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2013年7月の記事

2013年7月31日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・21

カリブ生まれの打楽器であるスチール・ドラムは、生まれも近いジャマイカの音楽、レゲエの演奏ではよく活用されるのですが、ジャズでフィーチャーされたアルバムも結構な数があるんですね。

今日は、純ジャズ系のアルバムの中で、スチール・ドラムをフィーチャーしたアルバムを一枚、ご紹介しましょう。Monty Alexander『Ivory & Steel』(写真左)。1980年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Monty Alexander (p), Gerald Wiggins (b), Frank Gant (ds), Robert Thomas Jr. (per), Othello Molineaux (Steel-ds)。

このアルバムのタイトル「アイボリー&スティール」とは、直訳すると「象牙と鉄」。つまり、象牙を「ピアノ」にかけ、鉄を「スチール・ドラム」にかけた、結構、洒落たタイトルなのだ。

が、ジャケット・デザインが「象と溶鉱炉」という、実に直接的かつダサいデザインの故に、「このアルバム、大丈夫なのか」とちょっと購入を躊躇ってしまうような、いわゆる「ジャケ買い」に反するアルバムなのだが、ご心配無く(笑)。

ピアノのモンティは、ジャマイカ出身で知られる、オスカー・ピーターソン系のハッピー・スインガー。ハッピ・スインガーのモンティのピアノに、モリノーのスチール・ドラムがフィーチャーされるのだから、もう聴く前からワクワクする。とにかく明るくて、楽しい雰囲気がたまらないアルバムです。
 

Ivory_and_steel

 
出だしの1曲目「Happy Lypso」。カリプソ調の曲調に乗って、モンティのピアノとモリノーのスチール・ドラムのユニゾンが出てくると、もう気分はカリビアン。踊り出したくなるような、明るいノリの良い、実に楽しいカリプソ・チューンだ。「もうここはジャマイカ!」って感じでノリノリになるが、曲も終わりがフェード・アウトなのが惜しい。

続く2曲目の「Cavatina(ディア・ハンターのテーマ)」は、ロバート・デ・ニーロが主演した同名映画からの印象深い曲。ここでは、スチール・ドラムが印象的な旋律を奏でる。スチール・ドラムは、カリブの、単なるお祭り的な打楽器のみではない。立派な旋律楽器でもあることを、この演奏は教えてくれる。

3曲目の「Montevideo」は、モンティとモリノー、2人のデュオが印象的なナンバーだが、良く聴いていると、ちょっとスパニッシュな雰囲気と職人的なデュオのテクニック連発なところ、チック・コリアとゲイリー・バートンのデュオに似てる(こちらは、ピアノとバイブだけど・・・)。スチール・ドラムは実に情熱的だ。こちらのデュオはどこまでも楽しく、そして「熱い」。

以降「That's The Way It Is」や「Work Song」など、ファンキーな定番曲あり、「Stella By Starlight」のようなスタンダード曲や、「Street Life」などのフュージョン曲のカバーありで、ちょっとだけ「しっちゃかめっちゃかな選曲」だが、全曲、ファンキーでグルービーで楽しい、ノリノリ感が楽しい、「夏アルバム」です。

いやいや〜、こんなアルバムあったんや〜、ですね(笑)。スチール・ドラムの音って、夏には欠かせなくなりました。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年7月30日 (火曜日)

夏はシンプルな編成が良いですね

3日ほどお休みしました。4日ぶりのブログです。さて、夏はソロやデュオなど、シンプルな編成が良いですね。なんせ暑いですから、あまり大人数の熱気溢れるジャズはどうもいけません(笑)。

Benny Green & Russell Malone『Jazz at The Bistro』(写真左)。Benny Green & Russell Malone、今や中堅どころの二人。そんな二人が若かりし頃に残した秀逸デュオ盤。デュオの編成でも難度の高いピアノとギターのデュオ。聴けば聴くほどに、味わい深く奥が深い。

2001年、オランダのノース・シー・ジャズ・フェスティバルにて、初デュオで意気投合して以来、 その後もデュオによる活動を続ける訳だが、このライブ盤は、2002年6月、米ミズーリ州はセントルイスで行われたもの。若手精鋭の二人の素晴らしいテクニックと歌心とが相まって、実に内容の濃い、それでいて実にリラックスした、明るい雰囲気の実に楽しいデュオ演奏になっている。

演奏された曲目も若手らしく、フレッシュな曲が並ぶ。例えば、4曲目は、1970年代、米ポップス界を席巻した兄妹デュオ、カーペンターズのメガ・ヒット曲「Sing(シング)」。そのゆったりとしたアレンジや二人のやりとりが実に楽しい。

また、7曲目の、ロバータ・フラックの名唱とネスカフェ・コーヒーの宣伝で有名な「Killing Me Softly(やさしく歌って)」から「How Deep Is Your Love? (愛はきらめきの中に)」のメドレ ーは、二人の確かな演奏テクニックに裏打ちされた、情緒溢れる名演だ。
 

Jazz_at_the_bistro_2

 
1970年代ポップスを選曲しているからといって、スタンダードな定番曲も忘れてはいない。10曲目の「Love Letters (ラブ・レター)」などは、惚れ惚れするような清々しい演奏で、スカッと胸がすく思いがする。

しかし、他の選曲はなかなかユニーク。ジャズ界の先達の、例えば、セロニアス・モンク、ポール・チェンバース、ビリー・テイラー、キャノンボール・アダレイ、ジョン・コルトレーンなどの、他のアルバムや他のジャズメンでは選曲されることがほとんど皆無か、あってもその機会は非常に少ないであろう小粋な佳曲がチョイスされており、二人のジャズ・チューンに対する造詣の深さには脱帽である。

まあ、そんな小難しいことは考えなくても、次々に繰り出される二人の演奏に耳を傾けるだけで、素晴らしい時間がそこにある。聴けば聴くほどに、味わい深く奥が深く、それでいて明るく楽しい、ピアノ&ギターデュオの名盤でしょう。

ところで、ギターのラッセル・マローンに注目し始めて早10年あまり。彼のジャズ・ブルースが、結構、気に入っていて、このライブ盤でも、彼のジャズ・ブルースのギターを聴きたいな、と思っていたら、やっぱり、絶品の1曲がありました。

8曲目の「The Intimacy Of The Blues(ジ・インティマシー・オブ・ザ・ブルース)」、むっちゃ粋で格好良くて、コクのあるイチオシの演奏です。

 
 

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2013年7月27日 (土曜日)

7月27〜29日、お休みします。

今日27日から29日の3日間、所用にてブログをお休みします。
30日(火)に再び、お目にかかりましょう。

 
 

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2013年7月26日 (金曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その17

ワルター・ワンダレイという人、もともとはジャズを弾くピアニストとして出発した人で、ボサノバがブームになるや、オルガンに転向した異色のジャズ・ミュージシャンの一人である。

そのワンダレイが、1966年にアメリカでレコーディングしたアルバムがこのアルバム、Walter Wanderley『Rain Forest』(写真左)。邦題は「サマー・サンバ」。邦題をみても判るように、サンバやボサノバを中心としたラテン・ジャズが中心のオルガン・ジャズの佳作である。

例えて言うなら、ジョビンの演奏するボサノバは、海辺のリゾート地によく似合う雰囲気があって、ワンダレイの演奏するボサノバには、ちょっと洗練された都市生活のリズムがその底辺にある、という感じかな。言い換えれば、下町の縁日的感覚とも共通するそのエンタテインメント性は、聴く人の気分を浮き立たせる様な軽やかさがある。

冒頭の名曲「サマー・サンバ」を聴けばそれが納得できるだろう。この曲、音楽好きの人であれば、どこかで一度は耳にしたことがあるであろう名曲で、オシャレな雰囲気と、ちょっと刺激的なオルガンの響きがミックスして、不思議な雰囲気のオルガン・サンバとなっていて実に楽しい。
 

Rain_forest_2

 
他の収録曲もどれもポップで、一つ間違えば、オルガン・ポップスみたいな、ありきたりの演奏になってしまうのだが、ワンダレイの演奏の中心にあるのは「ジャズとしての即興演奏」であり、そのジャズ的なインプロビゼーションが、このアルバムをオルガン・ジャズとして成立させている。

それが判るのが、ボザノバの名曲中の名曲である、5曲目の「イパネマの娘」。あの耳慣れた テーマを演奏するワンダレイのオルガンは実に攻撃的で、粘りがあって、適度な黒さも持ち合わせた、純正な「ジャズ」の音である。 続く「ビラウド・メランコリー」のオルガンもあまり倍音を含まない、単音でのクリアな音色は、やはり純正な「ジャズ」の雰囲気。

ちょっと聴きかじっただけの印象では、なんとなくポップス調で、硬派なジャズファンからは敬遠されがちなワルター・ワンダレイの諸作ではあるが、少なくとも、この盤『Rain Forest』に限って言えば、どうして、しっかりとジャズしていて、聴いていてとても楽しく、リラックスできる好盤だ。

そして、オルガンは、ボサノバやサンバに「合う」ということをこのアルバムは教えてくれる。

 
 

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2013年7月25日 (木曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・21

夏の夜はボサノバ・ジャズ。今日はビッグバンド仕様で、Quincy Jones『Big Band Bossa Nova』(写真左)。

1950年代、デビュー時より、アレンジャーとして名を馳せたビッグ・ネーム「クインシー・ジョーンズ」。このジャズ・アレンジャーの大御所が、ボサノバ・ブームで沸き立つ1962年に録音した、ビッグバンド・ジャズの隠れた「ウラ名盤」が、この『Big Band Bossa Nova』。

収録された曲名を見渡すと、ボサノバあり、サンバあり、映画音楽ありで、決して、ボサノバ・ジャズのオンパレードでは無いのだが、当時、ボサノバの大ブームの中では、納得のアルバム名と言える(笑)。

さて、冒頭の1曲目を聴くと、なんだか、どこかで聴きなれたフレーズが。なんや、1970年代後半、僕達が学生の頃 、深夜放送で、テレビで聴き慣れた、大阪モード学園のコマーシャルに使われていた曲ではないか。ふふっ、ちょっとマイナーな話題で申し訳ない(笑)。

そうか、あれが、かのクインシー・ジョーンズ御大の「Soul Bossa Nova」だったのだ。ということは、僕達は、クインシー・ジョーンズの名曲をそれとは知らず、コマーシャル・ソングとして、耳タコになるくらい聴いていたことになる。
 

Big_band_bossa_nova

 
閑話休題。さて、このクインシー・ジョーンズの「ウラ名盤」を改めて聴いてみると、これがなかなかいける。 流行を追ったビッグバンド・ジャズは、結構、流行を追ったが故に、音が古くなるのが早いのだが、さすがはクインシー・ジョーンズ御大、ビッグバンドの音が、古くさそうで古くない。

いわゆる「アレンジの妙」とも言える音作りで、今の耳にもグッと踏みとどまった音世界となっている。その他の曲では「Desafinado」や「Samba De Una Nota So (One Note Samba)」など、アントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲を取り上げ、ラテンの音の中に、クインシー・ジョーンズならではの、ブラックネス、ファンクネスを混ぜ込むアレンジ手法は「さすが」と言うほか無い。

