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2013年5月の記事

2013年5月31日 (金曜日)

30周年記念・10年振りの新作

キース・ジャレット、ジャック・ディジョネット、ゲイリー・ピーコックのトリオ。現代ピアノ・トリオの代表格、通称「キース・ジャレット・スタンダーズ・トリオ」が結成30周年とのこと。そうか、もうそんなになるのか。

キースの「スタンダーズ」の出現は、当時、素晴らしく新鮮だった。1983年のことである。当時、フュージョン・ブームが去り、ジャズ界は、メインストリーム・ジャズ復古の時代を迎えつつあった。その傍ら、マイルス・デイヴィスが長い隠遁生活から復活し、体調は万全ではないにせよ、ジャズの最先端を再び走りつつあった。

そんな時代に、ジャズ・スタンダードしか演奏しない、ちょっと風変わりなピアノ・トリオ。それも、あのジャズ・ピアノの奇才、キース・ジャレットが率いてのピアノ・トリオである。新鮮なアプローチが素晴らしい、リリカルでメロディアスなピアノ・トリオは、当時、類を見なかった。

そんなスタンダーズ30周年記念のアルバムが出た。Keith Jarrett Trio『Somewhere』(写真左)。キース率いるスタンダーズの最新作。今回もライブ音源。10年振りの新作。もう、キースには新しい何かは無い。でも、新譜が出ると結局手に入れて聴く。これって最早「習慣」である。

今回の作品は10年振りの新作。2003年にトリオ結成20周年を記念してリリースされた『アップ・フォー・イット』で2002年7月のフランス「ジュアン・レ・パン」におけるパフォーマンスが収録されて以来、トリオとしての作品は一切発表されなかった。ファンの間では「空白の10年間」と言われていた。
 

Keith_somewhere

 
本作はまさに待望の新作。2009年7月11日、スイスのルチェルンにて行われた公演を収録した最新ライヴ音源。30年間、スタンダード曲ばかり演奏してきて、まだ演奏出来る曲があるなんて、本当にジャズ・スタンダードって奥が深い。

トリオの音は、徹頭徹尾、「スタンダーズ」の音である。ディジョネットのドラムの音、ピーコックのベースの音、キースのピアノの音。30年間、聴き慣れた音である。インプロビゼーションのアプローチは、いつもの「スタンダーズ」のアプローチ。もう、これは金太郎飴。変幻自在、硬軟自在ではあるが、自由度の高い展開は、徹頭徹尾「スタンダーズ」のもの。

この新作、幾度か繰り返して聴いたが、いつもの「スタンダーズ」の音がここにある。確かに、キースには新しい何かは無い。しかし、このライブ盤には、時間に時代に練りに練られた、柔軟度と自由度の高い、30年前から全く変わらない「スタンダーズ」の音がこしっかりと詰まっている。

しかし、である。キースの唸り声も、30年前から変わりなく録音されている(笑)。この唸り声さえなければ、「スタンダーズ」はもっとヘビロテになっていたのになあ〜。このキースの唸り声に聴き慣れるには時間がかかる。キースの「スタンダーズ」は素晴らしいピアノ・トリオではあるが、このキースの唸り声だけが「鬼門」である。

このキースの唸り声は、人それぞれ捉え方、感じ方があるんでしょうが、概ね、評判は良くはありませんな(笑)。ヘッドフォンで聴くには、さらに「勇気」がいります(笑)。

 
 

大震災から2年2ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。

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2013年5月30日 (木曜日)

梅雨時のそぼ降る雨の日に

我が千葉県北西部地方も、いよいよ今年も梅雨入りである。朝から、空はどんより鉛色。今にも雨が降り出しそう。

こんな鉛色の曇り空や梅雨のそぼ降る雨に、なぜかピッタリ雰囲気の合うジャズ・コンボがある。Moden Jazz Quartet(以降MJQと略す)である。なぜか合うんですよ、曇った日や雨の日の部屋の中で聴くMJQは、実にしっくり来る。これって僕だけかなあ。

今日は、どんより鉛色の空を窓から眺めながら、MJQの『Three Windows』(写真左)を聴く。1987年3月の録音。ええっ、1987年の録音、と驚くジャズ者の方もいらしゃるかと。そう、間違い無く、1987年の録音です。アルバム・ジャケットには「FULL DEGITAL RECORDING」とある。デジタル録音と言えば1980年代。納得です。

ジャケットに「The Modern Jazz Quartet」の後に「The New york Chamber Symphony」とあるように、このアルバムは、MJQとクラシック・オーケストラとの共演盤です。

そう言えば、アルバム・タイトルの「Three Windows」は、映画「No Sun in Venice (大運河)」のサントラとして使われた曲ですね。MJQの『No Sun in Venice』にしっかりと収録されています。

この曲、ジョン・ルイスのオリジナルで、この曲の第1主題は「Golden Striker」、第2主題が「Cortege」、そして、第3主題が「The Rose Truc」と、3つの主題で成り立っているフーガ形式の組曲でした。
 

Mjq_three_windows

 
さすがに、クラシック・オーケストラとの共演だけに、このフーガ形式の組曲が実にしっくりときます。当然、MJQの演奏がメインなんですが、ジャズというよりは、モダンでクラシックな四重奏な演奏って感じです。

ジャズとクラシックの融合と聞くと、なんだか野心的な展開を想像するんですが、このアルバムはそんなことは全くありません。クラシック・オーケストラとMJQの間で、しっかりと役割分担がなされている。

その役割分担の中で、シンプルなアレンジが施されているだけの演奏です。とにかく、シンプルでスッキリとした演奏で、聴き疲れることは全く無く、耳にもたれることもありません。

す〜っと流れる様に展開する、クラシックの演奏方式が前面に押し出された演奏は、ジャズを聴くというよりは、ジャズの要素を取り入れたクラシックの洒落た演奏を聴く。そんな感じの優れものです。

僕は、このMJQとクラシック・オーケストラとの共演盤の中で、かのMJQの代表曲である「Dejango(ジャンゴ)」に限りない魅力を感じます。クラシック曲の様なアレンジが施された「ジャンゴ」はまるで変奏曲のような面持ちで、実に良い演奏です。

鉛色の曇り空や梅雨のそぼ降る雨に、なぜかピッタリ雰囲気の合うMJQ。今日は、クラシック・オーケストラとの共演盤『Three Windows』で、俗世間の嫌な事は忘れて、心ノンビリ。梅雨は嫌いですが、こうやって、なんとか梅雨の季節を楽しく過ごす技を、編み出しては試しています(笑)。

 
  

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2013年5月29日 (水曜日)

異種格闘技の美しき音の記録

1978年2月26日、東京・太平スタジオにての録音。デンオン・ライヴ・コンサートの200回記念特別セッションを収録したスタジオ録音盤。日本のフュージョンの最高峰というか、異種格闘技の美しき音の記録である。

そのアルバムとは、渡辺香津美&ミッキー吉野『カレイドスコープ(Kaleidoscope)』(写真左)。パーソネルを見渡すと、とんでも無いメンバーがずらりと並ぶ。

渡辺香津美 (g)、ミッキー吉野 (key)、向井滋春 (tb)、土岐英史 (ss/as)、植松孝夫 (ts)、岡沢茂 (b)、村上ポンタ秀一 (ds)、松本博 (p)、横山達治 (perc)、土屋昌巳 (g)、井上憲一 (g)、竹田和夫 (g)、ジョージ紫 (hammond)、ジョン山崎 (clavinet)、スティーブ・フォックス (b)、トミー・スナイダー (ds)、カルメン・マキ (vo)、酒井俊 (vo)。

よくよく見ると、まず、ミッキー吉野に代表されるゴダイゴ人脈がリズムセクションの核となり、渡辺香津美を始めとする日本フュージョン・ジャズ人脈が続く。そして、当時、異種格闘技に必須のドラム、村上ポンタ秀一が絡み、日本ロック人脈から、竹田和夫、ジョージ紫、土屋昌巳らが続く。そして、ボーカルは、なんと、日本ロック畑からカルメン・マキ、日本ジャズ畑から酒井俊が参加。

思わず「なんじゃこりゃ〜、じぇじぇ〜」と叫びたくなるような、何となく不思議なパーソネルである。日本のフュージョン・ジャズ人脈と日本のロック人脈の異種格闘技。収録された曲もなかなか面白い選曲。

1.処女航海
2.世界はゲットーだ
3.アズ
4.カレイドスコープ
 

Kaleidoscope

 
1曲目の「処女航海」は、ハービー・ハンコックのモーダル・ジャズの名曲。2曲目の「世界はゲットーだ」は、ソウル・ミュージックのボーカル・グループ、ウォーの大ヒット曲、3曲目の「アズ」は、R&Bの頂点、スティービー・ワンダーの名曲。4曲目は、渡辺香津美&ミッキー吉野の共作オリジナル。ジャズ有り、ソウル有り、R&B有り、自作有り。共通の狙いは、すばり「ファンクネス」と読んだ。

