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2013年8月 8日 (木曜日)

第1期ブレッカーBros.の最終盤

時は1980年。ジャズ界は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ全盛時代。どファンキーなエレクトリック・ジャズを引っさげて、ニューヨークのフュージョン・ジャズを牽引してきた、我らがブレッカー・ブラザース。さすがに、どファンキーなフュージョン・ジャズは流行らなくなってきた。

そんな1980年にリリースした、The Brecker Brothers 『Straphangin'』(写真左)。ブレッカー・ブラザースのキャッチフレーズだった「ややハード目のファンク・フュージョン」は後退した。ソフト&メロウとは言わないまでも、流麗で爽やかな、ファンクネスが「そこはかとなく」香るリズム&ビートにのって、ブレッカー兄弟が吹きまくる。

吹きまくる、とは言っても、ファンキーに吹きまくるわけでは無い。印象的でキャッチャーなフレーズをガンガンに吹きまくるのだ。特に、弟のマイケルが吹きまくっている。そのフレーズは、ファンク・フュージョンのフレーズでは無い。実に硬派で流麗な、メインストリーム・ジャズなフレーズがてんこ盛り。そう、このアルバムでのマイケルのテナーは全編に渡って「聴きもの」である。

兄のランディも負けていない。この盤ではマイケルの方が吹きまくってはいるが、ランディだってトランペット&フリューゲルホーンを吹きまくる。こうやってランディのフレーズを聴いていると、ブレッカー・ブラザースの音のイメージを創っていたのは、ランディのトランペット&フリューゲルホーンの音だということが良く判る。ランディのトランペット&フリューゲルホーンのブロウが出てくると、一瞬にして雰囲気は「ブレッカー・ブラザース」に染まるのだ。
 

Straphangin_2

 
冒頭のタイトル曲「Straphangin'」のファンファーレを思わせる二管のイントロから、ハードな重いファンク・ビートが出現するところは、従来のどファンキーなエレクトリック・ジャズの雄、ブレッカー・ブラザースの登場、という感じなんですが、2曲目の「Threesome」以降、上質なコンテンポラリー・ジャズっていう感じの、上質のフュージョン・ジャズが展開されるところが、この盤の最大の魅力と感じています。

ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp,flh), Michael Brecker (ts), Barry Finnerty (g), Mark Gray (key), Marcus Miller (b), Richie Morales (ds)。Richie Morales〜Marcus Millerのファンクの香りも芳しい、重心の低い流麗なリズム&ビート。決して、どファンクではない、実にコンテンポラリーなリズム・セクション。

この盤をもって、ブレッカー・ブラザースは活動を停止する。どファンキーなエレクトリック・ジャズについては、出来ることは全てやったという感じだし、時代の要請も、どファンキーなエレクトリック・ジャズでは無くなったことだし、これはこれで良かったのでは無いかと思う。

今の耳で聴き返してみると、この『Straphangin'』という盤って、コンテンポラリー・ジャズなブレッカー・ブラザースの記録やったんやなあ、と、なんとなく万感の想いがします。リリース当時は、そんなことはちっとも判らず、流麗で爽やかな、ファンクネスが「そこはかとなく」香るリズム&ビートがお気に入りで、かなりのヘビロテ盤だったと記憶しています。

意外と僕は、このコンテンポラリー・ジャズなブレッカー・ブラザースが好きなんですね。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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