ジャズ喫茶で流したい・42
こんなに「小粋でハードボイルド」なピアノ・トリオは、是非ともジャズ喫茶で流したい。
このアルバムは、1975年2月、エラ・フィッツジェラルドの伴奏メンバーとして来日したトミー・ フラナガンを起用して吹き込まれたもの。Tommy Flanagan『Tokyo Recital』(写真左)。
フラナガンとして、初の日本でのレコーディングという点で、また、彼のリーダー作としては、1960年に吹き込まれたムーズヴィル盤以来(なんと15年ぶり)、という意味でも貴重なアルバムである。ちなみにパーソネルは、Keter Betts (b), Bobby Durham (ds), Tommy Flanagan (p)。
フラナガンと言えば落ち着きのある、いぶし銀のような「洒落た面」と、良くスイングした趣味の良い「ハードでダイナミックな面」を併せ持つピアニストである。とにかく、絵に描いたような「隠れ名手」的で「小粋なハードボイルド」的な、実に趣味の良いピアニストなのだ。
良くジャズの入門書では「サイドマンとして彼のピアノは輝く」なんて書いてあることが多いが、とんでもない。このアルバムを聴いてみれば良く判る。やはり、彼もまた、リーダーアルバムで最高に輝くのだ。
このアルバムの1曲目と2曲目で彼の特質が良く判る。1曲目の「All Day Long」では、彼のほど良くスイングした、趣味の良い「ハードでダイナミックな面」が良く出ており、のっけから実に楽しい、ノリの良いピアノ・トリオを聴かせてくれる。
2曲目の「UMMG」は打って変わって、味わいのある落ち着きのある、いぶし銀のような「洒落た面」が堪能できる。このアルバムは、この彼の持つ相反した2つの面が、バランス良く配置された名盤であると僕は思う。
サイドマンの貢献度も高く、ドラムスのボビー・ダーハムは、フラナガンの2つの面「ノリの良い面」と「落ち着きのある面」それぞれに合わせて、柔軟なドラミングでバッキングを確かなものにし、ベースのキーター・ベッツは、堅くて野太い、リズム感満載のベースでスイング感を盛り上げる。
録音も良く、選曲もありきたりのジャズ・スタンダードのオンパレードではなく、「デューク・エリントン=ビリー・ストレイホーン作品集」というコンセプトに則り、ちょっと小粋な曲や隠れた名曲を随所に散りばめ、とても楽しく、かつ、小粋なアルバムに仕上がっていて立派だ。
このようなアルバムが、日本での録音で生まれたことは誇らしいことだ。なにはともあれ、理屈抜きに楽めるアルバムです。
★大震災から2年3ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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