冒頭「処女航海」の酒井俊のボーカルを聴けば良く判る。本場米国のファンクネスに追いつけ、本場米国のファンクネスを身につけろ、と本気で、ファンクネスの獲得にチャレンジする、異種格闘技集団の矜持が痛いほど伝わって来る。2曲目の「世界はゲットーだ」と3曲目「アズ」のカルメン・マキのボーカルも想いは同じ。

無理しなくても良いんやけんどなあ。でも、1978年当時、日本のジャズ、日本のロックは発展途上、どうしても、先行する英米が目標になった。しかも、日本人に馴染みの無かった「8ビート&オフビート」である。感覚的に理解するのが難しい馴染みの無いファンクネスである。しかし、これを会得しない限り、個性のスタートラインに立てない。

サッカーに似ている。元サッカー日本代表監督であったイビチャ・オシムの名言が「日本のサッカーを日本化する」。この異種格闘技セッションは「日本のジャズを、日本のロックを日本化する」第一歩だったような気がする。

非常にハイレベルな素晴らしいフュージョン・ジャズが繰り広げられている。無理にチャレンジするファンクネスは、ちょっと滑り気味ではあるけれど、日本のフュージョン・ジャズのオリジナリティーは十分に確保されているではないか。乾いたシンプルな、お茶漬けの様なファンクネスの萌芽が見え隠れしている。

実に聴き応えのある、一期一会の異種格闘技セッションである。ミッキー吉野がこれだけジャジーでファンキーなキーボードが弾きこなせるとは思わなかった。そして、面白いのは渡辺香津美のエレギ。一番、ジャズ畑のエレギを想像するんだが、実は、一番、ロックっぽいエレギを弾きまくっている。そして、村上ポンタ秀一のドラミングは相変わらず天才的である。

 
 

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2013年5月28日 (火曜日)

デジタル臭さが気になるけれど

ボブ・ジェームスとアール・クルーのコラボ、2枚目のアルバムである。Bob James & Earl Klugh『Two Of A Kind』(写真左)。1982年のリリース。1982年と言えば、フュージョン晩年期。フュージョン・ジャズの流行が終焉を迎え、セールスに翳りが見え始めた頃。そして、デジタル録音が主流になり始めた頃。

今の耳で聴くと、このアルバムの音が面白い。ピアノの音やアコースティックギターの音のエッジが鋭角に立っていて、尖った感じの、思いっきりメリハリのあるキンキンした音。ダイナミックレンジは広いが、ざらざらして何故か人工的な乾いた音。これが、当時のデジタル的な録音の音。まだまだデジタル録音には問題が多く、音質はアナログ録音に比べて圧倒的に劣る。

ボブ・ジェームスのアコピの音がキンキンと金属音に近い音で鳴り響き、アール・クルーのアコギのアタック音がキンキンと金属音に近い音で鳴り響く。今の耳で聴くと、とても「痛い」音である。

昨日、ご紹介した、ボブ・ジェームスとアール・クルーのコラボ、1枚目のアルバム『One on One』の録音はアナログ録音として秀逸な音だった。ピアノはふくよかな響きでなり、アール・クルーのアコギはナイロン弦を使用しているのが良く判る、アタックは強いが芯が丸い、豊かな響きが素晴らしい。いかにも、アナログ的な録音で、それはそれは心地良い音である。
 

Two_of_a_kind

 
まあ、このボブ・ジェームスとアール・クルーのコラボ、2枚目のアルバム『Two Of A Kind』は、どうしてもデジタル臭さが気にかかる録音で、それが惜しい。ボブ・ジェームスとアール・クルーの演奏は申し分無いもので、前作のフュージョン・ジャズな演奏から、セールスを意識したのか、後のスムース・ジャズ的な演奏にシフトしているのだが、当時のジャズを取り巻く環境を如実に反映しているようで面白い。

前作がカリビアンな響きが特徴だとすれば、本作は、かなりアーバンな感じになっており、マニアックな大人のフュージョンという面持ちの音がとても聴き易い。

パーソネルをおさらいすると、Earl Klugh (g), Bob James (p), Harbey Mason (ds), Gary King (b), Leonald "Doc" Gibbs (per), Sammy Figueroa (per)。なるほど、そうそうたるラインナップですね。テクニカルでマニアックな響きの中に、どこかノンビリした「ラフさ」があるんですが、ドラムがハービー・メイソンなんですね〜。僕はハービー・メイソンのドラムって大好きなんです。

デジタル臭さが気になる録音を差し引いても、演奏全体のクオリティが素晴らしく、入手して決して後悔しない、フュージョン後期の佳作だと思います。フュージョン・ジャズというより、スムース・ジャズの先駆け的な音作りは、なかなか聴き応えがあります。

全てのフュージョン者の方々にお勧めです。10年前以上の昔のCDは、リマスタリングの問題があるので、最新のCDを入手して下さいね。

 
 

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2013年5月27日 (月曜日)

カリビアンな隠れ名盤です。

Bob James & Earl Klugh『One On One』(写真左)。1979年のリリース。フュージョン盤だからと言って、うがった目で見る事なかれ。なかなか雰囲気の良いジャジーなアルバムだ。
 
メンバーも当時の大物揃いではあるが、大人数のパーソネルで曲ごとにメンバーが大幅に入れ替わるという「悪しき寄せ集め的セッション」では無く、このパーカッション入りのギター・カルテットで全編演奏していることに、まずは好感を覚える。

そして、このアルバム全体のテイストは、どちらかといえばジャズ寄りのテイストで、フュージョンの大物セッションにありがちな、馬鹿テクを前面に押し出した耳当たりの良いだけの演奏では無いことがとても良い。フュージョンな音でありながら、雰囲気はジャジー。

しかも、ゴリゴリで緊張感溢れる純ジャズものでは無く、どちらかといえば全編に渡って、ゆったりとした「カリブの海」をイメージさせる(と言って行ったことは無いのだが)、『南の海辺の陽光うららかな昼下がり』的な雰囲気が心地良い。

このノンビリとした心地良い緊張感の中で、アール・クルーのアコースティック・ギターが冴える。このゆったりとしたテンポの中では、ロン・カーターのドロンと緩んだベースも気にならないどころか、何か良い雰囲気を醸し出しているではないか。不思議不思議(笑)。
 

One_on_one_2

 
ボブ・ジェームスのキーボードは、相変わらず心地よい音を雰囲気良く響かせて(特に、フェンダー・ローズが心地良し)、ラルフ・マクドナルドのパーカッションは効果的。録音状態も良く、うーん言うこと無し。

しかし、ここで苦言を一言。リイシューされたCDでは、7曲目にボーナストラックが入っているが、このボートラは、このアルバムに正式収録された曲とは全く似ても似つかない荒い演奏で、なんでこんなボートラを付けたのか、理解に苦しむ。このアルバムを聴き込む時は、CDの曲番選曲機能で、必ず7曲目は飛ばして聴いて下さい。

そうしないと、1曲目の「カリ」から6曲目の「ワインディング・リバー」まで、のんびりとした心地よい緊張感の中での 『南の海辺の昼下がり』的雰囲気にドップリ浸かった後、どっと興ざめは必至。6曲目までのカリビアンな雰囲気ぶち壊しである。なんで、こんな曲をボーナス・トラックに入れるのか、よく判らん。制作者側の感性を疑いますね、まったく。

フュージョンのアルバムでありながら、ジャズ的な「小粋な」テイストを持った「いけてる」隠れ名盤です。「夏の夕暮れ時、少し涼しい風に吹かれながら」ビール片手にゆったりとした気分で聴きたい、そんな愛聴盤。ちなみに、ジャケットも実に「いけてる」。LPサイズで楽しみたい優れものです。

 
 

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2013年5月26日 (日曜日)

ワー・ワーの唯一のリーダー作

ネット・ショップは、とにかくミュージシャンはアルバムの検索がし易い。よって、amazonや HMV、Tower@jpなどをしばしば徘徊することになってはや10余年(笑)。

まめに巡回してチェックをしていると、時々、ドキッとするようなアルバムの再発に出くわすことがあります。それから、また 「あ〜っ懐かしいなあ、これええねんな〜」と、フュージョン全盛時代に聴きまくった名盤に出くわすこともしばしばです。

例えば、5年ほど前に出くわしたWah Wah Watson『Elementary』(写真左)なんかは「ドキッとするようなアルバム再発」の良い例です。いやいや出くわした時はビックリもしたし、実に懐かしかったですね。なんせ、学生時代に聴きまくったフュージョンアルバムの一枚なんですから、懐かしやら嬉しいやら。

