ヘビー・メタルなビ・バップ
1978年リリース、The Brecker Brothers(ブレッカー・ブラザーズ)の4作目。ライブ盤と言いたいところだが、1曲目「East River」のみスタジオ録音という、不思議な構成の変則盤です。そのアルバムの名は『Heavy Metal Be-Bop』(写真左)。
名は体を表す、というが言い得て妙。ファンキー・フュージョンを旨とするブレッカー・ブラザースの音に、キッスやエアロスミスなんかの米国ハード・ロックの音をブレンドしたら、どうなるか。その答が、このアルバム『Heavy Metal Be-Bop』にあります。
「Heavy Metal」とは、ハードロック同様、エレクトリック・ギターの歪んだ音を強調した、過激なロックが基本。ブレッカー・ブラザースは、マイケルのサックス、ランディのトランペット、それぞれの音にワウワウやエフェクターをかけて、歪んだ音に加工している。なんだかマイルスみたい(笑)。
なるほど、ヘビー・メタルなビ・バップかあ。ビ・バップとは、ジャズ者の皆様ならご存じかと思いますが、ジャズの演奏スタイルのひとつ。複雑なコードに乗って、テクニックの限りを尽くして、アドリブ・フレーズを吹きまくる、弾きまくるスタイル。音楽というよりは「芸」に近い。そんな「ビ・バップ」なアドリブ・フレーズを全編に渡って繰り広げている。
ヘビメタな音でビ・バップをやる。当然、音の基本はエレクトリック。リズム&ビートの基本はファンキー。ブレッカー・ブラザース独特の乾いたファンクネスに乗って、ヘビメタな音を引っさげ、ビ・バップな演奏を繰り広げる。ずっしりとしたビートのファンクネス。こんなフュージョン・ジャズは聴いたことが無い。
フュージョン・ジャズと言えば、スムースなソフト&メロウなものが主流で、ハードな音が中心なフュージョン・ジャズは無かった。
唯一、この『Heavy Metal Be-Bop』だけが、ハードなリズム&ビートをベースに、電気的に歪んだサックスとトランペットの音が、縦横無尽、変幻自在に吹き上げられていきます。しかし、ですね。このハードなリズム&ビートをベースに、電気的に歪んだサックスとトランペットの音が、ちょっとうるさいんですよね。
バックのベース&ドラムのビートだけでも、ずっしりと重低音を響かせて、ちょっと耳につくのに、そこに電気的に歪んだサックスとトランペットが、テクニックの限りを尽くして吹きまくり、時にアブストラクトにフリーキーに吹きまくるのだ。やはり、全編に渡って、ちょっと「うるさい」。
確かに、面白い内容のアルバムです。ヘビー・メタルなビ・バップをやっているんですから、確かにこの内容は面白い。でも、何度聴いても、いつも思ってしまうんですよね〜、「うるさい」って(笑)。確かに刺激的な音で、一度聴くには良いのですが、繰り返し聴く我慢強さは僕にはありません。
ブレッカー・ブラザースも恐らく、これは自分達の音では無い、と感じたのだと思います。次作の『Detente』から、ソウルフルでビートの効いた、元々のファンキー・フュージョンに戻っています。なので、この『Heavy Metal Be-Bop』を、ブレッカー・ブラザースの代表作とするのは、どうかなあ、と僕は思います。
このアルバムに詰まった音は、フュージョン・ジャズ史上、最も個性的で優れた音として評価されるべきもので、僕もたまに聴き返しては、その内容の素晴らしさに感嘆します。でも、じっくりと聴く、という意味では、やっぱり「うるさい」音ではありますね。
ヘビー・メタルとビ・バップの一期一会の邂逅。ありそうで、なかなかお耳にかかれない、個性的な音。フュージョン者の方々にとっては、一度聴いてみる価値はあります。凄い音ですぜ。
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