ビッグバンド・ジャズは、迫力があるけどちょっとうるさい、といって敬遠される方もいるが、このアルバムはちょっと違う。当然、音に迫力はあるが、耳には意外と心地良い。

そして、僕は、ボサノバやサンバなど、ラテンの曲調の中に紛れ込んだ映画音楽の名曲、かの名画「マイ・ フェア・レディ」の挿入歌「On The Street Where You Live(君住む街角)」のお洒落で疾走感溢れ、心地良い迫力のアレンジが、密かにお気に入りだったりする。

 
 

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2013年7月24日 (水曜日)

ジャズ寄りのジョージ・ベンソン

ジャズ・ギタリストをいろいろと体験している。ジャズを聴き始めて35年。ジャズ・ギターとビッグバンドが最後のターゲット。この2つのジャンルを極めれば、ジャズのアルバム・コレクターとして満願達成である(笑)。

ジャズ・ギタリストのお気に入りの一人に、ジョージ・ベンソンがいる。今では、ジョージ・ベンソンと言えば、歌うギタリストという印象が強いが、1970年代前半から中盤、クロスオーバー・ジャズの時代、ジョージ・ベンソンは、ハードで硬派なジャズ・ギタリストとしてならしていた。

そんなジョージ・ベンソンのリーダー作の中で、お気に入りの一枚がこれ。George Benson『In Concert - Carnegie Hall』(写真左)。邦題は『サマータイム 2001』。何が「2001」なのか判らない、適当な邦題である。困ったものだ(笑)。

1975年1月11日、ニューヨークは、かの有名なカーネギー・ホールでのライブ録音。一部、オーバー・ダビングが施されている。ちなみにパーソネルは、George Benson (g,vo), Hubert Laws (fl), Ronnie Foster (key), Wayne Dockery (b), Marvin Chappell (ds), Bernard Fennell (cello)。

歌うギタリストとしてのジョージ・ベンソンも良いが、もっとジャズ寄りの、ジャズ・ギタリストとしての演奏は無いのか、という方にお勧めなのがこれ。カーネギー・ホールでのライブなのだが、ここでのベンソンは、まだまだ、ジャジーな雰囲気を色濃く漂わせている。
 

George_benson_carnegie_hall

 
1曲目のベンソンのオリジナル・ブルース「Gone」では、ちょっと堅めのパキパキとした、しっかりとしたギター・ソロを聴かせる。ここでのベンソンのソロに、後の「ソフト&メロウ」の影は無い。ヒューバート・ロウズのフルート・ソロも効果的で、ジャジーでブルーな雰囲気を漂わせていて、なかなかの好演となっている。

2曲目の「Take Fiive」は、ディブ・ブルーベック・カルテットの演奏で有名な曲だが、ここではベンソンが鬼気迫るテクニックで、一気にぶっ飛ばす。ここでのベンソンのアドリブは圧巻。テクニックも超絶で凄くファンキーな演奏が繰り広げられて、思わずノリノリになる。収録時間5分42秒はあっと言う間だ。

3曲目の「Octane」は、タイトルから推察すると、ハイオク満タンで一気に駆け抜ける重量級スポーツカーの雰囲気で、ベンソンはここでも超絶テクニックを駆使して、エキサイティングな演奏。バンド一体となった演奏が素晴らしい。ほとんど、ロック・フュージョンの様な演奏だが、ここでのベンソンのギター・ソロの音色が、結構ジャズしているのに感じ入ってしまう。

ラストの「Summertiime」では、遂にベンソンは唄っている。なんだ、もうこの頃、既に唄ってたのね(笑)。『Breeziin'』で、いきなり受け狙いで「Thiis Masquerade」を唄った訳ではないんだな。この「Summertiime」は名唱である。

 
 

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2013年7月23日 (火曜日)

意外性のある楽しいトリビュート

暑い夏は、シンプルにビル・エバンスが良い。エバンスものと言っても、ビル・エバンスのトリビュート・アルバム『Portrait of Bill Evans』(写真左)。とにかく、ジャズの知識や経験があればあるほど、意外性のある楽しいアルバム。

ビル・エバンスのトリビュート・アルバムと言えば、ビル・エバンスが亡くなって以来、何十枚と出てきた。 企画物が多く、ビル・エバンスに影響を受けたジャズ・ピアニストをチョイスし、ビル・エバンスっぽく演奏させる。そんな、安直なトリビュート・アルバムが多かったので、実のところ、それらのビル・エバンス・トリビュートのアルバムには、なかなか触手が伸びなかったのが正直なところ。

しかしながら、このアルバムは、それらお決まりの「ビル・エバンスのトリビュート・アルバム」とは、ちょっと違う雰囲気のアルバムなのだ。

参加メンバーを見ても、良い意味で「実に怪しい」(笑)。まず、参加メンバーの中で目を引くのは、フュージョンの大御所、ボブ・ジェームスとデイブ・グルーシン。そして、ブラジルの美人ピアニストであるイリアーヌ。今をときめく新進気鋭のピアニスト、ブラッド・メルドー。そして、ジャズ・ピアニストの巨人、ハービー・ハンコック。

ボブ・ジェームスもデイブ・グルーシンも、昔々、彼らが駆け出しのジャズ・ピアニストの頃、確かに、彼らはビル・エバンスに多大な影響を受けたピアニストだったのだ。イリアーヌも最近の彼女のインタビュー記事で、ビル・エバンスからの影響を認める発言をしているし、ハービー・ハンコックの新人駆け出しの頃のプレイは、明らかに、ビル・エバンスの影響を受けていた。

とは言いながら、では、エバンスに影響を受けたので、トリビュート盤なので、エバンスのように演奏します、というような安直なアプローチをするミュージシャン達では無い。自分たちの個性を十分踏まえながらの、実に楽しく興味ある、独自の演奏を繰り広げているのは立派。
 
 
Portrait_of_bill_evans
  
 
冒頭の「ナーディス」がその良い例だ。フュージョン畑のボブ・ジェームスとは思えないピアノが鳴り響き「おお、これはストレート・アヘッドな純ジャズか」と思うと、リチャード・ボナのエレクトリック・ベースが響き渡って、重厚なフュージョン・テイストの「ナーディス」に早変わり。

それでも、フュージョン的な音にならず、フュージョン・テイストではありながらも、しっかりと「純ジャズ」している演奏はさすがだ。特に、ボナのベース・ソロは、エバンス・トリオのスコット・ラファロを彷彿とさせて、実に立派。

ボブ・ジェームスと同じテイストがデイブ・グルーシン。彼は、その独特のハーモニー感覚で、「ワルツ・フォー・デビー」と「エミリー」を演奏して見せる。これがまた良いのですね。アドリブ・フレーズには、グルーシン独特の手癖が見え隠れして、意外と個性のかたまりの様な演奏に惹かれる。

ハービーは、相変わらずのファンク打ち込みモードで、見た目に全くエバンスとは関係ない自作の楽曲でエバンスへのトリビュートの意を表している。ハービー曰く、エバンスが生きていたら、きっと、こんなジャズをやりたかったはずだ、とのコンセプトでの自作曲の提供らしい。ちょっとした違和感を感じる。

逆に、エバンス・タッチに忠実にトリビュートするのはイリアーヌ。バックに、ドラムのジャック・デジョネット、ベースにマーク・ジョンソンと、エバンスのビアノ・トリオを経験したベテラン2人を擁して、それはそれは美しいピアノ・トリオで花を添える。

そして、驚異のピアノ・ソロで気を吐くのは、ブラッド・メルドー。 その特徴的な左手で、唯一無二、他に追従を許さない個性的かつ芸術的なソロで、エバンスをトリビュートしてみせる。

とにかく、ジャズの知識や経験があればあるほど、意外性のある楽しいアルバムです。お勧めです。
 
 
 

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2013年7月22日 (月曜日)

ダンサフル&ファンクなジャズ

The Brecker Brothersの『Detente』(写真左)は、思いっきり、リリース当時の音楽のトレンドを反映したアルバムである。

時は1980年。米国ポップスのトレンドは「ダンサフル&ファンク」か「ソフト&メロウ」。前者は「ディスコ・ミュージック」と呼ばれ、後者は「AOR」と呼ばれた。フュージョン・ジャズの主流は「ソフト&メロウ」=「AOR」な、スムースなエレクトリック・ジャズ。しかし、ブレッカー・ブラザースの選択は違った。彼らは「ダンサフル&ファンク」=「ディスコ・ミュージック」を選択。

この1980年リリースの『Detente』は、徹頭徹尾、1曲目からラストまで、全てが「ダンサフル&ファンク・ジャズ」。しかも、演奏しているメンバーが、フュージョン・ジャズの精鋭たちときている。演奏のレベルは大変高く、一糸乱れぬアンサンブル、そして、素晴らしいテクニックと歌心で展開されるソロをベースに「ダンサフル&ファンク・ジャズ」が展開される。

当時、ハービー・ハンコックも、同様な「ダンサフル&ファンク・ジャズ」をやっていた。彼はシンセ&エレピをキュイキュイ歌わせながら、ファンクでディスコティックなジャズを展開していた。そして、ブレッカー・ブラザースは、ランディのトランペットとマイケルのテナーの2管をブイブイ歌わせながら、ファンクでディスコティックなジャズを展開していた。
 

Detente

 
演奏自体は、ファンクでディスコティックなジャズなんだが、ランディのトランペットとマイケルのテナー・サックスの演奏は全くもって申し分無いレベルで素晴らしい。淀みなく流れるフレーズ、歌うようなアドリブ・ライン。ここまで素晴らしいブロウを繰り広げるのなら、メインストリームなジャズのフォーマットでやって欲しいなあ、と心から思った。それほどまでに素晴らしい、ブレッカー兄弟のブロウである。 

ファンクネス溢れるダンサフルなフュージョン・ジャズなんだが、ファンクネスの雰囲気は「R&B」しかも「モータウン」の芳しき香りがそこかしこに漂う。この「モータウン」の香りが、他の「ダンサフル&ファンク・ジャズ」と一線を画するところ。つまりは、この「R&B」と「モータウン」の香りが、ブレッカー・ブラザースの個性のひとつである。

とにかく、聴いていて楽しいし、演奏のレベルは高くて聴き応えがある。しかし、日本ではこのアルバムは受けが悪かった。そもそも、日本では、「ダンサフル&ファンク」=「ディスコ・ミュージック」は大衆的な音楽、庶民的な音楽として、ちょっとランクを低く評価されていたように思う。演奏のレベルは高く、収録された楽曲もなかなかの出来なのに拘わらず、である。

でも、今の耳で聴き返してみると、やっぱり、このアルバム、良い感じですね。全編に渡って、ダンサフルでファンクでディスコティックなジャズですが、曲毎にリズムやアレンジが良く工夫されていて飽きません。そして、ブレッカー兄弟のブロウの素晴らしさ。再評価されるべき、ダンサフルなアルバムだと思います。