実は、このワー・ワー・ワトソンの『エレメンタリー』がCD化されて、リイシューされるとは思ってもみなかった。このアルバムの「存在」とその「内容の優秀さ」を知っている人が世界にどれだけいるのだろう。 France Sonyは、実に味なことをやってくれた。

しかも、今回、このアルバムを手に入れたルートは、 amazon.jpからUK盤としての入手である。何度も言うが、このアルバムが、CDリイシューで、 手にはいるとは思ってもみなかった(笑)。
 

Wah_wah_elementary

 
Wah Wah Watson(ワー・ワー・ワトソン)は、フュージョン系のギタリスト。ハービー・ハンコックの『マンチャイルド』や『シークレッツ』、『V.S.O.P. 〜 ニューポートの追想』などでも活躍している、ファンクネス&ソウルたっぷりの、いぶし銀のような響きを奏でるギタリスト。

そのワー・ワー・ワトソンの唯一のリーダーアルバムが、この『エレメンタリー』。その雰囲気は「ファンキーでソウルフル&メロウ」。このアルバムがリリースされた時期は1976年、フュージョン・ブームど真ん中。

ワー・ワー・ワトソンは、単なるギタリストではなく、作曲・ アレンジ・プロデュース、そして、ボーカルに至るまで、マルチタレントとしての彼の力量を如何無く発揮しています。

このアルバム、決してジャズじゃないし、インスト中心のテクニカルなフュージョンでも無い。当時、 流行のソウル・ミュージックとファンクとAORとジャズが「ごった煮」になった、本当の意味での 「フュージョン」なアルバムです。

いや〜、本当に良い感じのフュージョン・アルバムですね〜。文字でその良さが上手く伝わらないのが、実に「もどかしい」。聴けば判る。このアルバムは、70年代フュージョン者の方々に、是非聴いていただきたい逸品の一枚です。

 
 

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2013年5月25日 (土曜日)

「凛とした」山中千尋セカンド盤

山中千尋の第1作目は緩急自在、「ちょっとまとめてみました」って感じの、素敵なデビューアルバムだった。初対面の時みたいな爽やかな、そして、そこはかとなく可愛い、 挨拶代わりのアルバムだった。そして、第2作目である。

第2作目は『When October Goes』(写真左)。1作目から、着実にアップグレードした内容が心強い。2002年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chihiro Yamanaka (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)。

まず、ベースとドラムがグレードアップした。1作目は、ベース・ドラム・ピアノが、対等にお互いを思いやりながら、うまくバランスを取ったアンサンブルが特長だった。ベースとドラムがグレードアップした本作は、インタープレイの醍醐味に溢れた、躍動感溢れる作品になった。

しかし、それにも増して、山中千尋のピアノが更に個性的になった。恐らく、自分のタッチと自分の表現に自信を持ち始めたのだろうが、今の山中千尋のピアノは思いっきり個性的だ。山中千尋のピアノの個性が、このアルバムで確立されたと言って良いだろう。

近頃のジャズ・ピアノの新人の多くはエバンス派の影響が多く見られ、その前提から出発して如何に個性を出していくか、 という形で、個性を作り出している。しかし、今回のアルバムで聴くことの出来る山中千尋のピアノは、 どうも、そうではなさそうだ。エバンス派の影響が意外と希薄なのだ。
 

When_october_goes

 
なんと表現したらいいか、実際に皆さんに聴いていただくのが一番なのだが、純ジャズの様々なジャズ・ピアノのスタイルとフュージョン・ジャズでのピアノの響きとが巧くブレンドされてきて、その土台の上に、ダイナミックでリリカルな雰囲気とが付加されて、この時代でないとあり得ない、実に個性的なピアノを表現している。

その個性的なピアノを引っさげて、オリジナル・ナンバーが素晴らしい出来映えをみせている。特に冒頭の「Taxii」は名演名曲。そして、加えて、今回のアルバムで素晴らしいのはスタンダードの選曲。実に粋なスタンダードの選曲に目を見張る。う〜ん、実に粋だ。

4曲目の「Yagii Bushii(八木節)」は出色の出来、6曲目、8曲目はヒネリが効いていて、アレンジと テーマの扱いが素晴らしい。聴いていて、自然と口許がほころぶ。

最後に言いたい。このトリオは実に良い組み合わせだと思う。ダイナミズムと繊細さを併せ持ち、アンサンブルとインタープレイを巧く取り混ぜ、それでいてテクニックに走らず、日本語的にいうと、実に 「凛とした」ピアノ・トリオなのだ。 

良い出来のセカンド・アルバムだと思います。今でも時々、引きずり出して聴く、僕にとって意外とヘビロテの一枚です。

 
 

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2013年5月24日 (金曜日)

思わぬ発見『3!』=『とりお!』

日本のジャズは奥が深い。こんなジャズメンいたんだ、とか、こんなアルバムあったんや、とか、思わぬ発見が多々ある。とにかく知らない名前が多い。本当に奥が深い。それでいて皆、上手い。皆、素晴らしい。 

そんな「日本のジャズって奥が深いなあ〜」と感じさせてくれるアルバムの一枚が、塩谷 哲『3!』(写真左)。リーダーの名前は「塩谷 哲」=「しおのや・さとる」と読みます。そして、ちなみに、アルバムタイトルは、『3!』=『とりお!』と読みます。

このトリオのパーソネルは、塩谷 哲 (p)、吉野 弘志 (b)、山本 秀夫 (ds) で、塩谷 哲はフュージョン畑のピアニスト。僕はこのアルバムに出会うまで、 全くその存在を知りませんでした。不明を恥じることしきりです。

さて、このアルバム、まず、ジャケットが良い。CDの時代になって、LPと比べて、そのサイズが圧倒的に小さくなったことで、ジャケットを愛でる機会が圧倒的に少なくなった。しかし、このアルバムのジャケットは素晴らしい。躍動感が溢れていて、デザインも秀逸で、出来たらLPサイズで見たい位で、思わず、CDの演奏の内容が伝わってくるようだ。

昔、LP時代には「ジャケ買い」という言葉があった。つまり、ジャケットを見てジャケットが気に入って、そのアルバムを衝動買いしてしまう、という意味の言葉なんだが、今回のアルバムは完全に「ジャケ買い」であった(笑)。
 

Shionoya_3

 
さて、この『3!』をCDプレイヤーのトレイに載せて、スタートスイッチを押す。そして、1曲目の「Speak Our Language ?」でぶっ飛んだ。 素晴らしいダイナミズムと、広々とした展開とアンサンブル。そして、塩谷の尖ったピアノソロ。大胆な山本のドラム。骨太な吉野のベース。「こりゃあ凄いぞ」。

メリハリの効いたダイナミックな演奏が個性かと思いきや、4曲目の、かのスティービー・ワンダーの名曲「Overjoyed」は、原曲の良さを崩さず、そのままのイメージで、リリカルに朗々と歌い上げていく潔さ。そんな、ダイナミズムとリリカルな展開に支えられ、最近のピアノ・トリオのアルバムの中でも秀逸の出来となっている。

話が変わるが、このアルバムの塩谷のピアノを聴き進めていくと、ちょっと、チック・コリアのタッチと音の雰囲気に似ているなあと思い始める。尖っていて、ちょっと前衛的で、リリカルで、歌心満載。僕は、チック・コリアが大好きなので、これだけで参ってしまう(笑)。

しかし、さすが、フュージョン畑のトリオが、純ジャズのピアノ・トリオを演奏すると違う。とにかく、その「違い」が良い方向に出て、実にユニークなピアノ・トリオとなっている。

フュージョン畑のミュージシャンが、純ジャズのトリオを演奏する。これを単なる「売らんが為の余興」として、聴かずに退けるのは間違いだ。なんでもそうなんだが、まずは「聴いてみる」。聴いていなければ批判はしない。このアルバムを聴いて、改めてそう思った。この「異業種参入」による、突然変異的な優れた演奏が「ピョコッ」と出てくるところにジャズの面白さがある。

 
 

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2013年5月23日 (木曜日)

カサンドラの「テネシー・ワルツ」

こちらは泣く子も黙る「ジャズ・ボーカルの女王」、カサンドラ・ウィルソンと、当時、新進気鋭のピアニストで売り出し中だった、ジャッキー・テラソンとのコラボ・アルバム。Jacky Terrasson & Cassandra Wilson『Rendezvous』(写真)である。邦題は『テネシー・ワルツ』。

編成としては、ジャッキー・テラソンのピアノを核に、ベース(Lonnie Plaxico)+パーカッション(Mino Cinelu)という、いわゆる歌伴的編成(つまり、ドラムが無いということ)。とにかく、現代の「ジャズ・ボーカルの女王」のカサンドラが唄うのだから、悪かろうはずがない。しかも全曲、ジャズ・スタンダードで占められている。うむ、魅力的な盤である。

