ジャズ界のニュースからは決して目が離せません。
 
 
 

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2013年8月 8日 (木曜日)

第1期ブレッカーBros.の最終盤

時は1980年。ジャズ界は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ全盛時代。どファンキーなエレクトリック・ジャズを引っさげて、ニューヨークのフュージョン・ジャズを牽引してきた、我らがブレッカー・ブラザース。さすがに、どファンキーなフュージョン・ジャズは流行らなくなってきた。

そんな1980年にリリースした、The Brecker Brothers 『Straphangin'』(写真左)。ブレッカー・ブラザースのキャッチフレーズだった「ややハード目のファンク・フュージョン」は後退した。ソフト&メロウとは言わないまでも、流麗で爽やかな、ファンクネスが「そこはかとなく」香るリズム&ビートにのって、ブレッカー兄弟が吹きまくる。

吹きまくる、とは言っても、ファンキーに吹きまくるわけでは無い。印象的でキャッチャーなフレーズをガンガンに吹きまくるのだ。特に、弟のマイケルが吹きまくっている。そのフレーズは、ファンク・フュージョンのフレーズでは無い。実に硬派で流麗な、メインストリーム・ジャズなフレーズがてんこ盛り。そう、このアルバムでのマイケルのテナーは全編に渡って「聴きもの」である。

兄のランディも負けていない。この盤ではマイケルの方が吹きまくってはいるが、ランディだってトランペット&フリューゲルホーンを吹きまくる。こうやってランディのフレーズを聴いていると、ブレッカー・ブラザースの音のイメージを創っていたのは、ランディのトランペット&フリューゲルホーンの音だということが良く判る。ランディのトランペット&フリューゲルホーンのブロウが出てくると、一瞬にして雰囲気は「ブレッカー・ブラザース」に染まるのだ。
 

Straphangin_2

 
冒頭のタイトル曲「Straphangin'」のファンファーレを思わせる二管のイントロから、ハードな重いファンク・ビートが出現するところは、従来のどファンキーなエレクトリック・ジャズの雄、ブレッカー・ブラザースの登場、という感じなんですが、2曲目の「Threesome」以降、上質なコンテンポラリー・ジャズっていう感じの、上質のフュージョン・ジャズが展開されるところが、この盤の最大の魅力と感じています。

ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp,flh), Michael Brecker (ts), Barry Finnerty (g), Mark Gray (key), Marcus Miller (b), Richie Morales (ds)。Richie Morales〜Marcus Millerのファンクの香りも芳しい、重心の低い流麗なリズム&ビート。決して、どファンクではない、実にコンテンポラリーなリズム・セクション。

この盤をもって、ブレッカー・ブラザースは活動を停止する。どファンキーなエレクトリック・ジャズについては、出来ることは全てやったという感じだし、時代の要請も、どファンキーなエレクトリック・ジャズでは無くなったことだし、これはこれで良かったのでは無いかと思う。

今の耳で聴き返してみると、この『Straphangin'』という盤って、コンテンポラリー・ジャズなブレッカー・ブラザースの記録やったんやなあ、と、なんとなく万感の想いがします。リリース当時は、そんなことはちっとも判らず、流麗で爽やかな、ファンクネスが「そこはかとなく」香るリズム&ビートがお気に入りで、かなりのヘビロテ盤だったと記憶しています。

意外と僕は、このコンテンポラリー・ジャズなブレッカー・ブラザースが好きなんですね。

 
 

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2013年8月 7日 (水曜日)

アキコ・グレースのピアノの個性

しばらく聴かなかったピアノ・トリオ。今の耳で聴き直してみる。Akiko Grace『From New York』(写真左)。バークリー音楽大学時代では、学生代表で幾度か演奏をした位のエリート。2002年、デビュー当時は、久々の大型新人の登場と騒がれた。今でもしっかりと自分の音を奏でつつ、着実な活動を続けている。

さて、冒頭の「Never Let Me Go」はソロの小品。本格的なピアノは、2曲目のオリジナル「Delancey Street Blues 」から。ピアノタッチとその音を聴いてすぐにその個性が判る、確かに、当時、久々の大型新人の登場である。

デビュー作がピアノ・トリオと言うことで、アキコ・グレースのピアノをダイレクトに愛でることが出来る。サポートするバックも、ベースは、大ベテランのロン・カーター、ドラムは、職人ビル・スチュワートと全く申し分無い。