 
 

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2013年7月21日 (日曜日)

ロッドが歌うスタンダード第3弾

この人は幾つになっても歌が上手い。ロック界において、不世出のボーカリストである。そんなロッド・スチュワートが、ジャズ・スタンダード曲をカバッたアルバムのシリーズ「The Great American Songbook」。その三作目が、Rod Stewart『Stardust...The Great American Songbook: Vol. III』(写真左)。

この第3作目も、前の2作と同様、選曲が良い。絶対に外せない「ど・スタンダード曲」もあるが、知る人ぞ知る、隠れた名曲的なスタンダード曲もある。とにかく「渋い」。とにかく「クール」。

そして、この第3作目、ゲストが豪華。スティービー・ワンダー、エリック・クラプトン、ベット・ミドラー、ドリー・パートン、アルトゥーロ・サンドヴァール、デイヴ・グルーシン、デイヴ・コズら、ロックやポップス、フュージョン界の大物がズラリと名を連ねている。そして、それぞれの大物とのコラボが非常に良い成果を生み出しているのだから凄い。

フュージョン・ジャズ畑のキーボード奏者をフォーカスしてみると、3曲目「Blue Moon」ではJoe Sampleが、「S'Wonderful」と「I Can't Get Started」ではDave Grusinがピアノで参加しています。このフュージョン・ジャズ畑のキーボード奏者の伴奏ピアノが実に良い雰囲気で、ついつい聴き惚れてしまいます。

ジャズ以外のロック・ポップス畑のシンガーがジャズのスタンダードを歌うという企画は、リンダ・ロンシュタットやカーリー・サイモン、ボズ・スギャッグスなど、今となっては全く珍しく無い企画です。
 

Rod_stewart_great_american_songbook

 
しかし、ロッドの「The Great American Songbook」は全4作と本格的なもの。一枚だけ企画盤作って終わり、っていう単発ものでは無い、というところが素晴らしい。本気を感じる。

ロッドの甘く掠れた、それでいて芯のある独特の声質が、こんなにジャズ・スタンダード曲に合うとは思わなかった。味のある声、味のある歌唱。曲によって歌い方を変えるなんて事はしない。どの曲もロッドの歌唱であり、ロッドの声質である。良い意味での「金太郎飴」。でも、飽きが来ない。逆に「金太郎飴」的なところが心地良い。

「Embraceable You」や「Stardust」や「A Nightingale Sang In Berkeley Square 」など、スローなバラードをじっくり歌い上げるロッドが素晴らしい。確かにこの人は、ブルーズやロックのみに留まる器のボーカリストでは無い。年を重ねて、やっと異種格闘技的にジャズ・スタンダード曲をカバーする気になったんだろうな。

ロックの世界では、不思議と「オリジナル・ナンバー至上主義」的な雰囲気が昔からあって、スタンダード曲のカバーなんて商業主義に走った「終わったロック野郎」の仕業だと決めつける向きもあるが、僕はそうは思わない。

優れたボーカリストは、特定の音楽ジャンルやオリジナル曲に縛り付けるものではないだろう。もっと様々な音楽ジャンルやスタンダード曲のカバーに挑戦して、ボーカリストとしての新たな魅力を、もっともっと楽しませて続けて欲しいと思っている。

 
 

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2013年7月20日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その16

「ボサノバ」と言うと、やはり、日本人ミュージシャンの中での人気者は「小野リサ」だろう。

「ブログのボサノバ特集に、なぜ、小野リサさんを紹介しないのですか?」と いうお問い合わせを頂くことが、たまにあるのだが、「小野リサ」さんといえば、ボサノバど真ん中。 どこからみても、しっかりとした「ボサノバ」なのだ。ボサノバ・ジャズでは無い。個人的には、日本人として、よくここまで完璧にボサノバを表現できるもんだ、と大いに感心しているくらいだ。

ほんと「ボサノバ」というジャンルがぴったりで、バック・ミュージシャンの面々を眺めてみても、 ジャズにはほとんどといっていいくらい、ジャズに接点が無い。まあ「ボサノバ」というジャンルなので、「アラウンド・ジャズ」、つまり、ジャズの周辺って感じがぴったりなのだ。

ということで、ちょっと、あきらめ気分で彼女のディスコグラフィーを眺めていたら、おおっ、ありましたありました。当ブログのボサノバ特集でご紹介するのがピッタリの、実に「小粋な企画」型のアルバムが。

そのアルバムは、小野リサ『DREAM』(写真左)。なんと収録された曲名を見てみると「ムーンライト・セレナー デ」「二人でお茶を」「ナイト・アンド・デイ」「時の過ぎゆくまま」「サボイでストンプ」「センチメンタル・ジャーニー」「チャタヌガ・チュー・チュー」など、なんとなんと、スイング時代の名曲、モダンジャズにおけるスタンダード曲と呼ばれる定番的名曲がずらり。
 

Risa_ono_dream

 
いいな〜これ。これらジャズのジャンルでよく演奏される定番曲達を「ボサノバ」のリズムと雰囲気に包んで、実に「小粋」に聴かせてくれるのだ。

2曲目の「ムーンライト・セレナーデ」などを聴くと、あのスイング時代の名バンド、グレン・ミラー楽団の名曲が、ボサノバのリズムにのせると「この様に変身を遂げるのか」と感心するばかり。とにかく、原曲の美しい旋律をしっかり残しつつ、自然体で「ボサノバ」するのだ。この2曲目は何回聴いても飽きない。

4曲目の「二人でお茶を」から、7曲目の「サボイでストンプ」までのシリーズは、モダンジャズでの定番スタンダード。ボサノバのリズムにのって、ジャズの定番スタンダードがウキウキ跳ねたり、ゆるゆるリラックスしたり、ユラユラ揺らめいたり。こんなに曲の表情が変わるのですね。

絶品は12曲目の「センチメンタル・ジャーニー」。こんなにリラックスした、レイド・バックした 「センチメンタル・ジャーニー」は、初めて聴いた。癒しの極みである。体中がリラックスして、あまりのリラックスさに、ついには、ウトウトしてくるくらいだ。

ボサノバが、モダンジャズのジャンルで演奏されて久しく、結構、耳慣れた感があるが、モダンジャズのジャンルの定番曲が、ボサノバのジャンルで演奏されるというのは、僕は今回が初めて。いや~、いいもの、聴かせてもらいました。

  
 

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2013年7月19日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・20

Pietro Tonolo『Your Songs : The Music of Elton John』(写真左)。これは珍しいお洒落な盤である。英国が誇るシンガー・ソング・ライター&ロック・エンタテイナー、エルトン・ジョンの楽曲のカバー集である。

まず、バックに控えるトリオのメンバーが凄い。ジャズ界ではベテラン中のベテラン、スティーブ・スワロー (el-b) と ポール・モチアン (ds)、更に、パット・メセニーのブレーンでもあるギル・ゴールドスタイン (p,acc)。

テナーがフロントのジャズ・カルテットで、1970年代ロック&ポップスの最大のエンタテイナー、エルトン・ジョンの数々の名曲をカバーしているというだけで、僕達の世代は触手が伸びるが、加えてこの顔ぶれである。 絶対に触手が伸びるというもの。よって、見つけて、即、購入だった。

「つかみ」の最初の一曲目は「Bllue Eyes」。こいつは確か1982年リリースの『Jump Up!』収録の曲ではなかったか。良い雰囲気で美しい演奏。「つかみ」は、これでOK。このアルバムの内容が保証されたようなもの。良い演奏である。
 

Pietro_tonolo_your_songs_2

 
3曲目は「Rocket Man」。このロックな曲をどうやってジャズに料理するのか。興味津々だったが、こういうスインギーなアレンジがあるのね、感心。4曲目は「Your Song」。この曲はエルトンの初期の名曲中の名曲で、ジャズでは良く取り上げられる曲だ。さすがに、こういう「歌ものバラード」にサックスはピッタリ。良い演奏だ。

そして、6曲目「Goodbye Yellllow Briick Road」。この名曲、どうやってジャズにするの、って感じの曲。 しかし、そんな心配など何処吹く風、このトノーロ率いるカルテットは、爽やかな風のように、飛ぶように泳ぐように、この名曲の旋律をジャズに紡いでいく。

全体を通して、エルトン・ジョンの名曲をかなり上手く料理しています。落ち着いた雰囲気の中で、名うての名手達が原曲を損ねることなく、ガッチリとジャズとして表現していく。エルトン・ジョンのジャズ・カバーとしては屈指の出来だと思います。

こうやって、21世紀のジャズの中で、新しいスタンダード曲が生まれていったら良いなあ、と思います。特に、70年代ロック&ポップスには、ジャズの新しいスタンダードになりうる名曲がゴロゴロしていますからね。密かに期待しています。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年7月18日 (木曜日)

生粋のフュージョン・ギタリスト

出世作「Gentle Thoughts」に続くリーダー第3作目。Lee Ritenour『The Captain's Journey』(写真左)。1978年のリリースになる。ここでのリトナーは、自信に満ちあふれたプレイを縦横無尽に繰り広げている。

ソフト&メロウ、時に鋭く、時に煌めくようなテクニックを披露しつつ、ストリングスを入れた大仕掛けのアレンジやファンキーなボーカル入りの曲、ドラマチックな曲の展開など、後のフュージョンのスタンダードとなる演奏スタイルのほぼ全てが、ショーケースの如く並んでいる。

このアルバムは、フュージョンのギタリストのリーダー・アルバムとしては最高の一枚だろう。このアルバムと同じコンセプト、同じ展開、同じ構成で、このアルバムを凌駕したフュージョン・ギタリストのアルバムは無いと思う。

ジョージ・ベンソンは、純ジャズの出身のギタリストとして、煌めくようなテクニックに走るよりは、味のあるギターとメロウなボーカル路線で一世を風靡した。パット・メセニーは、純ジャズの世界からフュージョンへアプローチし、決してジャズのテイストを忘れず「純ジャズからフュージョンへのアプローチ」にこだわった。
 

The_captaions_journey

 
そういう意味で、このアルバムから判るのは、リー・リトナーというギタリストは、フュージョンから生まれた、生粋のフュージョン・ギタリストなんだ、ということだろう。リトナーの演奏の中に「純ジャズ的」な要素がかなり希薄なのだ。

その生粋のフュージョン・ギタリストの名演中の名演は、3曲目の「Sugarloaf Express」。この曲でのリトナーのプレイは、リトナーのギターの特徴と長所を余すことなく伝えている。甘く流れることのないソフィストケイトされた、それでいて力強いギター・ソロ。打ち込みやサンプリングでは出せない、ハイテクニックで人間味のあるリズム。

そして、意外にも、このアルバムは、全編を通じて、リトナーはファンキー。意外とコッテコテのファンクネスを漂わせて、エレギをブイブイ言わせている。

そう、この時代のフュージョンの名演は、まだまだ、人間が人間の手でリズムを刻み、人間の手でメロディーを奏でていた。プロのミュージシャンがプロとして君臨し、最高の羨望を集めていた頃の素晴らしい演奏の数々。僕は好きだ。