初っぱなの『オールド・デビル・ムーン』から、その貫禄あるボーカルが聴く者を圧倒し始める。当時、ちょっとスランプ(マンネリ?)気味だったのテラソンも、カサンドラの歌唱にインスパイアされたのか、なかなかのピアノを聴かせている。

2曲目は、初めて聴いたときにはハッとする。テラソンがエレピ(しかも、フェンダー・ローズ!)を弾いているのだ。なぜ、このアルバムでエレピを弾く必然性があるのかが解らないが、テラソンのエレピは、ちょっと拙いながらも、ちょっぴり味のある感じが微笑ましい。

さあ、そして、3曲目が『テネシー・ワルツ』。う~ん、実に凄みのあるボーカルだ。これぞ、正当派ジャズ・ボーカルな『テネシー・ワルツ』。凄みすらあるカサンドラの歌声。情感タップリに歌い上げる。上手い。じっくりと聴かせてくれる。
 

Rendezvous

 
この「テネシー・ワルツ」は、ジャズ・ボーカルとして取り上げられることが少ない曲であるが、正当派ジャズ・ボーカルの歌いっぷりとしては、このカサンドラの歌唱がお手本となるのではないか。そんな気持ちを起こさせるほど、カサンドラの「テネシー・ワルツ」は、ジャズ・ボーカルとして魅力があり、その凄みは目を見張るものがある。

他の曲の歌いっぷりも、さすがはカサンドラと思わせるものばかり。いやはや、その歌唱力は素晴らしいものがある。7曲目「My Ship」から「I Remember You」そして「Tea For Two」の3曲は圧巻。間を活かしたテラソンのピアノとの相性は抜群。流麗に速いパッセージを繰り広げるテラソンとの相性も抜群。

そう、この盤でのテラソンは、カサンドラに触発されて、なかなかのピアノ演奏を繰り広げており、十分に健闘しているのが頼もしい。ジャズ・スタンダード集でありながら、インプロビゼーションのアプローチは一癖も二癖もあるもので、思わず「テラソンもなかなかやるなあ」と呟いてしまう。

そして、特筆すべきは、ミノ・シネルのパーカッション。様々な音色で様々な表情を見せるパーカッションは、ミノ・シネルの真骨頂。 カサンドラの歌唱とテラソンのピアノをしっかりとバックで盛り上げる、地味ではあるが、確かなサポートを繰り広げていて立派だ。ベースのロニー・プラキシコも堅実で骨太なベースを聴かせてくれる。ブンブン唸るベースで、カサンドラの歌唱の底をシッカリと支えている。

良いアルバムです。バック良し、フロント良し。カサンドラの歌唱を感じ愛でるには格好の一枚です。ジャズ者全ての方々にお勧め。ちなみにジャケット・デザインは国内盤(写真左)と米国盤(写真右)とで2種類あります。お好みでどうぞ。

 
 

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2013年5月22日 (水曜日)

この「テネシー・ワルツ」は絶品

ポップスとジャズの間を行ったり来たりしている、魅力的な女性ジャズ・ボーカリスト、ホリー・コール(Holly Cole)。このアルバム『Don't Smoke In Bed(ベットで煙草を吸わないで)』(写真)は、ちょうど良い具合に、ジャズとポップスとがブレンドされた佳作だと思う。

冒頭1曲目「 I Can See Cllearlly Now」なんぞは、いきなり「ボブスレーのジャマイカ」で有名になった映画『クール・ランニング』のテーマ曲である。これがまあフュージョンっぽいアレンジに乗って、なかなかの良い感じなのだ。

ラストの「Don't Smoke In Bed」だって、バリバリのジャズ・スタンダード曲なんだが、そんな感じは全くおくびにも出さず、洗練されたアレンジの下、今様の「ベットで煙草を吸わないで」を聴かせてくれる。実にコンテンポラリー。

そんな今様な感じの曲が並ぶアルバムの中で、5曲目の「テネシー・ワルツ」だけが、ちょっと違う。その雰囲気が違うのだ。浮いている訳ではない。逆に浮き出ているのだ。突出しているとでも言おうか。そう、このホリー・コールの「テネシー・ワルツ」は絶品である。

さて、この「Tennessee Walltz」とは如何なる曲か。カントリー歌手Redd StewartとバンドリーダーのPee Wee Kiingが1947年に共作した、米国ポップスのスタンダード曲とも言える、カントリー・ソングのワルツ曲。
 

Holly_cole_dont_smoke_in_bed

 
3拍子のセンチメンタルで美しいワルツ、暖かさを感じさせる素朴な西部の歌。1950年にパティー・ペイジが唄い大ヒット。1950年12月〜1951年2月まで全米ヒットチャート1位を独走し、いきなりミリオン・セラーに。

後に1965年にはテネシー州の州歌にもなり、時代を超えて愛唱される歌と言えるでしょう。日本では、江利チエミがこの歌でデビューし、何と累計600万枚も売れたとのこと。
 
「テネシー・ワルツ」という曲は、子供の頃、「シャボン玉ホリデー」などのテレビの歌謡ショーなどで、度々耳にしたことがありますし、パティー・ペイジのボーカルは、ラジオの深夜放送で流れてくるのを、その都度、しみじみと聴き込んだことを思い出します。

このアルバムでの「Tennessee Walltz」は、この秀逸なワルツ曲の持つ、オールド・ポップスの雰囲気をしっかりと引き継ぎながら、今風のアレンジの中、バックの演奏はジャズのマナーをしっかりと守り、そして、そんなモダンなバック演奏に乗って、ホリー・コールが古き良きジャズ・ボーカルのマナーでしっとりと歌い上げる。

「テネシー・ワルツ」の、現代における代表的名唱と言って良いのではないか。とにかく、このアルバムの中で、この曲だけ雰囲気が明らかに違う。この曲だけが、しっかりと昔ながらのジャズ・ボーカルの雰囲気をそのままに踏襲している。 とにかく、しみじみと聴き入ってしまうのだ。とにかく、じっくりと聴き入ってしまうのだ。

逆にそれが故に、他の曲が「今風の洒落たコンテンポラリーなジャズ・ボーカル」として際だってくるのだ。 選曲のバランス、優れたアレンジ。この『Don't Smoke In Bed』は、ホリー・コールの代表作の一枚といって良いのでは無いだろうか。

 
 

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2013年5月21日 (火曜日)

オールディーズなジャズ・ボーカル

初夏のうららかな季節。気温も程良く、気持ちもユッタリ。そんな時は、ジャズ・ボーカルを愛でるのが良い。ちょいとボーカルのアルバムについて語ってみよう。

私、バーチャル音楽喫茶『松和』のマスターは、ジャズ・ボーカルには自信が無い。ジャズ・ボーカルは一番、後回しにしてきたからなあ。皆、英語で歌っているからなあ、何、歌っているかほとんど判らなかったもんな〜(笑)。ジャズ・ボーカルを楽しむようになったのは、1990年代に入ってからである。ジャズを聴き始めて、15年が経過した後にである。

よって、有名で定盤なジャズ・ボーカル盤はあまり聴いてはいないだろうと思う。どちらかと言えば、その時その時の自分の感性に合った盤を、その時点で新譜として発売されたり、リイシューされたりした時、ゲットすることが多かった。

そういう選択基準でジャズ・ボーカルを聴いてきた訳であるが、今回はこれ。Diana Krall『Glad Rag Doll』(写真左)。昨年2012年7月にリリースされた、現時点でのダイアナ・クラールの最新作である。

ダイアナ・クラールは、1964年カナダ生まれの女性ジャズ・ピアニスト&ボーカリスト。デビュー盤は1993年。この20年で数々の成功をおさめた現在、ジャズ・ボーカル界の中心人物の一人である。正統派女性ボーカリストであり、とにかく上手い。
 

Glad_rag_doll

 
2003年12月、ダイアナは英国ロック界のスター、エルビス・コステロと結婚。この結婚を境に、正統派女性ボーカリストという雰囲気から、個性的な音楽性を前面に押し出した、先取性溢れるコンテンポラリーなボーカル盤をリリースし続けている。

そんな、個性的な音楽性を前面に押し出した最新作が『Glad Rag Doll』である。全体的な雰囲気は、米国ルーツ・ミュージックをベースにした、1920〜30年代のスイング期のオールディーズなジャズ・ボーカルな雰囲気。どこまでも「渋い」、玄人好み、職人好みなコンテンポラリー・ジャズ・ボーカルが展開される。

