カリビアンな隠れ名盤です。
Bob James & Earl Klugh『One On One』(写真左)。1979年のリリース。フュージョン盤だからと言って、うがった目で見る事なかれ。なかなか雰囲気の良いジャジーなアルバムだ。
メンバーも当時の大物揃いではあるが、大人数のパーソネルで曲ごとにメンバーが大幅に入れ替わるという「悪しき寄せ集め的セッション」では無く、このパーカッション入りのギター・カルテットで全編演奏していることに、まずは好感を覚える。
そして、このアルバム全体のテイストは、どちらかといえばジャズ寄りのテイストで、フュージョンの大物セッションにありがちな、馬鹿テクを前面に押し出した耳当たりの良いだけの演奏では無いことがとても良い。フュージョンな音でありながら、雰囲気はジャジー。
しかも、ゴリゴリで緊張感溢れる純ジャズものでは無く、どちらかといえば全編に渡って、ゆったりとした「カリブの海」をイメージさせる(と言って行ったことは無いのだが)、『南の海辺の陽光うららかな昼下がり』的な雰囲気が心地良い。
このノンビリとした心地良い緊張感の中で、アール・クルーのアコースティック・ギターが冴える。このゆったりとしたテンポの中では、ロン・カーターのドロンと緩んだベースも気にならないどころか、何か良い雰囲気を醸し出しているではないか。不思議不思議(笑)。
ボブ・ジェームスのキーボードは、相変わらず心地よい音を雰囲気良く響かせて(特に、フェンダー・ローズが心地良し)、ラルフ・マクドナルドのパーカッションは効果的。録音状態も良く、うーん言うこと無し。
しかし、ここで苦言を一言。リイシューされたCDでは、7曲目にボーナストラックが入っているが、このボートラは、このアルバムに正式収録された曲とは全く似ても似つかない荒い演奏で、なんでこんなボートラを付けたのか、理解に苦しむ。このアルバムを聴き込む時は、CDの曲番選曲機能で、必ず7曲目は飛ばして聴いて下さい。
そうしないと、1曲目の「カリ」から6曲目の「ワインディング・リバー」まで、のんびりとした心地よい緊張感の中での 『南の海辺の昼下がり』的雰囲気にドップリ浸かった後、どっと興ざめは必至。6曲目までのカリビアンな雰囲気ぶち壊しである。なんで、こんな曲をボーナス・トラックに入れるのか、よく判らん。制作者側の感性を疑いますね、まったく。
フュージョンのアルバムでありながら、ジャズ的な「小粋な」テイストを持った「いけてる」隠れ名盤です。「夏の夕暮れ時、少し涼しい風に吹かれながら」ビール片手にゆったりとした気分で聴きたい、そんな愛聴盤。ちなみに、ジャケットも実に「いけてる」。LPサイズで楽しみたい優れものです。
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