 
 

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2013年7月17日 (水曜日)

「踏み絵」みたいな優秀盤

暑い夏の日には、難しいジャズは避けたい。絵に描いた様な、ジャズの基本に忠実な演奏が良い。Roy Haynes『Love Letters』(写真左)。2002年5月の録音。.ジャズを好きになる資質があるかどうか、それを見極める「踏み絵」みたいな優秀盤。

ジャズ初心者の方に、ジャズの楽しさ美しさを教えたいのなら、このアルバム。ハードバップ全盛期から現在まで、第一線で精力的に活躍しているドラマー、ロイ・ヘインズ。「彼の最新作に」ということで参加ミュージシャンを募ったところ、当代随一の名プレイヤー達が「是非」と諸手をあげて参加表明。とにかく、代表的と言われるミュージシャン達が勢揃いしていて、ワクワクする。

今回のセッションは、2つのグループの演奏で構成されている。テナー・サックス中心の、ジョシュア・レッドマン (ts), ケニー・バロン (p), クリスチャン・マクブライド (b) のカルテットと、ギター中心の、ジョン・スコフィールド (g), デヴィッド・キコスキ (p), デイヴ・ホランド (b) のカルテット。

モダンジャズの基本形の一つである「カルテット演奏」を、テナー中心とギター中心の2種類を楽しめるのが、このアルバムの美味しいところ。収録されたどの演奏もジャズの基本に忠実な演奏で、加えて、当代随一の名ミュージシャンが、その卓越したテクニックと豊かな歌心をベースに、スタンダード曲を演奏するのだから堪らない。

しかも、スタンダードを演奏するとはいえ、皆が知っている「ど・スタンダード曲」では無く、どの曲も、知る人ぞ知る隠れた名曲的なスタンダード曲なので、これも「通好み」で堪らない。 唯一、ラストのドラムソロの「シェイズ・オブ・セネガル2」のみ、ロイ・ヘインズのオリジナルです(このドラムソロが鬼気迫っていて、これまた良いのだ)。
 

Roy_haynes_love_letters

 
とりわけ、このアルバムのジョシュア・レッドマンのテナーについては「見直した」。当時のジョシュアといえば、ちょっと小難しい展開の演奏が中心だったので、彼のテナーを聴く度、ちょっとイライラしていたが、このアルバムでは、スカッとテナーを吹き切っている。

やっぱり、楽器は先ずは吹き切らんとね。そして、吹ききると同時に、表現はシンプルであること。言いたいことが良く判る。そう、シンプル・イズ・ベストなブロウなのだ。やれば出来るやん、ジョシュア。

それともう一つ、このアルバムを聴いて感心したのが、ジョン・スコフィールドのギター。どの曲でも、ジョンスコのギターは唄っている。その音色もマイルドでコクがあり、張りがあってツヤがある。

ジョンスコがこんなに「唄うような」ギターが弾けるとは知らなかった。なんせ、僕にとっては、かのマイルス・バンドのジョンスコの印象が強くて、こんなに柔軟で歌心溢れるギターが弾ける人とは想像もできなかった。ジョンスコ、すまん。

曲それぞれについては、どの曲も素晴らしいが、タイトル曲でもある『ラヴ・レター』のギター+ベース+ドラムスのトリオ演奏が秀逸の出来。ジョン・スコの繰り出すギターと、そのギターに呼応するかのような深いベース、そしてしなやかなドラム。いや〜ジャズってほんとに良いですね、って感じだ。ほんと、心からそう思う。

当然、リーダーのロイ・ヘインズのドラムは最高ですよ。加えて、アレンジ良し。音も良し。このアルバムを聴いて「ジャズっていいねえ」と言えない人は・・・。まあ、ジャズを好きになる資質が あるかどうか、それを見極める「踏み絵」みたいなアルバムと言えるだろう。

 
 

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2013年7月16日 (火曜日)

清々しい『セイシェルズ』の登場

1970年代半ばの日本ロックと言えば、プログレッシブ・ロックかブルース系のハードロックが中心。趣味性が高く、一般万民向けでは無かった。重たいと言えば重たい日本のロック。そんな中、このアルバムの登場は、実に清々しかった。

1976年のリリース。高中正義の『SEYCHELLES(セイシェルズ)』(写真左)。日本のジャズ界もフュージョン・ジャズについては端緒を付けたばかりの時期。まだ「フュージョン」という音楽ジャンル言葉は無い。そんな日本の音楽シーンに、この『セイシェルズ』の登場は実に清々しかった。

音的には、楽園ミュージックである。楽園と言っても、ユートピアなんていう空想上のものではない、リゾートをイメージした、地に足付いた楽園ミュージック。冒頭の「OH! TENGO SUERTE」のエレキ・ギターの音が、もう既に「楽園的な響き」を宿している。途中、間奏風に入る女性コーラスを含めて、これはもう「フュージョン」の音世界である。

しかも、ファンキーな音の要素を出来る限り封印し、あっさりとしたオフビートをベースに、聴き易くキャッチャーなフレーズを展開する、そんな「日本的な」個性を上手く前面に押し出している。

当時、ロックとジャズの融合として「クロスオーバー」という音楽ジャンルがあったが、この『セイシェルズ』は、クロスオーバーの先にある、ソフト&メロウで聴き心地の良いフュージョン・ジャズの雰囲気が色濃く漂う。このアルバムの登場は、当時、結構、センセーションだった。

バックを固めるミュージシャンも凄い面子がズラリ。高中も参加していたグループ、サディスティックスから、今井 裕(key), 後藤 次利(b) の二人が参加、そして、高橋 幸宏は詞を提供。それからそれから、林 立夫(ds), 浜口 茂外也・斉藤 ノブ(per), Jake H.Comcepcion (sax)、井上 陽水・TAN TAN (Chorus)などなど。ジャズでも無ければロックでも無い。実に面白いパーソネルである。
 

Seychelles

 
ラストの「TROPIC BIRDS」は、プログレ・フュージョンの色濃い異色な演奏。まだまだ、「夏・海・ラテン・トロピカル」に落ち着かない、高中の様々な音楽性の幅広さを感じる、実に印象的なナンバーである。ちなみに、最初と最後に入っているアカペラのコーラスは、井上陽水と高中正義によるもの。

2曲目の「トーキョー・レギー」や6曲目の「サヨナラ・・・FUJIさん」の日本語ボーカル入りナンバーが、当時、このアルバムの立ち位置をややこしくしたが、これも「フュージョン・ジャズ」として捉えるならば、何の不自然さも無い。

発売当時は、音楽関係者から結構厳しい批評をいただいたみたいですが、これって、このアルバムの意味するところが理解しにくかったことが原因でしょう。そりゃあ、理解しにくかったでしょう。当時、「フュージョン」という音楽ジャンル言葉は無かったし、日本の音楽シーンにおいては、フュージョンな演奏を実践しているミュージシャンは、ジャズ畑でもほんの一握りだった。

今の耳で振り返ると、何の不自然さも違和感も無いんですけどね。逆に、1970年半ばの日本の音楽シーンにおいて、こんなフュージョンなアルバムが、1976年当時にリリースされていたという事実に、結構、ビックリします。結構、当時の日本のミュージシャンって「イケて」ましたね。素晴らしい。

最後に、このアルバムの誕生秘話を。どこかの雑誌記事で読んだんだけど、高中正義いわく、「毎日グラフ」という雑誌に掲載されていたセイシェル諸島の写真を偶然見つけて、その瞬間、ソロ・アルバムのテーマが決まり、曲も意外とすんなり出来たのだそうだ。

だからそれまで、セイシェル諸島って、行ったことも無ければ見たことも無かった、とのこと(笑)。名盤の誕生って意外とそんな単純なことが動機になったりするんですよね。至極納得しました。

 
 

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2013年7月15日 (月曜日)

シンプルでプログレなギターです

シングル・トーンで味のあるフレーズ。地味なようで、ツボを押さえたアドリブ。アドリブ・フレーズは、意外とプログレッシブで展開に思わず聴き耳を立ててしまう。そんな、玄人の玄人による玄人の為のギター、それが、ジム・ホールのギターだ。

初めて聴いたときは、なんだか地味でパッとしない、音もかなり穏やかなギターで「なんだ、このギターは、たいしたことないな」なんて思ってしまうんだが、これが大間違い。

聴けば聴くほど、深みがあるというか「こく」が出てくる。そして、ふっと濃いファンキーな芳しき香りが漂う、そんなギターを奏でるのがジム・ホール。

彼のキャリアを振り返ると、 ミュージシャンとしては、結構、不遇な時代が長く、リーダー作が少ないのが残念だが、その思いを払拭して余りあるのが、この『It's Nice To Be With You - Jim Hall iin Berlin』(写真左)だ。

なんと、このアルバムは、彼の2枚目のリーダー作である。1969年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Jimmy Woode (b), Daniel Humair (ds)。
 

Jim_hall_in_berlin_3

 
冒頭の「Up,Up and Away」。一聴すると地味めなギターなのだが、少しボリュームを上げて聴くと、実に熱い熱いギターがスピーカーから流れてくる。そう、ジム・ホールのギターを愛でるには、ある程度のクオリティのある、しっかりとしたオーディオ・セットが欲しい。そして、ちょっとボリュームを上げて聴きたい。

ベースのジミー・ウッドもドラムスのダニエル・ヒューマイヤーも、どっちかと言えば、ジャズ界では無名に近い、ベルリン界隈のローカル・ミュージシャンだが、これがまた素晴らしい演奏を繰り広げてくれるのだから、ジャズって裾野が広い。図太いベースライン、繊細でかつダイナミックで多彩なドラミング。バックが、更にホールのギターアドリブを盛り上げる。

3曲目の「Young One,For Debra」と6曲目の「IIn A Sentiimentall Mood」は、ジム・ホールのソロによる多重録音。ホールのシングル・トーンが冴える、ため息をつきたくなるような、耽美的な静謐感溢れるソロ。最近流行の「ヒーリング感」が溢れるような、人の心に優しい演奏だ。

今をときめくジャズ・ギタリストのキーマンの一人、パット・メセニーが、お気に入りの一番に挙げるジャズ・ギタリスト、それがジム・ホールなのだ。なんだかパットの気持ちが良く判るなあ。そんな気にさせてくれるナイスなアルバムです。

 
 

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2013年7月14日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・19

全くの衝動買い。David Benoit『Here's to You, Charlie Brown ! : 50 Great Years !』(写真左)。デビット・ベノワは、フュージョン・ジャズからスムース・ジャズのキーボード奏者のビッグネーム。

聴きやすいジャズ・ピアノが良いなあ思ったのと、ジャケットのチャーリー・ブラウンとその仲間達のジャズ・バンドの絵が可愛くて、ついつい買ってしまった。ほんと、このアルバムに出会った瞬間、「こんなアルバムあったんや」と思わず呟きました(笑)。

買って聴いて、これがなかなか良い。このアルバム、スヌーピーやチャーリー・ブラウンでおなじみの人気漫画『ピーナッツ』の50周年と2000年2月12日に逝去した作者チャールズ・ シュルツに対する追悼の意も込められた記念アルバムである。