「もし過去に行けるなら、荒削りな魅力にあふれた1920年代を選ぶわ」とはダイアナの弁。ジャズ・ボーカル曲として馴染みの無い曲ばかりがズラリと並ぶが、アルバム全体を包む雰囲気は、なぜか「懐かしい」セピア色をした音世界。純ジャズな雰囲気というよりは、1920〜30年代の米国ルーツ・ミュージックな雰囲気。

正統派ジャズ・ボーカルというにはあまりに個性的な『Glad Rag Doll』の音世界。ジャズ者初心者の方々には、ちょっとお勧めしかねますかね。20〜30枚、定盤と言われる、正統派ジャズ・ボーカルのアルバムを聴いてからでしょうね。

逆に、ジャズ者ベテランの方々にはお勧め。なぜか「懐かしい」セピア色をした、米国ルーツ・ミュージックをベースにした、1920〜30年代のスイング期のオールディーズなジャズ・ボーカルは、実に味わい深いものがあります。

 
 

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2013年5月20日 (月曜日)

カールトンのアコギ盤・第2弾

ギブソンのエレキES-335の使い手。人呼んで「Mr.335」。ラリー・カールトン(Larry Carlton)の、1985年リリースのアコースティック第1弾『Alone / But Never Alone』につぐアコースティック第2弾。 

そのタイトルは『Discovery』(写真左)。1987年のリリース。さすがにアコースティック第2弾である。アコギの弾き方、使い方もしっかりとこなれて、素晴らしい音色とテクニックを基に、朗々とリラックスした雰囲気で弾きまくっている。

冒頭の「Hello Tomorrow」がアルバム全体の雰囲気を決めているんだが、曲調としては、ミッドテンポからスローテンポの曲が大勢を占めていて、これがまた心地良いんだなあ。というか、このミッドテンポからスローテンポが、スチール弦のアコギの響きを最大限に活かしきるテンポなんだなあ、とこのアルバムを聴いていて良く判る。

パーソネルは、Larry Carlton (ac-g), Terry Trotter (key), John Pena (b), Rick Marotta (ds), Michael Fischer (Per), Kirk Whalum (sax), Michael McDonald (key on7), Jerry Hey (tp), Gary Grant (tp), Larry Williams (woodwinds)。カールトンとマイケル・マクドナルド以外、ほとんどがスタジオ・ミュージシャン系のテクニシャンだと思います。
 

Larry_carlton_discovery_1

 
録音は、いかにも1980年代って感じのデジタル臭さ満載、エコーたっぷりのメリハリのある派手な響きが懐かしいですね。これはこれで時代を感じさせる音で良いんですが、今の耳で聴くと、ちょっと疲れますね(笑)。

でも、今日の様な、朝から雨がしとしと降るような日には、僕はこの『Discovery』なんかを良くかけます。朝からしとしと降る雨。そんな天気の悪い朝に、わざわざ喫茶店に来る人なんていない。喫茶店は開店休業状態。

そんな開店休業状態の朝には、このアコギのフュージョン名盤『Discovery』なんかをかけながら、自分の為に美味しい珈琲を入れて、じっくり味わいながら、そぼふる雨を眺めて楽しむ。そこに流れてくるのは、The Doobie Brothersの名曲カバー「Minute By Minute」。そんなバーチャル音楽喫茶『松和』の架空の情景が浮かんできます(笑)。

ちなみに『Alone / But Never Alone』については、2013年3月4日のブログ(左をクリック)を参照して下さいね。カールトンのスチール・アコギを愛でるには、この『Alone / But Never Alone』と『Discovery』の2枚をセットにして鑑賞すると、カールトンのアコギの素晴らしさと個性をしっかりと感じ取れると思います。

 
 

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2013年5月18日 (土曜日)

西海岸ロックの「最後の歌姫」

僕にとっての、米国西海岸ロックの「最後の歌姫」的存在が、リッキー・リー・ジョーンズ(Rickie Lee Jones)。1970年代、米国西海岸ロックをリアルタイムで聴いて来た僕にとって、1970年代の最後の年である1979年におけるリッキー・リー・ジョーンズの登場は、直感的に彼女が「最後の歌姫」なんだと思った。

そのデビューアルバムが『Rickie Lee Jones』(写真左)。邦題は『浪漫』。この邦題が付けられた意味は今でも分かりません。なんで「浪漫」なんだろう。アルバムに収録された曲の歌詞の和訳を眺めて見ても、どう考えても「浪漫」という言葉に結びつかないんやけどなあ(笑)。

ちょっと俯いた翳りのあるリッキーの顔写真がメインのアルバム・ジャケットが実に素敵だった。よくこのアルバム・ジャケットを本棚に立てかけて、このアルバムを聴きながら、ぼんやり眺めていたもんだ。リリースされた当時、ヘビロテ状態でよく聴いたアルバムである。

このアルバムに詰まっている音は、フォーク、ジャズ、ブルースなど、アメリカン・ルーツ・ミュージックのエッセンスを取り入れ、上手くミックスしたもの。

ロックというジャンルに置くには、そのリズム&ビートはジャジーで、今の耳で聴くと、これってコンテンポラリーなジャズ・ボーカルやなあ、って感じてしまう。現代のノラ・ジョーンズに続くサウンドでありボーカルである。
 

Rickie_lee_jones

 
独特の気だるさを湛えた、それでいてポジティブな明るさのあるボーカルは独特の個性。キュートで明朗なボーカルや、ちょっとすれっからしなボーカルなど、彼女のボーカルには多種多様な表情があって、聴いていてとても楽しい。ボーカリストとしての資質とテクニックは非常に優れたものがある。

しかも、バック・ミュージシャンが凄い。米国西海岸ロック&ジャズのオールスターズと言ってよいだろう。当時、録音された時は、1979年。1970年代ロックの終焉の時代であり、米国西海岸ロック&ジャズの節目の時期でもある。なんだか、この米国西海岸ロック&ジャズのオールスターズの面子を眺めていて、万感な想いがこみ上げてきたことを思い出す。

主だったメンバーを挙げておくと、Dr. John (key), Michael McDonald (vo), Randy Newman (syn), Victor Feldman (perc, ds, key), Tom Scott, Ernie Watts (horns), Nick DeCaro (accordion, orch-arrange), Buzz Feiten (g), Steve Gadd, Andy Newmark, Jeff Porcaro (ds), Neil Larsen (key) その他大勢。米国西海岸ロック&ジャズの一流ミュージシャン全員集合である(笑)。

これだけの面子を集めたバック・バンドである。それはそれは素晴らしい演奏を繰り広げてくれる。このバック・バンドの演奏を聴いているだけでも、このアルバムは飽きない。ジャジーでフュージョンで小粋なアレンジが、このアルバム全体を覆っている。

全体の音の雰囲気はまさに「米国西海岸」。そして、主役のリッキー・リー・ジョーンズのボーカルは絶品。1970年代ロックの終焉の時代であり、米国西海岸ロック&ジャズの節目の時期でもある1979年にリリースされた、米国西海岸ロック&ジャズの「総括」の様なアルバム。今でも聴く度に万感の想いがこみ上げてきます。良いアルバムです。

 
 

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2013年5月17日 (金曜日)

フライド・プライドの会心作です

フライド・プライド(Fried Pride・略して「フラプラ」)。ボーカルのShiho、ギターの横田明紀男のデュオ・ユニット。2001年のデビューだから、もう12年になるんですね。

フラプラの特徴は、疾走感溢れ、切れ味の良いShihoの歌唱力抜群なボーカルと横ちゃんの超絶技巧なギター。攻撃的という形容がピッタリの「攻めのジャズ」。決して、流行やトレンドに迎合しない、自分達の個性をベースに、その時その時でやりたいジャズをガッツリとやっている姿が頼もしい。

そんな「すんごい」デュオの、現時点での最新作が『LIFE - source of energy』。2012年7月のリリース。全編に渡って、フラプラの攻撃的な面が前面に出た、迫力満点、力感抜群な、切れ味抜群なボーカル&ギターが展開されている。他のアルバムに比べて、ポジティブな側面が突出している。

冒頭の「Summertime」から、フラプラは飛ばしまくる。襲いかかるかの様に攻撃的なShihoのボーカル。寄らば切る、という異様なテンションの高さが爽快な横ちゃんの超絶ギター。聴いていて、グッと心が引き締まる。ググッと気合いが入る。

3曲目の「Cry Me A River」は、トータル6分を越える熱唱。朗々と情感を込めて、芯の入ったボーカルを披露するShiho。頼もしい限りである。日本人女性がこれだけのボーカルを披露する時代が来るなんて、1978年、ジャズ者初心者だった僕には思いもしなかった。Shihoのボーカルを聴いていると、日本人ジャズの劣等感から、どんどん解放されていく感じがする。
 