選曲もスタンダード、オリジナルを交えている点も、スタンダード一辺倒の売上至上主義とは一線を画していてなかなかの構成。選曲されたスタンダードは、なるほどなあ、と納得できる素晴 らしい曲ばかりで、アキコ・グレースは、その素晴らしい曲の特徴をうまく引き出し、アキコの個性というスパイスで味付けて、我々に聴かせてくれる。

オリジナル曲はどれも良くできており、新主流派から新伝承派という、ジャズのメインストリーム、いわゆる王道を行く曲作り。バックが超一流なので、アキコはオリジナルの曲で遺憾なく、その実力を発揮している。

が、ふーむ、なんと評価したらよいのか、アキコ・グレース。素晴らしい才能であることは確かだ。ピアノのタッチ、着想、展開、どの演奏を聴いても、すぐに優れた才能の一端が、はっきりと見える。とにかく、当時の「久しぶりの大型新人」という触れ込みは伊達ではない。が、アルバム全部聴き終えた後、なんとなく、吹っ切れた気持ちになれないのは何故だろう。
 

Akiko_grace_from_ny

 
デビューから今までのアキコ・グレースのアルバムをほぼ全部、聴いた経験があるから、なんとなく感じるのだが、アキコ・グレースのピアノは、米国ジャズ・ピアノの音では無く、どちらかと言えば、欧州ジャズ・ピアノのテイストが強い、と感じる。彼女のピアノのタッチと響きに、なんとなく、ECM時代のスティーブ・キューンな響きを感じるのだ。

欧州ジャズ・ピアノのテイストでありながら、バックに、米国ジャズの代表格である、ベースのロンとドラムのスチュワートを従えて、メインストリームな米国ジャズをやるのだから、ちょっと違和感が漂うのは当たり前。

欧州ジャズ・ピアノに、そこはかとなくファンクネスを乗っけて、ブルージーにスイングさせるのだから、なんとなく作られた様な、なんとなく窮屈な感じがするのは当然と思われる。

加えて「なんとなく作られた感じ」については、このアルバムの演奏が、全て「出来すぎている」ところにある。トリオの演奏からして、この場面ではベースはこう出るとか、ドラムはこんな感じでやるとか、伝統的なジャズ・トリオの中で、ピアノはこう振る舞うべし、みたいな、所謂「お約束」ごとが、このアルバムでは出来すぎているように感じる。

アルバムの音も、ちょっと出来過ぎ気味な、優秀すぎるほどの録音。 ミュージシャンの個性より、プロデュースと録音が勝ってしまったような、そんな感じのするデビュー・アルバムである。一言で言うと「オーバー・プロデュース」、そして、アキコ・グレースのピアノの個性とアルバム・コンセプトの「ミスマッチ」。

それでも、ビンビンとその個性は伝わってくるのだから、アキコ・グレース侮り難し。2作目以降、アキコ・グレースは着実に「オーバー・プロデュース」を排除し、このアキコ・グレースのピアノの個性とアルバム・コンセプトの「ミスマッチ」を,力強く払拭していくのだ。

 
 

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2013年8月 6日 (火曜日)

元気溌剌なサンボーンが魅力的

ジャズを聴き始めて、はや37年になるが、ジャズ・ミュージシャンの中には、なかなか縁遠いミュージシャンもいる。フュージョン・ジャズの有名どころである、デイヴィッド・サンボーン (David Sanborn)もその一人。

ジャズを聴き始めた頃、デイヴィッド・サンボーンは、既に有名ミュージシャンだった。ちょうど、かの有名盤『Heart to Heart』がリリースされた頃である。そのうちそのうち、と思っている間に、サンボーンは「泣きのサンボーン」と呼ばれるようになり、皆が良い良い、とこぞってサンボーンを聴くので、天の邪鬼な僕は、サンボーンをジックリと聴く機会を失った。

昨年末、とある病気で命を落としそうになって、これはあかん、と思った。デイヴィッド・サンボーンをちゃんと聴いてはいない、しっかりと聴かねばならぬ。そう思った。ということで、6月辺りから、デイヴィッド・サンボーンをデビュー盤から一枚一枚、聴き進めている。