ちなみにパーソネルは、David Benoit (p), Vince Guaraldi (p), Christian McBride (b), Peter Erskine (ds,per), Marc Antoine (g), Russell Malone (g), Michael Brecker (ts), Chris Botti (tp), Al Jarreau (vo)。そして、なんと、プロデューサーは、かのフュージョン・ジャズのヒット盤請負人Tommy LiPuma。
  
David_venoit_charlie_brown
 
ベノワ、マクブライド、アースキンというピアノ・トリオの編成がベースになっている。そのトリオに様々なゲストを迎え、そのゲストの顔ぶれと言えば、テナーサックスのマイケル・ブレッカー、ヴォーカルのアル・ジャロウ、アコギのマーク・アントワン、トランペットのクリス・ボッティなどなど。

このメンバーとゲストを見て、このアルバムの内容、悪かろうはずがない。TVアニメでお馴染みのナンバーやオリジナルを、様々なフォーマットとメンバー構成で聴けるのが「本当に楽しい」。

フュージョン・ジャズからスムース・ジャズのキーボード奏者のビッグネームのベノワなので、完璧フュージョンからスムース・ジャズかと思ったが、どうしてどうして、これが結構、純ジャズ的な演奏を繰り広げていて、ジャズのアルバムとしても十分に楽しめる。これは、ベースの クリスチャン・マクブライド、ドラムのピーター・アースキンに負うところが大きいですね。

「ライナス&ルーシー」「チャーリー・ブラウンのテーマ」「レッド・バロン」あたりが聴きどころかな。とにかく、楽しいですよ。ジャズの好きな方は勿論、「ジャズって何」とか「ジャズを聴きたいけど、どのアルバムが良いの」 といった、ジャズ初心者の方にもお勧めです。
 
   
 
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2013年7月13日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その15

さあ、夏たけなわ。今年は早々に梅雨も明けて、猛暑猛暑の毎日が続いています。それでも夜になると、少しだけ気温も下がり、少しの時間、エアコンを止めて、自然の風を部屋に入れて、夏の夜の雰囲気を楽しんでいます。

そんな夏にピッタリのジャズは、やっぱり「ボサノバ・ジャズ」。今年も、ボサノバ・ジャズの特集を続けて行きます。「夏はボサノバ・ジャズ」のシリーズ、今回は第15回目。今日は「Tamba 4(クアトロ)」。

クラシック畑から飛び出したピアニスト、ルイス・エサ。1960年に前身となる「タンバ3」を結成。そして1967年、ドリオ・フェレイラが加入し「タンバ4(クアトロ)」を結成。ちなみに、タンバ4のパーソネルは、Bebeto(fl,b,vo), Luiz Eca(p,org,vo), Dorio Ferreira(b,g,per,vo), Rubens Ohana(ds,jawbone,cga,vo)。タンバ3でベースを弾いていたベベート・カスティーリョが、タンバ4では主にフルートを担当している。

この「タンバ4」の特徴は「フルート・カルテット」。フルートとピアノの絡みが実に印象的なカルテットで、そのフルートとピアノの絶妙な絡みは、ボサノバやサンバなど、ブラジリアン・ミュージックにピッタリ。

そしてもう一つの特徴が「ダイナミックなアンサンブル」。オーケストラの様なダイナミックなアンサンブルは、「タンバ4」の特徴です。ルイス・エサはクラシック・ピアノ出身であり、その辺がきっと影響しているのだと思います。
 

Tamba4_we_and_the_sea

 
その「タンバ4」の最初のアルバムが、Tamba 4『We and the Sea』(写真左)、邦題は『二人と海』。収録曲を見渡すと、6曲目の「Dolphin」がルイス・エサの作曲である以外は全て、ボサノバ名曲のカバーである。アントニオ・カルロス・ジョビンやバーデン・パウエル、ロベルト・メネスカルといったボサノバのアーティストの作品がズラリ。

ということで、このアルバムはボサノバ集なのか、と思いつつ、心地良い耳当たりの優しい演奏が来るのかと思いきや、冒頭の「O Morro (The Hill)」を聴くと、まずそのダイナミックでハードな演奏にビックリする。実にハードボイルドな演奏である。ボサノバの柔らかで癒しの音の面影は全くない。

ここまでハードなボサノバ・ジャズだと逆に爽快感を感じる。「スカッと爽やか、タンバ4(クアトロ)」。演奏の水準は高い。

2曲目以降も、基本的にはエッジの立ったハードタッチのボサノバ・ジャズが続くが、1曲目のダイナミズムはちょっと後ろへ下がって、グッと叙情的に。ベベトのフルートとルイス・エサのピアノの絡みは非常に美しく、それはもう惚れ惚れするような音世界である。

特に、2曲目の「Moa Flor (Flower Girl)」、4曲目「Nos e O Mar (We and the Sea)」は聴きものです。夏はボサノバ・ジャズ。ちょっと硬派な「タンバ4(クアトロ)」。日本では余り馴染みの無いグループなんですが、お勧めです。

 
 

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2013年7月12日 (金曜日)

『キリマンジャロの娘』は語る

『Miles in The Sky』でいきなり、エレクトリック・ジャズに転身したマイルス。冒頭の「Stuff」が8ビート・ジャズ。マイルス初の8ビート・ナンバー。エレクトリック=8ビートという単純な図式を感じる。この『Miles in The Sky』の中で、この「Stuff」だけが実験的なナンバーだった。

続くエレクトリック・マイルスの2枚目が『Filles De Kilimanjaro(キリマンジャロの娘)』(写真左)。1968年6月のセッションのパーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b), Tony Williams (ds)。「Petits Machins (Little Stuff) 」「Tout De Suite」「Filles De Kilimanjaro」の3曲が演奏されている。

そして、1968年9月のセッション。パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Chick Corea (el-p), Dave Holland (b), Tony Williams (ds)。黄金のクインテットから、Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b)が抜けて、チックとホランドに代わっている。 「Mademoiselle Mabry」「Frelon Brun」の2曲が演奏されている。

この2つのセッションが収録されているところがこのアルバムの重要なポイント。マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏は、ハンコックだけがエレピを弾く。ロンのベースはエレクトリック・ベースだが、エレベ独特の弾き方にはなっていない。ハンコックのエレピの響きだけがエレクトリックで、演奏全体の雰囲気は、アコースティック・マイルスと変わらない。

でも、ビートは8ビートである。この マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏を聴いていると、ジャズは4ビートだけではなく、8ビートでもしっかりとジャズになるということが良く判る。8ビートに乗って、モーダルな演奏も全く問題無く展開し、このアルバムでは、実にアーティステックで、かなり自由度の高いモーダルな演奏が繰り広げられている。 
 

Filles_de_kilimanjaro

 
このマイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏の3曲を聴いていると、この演奏は8ビートであり、ハンコックはエレピを弾き、ロンはエレベを弾いてはいるが、内容的にはアコースティック・マイルスの限りなく自由度の高いモーダルな純ジャズな演奏と言って良い。でも、その内容たるや、限りなく自由度の高いモーダルな純ジャズな演奏の中でも最高峰の演奏である。これはこれで凄い。

しかし、1968年9月のセッション、チックとホランドが参入したエレ・マイルスな演奏は、マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏とは明らかに異なる。チックのエレピ、ホランドのアコベ、どちらともエレクトリック前提の、エレクトリック楽器独特の響きを宿している。ホランドはアコベを弾いているんだが、弾き方は明らかにエレベのテイストなのが面白い。

ここでマイルスは知る。アコースティック・ジャズはアコースティック・ジャズなりの演奏の仕方があり、エレクトリック・ジャズにはエレクトリック・ジャズの演奏の仕方があるということを。エレクトリック楽器にはエレクトリック楽器なりの感性と弾き方があるということを。

演奏するメンバーは適材適所。アコ・ジャズが得意なメンバーが、エレ・ジャズもいけるかと言えば、そうじゃない。そして、8ビートでも、ジャズは十分いけるということ。8ビート=エレクトリック・ジャズでは無いということ。エレクトリック・ジャズには、エレクトリック・ジャズなりの演奏テーマや演奏スタイルが必要なこと。

前作『Miles in The Sky』の兄弟盤の様な『Filles De Kilimanjaro』。この2枚のエレ・マイルス黎明期のアルバムで、エレ・マイルスのコンセプトが固まりだしたのではないか、と思われる。

先人の実績の全く無い、1968年当時のエレクトリック・ジャズ。マイルスは次作『In A Silent Way』で、エレクトリックならではの、マイルスならではのエレクトリックな演奏を展開する。そのコンセプトのベースは、この『Miles in The Sky』と『Filles De Kilimanjaro』の2枚に散りばめられている。

 
 

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2013年7月11日 (木曜日)

ラテン・フュージョンの優れもの

夏は暑い。暑いと熱気溢れるハードなジャズ演奏を聴くことが辛くなる。ついつい耳当たりの良いボサノバ・ジャズなどに安易に走ったりする。それも悪くはないんだが、ボサノバ・ジャズばっかり聴いていると基本的に飽きる(笑)。

実は私、松和のマスターこと、松和幸太郎は、ラテン・ジャズが大好きである。ラテン音楽は、中南米発祥の音楽の総称。ルンバ、マンボ、サルサ、カリプソ、スカ、レゲエ、ブーガルー、サンバ、ボサノヴァ、タンゴ、クンビアなどなど。前世は中南米人ではなかったかと思う位、どのスタイルも好き、どのスタイルを踏襲したジャズも大好きである。

よって、夏はラテン・ジャズが結構な確率でヘビロテになる。スパニッシュな雰囲気がプンプンするラテン・ジャズなんて、猛暑の夏に大のお気に入りである。そして、ラテン・ジャズはフュージョン系の演奏が一番良い。

そんなラテン・フュージョンのお気に入りのアルバムの一枚が、本多俊之&Burning Waves『Spanish Tears(スパニッシュ・ティアーズ)』(写真左)。1980年のリリース。ちなみにパーソネルは、本多俊之 (as,ss,fl), 野力奏一 (p,el-p), 井上哲也 (el-b), 平山恵勇 (ds), 帆足哲昭  (per), 上田力 (arr,cond), Freddie Hubbard (tp), 森園勝敏 (g), 奥平真吾 (ds)。

ギターの森園勝敏、トランペットのフレディ・ハバードの参加が目を惹く。他の日本人メンバーも優秀ミュージシャンがズラリ。これだけのメンバーを集めれば、よっぽどのことが無い限り、傑作がものに出来ること間違い無しである。
 

Spanish_tears

 
このアルバムは、なんといっても、冒頭の「I Never Forget」が良い。テーマ部のキャッチャーで爽快なメロディーを、力強いアルトで本多が吹き上げていく。これがなんといっても良い。そして、アドリブ部に入って流麗な節回しとアルトのブラスな響き。これがまた良い。

