「凛とした」山中千尋セカンド盤
山中千尋の第1作目は緩急自在、「ちょっとまとめてみました」って感じの、素敵なデビューアルバムだった。初対面の時みたいな爽やかな、そして、そこはかとなく可愛い、 挨拶代わりのアルバムだった。そして、第2作目である。
第2作目は『When October Goes』(写真左)。1作目から、着実にアップグレードした内容が心強い。2002年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chihiro Yamanaka (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)。
まず、ベースとドラムがグレードアップした。1作目は、ベース・ドラム・ピアノが、対等にお互いを思いやりながら、うまくバランスを取ったアンサンブルが特長だった。ベースとドラムがグレードアップした本作は、インタープレイの醍醐味に溢れた、躍動感溢れる作品になった。
しかし、それにも増して、山中千尋のピアノが更に個性的になった。恐らく、自分のタッチと自分の表現に自信を持ち始めたのだろうが、今の山中千尋のピアノは思いっきり個性的だ。山中千尋のピアノの個性が、このアルバムで確立されたと言って良いだろう。
近頃のジャズ・ピアノの新人の多くはエバンス派の影響が多く見られ、その前提から出発して如何に個性を出していくか、 という形で、個性を作り出している。しかし、今回のアルバムで聴くことの出来る山中千尋のピアノは、 どうも、そうではなさそうだ。エバンス派の影響が意外と希薄なのだ。
なんと表現したらいいか、実際に皆さんに聴いていただくのが一番なのだが、純ジャズの様々なジャズ・ピアノのスタイルとフュージョン・ジャズでのピアノの響きとが巧くブレンドされてきて、その土台の上に、ダイナミックでリリカルな雰囲気とが付加されて、この時代でないとあり得ない、実に個性的なピアノを表現している。
その個性的なピアノを引っさげて、オリジナル・ナンバーが素晴らしい出来映えをみせている。特に冒頭の「Taxii」は名演名曲。そして、加えて、今回のアルバムで素晴らしいのはスタンダードの選曲。実に粋なスタンダードの選曲に目を見張る。う〜ん、実に粋だ。
4曲目の「Yagii Bushii(八木節)」は出色の出来、6曲目、8曲目はヒネリが効いていて、アレンジと テーマの扱いが素晴らしい。聴いていて、自然と口許がほころぶ。
最後に言いたい。このトリオは実に良い組み合わせだと思う。ダイナミズムと繊細さを併せ持ち、アンサンブルとインタープレイを巧く取り混ぜ、それでいてテクニックに走らず、日本語的にいうと、実に 「凛とした」ピアノ・トリオなのだ。
良い出来のセカンド・アルバムだと思います。今でも時々、引きずり出して聴く、僕にとって意外とヘビロテの一枚です。
大震災から2年2ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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