さて、サンボーンのデビュー盤は『Taking Off』(写真左)。1975年のリリース。デビュー盤とは言いながら、このデビュー盤のセッションに参加したミュージシャンが凄い。錚々たるメンバーである。

めぼしいところを挙げると、Joe Beck, Steve Khan, Howard "Buzz" Feiten (g), Michael Brecker (ts), Randy Brecker (arr, tp), Steve Gadd (ds), John Beal, Will Lee (b), David Matthews (arr), Chris Parker (ds) などなど。デビュー盤としては破格のバックである。
 

Sanborn_taking_off

 
冒頭の「Butterfat」から、ライトなファンクネスをベースにした、アーバンでクロスオーバーなエレクトリック・ジャズが疾走する。時は1975年。ソフト&メロウを旨とするフュージョン・ジャズの流行は、もうちょっと先。1975年辺りは、クロスオーバー・ジャズが成熟し、フュージョン・ジャズへと移行を始める時期。このサンボーンのデビュー盤は『Taking Off』は、そんな時代を捉えた音がぎっしりと詰まっている。

このアーバンでクロスオーバーなエレクトリック・ジャズに乗った、サンボーンのアルトが実に良い雰囲気を醸し出している。ソフト&メロウを旨とした「泣きのサンボーン」以前、健康的でブリリアントなアルトを吹きまくる、元気溌剌なデイヴィッド・サンボーンが実に魅力的だ。このデビュー盤でのサンボーンのアルトは、実に良く「鳴っている」。

ブレッカー・ブラザースの二人や、縦ノリなドラムのスティーヴ・ガッド、流れる様なベースラインが心地良いウィル・リー、更には、フュージョンなギターが小粋なバジー・フェイトンも参加するなど、とにかく、当時のクロスオーバー・ジャズの豪腕な連中がバックを固めている。そして、そんな素晴らしいバックに乗って、ポジティブに、歌うように、サンボーンはアルトを吹き上げていく。

どの曲も水準以上、聴いていて心地良い演奏ばかり。これ、といった、思いっきりキャッチャーな演奏は無いんだが、このアルバムの演奏のそこかしこにサンボーンの個性的なフレーズ、個性的な手癖、個性的な節回しが聴き取れて、サンボーン者にとっては、なかなか楽しいデビュー盤だ。

 
 

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2013年8月 5日 (月曜日)

フュージョン界の優秀なコラボ

フュージョン・ジャズの世界にも、相性の良いコラボがある。その筆頭格が、Bob James & Earl Klugh。キーボード&コンポーザー&アレンジャーのボブ・ジェームスと、ナイロン・アコギのジャズ・ギタリスト、アール・クルー。このコラボは、組めば必ず秀作をものにする。

第1作目が、1979年リリースの『One On One』(2013年5月27日のブログ・左をクリック)
第2作目が、1982年リリースの『Two Of A Kind』(2013年5月28日のブログ・左をクリック)

そして、第3作目が、この『Cool』(写真左)。1992年のリリースになる。第2作目から数えて10年ぶりのリユニオン。ちなみにパーソネルは、Bob James (p), Earl Klugh (g), Harvey Mason (ds), Gary King (b), Leonard "Doc" Gibbs (per), Ron Carter (b), Paul Pesco (g)。 

第1作目は、カリビアンなフュージョン・ジャズだった。アナログ録音の音が心地良く、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの秀作だった。そして、第2作目は、ちょっとデジタル臭が漂う録音が残念ではあるが、フュージョン・ジャズというより、スムース・ジャズの先駆け的な音作りが素晴らしい秀作だった。

そして、この第3作目の『Cool』。時は1992年。デジタル録音の機材も良くなり、デジタル臭は全く無く、演奏するメンバーは、どちらかと言えば、アナログ時代から活躍するベテラン・ミュージシャンが中心。ドラムのハービー・メイソンの、人間の手で叩く、ファンキーでメリハリの効いたドラミングが素晴らしい。
 

Bob_earl_cool

 
このBob James & Earl Klughの第3作目『Cool』の音世界は、まさに「スムース・ジャズ」。フュージョン・ジャズの音世界を洗練し、練り直した、アーバンな雰囲気のスムース・ジャズ。