Fride_pride_life

 
フラプラはそれぞれのアルバムで、こんな曲をカバーするんや〜、と感心させてくれる曲が必ずあるんだが、このアルバムでは、11曲目の「9 to 5(Morning Train)」。シーナ・イーストンの大ヒット曲なんだが、これがまあ、素晴らしいアレンジ、素晴らしいボーカル、素晴らしいギターでカバーされている。う〜ん、フラプラ、良いぞ、格好良いぞ。

逆にスロー・バラードっぽくアレンジすることで、大スタンダード曲の新しい魅力を引き出した「Fly Me To The Moon」。この曲、スローで歌うと歌唱力が露わになる、ちょっと難しい節回しの展開になっているんだが、じっくり誠実に着実にShihoは歌い上げていく。この曲でのShihoのボーカルは、他の曲にも増して抜群に上手い。

そして、ラストの「大漁唄い込み」は感動の逸品である。大震災で大きな被害を被った宮城県の有名な民謡である。ゆったりと情感を込めた歌い出しで、これは感傷的になるか、と思いきや、さにあらず。

朗々と歌い上げていきつつ、オリジナルの英語の歌詞を加え、曲が進むにつれ、横ちゃんのギターを含め、雰囲気はどんどんポジティブになり、明確に明瞭に「明日」を感じさせるボーカル&ギターは実に印象的。日本の民謡をジャズ・スタンダード化する。これって意外といけるかも、と思った。

良いアルバムです。実は、昨年の12月に大病を患い、大手術を経て生還した身体には、このフラプラの、攻撃的という形容がピッタリの「攻めのジャズ」が辛くて、暫くフラプラは「お休み」していた。しかし、術後5ヶ月が経過して、やっとフラプラのアルバムを気分良く聴く事ができるようになった。嬉しい限りである。

 
 

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2013年5月16日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・34

このピアノ・トリオ盤は、ジャズ者初心者からベテランまで、老若男女、全ての人達にお勧めである。そのピアノ・トリオ盤とは、Kenny Drew Trio『By Request』(写真左)。

タイトルからして、ははん、と思われるジャズ者の方も多いだろう。確かに、このピアノ・トリオ盤は、当時のジャズ雑誌の権威「スイング・ジャーナル」で、ケニー・ドリュー・トリオで演奏して欲しいスタンダード曲は何、という読者からの人気投票を受けて、上位10曲を演奏して収録した、いわゆる「企画盤」。

もちろん選ばれている曲は超有名なスタンダードばかり。日本のレコード会社のジャズの企画盤は、その意気込みの割に凡庸なものが多い。企画は悪くはないんだが、それをプロデュースする、それをアレンジする、そして、ジャズ界の有名ミュージシャンを集めて、演奏させる。

と、あ〜ら不思議、内容イマイチの、演奏イマイチの、アレンジがイマイチの「なんでこ〜なるんや」的なへんてこりんな内容の企画盤が完成する。日本のレコード会社の企画盤にこの傾向が強い。

この『バイ・リクエスト』も最初はそう思った。スイング・ジャーナルのレビューの絶賛評論を読んでも信用出来ない。こういう企画盤って、レコード会社とジャズ雑誌は絶対に「つるんでいる」からな(笑)。でも、このケニー・ドリュー・トリオのパーソネルを見て考え直した。

そのパーソネルとは、Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Ed Thigpen (ds), Kenny Drew (p)。ちなみに、このアルバムの録音日は、1985年8月24&25日。日本のレコード会社の企画盤ではあるが、なんと録音地はコペンハーゲン。しかも、ケニー・ドリューがセルフ・プロデュース。この録音地とプロデュースが良かったのではないか。
 

Kenny_drew_by_request_2

 
素晴らしく良い内容のピアノ・トリオ演奏である。ケニー・ドリューのバップで黒く、そこはかとなくファンキーなピアノが、このアルバムでは端正に響く。スタンダード曲を演奏するのに、この端正さは実に良い塩梅である。テーマが良く判るし、インプロビゼーションの展開もタッチが明快で気持ち良い。

そして、ペデルセンの超弩級のベースが、このピアノ・トリオの花形。鋼質のブリブリ響くペデルセンのウォーキング・ベースとソロが凄い。ドリューのピアノを惹き立て、インプロビゼーションの底をしっかりと支えつつ、自分の盤になると、ブリンブリンと鋼質なベースを響かせる。野太いが繊細さも併せ持つ「男のベース」である。

そしてそして、エド・シグペンのドラムが良いんだな〜、これが。このアルバムでのシグペンのドラムは素晴らしいものがある。シグペンの名演のひとつに挙げたい。オスカー・ピーターソン・トリオで鍛えに鍛えられたエド・シグペン。タムタムやスネア、シンバル等々、ドラム・セットを構成するそれぞれが、実に良い音を出している。実に趣味の良い小粋なドラミング。

いやはや、こんな3人が、超有名なスタンダード曲を演奏するのだ。これがまあ素晴らしいのなんのって。超有名なスタンダード曲ばかりなので、ジャズ者ベテランとしては、なんだか気恥ずかしさが先に立ったりするんだが、そんなつまらないプライドは捨てなさい、と言いたい(笑)。

当然、ジャズ者初心者の方々には、絶対のお勧めピアノ・トリオ盤です。とにかく、ジャズ者初心者からベテランまで、老若男女、全ての人達に言いたい。この『By Request』の良さは「聴けば判る」。

 
 

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2013年5月14日 (火曜日)

ラーセン=フェイトン=バンド

昨日、幻のバンド「フルムーン」のお話しだった訳だが、今日は、その「フルムーン」の核となった二人のミュージシャン、ニール・ラーセン (key) と バジー・フェイトン (g)の双頭リーダー・バンド「ラーセン=フェイトン=バンド」の登場である。

当時、『Jungle Fever』や『High Gear』と快調にヒットアルバムをリリースし続けていたニール・ラーセン(Neil Larsen)のワーナー移籍第1弾のアルバム。このワーナー移籍第1弾のアルバムを強力にサポートしたのが、名プロデューサー、トミー・リピューマ(Tommy Lipuma)。そのワーナー移籍第1弾のアルバムは、盟友バジー・フェイトン(Buzz Feiten)との双頭バンド名義の作品として登場。

そのアルバムとは、僕の大のお気に入りである『Larsen-Feiten Band』(写真左)。このアルバムは1980年のリリース。ちなみにパーソネルは、Neil Larsen (key,vo), Buzzy Feiten (g,vo). Art Rodrigez (ds), Lenny Castro (per,vo), Willie Weeks (b)。

このアルバムがまあ、それはそれは素晴らしい内容で、リリースされた当時、即ゲット、即ヘビロテな盤になった。いや〜、このアルバムは、ほんまによく聴いた。

冒頭の「Who'll Be The Fool Tonight」を聴けば、この双頭バンドのテイストが直ぐに判る。リズム&ビートは、ジャズもしくはR&B。と言って、単純なフュージョン・ジャズでは無い。ロック、Jazz、ファンク、ソウル、R&B、といった1970年代、米国で流行った音楽ジャンルの音を上手くミックスした、ジャンル不詳な音世界。
 

Larsen_feiten_band

 
演奏全体を覆う、切れ味良く小粋なファンクネス。ラーセンのファンキーなオルガンやエレピを軸にして、フェイトンのギターとヴォーカルが味わい深く響きます。この双頭リーダーの二人、ラーセンのエレピとフェイトンのギターの相性が抜群なんですね。

演奏全体のレベルは高い。それぞれが双頭のテクニックを保持している。そんな職人気質を前面に押し出したファンキーでアダルトな感覚。大人のフュージョン・ジャズであり、小粋なAORである。そう、この『Larsen-Feiten Band』は、フュージョン・AORである(笑)。

ラーセンのエレピが主役でインスト・ナンバーの「Further Notice」なんかは、お洒落で小粋なフュージョン・ジャズ。スカのリズム&ビートが楽しい「Morning Star」。ホーンの響きとアレンジが秀逸でむっちゃファンキーな「Make It」。こいつはほんまに絵に描いた様なファンクネスが芳しい「Danger Zone」。他の曲も内容に優れ、聴きどころ満載なアルバムです。

ボーカルが入っていたらAOR、インスト・ナンバーだけだったらフュージョンなんて、乱暴なジャンル分けもあった1980年当時。この『Larsen-Feiten Band』は、AORの名盤として頻繁に採り上げられたりもしていたっけなあ。この『Larsen-Feiten Band』の音世界は、音楽のジャンル分けが意味の無いものにしてしまう。

ちなみに、このアルバムのジャケット写真は、Norman Seeff(ノーマン・シーフ)の撮影。むっちゃ格好良いモノクロの世界。LPサイズのジャケットは迫力満点でした。ジャケ良し音良し。素晴らしい内容が今も魅力の『Larsen-Feiten Band』です。

