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2013年6月12日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・36

改めて見渡して見ると、ハービー・ハンコックの日本での録音盤は、ライブ盤も含めて結構ある。

もともと、ハービーが親日家であること、そして、日本がジャズ先進国という環境で、 ジャズ・ミュージシャンに対しての対応が良いことが原因として挙げられる。また、ハービーが日本録音を残し始めた1970年代は、国際航空路線が飛躍的に整備された時代で、日本〜米国間の移動が手軽になったことも大きな要因として挙げられる。

そんなハービーの日本録音盤の中で、このアルバムはジャズ資産として、非常に価値の高いものの一枚になる。Herbie Hancock『Herbie Hancock Trio '81』(写真左)。1981年6月の録音。リリースは1982年。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。黄金のトリオである。

ハービーのリーダー・アルバムの経歴を振り返ると、優秀なジャズ・ピアニストにもかかわらず、 自己のグループでのピアノ・トリオ盤が非常に少ない。

ソロ・デビューを飾り、ジャズ・ピアニストとしての地位を確立したブルーノート・レーベルの時代についても、ハービーについては、ピアノ・トリオ盤が無い。その後、CBSに転籍してからは、純ジャズよりもフュージョンに力を入れ始めたため、純ジャズそのもののアルバムが無くなってしまった。
 

Herbie_trio81_2

 
ジャズ・ピアニストの本質を感じるには、最少フォーマットの「ソロ」より、リズムという観点で会話相手のある「トリオ」のほうが、その全貌を感じるのに適している。と、僕は感じているのだが、ジャズを聴き始めた1970年代、ハービーの優れたピアノ・トリオ盤が無いに等しく、実に残念な気持ちがしたものだ。

しかし、1981年、やっと溜飲が下る時が来た。1977年以来、4年ぶりに『Herbie Hancock Trio '81』が発売されたのである。

このアルバム、それまでの「ファンク・フュージョン路線」のハービーからは想像し難い、ほど良くスイングし、タイトで抑制が効いた、リリシズム溢れる名演がズラリと並ぶ。しかも、バリバリに溌剌と、アコースティック・ピアノを弾いているのだ。

もちろん、バックは、マイルス・クインテット時代の同僚で、心底、気心知れている、ベースのロン・カーター、ドラムスのトニー・ウィリアムスである。悪かろうはずがない。しかも、このアルバムでは、ロンもバリバリに溌剌とベースを弾き、トニーのドラムスも、バリバリに溌剌と変幻自在、硬軟自在。こんな「引き締まった」ピアノ・トリオ盤はあまり記憶に無い。

とにかく、今や、ジャズ・ピアノの大御所ハービーの僅少の「トリオ作」の中の秀作を日本録音で世に出したことを、日本のジャズ・ファンの一人として誇りに思っている。細かいこと言うことなかれ。聴くべし。
 
 
 
★大震災から2年3ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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