この「I Never Forget」を聴いて、どっかで聴いたことあるぞ、テレビのコマーシャルのテーマ曲だったような気がする、と思われる方は、1970年代のフュージョン・ジャズ時代をリアルタイムで駆け抜けた、僕達と同じ「昭和のおじさん世代」である。

そう、この「I Never Forget」は、当時の東芝ラジカセのテレビ・コマーシャルのテーマ曲でした。ラジカセがテレビのコマーシャルになった時代である。
 
ちなみに余談であるが、東芝のオーディオ・ブランドは何と言ったでしょう。「オーレックス」ですね。この「オーレックス」がスッと口から出る方は、1970年代のオーディオ・コンポ・ブームをリアルタイムで駆け抜けた僕達と同じ「昭和のおじさん世代」である(笑)。

2曲目「Eastern Legacy」以降、ラストの「Ode To Autumn ( 秋に捧ぐ )」まで、スパニッシュな雰囲気がプンプンするラテン・ジャズが「てんこ盛り」である。どの曲も良い。どの演奏もピチピチとした若さ弾ける、疾走感と爽快感溢れる、素晴らしい内容のラテン・フュージョンである。上田力のアレンジの勝利。

日本のフュージョン・ジャズの秀作として、お勧めの逸品。フュージョン者にはマスト・アイテム。聴くべし。

 
 

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2013年7月10日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・44

昔々にゲットしたビーナス・レコードのホーン・ベストの1曲目『煙が目にしみる』。このエディ・ヒギンス& スコット・ハミルトンの演奏がいたく気に入った勢いで、当の本人たちのオリジナル・アルバムを即ゲットした。

Eddie Higgins Quartet featuring Scott Hamilton『Smoke Gets In Your Eyes』(写真左)。 エディ・ヒギンス名義&スコット・ハミルトン共演、アルバム名はズバリ『煙が目にしみる』。

これがまた、実に渋く「ニクい」アルバムで、全編スローバラードからミッドテンポの、これがまた、格好良いテナーと趣味の良いピアノの組合せ。

スコット・ハミルトンといえば、1970年代、フュージョン・ジャズ全盛時代に、スイング・ジャズなスタイルという古典的なスタイルを引っ提げ、その個性的なテナーで注目を集めたサックス奏者である。このアルバムで、僕はそのスコット・ハミルトンと20年ぶりの再会を果たしたわけ。

実は、このスコット・ハミルトンのテナーが凄く良い味出してるんだよな〜、このアルバム。本当に「これぞジャズ・テナー」って感じの堂々たるブロウには惚れ惚れする。

早速、CDをトレイに載せると、冒頭の「メランコリック・ラプソディ」からハミルトンはやってくれるではないか。スローな味のある演奏で、渋いテナーが「のっけから全開」である。バックのヒギンスのピアノも凄く良い味出してる。滋味溢れる伴奏ピアノとでも形容したら良いか。
 

Smoke_gets_in_your_eyes

 
2曲目は、ミッドテンポで、小粋にスイングしまくる「イッツ・ア・ロンサム・オールド・タウン」。自然に体が動いて、リズムに合わせて、ついつい膝を叩いてしまいます。

3曲目の「あなたは恋を知らない」なんぞは、絶妙のバラード演奏。しみじみしてしまいますね。そして、 4曲目は「バイ・マイセルフ」。すこしアップテンポの楽しい、そして少し「もの悲しくて」とても味わいのある、こくのある演奏。

そして、5曲目は、やってきました「煙が目にしみる」。これは、もう説明はいりませんね。実に渋い緩やかなテナーが、趣味の良いリズム・セクションに乗って、朗々とブロウしていきます。歌心溢れる古典的スタイルのテナー。安定感、安心感、説得力抜群です。

そして、極めつけは9曲目、ディズニーの名曲「星に願いを」。この演奏にはもう何も言葉はいらない、そんな雰囲気一杯にググッとくる、情感溢れる素晴らしい演奏です。

ハミルトンのテナーもヒギンスのピアノも、それはそれはとても素晴らしい。暑い夏に一服の清涼剤の様な、爽快感溢れ、シンプルに語りかける様なテナーとピアノ。

快適なテンポでスインギーに演奏される名曲あり、情感たっぷりに歌い上げられるバラードあり。真夏の季節のジャズに爽快なサックスあり、小粋なピアノあり。このアルバム、この夏の季節に、寝苦しい夜の季節に捧げたい。

 
 

大震災から2年3ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年7月 9日 (火曜日)

ユニークで新鮮な感覚のボーカル

ジャズの中で、ビッグバンド・ジャズとジャズ・ボーカルは、かなり後回しにした。ジャズをメインに聴き始めて、今年で37年になるが、ビッグバンド・ジャズとジャズ・ボーカルは10年ほど前から、しっかりと聴き始めた。

そのせいかもしれないが、ビッグバンド・ジャズもジャズ・ボーカルも、普通のジャズ盤紹介本に必ず出てくる、絶対にこれは外してはならない、という定番というか大御所というか、そういう有名盤、有名ミュージシャンに囚われることが無くて、あまり頑張って聴くことが無い。どちらかと言えば、自分の感性のまま、これは、という盤を聴いてきた。

例えば、このアルバムもiTunesで試聴して、即ゲットである。土岐麻子『Standards On the Sofa』(写真左)。このアルバム、ボーカリストの声が良い。副題は「土岐麻子ジャズを歌う」。

このアルバムで、土岐さんのボーカルを初めて聴いたが、この土岐さんの声は実にユニーク。言葉で言い表すには、適当な言葉が見あたらないが、感覚的に言うと「くしゅっ、ふんわり、ふにゃふにゃ」。

優しく癖が無く、安らぐような真っ直ぐな声。軽いスイング感とヴィブラートを乗せ過ぎない素直な歌唱。加えて、土岐さんのボーカルには、ほのかなコケティッシュさを感じて、そこがまた「良い」。

CDのスイッチを入れるやいなや、いきなり飛び込んでくる、ちょっと高めでふんわりした女性の声。 おおっ可愛いではないか、って感じ。おじさん族にはとっては、かなりヤバイですねえ(笑)。軽くて、ふんわりして、ふにゃふにゃ唄っている、そのユニークな雰囲気に、ついニヤニヤしてしまう。
 

Standards_on_the_sofa

 
さて、唄われている歌のリストに目をやると、ローリング・ストーンズの『(I Can't Get No) Satisfaction』、マイケル・ ジャクソンの『Human Nature』、スティービー・ワンダーの『Another Star』などをカバーしており、これが、なかなかに秀逸な出来。

特に、ローリング・ストーンズの『Satisfaction』はユニーク。 この土岐さんの「くしゅっ、ふんわり、ふにゃふにゃ」なボーカルで、かのストーンズの『Satisfaction』 を唄うのだ。
 
もうそれはそれは、オリジナルの硬派的な雰囲気はブッ飛んで「くしゅっ、ふんわり、ふにゃふにゃ」した『Satisfaction』が展開される。それはもうユニークで、新鮮な感覚そのもの。

間奏に入って、実に良い感じのサックスが入りますが、サックスを吹いているのは、土岐さんのお父さんである土岐英史さん。「くしゅっ、ふんわり、ふにゃふにゃ」なボーカルにメロメロになった聴き手にガツーンと硬派なテナーの一発。そんな感じの土岐秀史さんのサックス。これがまた素敵なのだ。

そして、ラストのボーナストラック、バリー・ホワイト&ラブ・アンリミッテド・オーケストラの演奏で有名な『Play Our Love's Theme(愛のテーマ)』のカバーが秀逸。ラストのこの曲、70年代、リアルに聴いてきた僕達にとってはグッときますね。JALの提供による、あの深夜のFM放送「ジェットストリーム」で、テーマ曲ではありませんが、よく流れていた曲です。懐かしいなあ。

夏真っ盛り。じりじり暑い昼下がり。エアコンの効いたカフェで、本でも読みながら、涼しげな海の写真でも眺めながら、じんわり耳を傾けるのにピッタリな、そんなライトな感覚が素晴らしいボーカル・アルバムです。

 
 

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2013年7月 8日 (月曜日)

ほわほわ不思議なボサノバ

菊丘ひろみは、ジャズ・シンガーではなく、出身は純粋なボサノバ・シンガー。ほわほわした、ボサノバならではの不思議な雰囲気に惹かれて、彼女のデビュー盤を入手した。Hiromi Kikuoka『Linda Flor』(写真左)。2002年8月のリリース。

菊丘ひろみはボサノバ・シンガー、ただし、このアルバム全体を占める雰囲気はボサノバ・ジャズの雰囲気がプンプン。バックの演奏もしっかりしたものだし、サンプリングや打ち込みなど、現在の流行のリズム作りも見え隠れし、わざとノイズを効果音として取り入れるなど、最新の流行を取り入れた、いわば、新しいボサノバ・ジャズ的雰囲気なのだ。

それと、このアルバムの特徴は、歌唱はすべてポルトガル語で歌われていること。久しぶりに腰を据えて、ポルトガル語のボサノバを聴いた訳だが、やはり、ボサノバの歌唱はポルトガル語がベストやねえ(ただ、何を歌っているか、さっぱり判らんけど・笑)。

ポルトガル語の歌唱によって、 ボサノバ特有のけだるさ感がクッと濃厚になる。その濃厚さは聴いた時の心地よさにつながり 「癒し」につながる。
 

Linda_flor

 
彼女のアルト・ボイスは、ボサノバの癒しの感覚にぴったりとフィットしている。アルバムに収録されている曲も、ボサノバの世界では定番と呼ばれるものばかりで、その定番ソングを最新の録音技術をバックに新たな感覚で聴かせる、なかなかにニクイ演出をしてくれるアルバムだと言える。

それと、実は正直に白状すると、このアルバムを購入する直接のきっかけになったのが、ジャケットのデザイン。このアルバムのジャケット・デザインは秀逸だと思うんやけど、どうやろ。

文字ロゴの配置や顔写真とのバランス、全体の色合いなど、なかなかなもんやと思います。LPの時代とは違って、CDはジャケットの面積が狭く、デザイン的に腕をふるうチャンスが少ないのだが、なんせ、ジャケットはアルバムの「顔」。CDになって、その面積が狭くなったとはいえ、印象に残る、優れたジャケットデザインを、もっと輩出して欲しいと思うのは僕だけだろうか。

このアルバム、雰囲気良し、ジャケット良し。「ニュー・ワイン・イン・オールド・ボトル」という諺がぴったりの素敵なボサノバ・ジャズのアルバムです。

 
 

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2013年7月 7日 (日曜日)

南から来た男・秀逸セカンド盤

1979年、突如としてヒットチャートに躍り出た『Christopher Cross(南から来た男)』。まずもって、クリストファー・クロスとは何者か? で、当時、僕達は大混乱した。しかも、覆面ミュージシャンとしての登場。更に僕達は混乱した。

トレンディーなメンバーの強力バックアップによる「ソフト&メロウ」なサウンドは、70年代後半から80年代前半にかけて一世を風靡したAORサウンドの極致と言って良いものでした。良質な「大人のロック」的な演奏が素晴らしかったですね。反面、これはクリストファー・クロスは大変だぞ、って思いました。このアルバムを越える次作の創作は並大抵では無い。