ボブ・ジェームスのアレンジが素晴らしい。ボブ・ジェームスは、自らの手癖、アレンジ癖を控えめにしつつ(それでも一聴するとボブ・ジェームスと判るが・笑)、パートナーのアール・クルーのアコギを前面に押し出す、非常に優れたアレンジを施していて素晴らしい。アール・クルーもボブ・ジェームスの優れたアレンジに乗って、実に楽しそうにアコギを弾きまくっている。

そして、このアルバム、曲が進むにつれて、スムース・ジャズから、フュージョン・ジャズへ、そして、遂には、メインストリーム・ジャズへの原点回帰していく様な展開が面白い。10曲目の「Terpsichore」は、良質な4ビート・ジャズが炸裂する。ここでのベースはロン・カーター。ロンの4ビートを刻むウッド・ベースはなかなか心地良い。

この『Cool』、スムース・ジャズ時代の秀作です。Bob James & Earl Klughのコラボ盤の最終形でしょう。以降、Bob James & Earl Klughでのコラボ盤はリリースされていません。これ以上の成果は最早求めることが出来ないのでしょうね。それほど、完成度が高い秀作です。

しかし、ジャケットについては不思議な気持ちが残ります。なぜキュウリが2本並んでいるんでしょうか。このキュウリ2本が並ぶジャケットを初めて見た時は、僕は完全に「ひき」ました(笑)。購入するのを躊躇いましたねえ。でも、内容は良い盤なので、安心して手にして頂いて結構ですよ(笑)。

 
 

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2013年8月 4日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・22

暫く涼しい日が続いていたが、さすがに、我が千葉県北西部地方も暑さが厳しくなってきた。そんな陽気に合わせて、ちょっとマニアックなピアノ・トリオに「涼」を求める。

このアルバムのリーダーは、ピアノのヨーグ・ライダー(と読むらしい)。好きな曲ばかりがズラリと並んで、思わずCDショップで衝動買いの一枚です。そのアルバムとは、Joerg Reiter『Simple Mood』(写真左)。1985年の録音。ちなみにパーソネルは、Joerg Reiter (p), Thomas Stabenow (b), Klaus Weiss (ds)。トリオを構成する3人。全く馴染みの無い名前である。

このアルバム、澤野工房からのリリースである。さて、澤野工房とは。ちょっと簡単にすると、まず、大阪の新世界市場に「さわの履物店」という老舗の履物屋さんがあって、ここの4代目の若旦那の澤野由明さんがとってもジャズ好き。
 
で、澤野さんは履物屋は継いだけど、やっぱり自分はジャズに関わる仕事がしたいということで、設立したのが澤野商会という小さな輸入盤のレーベル会社。

でも、なかなか思うようには採算がとれずに、在庫をかかえて行き詰まる。最後の挑戦ということで、欧州ジャズの復刻盤5作品を、LPレコードで1000枚ずつ作ってリリースしたら、これがコアなジャズ者の間で口コミ評判が伝わって完売。
 
そして、そこから異色のレーベルとして頭角を現し、欧州ジャズのいわゆる「幻の名盤」を厳選し、澤野工房シリーズとして、月に1〜2枚のペースの復刻CD化でじわじわと売上を伸ばし、遂には、メジャー・レーベルに肩を並べるほどの存在になった。

そんな、欧州ジャズに強い澤野工房のアルバムの中で、僕が愛聴しているピアノ・トリオのアルバムの一枚が、このJoerg Reiter『Simple Mood』である。でも、このアルバムとの出会いは、CDショップで衝動買いでしたねえ。
  
Joerg_reiter_simple_mood
   
それと言うのも、ジャズを聴き始めた頃から、僕は「Someday My Prince Will Come」という曲と「On Green Dolphin Street」という曲が大好きなのだが、その2曲が、アルバムの冒頭の1曲目から2曲目を飾っているのだから、もう僕としては、このアルバム、OKである(笑)。

そして、ジャズのベテランの方には「Someday My Prince Will Come」「On Green Dolphin Street」という曲名を聞くと、これはエバンス派のピアノ・トリオか、と思われるでしょうが、基本はズバリその通りです。

このアルバムのリーダー、ピアノのヨーグ・ライダー、基本はエバンス派、耽美的でリリカルな抑制的なピアノが特徴的ですが、実はそれだけではない。実にダイナミックで、実に拡がりのある演奏が素晴らしい。エネルギッシュな面と抑制の利いたリリカルな面がうまくミックスされて、実に熱気のあるライブ盤に仕上がっています。

