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2013年7月12日 (金曜日)

『キリマンジャロの娘』は語る

『Miles in The Sky』でいきなり、エレクトリック・ジャズに転身したマイルス。冒頭の「Stuff」が8ビート・ジャズ。マイルス初の8ビート・ナンバー。エレクトリック=8ビートという単純な図式を感じる。この『Miles in The Sky』の中で、この「Stuff」だけが実験的なナンバーだった。

続くエレクトリック・マイルスの2枚目が『Filles De Kilimanjaro(キリマンジャロの娘)』(写真左)。1968年6月のセッションのパーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b), Tony Williams (ds)。「Petits Machins (Little Stuff) 」「Tout De Suite」「Filles De Kilimanjaro」の3曲が演奏されている。

そして、1968年9月のセッション。パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Chick Corea (el-p), Dave Holland (b), Tony Williams (ds)。黄金のクインテットから、Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b)が抜けて、チックとホランドに代わっている。 「Mademoiselle Mabry」「Frelon Brun」の2曲が演奏されている。

この2つのセッションが収録されているところがこのアルバムの重要なポイント。マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏は、ハンコックだけがエレピを弾く。ロンのベースはエレクトリック・ベースだが、エレベ独特の弾き方にはなっていない。ハンコックのエレピの響きだけがエレクトリックで、演奏全体の雰囲気は、アコースティック・マイルスと変わらない。

でも、ビートは8ビートである。この マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏を聴いていると、ジャズは4ビートだけではなく、8ビートでもしっかりとジャズになるということが良く判る。8ビートに乗って、モーダルな演奏も全く問題無く展開し、このアルバムでは、実にアーティステックで、かなり自由度の高いモーダルな演奏が繰り広げられている。 
 

Filles_de_kilimanjaro

 
このマイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏の3曲を聴いていると、この演奏は8ビートであり、ハンコックはエレピを弾き、ロンはエレベを弾いてはいるが、内容的にはアコースティック・マイルスの限りなく自由度の高いモーダルな純ジャズな演奏と言って良い。でも、その内容たるや、限りなく自由度の高いモーダルな純ジャズな演奏の中でも最高峰の演奏である。これはこれで凄い。

しかし、1968年9月のセッション、チックとホランドが参入したエレ・マイルスな演奏は、マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏とは明らかに異なる。チックのエレピ、ホランドのアコベ、どちらともエレクトリック前提の、エレクトリック楽器独特の響きを宿している。ホランドはアコベを弾いているんだが、弾き方は明らかにエレベのテイストなのが面白い。

ここでマイルスは知る。アコースティック・ジャズはアコースティック・ジャズなりの演奏の仕方があり、エレクトリック・ジャズにはエレクトリック・ジャズの演奏の仕方があるということを。エレクトリック楽器にはエレクトリック楽器なりの感性と弾き方があるということを。

演奏するメンバーは適材適所。アコ・ジャズが得意なメンバーが、エレ・ジャズもいけるかと言えば、そうじゃない。そして、8ビートでも、ジャズは十分いけるということ。8ビート=エレクトリック・ジャズでは無いということ。エレクトリック・ジャズには、エレクトリック・ジャズなりの演奏テーマや演奏スタイルが必要なこと。

前作『Miles in The Sky』の兄弟盤の様な『Filles De Kilimanjaro』。この2枚のエレ・マイルス黎明期のアルバムで、エレ・マイルスのコンセプトが固まりだしたのではないか、と思われる。

先人の実績の全く無い、1968年当時のエレクトリック・ジャズ。マイルスは次作『In A Silent Way』で、エレクトリックならではの、マイルスならではのエレクトリックな演奏を展開する。そのコンセプトのベースは、この『Miles in The Sky』と『Filles De Kilimanjaro』の2枚に散りばめられている。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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