さすがに、セカンド・アルバムの登場まで3年の月日が必要でした。1983年に満を持してリリースされたクリストファー・クロスの第2作『Another Page』(写真左)。フラミンゴのアップが凛々しいジャケットと共に、クリストファー・クロスは還ってきた。

これがまあ、良い内容なんですよね。リリース当時、早い時期に手に入れましたが、このアルバムを聴いた時、ちょっとした感動を覚えました。あのAORサウンドの極致と言って良いファースト・アルバムの内容を凌駕している部分がそこかしこに聴くことが出来る。素晴らしい才能だなあ、って大いに感心したのを昨日の事の様に覚えています。

このセカンド・アルバムでも、多くの名うてのミュージシャン達がバック・アップしています。まずは、TOTOのスティーブ・ルカサー。流れる様な印象的なフレーズのギター・ソロがそこかしこにフューチャーされています。加えて、TOTOからジェフ・ポーカロ、マイク・ポーカロ等も参加しています。なんだかTOTO御用達って感じ(笑)。
 

Another_page

 
このアルバムでは米国西海岸ロックのメンツが多く参加しています。ドン・ヘンリー、マイケル・マクドナルド、J.D.サウザー、ジェイ・グレイドンなどの名前がクレジットされています。3曲目の「What Am I Suppose To Believe」では、西海岸ロックの歌姫、カーラ・ボノフとのデュエットを聴かせてくれます。これがまた良い。カーラの声が良い。一聴してカーラだと直ぐ判る。

米国西海岸ロックの面々の参加の影響もあるのか、このセカンド・アルバムはには、爽快感、疾走感が感じられる、健康的なAORといった雰囲気が実にグッドです。AORと言えば、アーバンな雰囲気漂う大人のロック、って感じが定番かと思いますが、このクリストファー・クロスのセカンド・アルバムはちょっと違う。でもこの爽やかな太陽の光を感じる健康的な雰囲気、僕は好きです。

アルバム全体の音作りは、メリハリが効いて、音のエッジが立ち気味の、デジタル録音が主流となった1980年代を感じさせるもの。でも、リズム・セクションは、まだまだ人間的な雰囲気が強く漂っていて、聴いていて実に味がある。やはり、何時の時代もリズム・セクションは人間が担うべきだ。

良いAOR盤です。プロデューサーのマイケル・オマーティアンの手腕が光ります。もちろん、クリストファー・クロスの透明感溢れるボーカルは最高です。セールス的には前作に及ばなかった様ですが、内容的にはこのセカンド・アルバムに僕は軍配を上げたいですね。AOR者には必聴のアルバムです。

 
 

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2013年7月 6日 (土曜日)

アーサー王と円卓の騎士たち

70年代プログレッシブ・ロックのアイドルの一人、リック・ウェイクマン。彼のキーボードについては、とてもお気に入りだった訳だが、何故か高校時代、僕の周りにはリック・ウェイクマンを愛でるロック者はいなかった。周りは皆、キース・エマーソン派やったなあ。

さて、そんなリック・ウェイクマン、ソロ作の第一弾が『The Six Wives of Henry VIII(ヘンリー8世と6人の妻)』、第二弾が『Journey to the Centre of the Earth(地底探検)』と意欲的な企画ものアルバムをリリースしてきた。

が、第一作は、思いっきり肩に力が入った直球勝負的な、とにかくあらゆる種類のキーボード弾きまくりという、ちょっと躁状態に似たロックなソロアルバムで、リック・ウェイクマンのマニアには喜ばれる内容ではあるが、あまり一般受けするものではなかった。

ちなみに第二作は、今度は一般受けするには、やはりクラシックとの融合だろう、と目の付け所は良かったのだが、かなりクラシックよりの壮大な音楽になってしまい、しかも予算の関係での短縮版としてリリースせざるを得ない状況もあり、ちょっと消化不良的な印象が残った。それでも当時は意外と売れたけどね。英国ヒットチャートでは1位に輝いている。

さて、前2作のソロ盤の反省を基に、ロックとクラシックの融合のバランスが程良く、ロック・バンドとオーケストラの同化が一番上手くいった企画ものアルバムが、第三弾の『The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table(アーサー王と円卓の騎士たち)』(写真)である。1975年のリリースになる。

1975年と言えば、僕は高校二年生。このアルバムについての想い出は多々あるんだが、まず思い出すのが、このアルバムを買う金が無くて、FMのエアチェックに頼った時のこと。FM大阪のビート・オン・プラザである。この番組で、リック・ウェイクマンの「アーサー王」がオンエアされるのは、FM番組雑誌でチェック済み。
 

Wakeman_arthur

 
しかし、クラブ活動の関係上、午後6時からの放送は間に合わない(当時エアチェック用のタイマーは持っていなかった)。しかし、このFM番組、日が替わって夜中の3時から再放送があった。この夜中の3時の再放送でのエアチェック一発勝負である。絶対に寝てはいけない。夜中の3時まで必死で起きていて、エアチェックに成功。翌日、映研の部室にエアチェックほやほやのカセットを持ち込んで、満足感一杯になりながら、聴き込んだことを覚えている。

さて、このアルバムの内容は、絵に描いた様なロックとクラシックとの融合で、クラシックの部分のアレンジがちょっと古くさいところが気になるが、クラシック・オペラの雰囲気で聴くには相応のアレンジなんだろう。今の耳で聴いても、そのアレンジは古い。古典的で俗っぽい、大衆受けするアレンジではある。

それでも、このアルバムについては、前2作同様、リック・ウェイクマンのキーボード・プレイを存分に愛でることが出来る。結局のところ、リック・ウェイクマンのソロ作である。リック・ウェイクマンのソロが一番映え、リック・ウェイクマンのプレイが一番冴えている。

しかし、このロックとクラシックの融合のテーマに「アーサー王」を持ってくるところは、リック・ウェイクマンもあざといなあ。「アーサー王」については英国人にとっては基本的に「ツボ」である。この「アーサー王」をテーマにロックとクラシックの融合にチャレンジしてみました、と言われるだけで、もうその手に落ちたも同然。日本人についても英国人とあまり変わりが無いんでしょうね、その感覚は(笑)。

僕達の様な「リック・ウェイクマン者」にとってはマスト・アイテムなアルバムですね。本当に、リック・ウェイクマンのキーボード・プレイを心ゆくまで楽しむことが出来ます。今から振り返って聴き直してみると、さて、プログレ者の方々に絶対お勧めかと言われれば、ちょっと趣味性が高いかなあ、とも思います。普通のプログレ者の方々には、このアルバムは、ちょっとチャレンジブルかもしれません(笑)。

 
 

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2013年7月 5日 (金曜日)

大フュージョン・ボーカル大会

日本で人気のジャズ・ボーカリスト、ケイコ・リーの通算8枚目のアルバム『愛の奇蹟(Wonder of Love)』(写真左)。ジャケットが格好良い。ヒップ・ハングのジーンズをまとったリーが、とにかく、セクシーでエネルギッシュ。これ、LPサイズだったら迫力あったろうなあ(笑)。

ジャケットはアルバムの内容を語るというが、まさにこのアルバムは、ジャズ・ボーカリストの範疇だけでは留まらない、ジャズはもとより、R&Bあり、バンプあり、ロックンロールありの、敢えて言えば、大フュージョン・ボーカル大会の傑作。

まず、冒頭、アカペラで歌うタイトル曲が格好良い。この調子、アカペラ中心でムード良く進むのかと思いきや、2曲目の「ピンク・キャデラック」でガツンとかませてくれます。ナタリー・コールの1988年のヒット曲のカバーでギンギンのロック調。これがまあ、凄い。普通のジャズ・ボーカリストでは無い。聴かせてくれる。

ここまでで、既に梅雨の蒸し蒸し解消、ストレス解消。とにかく、この2曲目はリーのボーカルも、バックのドキドキ・モンスターズの演奏もスゲー格好良い。そう、このドキドキ・モンスターズが凄い。ちなみにパーソネルは、吉田次郎 (g), 野力奏一 (p,key), 坂井紅介 (b), 渡嘉敷祐一 (ds)。名うての曲者揃い。実は、このアルバム『愛の奇蹟』全編に渡って、この「おっちゃん」達の演奏が実に「濃い」。
 
 

Wonder_of_love
 
 
3曲目は、 ジョージ・ベンソンの懐かしいヒット曲「ダーン・ユア・ラヴ・アラウンド」は、ベンソン譲りのソフト&メロウなムード。続くランディ・クロフォードの「アルマズ」はしっとりと歌い上げる珠玉のバラード。ノリノリのロックあり、落ち着いた大人のムード漂う上質なフュージョンあり、実に楽しいボーカル盤である。

あともう一つ、隠れたお勧めは、TLCをカバーした12曲目の『ウォーターフォールズ』。ケイコ・リーのディープ・ボイスが映える。そして、ラストの「グッド・ナイト」がしみじみして良い。夜、床に入る前のひとときにピッタリのラスト曲。

ほかにも、コモドアーズ、スティーヴィー・ワンダー、イヴァン・リンス、ホイットニー・ヒューストンらのヒット曲を実に格好良く歌っている。1970年代以降のポップス曲が中心なのだが、すべて学生時代に、ケイコ・リーが良く聴いたものなのだとか。この人はこういう曲を聴いて育ったのか、と思わず親近感。同じ世代ですね。

本格的ジャズ・シンガーと評されることの多いケイコ・リーだが、そういう既成概念をぶち壊す、様々な魅力が散りばめられて立派だ。逆に、昔ながらのジャズ・ボーカルからすると、掟破りのボーカル盤である。掟破りではあるが、僕はこのフュージョン・ボーカルが大好きだ。長年の愛聴盤です。
 
 
 
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2013年7月 4日 (木曜日)

「癒し系」の女性ボーカル

梅雨もたけなわ、ハッキリしない天気が続きます。湿度も気温も高くなってきて、身体が慣れなくて、ちょっとしんどい思いをしている方々も多いのでは無いでしょうか。この季節は体調管理に気を遣います。

そんな時、ボーカルのジャンル言葉としてしっかりと定着した、いわゆる「癒し系」の女性ボーカルで、心を休めるというのもひとつの手ではあります。例えば、近年、女性ジャズ・ボーカリストとして人気を定着させた英国の女性歌手、ステイシー・ケントのバラード集などが、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で、この季節にはよくかかります。

Stacey Kent『Dreamsville』(写真左)などがお気に入りの一枚でしょうか。ステイシー・ケントが2000年に録音した、自身のリーダー作の第4作目です。

「癒し系」の女性ボーカルとは、簡単に言うと、ビリー・ホリディやカーメン・マクレエのように、低めの声で唸るような、こぶし豊かな、日本で言う「演歌系」のような本格派ボーカルではない、ナチュラルな歌い方で、ちょっとコケティッシュで、ちょっと可愛くて、それでいて仄かに色気漂う女性ボーカル。