ややもすれば綺麗すぎて、やや軽音楽的な表現になりがちな「Someday My Prince Will Come」「On Green Dolphin Street」を、ダイナミックで拡がりのある表現ですっ飛ばし、3曲目のバラードで、しっとりとチェンジ・オブ・ペース。

しっとりとした感じを引きずりながら、4曲目は、有名スタンダード曲の「Stella By Starlight」をダイナミック、かつ抑制の効いた展開で聴かせる。この曲では、ベースのトーマス・スタベノフが大活躍です。そして、5曲目と6曲目、8曲目はベースのトーマス・スタベノフのオリジナルで、そのダイナミックな展開は実に個性的。

時に爆発的に、時に耽美的に、時にリリカルに、時にブルージーに、このアルバムにおけるヨーグ・ライダー・トリオは自由自在だ。

この様な素晴らしいアルバムが、日本のメジャーレーベルから発売されずに、澤野工房のようなマイナー・レーベルから発売されている事実と、海外盤のラインナップを見渡すと、日本では知られていない素晴らしいアルバムがゴロゴロしているという事実。ジャズの奥深さと裾野の広さを感じずにはいられない。
 
まさに出会って聴いてみて、「こんなアルバムあったんや」という感じである。
 
 
 

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2013年8月 3日 (土曜日)

硬派で質実剛健なボサノバ・ジャズ

どうしても夏の夜はボサノバ・ジャズを選んでしまう。そんな中でも、今日は硬派な内容のHank Mobley『Dippin'』(写真左)。「モブレーのボサノバ」として、当時大ヒットした「リカード・ボサノバ」がある。その「リカード・ボサノバ」を収録した人気盤がこの『ディッピン』。

1965年6月の録音。ちなみにパーソナルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Harold Mabern Jr.(p), Larry Ridley (b), Billy Higgins (ds)。1965年と言えば、ボサノバ・ジャズのブームも定着し、ビートルズを始めとするロック・ミュージックが台頭。ジャズが大衆音楽の範疇から少しずつ外れ始めた、そんな微妙な時代である。

なぜか世間では「B級テナー」と呼ばれるハンク・モブレー。「B級テナー」という評価はジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズなどの超一流の偉大なるテナーマンほどではない、ということらしいが、なんだか蔑んでいるようで、僕は好きではない。

評論によっては、ご丁寧に「B級テナー」と表現の後に「蔑称ではない」なんていう言い訳をつけている(苦笑)。だったら「B級テナー」という表現は使わなければ良いのに・・・。

話を元に戻そう。ハンク・モブレーは、ハードバップ・ジャズの中では中堅をなすテナーマンで、その歌心溢れるテナーで人気のジャズマンである。初期の頃は、バリバリのハード・バップを演っていたが、 1960年代に入ると、ジャズ・ロックやモード・ジャズの時流に乗って、ジャズ・ロックあり、ボサノバあり、モード・ジャズあり、と変幻自在の演奏を繰り広げるようになる。
 

Dippin

 
しかし、彼のテナーの 最大の特徴である「歌心」は、どの演奏スタイルにもしっかりと存在していて、そのテナーの音を聴くと、直ぐにモブレーと判るのだ。

そんな中、「モブレーのボサノバ」として、当時、大ヒットした名曲として「Recado Bossa Nova(リカード・ボサノバ)」がある。この曲、Luiz AntonioとDjalma Ferreiraの作なのだが、モブレーのオリジナルかの様に、モブレーはこの曲を自分のものにしている。

しかも、この「リカード・ボサノバ」、確かにボサノバ・ジャズなのだが、良くある、単に柔らかな心地の良いソフトなボサノバ演奏では無く、なんというか、実に「硬派」なボサノバなのだ。

前奏の始まりから香しきハード・バップの雰囲気を漂わせ、続くモブレーのテナー、リー・モーガンのペットでのユニゾンによるテーマ部分も、実にハード・バップの香りが充満していて、とてもとても「ジャズしている」。

その後続く、モブレーのテナー・ソロも、モーガンによるペットのソロも、全てが「ハード・バップ」していて心地良い。単に、当時、流行だったボサノバをなぞって、ポップに演奏するのではなく、ベテラン・ジャズマン達が、流行のボサノバを十分に自分のものとして消化し、その優れたテクニックとアレンジで、ハード・バップに転化しつつ、実に「硬派な」ボサノバに仕立て上げている。

