keiko Leeのデビュー盤
バーチャル音楽喫茶「松和」では「ジャズ・フュージョン館」の傍らで「懐かしの70年代館」を運営して いますが、最近、ハタと思い当たったことがひとつあります。「ジャズのアルバムの中で、70年代ロックの名曲を題材にした楽曲はあるのか?」。
これがですねえ、なかなか無いんですよ。今や21世紀、思えば、1970年代から40年以上にもなっているのに「なんだかなあ、ジャズ界って保守的なんだなあ」って思いながら探していたら、ありました。実は「70年代ロックの名曲を題材にしたジャズ」、不思議と日本のミュージシャンのアルバムに多いんですよねえ。
Keiko Lee『Imagine』(写真左)。今や、日本女性ジャズ・ボーカル界の大御所的存在となったケイコ・リーのアルバム。このアルバムは、ケイコ・リーがニューヨークで現地のミュージシャンと一緒にレコーディングした初めてのアルバム。所謂、デビューアルバムですな。1995年のリリース。
このアルバムでのリーのボーカルは、その独特の「ボイス」と「フレージング」ゆえ、早くも「一流としての個性」を予感させます。そして、バックバンドは、ケニー・ バロン(p)、グラディ・テイト(ds,vo) 等の精鋭ミュージシャンが固め、充実のサポート。
さて、「70年代ロックの名曲を題材にしたジャズ」はと収録曲を眺めると、まず、特別に目に付くのは、ロックというジャンルとはちょっと外れるのかもしれないが、当時「ソウル・ミュージック」というジャンルで活躍していた、ロバータ・フラックの名唱で知られる「Feel Like Making Love」。
2曲目に収録されているこの曲、バリバリR&B系の粘っこく、黒くファンキーなナンバーなので、フュージョンのジャンルでは、時々、カバーされる名曲なんだが、今回の様な純ジャズ系でカバーされるのは珍しい。リーは、このファンキーな名曲を、抑制の効いた純ジャズをバックにして、実にシットリとジックリと、時にコケティッシュに歌い上げてみせる。
R&B系、フュージョン系の演奏には無い、落ち着いた重心の低い、しっかりとした「Feel Like Making Love」が聴ける。ファンキーに跳んだり跳ねたりしていない分、この楽曲の本質の部分が見えるようで、実に好ましい出来に仕上がっている。
7曲目の「Summertime」って、ガーシュイン作曲のミュージカル「ポギーとベス」の挿入歌なのだが、リーはどちらかといえば、ちょっとロックっぽい雰囲気で、ジックリと唄い上げていくところが面白い。
70年代ロックの中では、伝説の女性ボーカリストであるジャニス・ジョップリンの名唱で有名な曲だが、この曲は、既にジャズの方ではスタンダードになっている。ジャズのスタンダードを、ロックのイディオムで歌い上げたのがジャニスってわけ。
そして、絶品はラストの「Imagine」。いまや説明不要のジョン・レノンの名曲。この曲、オリジナルがオリジナルだけに、ジャズ・ボーカルとしてカバーするのはちょっと難しいのではと思っていたが、この手があったのか、って感心しました。
出だしは、やはりオリジナルをデフォルメするのは難しいらしく、オリジナルに忠実な歌唱に終始。これでは、単なるジャズ・ピアノをバックにしたカラオケではないか、と思っていたら、途中から、グラディ・テイトの渋いボーカルが入ってきて、雰囲気は一変。雰囲気はガラッと変わって、バリバリのゴスペル風になる。これが実にニクい。
ファンキーで黒いゴスペル調にノリながら、リーとグラディは、渋いデュエットを繰り広げる。う~ん「イマジン」ってゴスペルに完璧にのるリズムを持った楽曲だったのね。とにかく、最後2曲はグラディ・テイトとのデュエットがハイライトの秀作です。
加えて、20bitデジタル・レコーディング、加えてSBMマスタリングなど、高品位な音源を実現しており、オーディオ・ファイルとしても魅力的なアルバムですね。良いジャズ・ボーカル盤です。
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