 
 

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2013年5月13日 (月曜日)

クロスオーバーの幻の名盤です

フュージョン全盛時代に「ラーセン=フェイトン=バンド」なるものが存在した。ちょっとAORっぽいのだが、その底にしっかりとジャズとロックとR&Bの雰囲気が同居しているユニークなバンドで、僕の密かなお気に入りだった。

ロックでもなく、AORでもなく、R&Bでもないのだが、音作りは流行のフュージョンと似通っており、仕方がないので「フュージョン」のジャンルにしました、って感じのユニークな音作りで、しかも巧い。

特に、バジー・フェイトンのギターは、その音とフレーズにかなりな特長があって、一度、聴き込むと、後を引く、クセになるような音で、当時、病み付きになりましたねえ。

さて、そのラーセン=フェイトン=バンド、その前身は1970年代始めの「フルムーン」というバンドが起源、という記事を学生時代に読んで、『Full Moon』(写真左)なるアルバムを探しまくったが無い。とある雑誌の記事で、この『Full Moon』というアルバムはクロスオーバーの幻の名盤として名高く、レア中のレア盤なことを知った。

それもそのはず。ニール・ラーセン (key) と バジー・フェイトン (g・写真右)、この2人を核に1972年にフル・ムーン名義でアルバムを1枚発表しますが、ほどなく解散してしまっているんですね。僕なんて、そもそも「フルムーン」というバンドの存在すら知らなかった。
 

Full_monn

 
それから時は流れ、「フルムーン」のことなんて全く忘れていたのだが、銀座の山野楽器にふらっと立ち寄った時に「フュージョン幻の名盤コーナー」(だったと思う)という特集が組まれていて、このコーナーに、なんと、あの『Full Moon』が鎮座ましましているではないか。これはもう即ゲット。2003年の出来事である。

ちなみに、この『Full Moon』のパーソネルを挙げておくと、Buzz Feiten (g,vo), Neil Larsen (key), Freddie Beckmeir (b), Phillip Wilson (ds,vo), Brother Gene Dinwiddie (sax,fl,vo)。

初めてこの幻の名盤の音に触れてみて、改めてその音世界にしびれた。インストルメンタルの曲は バジー・フェイトンのギターとニール・ラーセンのキーボードが実に印象的で、しっかりと「ジャズ+ロック」な雰囲気がプンプンし、ボーカル付きの曲は、これはもう、しっかりとR&Bしてファンキー。

このアルバムに詰まっている音世界は、ロックでもなく、AORでもなく、R&Bでもないのだが、実はフュージョンでもない。強いて 言えば、70年代半ばで「フュージョン」と言う言葉に取って代わられ、死語となった「クロスオーバー」、そう「クロスオーバー」的な音なのだ。

このアルバムが録音された1971年、その時代をしっかりと押し込めたこのアルバムは、「フュージョン創生期」の貴重な音の記録だと僕は思う。しかし、こういうアルバムがリイシューされるとは素晴らしいですね。とにかく、フュージョン・ジャズ好きの方々は、一度、聴いてみて下さい。

 
 

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2013年5月12日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・18

昨日のブログで述べた「ジャズの手法をベースとしたクラシックの佳曲の演奏」という定型をうち破ろうとするピアノ・トリオかもある。「European Jazz Trio(ヨーロピアン・ジャズ・トリオ、以下EJTと略す)」である。

EJTのパーソネルは、Marc van Roon / マーク・ヴァン・ローン (p), Frans van der Hoeven / フランス・ホーヴァン (b), Roy Dackus / ロイ・ダッカス (ds) 。オランダのピアノ・トリオで、1995年以来、このメンバーに固定された。もともとのトリオの結成は、1984年とかなり古い。

RJTのアルバムは、日本のレコード会社主導の「企画モノのトリオ」という傾向が強く、硬派のジャズ者の方々からは、風当たりがきついが、それぞれのメンバーの力量は相当なものがある。演奏に関するテクニック、スキルについては全く申し分無い。既にこのマーク・ヴァン・ローン、フランス・ホーヴァン、ロイ・ダッカスのトリオで、18年もの長きに渡って活動を続けている。

哀愁感がそこはかとなく漂う、欧州的なリリカルなサウンドと、欧州ジャズならではの、伝統に根ざした洗練されたアレンジが特徴で、クラシックの名曲やビートルズらのスタンダード・ソングをジャズ化について、数々の成功を収めている。

そんなEJTのクラシックの名曲のジャズ化の成功例が、2001年にリリースされた『Symphony (Classics)』(写真左)。邦題は「悲しみのシンフォニー」。日本のレコード会社は、なんて趣味の悪い邦題をつけるんだ(苦笑)。

原題はちゃんと分かり易く「Symphony (Classics)」。ジャズでのクラシックというと、バッハなどのバロックが主流だったが、このEJTの選曲は型破りである。最初の1曲目はバッハだが、2曲目以降はモーツアルトあり、リストあり、ラベルあり、ドビュッシーあり。かなり、バラエティーに富んだ選曲がまず目をひく。その全曲を挙げると以下の様になる。
 

Ejt_symphony

 
1.フランス組曲第5番・第1曲アルマンド(J.S.バッハ) 
2.ソナタ第11番・第3楽章 ロンド トルコ行進曲(モーツァルト) 
3.カルメン・ハバネラ(ビゼー) 
4.ピアノ協奏曲第23番・第2楽章 アダージョ(モーツァルト) 
5.3つのノクターン・愛の夢(リスト) 
6.ペールギュント・朝(グリーグ) 
7.マズルカ第1番(ショパン) 
8.亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル) 
9.交響曲第40番・第1楽章 哀しみのシンフォニー(モーツァルト)
10.ベルガマスク組曲・第3曲 月の光(ドビュッシー)
11.サルタレロ
12.セルセ・ラルゴ オンブラ・マイ・フ(ヘンデル)
13.エチュード第17番(ショパン)
14.パヴァーヌ(フォーレ)
15.子供の情景・第1曲 見知らぬ国より(シューマン)

つまり、EJTはクラシックの佳曲の数々をジャズの「スタンダード」として取り上げ、ジャズの「スタンダード」化にチャレンジしているように感じる。曲によっては、旧来と同じように原曲に忠実になりすぎて、ちょっと「ずっこけ」気味のものもあるが、結構どの曲も健闘しているのではないか。

このEJTの『Symphony (Classics)』は、クラシック・ジャズなどという、旧来からの呼び方では表現できない新鮮さに満ちあふれている。「クラシック佳曲のジャズ・スタンダード化」という革新的な部分と、子供のころから聴き慣れ親しんだクラシックの名曲のジャズ化はなかなか楽しめる。「企画モノ」はキワものと決め付けないで、この新しい世界に耳を傾けるのも「おつなもの」です。

僕は、子供の頃よりクラシック・ピアノ出身なので、実はこのアルバムの様な、クラシックを題材としたジャズは結構好きで、本格的なジャズに聴き疲れた時の、僕にとって、食事でいう「お口直し」のようなジャンルが、このクラシック・ジャズなんですよね。

 
 

大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2013年5月11日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・17

さて、今日は「こんなアルバムあったんや」シリーズの第17回目。

ジャズには「スタンダード」というものがある。この「スタンダード」とは、映画の主題歌やオールディズと言われる、戦前か、若しくは、1950年代のポップスの名曲の印象的な旋律とユニークなコード進行を借りながら、 ジャズの即興演奏を繰り広げるモノで、数々のジャズ・ミュージシャンが、その演奏の内容と腕を競い合っている。

ジャズといえば「スタンダード」、と言い切る人もいるくらいで、確かに「スタンダード」の存在無くして、ジャズはあり得ない。また、この「スタンダード」を上手く演奏出来ないと、いかに、自作曲が優れたミュージシャンでも、ややワンランク低く見られてしまうほどなのだ。まあ、「スタンダード」が演奏出来てこそ、一流ミュージシャンの仲間入りということになる(もしかしたら、この感覚は日本のジャズ愛好家だけのものかもしれないのだが)。

しかし、映画の主題歌やオールディズの美しい旋律とコード進行を借りるというのなら、クラシックの佳曲もその「スタンダード」の題材になると思いきや、なかなか、そのパターンが無いんだな、これが。クラシックのマナー(バロック形式とかフーガ形式とか)をジャズに応用したジャズ演奏はいくつかあるが(これに代表されるのは、モダン・ジャズ・カルテットの演奏)、そのクラシックの形式の応用も数少ない。