さすがブルーノート、こんな「硬派な」ボサノバ・ジャズもあるのですね。他の曲についても、ジャズ・ロックあり、モード・ジャズありで、当時の複雑多岐に渡るジャズの環境が垣間見えて、結構、楽しめるアルバムです。

 
 

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2013年8月 2日 (金曜日)

『Getz / Gilberto』生誕50周年

やはり夏はボサノバである。2ヶ月ほど前、CDショップのメールに、こんな文字が躍っていた。「ボサノバの永遠の名盤『Getz / Gilberto』誕生から50年。伊藤ゴローを中心に、総勢19名の豪華ミュージシャンが愛を込めてカバー」。

ほほう、あの『Getz / Gilberto』(写真右)がリリースされて半世紀になるのか。僕は、この『Getz / Gilberto』については、ジャズを聴き初めて、かなり早い時期に出会っている。ジャズを聴き始めて3年位の頃かなあ。大学3回生の頃だったと記憶する。

ユルユルのリラックス感抜群の、それでいて適度にテンションが張った、聴き心地良く、聴き応えのある演奏が印象に残った。「ボサノバ」という音楽ジャンルを、ジャズを通して世界に知らしめた記念碑的アルバムであり、ボサノバとジャズの相性が抜群なことを証明したアルバムでもある。

その『Getz / Gilberto』生誕50周年を記念してリリースされたカバー・アルバムが『Getz / Gilberto +50』(写真左)。この夏、イチ押しのボサノバ・ジャズのアルバムである。
 
7曲目の「オ・グランジ・アモール」のみが、ジャキスのチェロをフィーチャーしたインストゥルメンタル。他はそれぞれ、メインのボーカリストを フィーチャーしたもの。土岐麻子、布施尚美、坂本美雨、原田知世など、女性ボーカル陣は、個性派なボーカリストがズラリと並ぶ。男性陣は、何と言っても、 細野晴臣がボーカルを取っているのが印象的。

ちなみに、細野さんは、ポルトガル語で歌っている。加えて、9曲目の「イパネマの娘」日本語 ヴァージョンの歌詞は、アストラッド・ジルベルトの幻の作品「ゴールデン・ジャパニーズ・アルバム」が出典とのこと。いや〜結構、細部に渡って気配りされ た、なかなか隅に置けないカバー集です。
 
Getz_gilberto_50
 
収録曲とそれぞれの曲のパーソネルは以下の通り。

1. イパネマの娘 : 土岐麻子(vo)
菊地成孔(ts) 山下洋輔(p) 鈴木正人(b) 栗原務(ds) 伊藤ゴロー(g)
2. ドラリッシ : 布施尚美(vo)
菊地成孔(ts) 坪口昌恭(p) 秋田ゴールドマン(b) みどりん(ds) 伊藤ゴロー(g)
3. プラ・マシュカール・メウ・コラソン : 細野晴臣(vo)
清水靖晃(ts) 坂本龍一(p) 伊藤ゴロー(g) 
4. デサフィナード : 坂本美雨(vo)
清水靖晃(ts) 山下洋輔(p) 鈴木正人(b) 栗原務(ds) 伊藤ゴロー(g)
5. コルコヴァード : カヒミ・カリィ(vo)
清水靖晃(ts) 坪口昌恭(p) 鈴木正人(b) 栗原務(ds) 伊藤ゴロー(g)
6. ソ・ダンソ・サンバ : TOKU(vo)
菊地成孔(ts) 坪口昌恭(p) 秋田ゴールドマン(b) みどりん(ds) 伊藤ゴロー(g)
7. オ・グランジ・アモール
ジャキス・モレレンバウム(cello) 坂本龍一(p) 鈴木正人(b) 伊藤ゴロー(g)
8. ヴィヴォ・ソニャンド : 原田知世(vo)
坪口昌恭(p) 秋田ゴールドマン(b) みどりん(ds) 伊藤ゴロー(g)
9. イパネマの娘(日本語ヴァージョン) : 沖樹莉亜(vo)
  