こう書くと、なんだか「おやじ趣味」な感じがしないでもないが、変な「イヤらしさ」が全く無いので、すんなりと聴き通せてしまうところが、このステイシー・ケントのボーカルの役得なところ。
 

Stacey_kent_dreamsville

 
ステイシー・ケントは、もともとは、ニューヨーク出身の本格派ジャズ・ヴォーカリスト。このアルバムは彼女のキャリアの中でも意欲的な企画盤で、心休まるバラード集となっている。少々ハスキーでコケティッシュで甘酸っぱい彼女の歌声で、安らぎ系のバラードをたっぷりと堪能できるところが「癒し系」ボーカリストの称号を与えられた所以。

収録された曲を眺めて見ても、いやいや、なかなかスタンダードで魅力的なバラード曲がズラリと並んでいて、これはこれで壮観ですらある。決して受けの良い有名曲ばかりを選んでいる訳では無い。知る人ぞ知る、ちょっとマニアックなスタンダード曲も選曲されているところがこのアルバムの優れたところ。

バック・バンドも実に趣味の良いサポートで好感が持てる。特に、ステイシー・ケントの夫君である、ジム・トムリンソンのテナー・サックスが、力強くもジェントルなブロウで、ステイシーのボーカルを盛り立てているところが実に爽やか。

とにかく、柔らかで優しくて、ちょっと色気があって、なかなかに「癒される」のがこのアルバムのポイント。40歳を過ぎて公私ともに責任ある立場にたって「毎日がストレス」なんて人にお勧めの「癒し系」の女性ボーカルものです。若いジャズ者の方々には、ちょっと、物足りないかも。それでも、やっぱり「癒し系」の女性ボーカルが、この梅雨の季節、心休めるのにピッタリなんですよね。

 
 

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2013年7月 3日 (水曜日)

ブルーノートのボサノバ・ジャズ

ボサノバ・ジャズの最初のビッグな流行は1962年から始まった。1962年11月21日に、カーネギー・ホールでボサノヴァのコンサートが行われ、ジョアン・ジルベルト、カルロス・リラ、セルジオ・メンデス等が出演。一方、スタン・ゲッツは、チャーリー・バードと共に録音した『ジャズ・サンバ』をビルボード誌のポップ・チャート1位に送り込んだ。

以降、ボサノバとジャズの融合は続く。1960年代中頃まで、著名なジャズ・ミュージシャンはこぞって、ボサノバ・ジャズに手を染めた。流行に滅多に流されない、逆に流行を最先端で創り出す立場にあった、かの帝王マイルス・デイヴィスですら、ボサノバ・ジャズのアルバムをギル・エバンスとの合作でリリースしたりしている。

とまあ、この1960年代のボサノバ・ジャズのブームの勢いは凄まじく、ボサノバの本質を理解し、ジャズの本質や個性とアーティスティックに融合させた立派な内容のもののあれば、流行に乗って売れれば良い、って感じのコマーシャルな面だけを追求した内容の乏しいものまで、玉石混淆としていた。

そんな流行の中、かのジャズの老舗レーベル、ブルーノートもボサノバ・ジャズに手を染めるのであるが、さすがはブルーノート、流行に流されること無く、コマーシャルに走ることも無く、内容的にも立派な、アーティスティックなボサノバ・ジャズをリリースしている。この時代のブルーノートのボサノバ・ジャズに駄作は無い。

例えば、この4119番の、Charlie Rouse『Bossa Nova Bacchanal(ボサノバ・バッカナル)』(写真左)などが良い例だ。1962年11月の録音というから、ボサノバ・ジャズの最初の大ブームの真っ只中の盤。ブルーノートのボサノバ・ジャズって、しっかりとジャズしていて、決して俗っぽく無い。
 
Bossanova_bacchanal
 
チャーリー・ラウズは、かの個性派ピアニストの最右翼、セロニアス・モンクの長年のパートナーで、セロニアス・モンクのピアノに最も合ったテナーサックス奏者である。端正で歌心溢れるテナーで、かっちりと筋の通ったブロウが特徴であり、ジャズ・テナーにありがちなウェットでセンチメンタルな雰囲気は皆無、実に誠実で素直なテナーが特色。

そのラウズが、その誠実で素直なテナーで、当時、大流行していた「ボサノバ」をテーマに吹き込んだ、コンセプト・アルバムがこのアルバムである。ラウズのボサノバ・ジャズって実に誠実で、当時、コマーシャルに走ったアルバムにありがちな「ラフでいい加減で適当な」感じの手合いでは無い。

ラウズ自身の個性をしっかり活かしながらのボサノバ・ジャズなので、なんだか、それぞれのボサノバの曲自体が、ラウズの手にかかると「ちょっと格調高い」雰囲気が添加されて、実にアーティスティック。演奏全体の雰囲気も端正かつ誠実で、その清々しさが実に好ましい。僕は、このラウズの『ボサノバ・バッカナル』を聴くと、その端正かつ誠実な雰囲気に、「よっしゃ!」と気合いが入る感じがします。

選曲も実に誠実で、売れ筋の有名曲は、4曲目の「Samba De Orfeu」の1曲のみ。ライナーノーツによると、ラストのラウズの自作曲「One for Five」を除けば、他の曲は、ボサノバとして著名な、ボサノバの本質を理解するのに最適な、ボサノバとしての優秀曲をラウズ自らが選曲したそうです。

このアルバム、以前、東芝EMIより、紙ジャケ+ルディ・バン・ゲルダーのリマスターで再発されました。これが絶品の音。やはり、ブルーノートの諸作を聴くには、ルディ・バン・ゲルダーのリマスター盤が最適です。是非とも、ルディ・バン・ゲルダーのリマスター盤を入手してお楽しみ下さい。
 
 
 

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2013年7月 2日 (火曜日)

ジャズとディズニー曲との相性

ジャズを聴き始めた頃から不思議に思っているんだが、ジャズとディズニーのアニメ映画の主題歌・挿入歌とは相性が良くて、多くのジャズ・ミュージシャンが即興演奏のテーマに選んでいる。恐らく、メロディーがキャッチャーでコード進行がちょっとユニークなところが良いのかもしれない。

そんな中でもこのアルバムは飛び切り中の飛び切り、アルバム全編がディズニー・ソングなのだ。Dave Brubeck『Dave Digs Disney』(写真左)。これは楽しい。ディズニーのアニメ映画の主題歌・挿入歌の「てんこ盛り」。

ジャズ評論家やジャズ者の中で、ちょいと口の悪い方々は、このアルバムのリーダー、デイブ・ブルーベックを評して「スイングしないジャズ・ピアニスト」とか「四角四面のスクエアでスイングを知らないピアニスト」とか散々なのだが、このアルバムを聴いてみると、そんな評価は単なる勘違いに過ぎないことが良く判る。

さて、曲毎のご紹介。1曲目は「不思議の国のアリス」。ブルーベックのソロから始まり、お馴染みのフレーズが流れる。実に良い曲、実に良いインプロビゼーションだ。続く2曲目は「口笛吹いて」。「ピノキオ」の挿入曲だ。ジョー・モレロのブラッシュ・ ワークが素晴らしい。デスモントのまろやかにスイングするアルト・サックスも秀逸だ。
 

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3曲目は「ハイ・ホー」。かの「白雪姫」の挿入歌で、7人の小人たちが唄ったマーチ調のナンバー。 ハイテンポの4ビートで演奏され、カルテットが一体となった「のりにのった」演奏が実に楽しい。 4曲目は「星に願いを」。これはもう定番ですね。「ピノキオ」の挿入歌。メロディアスなデスモントのソロが素晴らしい。

続いて5曲目は「いつかは王子様が」。この曲は「白雪姫」の挿入歌。僕はこの曲が大好きなんですが、ワルツにのった印象的なテーマが素晴らしい。この曲のジャズ化は、後に、ビル・エバンスやマイルス・デイビスがジャズ化したものが有名になるんですが、このブルーベック・カルテットが初めてとのこと。ジャズ化が初めてとは思えないくらいの、ナチュラルで優れたアレンジ。軽快なワルツのテンポにのって、カルテットは強烈にスイングする。

そして、最後の曲は 「ワン・ソング」。これはなかなかに小粋な選曲ですね。知る人ぞ知る小曲ですよね。良い曲なんですが、この曲はジャズ化についてはマイナーな存在。これも「白雪姫」からのナンバー。

ディブ・ブルーベック・カルテットが一丸となった、スイング感溢れる、ジャズっぽい演奏が力強く繰り広げられる。全編を通じて、よくスイングした、実に愛らしいアルバムです。おやすみ前のひとときにどうでしょうか。

 
 

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2013年7月 1日 (月曜日)

クロスオーバーなボサノバ・ジャズ

このところ、ボサノバ・ジャズのブームが続いています。この季節になると、ボサノバ・ジャズをピックアップして、集中してリイシューされるほどです。世知辛くて、不安定な時代、「癒し系」のジャンルとして、ボサノバ・ジャズは脚光を浴びているのでしょうか。

ということで、今月から、ボサノバ・ジャズのお気に入りアルバムを時々ピックアップして、このブログでご紹介していこうかと思います。で、今日は、Antonio Carlos Jobim『Tide(潮流)』(写真左)を採り上げてみました。

ボサノバ・ジャズの巨匠と言えば、やはり、アントニオ・カルロス・ジョビン。ジャズ界に、ボサノバ・ブームを呼び込んだのは、テナーのスタン・ゲッツと、ボサノバの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビン。ボサノバ・ブームの発端は1964年の出来事だった訳だが、このアルバムは1970年の録音。ボサノバ・ジャズのブームが遠く去った時期の録音なんだが、これがなかなかの内容なのだ。

ジャズ界は、既にフュージョンの先駆けであるクロスオーバーのブームを迎えつつあって、このジョビンのアルバムは、そのクロスオーバー・ジャズ風のアレンジを全面に押し出したボサノバ・ジャズの名盤と言える。クロスオーバー・ジャズ風のアレンジを施されたボサノバ。これが意外と個性的で癖になる。
 

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出だしの1曲目は、ボサノバの名曲「イパネマの娘」。この名曲をクロスオーバー・ジャズの寵児、デオダートがゴージャスに編曲したインスト・ヴァージョン。いやいや〜、これがなかなかに心地良いのだ。

ボサノバというフォーマットは、様々なジャンルのアレンジに柔軟に対応するみたいなんだが、このクロスオーバー・ジャズ的なアレンジの「イパネマの娘」、純ジャズ等、他のアレンジよりも、ずっとボサノバの旨味を引き出している。以降、デオダートのアレンジが全開で、どれもがゴージャスな、クロスオーバー・ジャズ風のアレンジを施されたボサノバ・ジャズのオンパレード。

純ジャズとは違って、リラックスして普段着感覚で聴き込めるような、そんな「ゆったりとした」ボサノバ・ジャズです。夏の夜、エアコンの効いた部屋で本を読みながらのBGMに、夏の朝、爽やかな朝風が吹き抜ける中、朝食を採りながらのBGMに、生活の中のボサノバ・ジャズって雰囲気が素敵なアルバムです。

 
 

大震災から2年3ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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