ボーカリスト陣のそれぞれの出来は良く、バックの演奏陣も、なかなかハイレベルなボサノバ・ジャズ のバッキングを展開しています。ボーカル良し、演奏良し。『Getz / Gilberto』のカバーアルバムながら、なかなかに優れていて濃い、内容のあるアルバムに仕上がっています。聴き応え満点です。
 
そして、ちなみに、このカバー集のジャケットの絵は、あの『Getz / Gilberto』と同じく、プエルトリコ出身の女性画家オルガ・アルビズ(1924〜2005)の作品とのことです。オリジナルの『Getz / Gilberto』と良く似ていますが、よく見ると、絵は全く違います。

夏はボサノバ。今年のボサノバ・ジャズの新譜の中で「イチ押し」の内容の盤です。ボサノバ・ジャズのお好きなジャズ者の方々にとっては、手に入れて全く後悔の無い、優れた内容のカバーアルバムです。
 
 
 

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2013年8月 1日 (木曜日)

60年代後半マイルスの落ち穂拾い

マイルスの未発表音源は、1970年代当時は随分貴重なものだった。特に、1970年代前半はマイルスは、ほとんどスタジオ録音の音源をリリースしていない。加えて、1970年代後半は、長期間の隠遁時代で、そもそも新譜がリリースされなかった。そんな時代に、スタジオ録音の未発表音源は、マイルス者にとって、実に貴重なものだった。

このマイルスの未発表音源集も、リリース当時はセンセーショナルな話題を振り撒いたものだ。その未発表音源集とは、Miles Davis『Water Babies』(写真左)である。リリースは、1976年11月。1976年と言えば、マイルスの長期隠遁時代が始まった頃。僕は高校3年生。この未発表音源集のリリースはリアルタイムで覚えている。

水浴びをする黒人の子供達のイラストが印象的なジャケット。この頃のマイルスのアルバムって、アーティスティックなイラストが印象的なアルバムがほとんど。良いんですよね〜、このイラストのジャケット。

このマイルスの未発表音源集ですが、1曲目〜3曲目までが、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts,ss), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) という、1960年代黄金のクインテットの面々の演奏。1967年6月の録音。

4曲目〜5曲目は、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts,ss), Chick Corea & Herbie Hancock (el-p), Dave Holland (b), Tony Williams (ds)。初代エレ・マイルスな面々の演奏。1968年11月の録音。
 

Water_babies

 
1曲目から4曲目までが、ウェイン・ショーターの曲。限りなく自由度の高いモーダルで幽玄な演奏が中心で、マイルスも良いが、やっぱり、ウェインのテナーが素晴らしい。というか、ウェインのリーダー作の様な雰囲気。ウェイン・ショーター・ソングブックの様相。これだけウェインが素晴らしいのだ。マイルスのアルバムへの収録を考えると、お蔵入りになるのも頷ける。

4曲目から5曲目のエレ・マイルスな演奏は、なかなか興味深い。チックとハービーで、エレピの使い方、弾き方が明らかに違う。チックは、エレピの特性を活かして、エレピをエレピとして弾く。ハービーは、エレピをエレピと思わず、エレピをアコピの様に弾く。当然、チックのエレピの方が印象深く、ハービーのエレピは、この時点では「微笑ましい」。このハービーの「微笑ましい」エレピを聴くと、アルバムへの収録を控え、お蔵入りになるのも頷ける。

そして、1曲目から5曲目、全編に渡って凄いパフォーマンスを発揮しているのが、ドラムのトニー・ウィリアムス。トニーは自由度の高いモーダルな4ビートから、エレ・マイルスに必須のロック基調の8ビートまで、縦横無尽、幽玄自在、大胆細心、硬軟自在に叩きまくる。凄い柔軟度。爽快な切れ味。この未発表音源集、意外とトニーのドラミングを愛でるに最適な一枚ではないでしょうか。

この未発表音源集、意外とマイルスが目立っていないんですね。キッチリ決めるところは決めて吹いているんですが、なんとなく、印象が薄い。マイルスのアルバムへの収録を考えると、お蔵入りになるのも頷ける。

全体の雰囲気は、ウェイン・ショーター・ソングブックという感じかな。全編に渡って、ウェインのブロウが大活躍です。これはまあ、マイルスのアルバムへの収録を考えると、お蔵入りになるのも頷ける。そんな『Water Babies』です。

 
 

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