なぜクラシックの佳曲の旋律が「スタンダード」の一環として、大々的にジャズにパクられなかったのかが不思議だが、幾つかの企画モノとしての、クラシックを題材にしたジャズ・アルバムというのはある。遠くは、1950年代、ジャック・ルーシェが、バッハの曲を題材にバロックのジャズ化を試みたころがはしりで、 1960年代になると、ちょくちょく出てくるようになる。

その1960年代の、クラシックを題材にしたジャズ・アルバムの佳作が、ルーマニア出身、異色のピアニスト、Eugen Cicero(オイゲン・キケロ)の『Rokoko Jazz』(写真左)。1965年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Peter Witte (b), Charly Antolini (ds), Eugen Cicero (p)。
 

Rokoko_jazz

 
聴いてみると、なかなかのテクニックで、ベースとドラムのリズム&ビートにしっかりと乗りながら、速い展開での「ジャズの手法をベースとしたクラシック曲の演奏」が奏でられている。いわゆる、クラシックの曲想をベースとしたジャズではない。

この辺の感覚がこのアルバムの演奏の特徴で、アルバム一枚を聴き通してみると、ピアノは原曲をなるべく崩さず、原曲に忠実に弾き回しながら、リズム・セクションのジャジーなリズム&ビートを活かして、トリオ全体の演奏で 「ジャズ化」を実現している訳なのだが、その展開がジャズっぽくない。

ジャズ演奏の展開の定型の一つである「イントロ → テーマの提示 → インプロビゼーション → テーマの再提示 → エンディング」という基本的な展開での「インプロビゼーション」の部分の判別がしにくく、どこまでが原曲でどこまでが即興なのか判りにくい。ピアノが原曲をなるべく崩さず、原曲に忠実に弾き回しているが故、インプロビゼーションの展開がオミットされているケースが散見される。

ジャズ演奏の場合、この「インプロビゼーション」の部分がすっ飛んだり判りにくかったりするのは、ちょっと困るなあ(笑)。
 
ジャズ鑑賞の楽しみの大きな要素にこの「インプロビゼーション」がある。この「インプロビゼーション」の内容こそが、ジャズ・ミュージシャンの個性と才能を左右する要素なので、なんだかこの「インプロビゼーション」の部分が明快に判別できないジャズ演奏は、聴き終えた後、なんだか忘れ物をしたような気分になってしまう(笑)。

といって、このオイゲン・キケロの『ロココ・ジャズ』は、なかなか良くできている。オイゲン・キケロのテクニックとタッチの煌めきを愛でるには最高の一枚である。特に、1曲だけ収録されている自作曲「Bach's Softly Sunrise」は、なかなかの内容の演奏。この曲だけは「クラシックの曲想をベースとしたジャズ」である。

 
 

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2013年5月10日 (金曜日)

ソウルをカバるロッドは最高

ロッド・スチュワート(Rod Stewart)って、本当に上手いボーカリストだなあ、と心から感心する。

21世紀に入って始まった、ジャズ・スタンダードをカバーした『Great American Songbook』集、そして、ロックのクラシックをカバーした『グレイト・ロック・クラシックス』。ジャズ・スタンダードやロック・クラシックなど、有名曲をカバーした時、その歌いっぷりとオリジナル性とで、そのボーカリストの力量が判る。

ロッドの場合、全く申し分無い。ロッドがカバーするジャズ・スタンダードやロック・クラシックなど、有名曲のそれぞれが、まるで、ロッドの為に書かれた、ロッドのオリジナル曲の様な響きと雰囲気に早変わり。ロッドのボーカリストとしての実力を十分に推し量れるというもの。とにかく上手い。

そんなロッドが、R&B、ソウル・ミュージックのクラシックをカバーしたアルバムが『Soulbook』(写真左)。2009年にリリースされ、たちまち、米国のビルボードで最高位第4位の大ヒットとなった。

ロッドは、R&B、ソウル・ミュージックが大好きである。R&B、ソウル・ミュージックを歌うロッドが一番活き活きしている。そんなことを、ロッドのファンは知っている。

当然、リリースされれば買う。そして、聴き惚れる。「商売に魂を売った男」と、ロック・オリジナル至上主義の方々に揶揄されようが、批判されようが関係無い。R&B、ソウル・ミュージックをカバるロッドは最高なのを、ロッドのファンは知っている。

収録曲は以下の通り。R&B、ソウル・ミュージックの有名クラシック曲がズラリと並んで、壮観ですらある。
 

Rod_soulbook

 
1. It's The Same Old Song
2. My Cherie Amour Featuring Stevie Wonder
3. You Make Me Feel Brand New Duet with Mary J. Blige
4. (Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher
5. Tracks Of My Tears Featuring Smokey Robinson
6. Let It Be Me Duet with Jennifer Hudson
7. Rainy Night In Georgia
8. What Becomes Of The Broken Hearted
9. Love Train
10. You've Really Got A Hold On Me
11. Wonderful World
12. If You Don't Know Me By Now
13. Just My Imagination
 

R&B、ソウル・ミュージックの有名クラシック曲とは言っても、ちょっと捻った、ちょっと渋い選曲ではある。さすが、R&B、ソウル・ミュージック大好きロッドである。「Rainy Night In Georgia」や「Love Train」なんて、とっても渋いやないか。

といって、「It's The Same Old Song」や「You've Really Got A Hold On Me」など、R&B、ソウル・ミュージックの基本中の基本の曲もしっかりと押さえている。さすがR&B、ソウル・ミュージック大好きロッドである。

ロック・ボーカリストの大御所、ロッド・スチュワートの「大人の枯れた味わい」のファンクネスが心地良い。むっちゃ渋いR&B、ソウル・ミュージックのカバー盤です。従来からのロック者の方々のみならず、ポップス・ボーカル者の方々、ジャズ・ボーカル者の方々にもお勧めです。

そして、ジャケットのロッドも渋くて格好良い。60歳を過ぎても伊達男。さすがロッドである。

 
 

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2013年5月 9日 (木曜日)

フェンダー・ローズを愛でる・4

サリナ・ジョーンズは、1944年1月29日、米国ヴァージニア州生まれ。若い頃から地元で唄っていたが、ニューヨークに移住。「September Song」を歌って、ハーレムのアポロ・シアターで行われたタレント・コンテストで優勝。すぐさまプロ・デビュー。そして1960年代半ば、米国を去り欧州へ移住。1978年に初来日。以降、東アジアで人気を獲得した女性シンガーである。

確かに馴染みのある名前である。ジャズ者初心者の頃、1970年代後半、サリナ・ジョーンズの歌声は、結構、FMで流れていたような記憶がある。

サリナ・ジョーンズは、どちらかと言えば、伝統的なジャズ・シンガーではなく、ポップスの要素も取り入れた、まさにフュージョン・ライクな女性ジャズ・シンガーである。
 
その「フュージョン・ライク」なジャズ・シンガー、サリナ・ジョーンズが、伝説のフュージョン・バンド、スタッフをバックに唄った アルバムがこの『My Love』(写真左)である。

1981年4月、東京での録音である。ちなみにパーソネルは、Gordon Edwards (b), Steve Gadd (ds), Cornell Dupree, Eric Gale (g), Richard Tee (key,vo)。なんと、バックのメンバーは、伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」そのものである。
 

Salena_jones_my_love

 
元々、バックを務める伝説のフュージョン・バンド、スタッフ自体が、当時のフュージョン・バンドには珍しい、ファンキーでブルージーな、うねるようなグルーブ感が身上のバンドなので、そのスタッフの「うねるファンクネス」溢れる伴奏に、如何にサリナが乗るのか、がこのアルバムの鍵であるが、その答えは、冒頭の「Everyday」を聴けば明確になる。

全編、夜の静寂にファンキーでブルージーな雰囲気をプンプンさせながら、ある時はダイナミックに ある時は囁くように、ある時はシャウトし、ある時は朗々と歌い上げる。そんなバラエティーあふれるサリナ の歌唱が楽しめる。一言で言うと、大人のフュージョンやね。

そして、もう一つの聴きものが、リチャード・ティーのフェンダー・ローズ。ティーって、フェンダー・ローズの使い手として、屈指の存在なのだが、このサリナ・ジョーンズの歌伴でその実力が炸裂する。
 
フェンダー・ローズを印象的に、揺れるように、幅広く歌わせるように弾きこなすテクニックは、ティーの真骨頂。ティーのローズは音の揺れと幅が広く、キャッチャーでソフト&メロウなフレーズが印象的。

もちろん、バックを務める「スタッフ」も言うこと無し。「フュージョン・バンドに歌伴は出来ない」なんて、つれないことをおっしゃる評論家もいるが、ここでの「スタッフ」は、フュージョン・ファン にとっては「嬉しい」例外である。

 
 

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2013年5月 8日 (水曜日)

ビ・バップとハードバップの特徴

ジャズって面白いな、って思う。ジャズの演奏スタイルやミュージシャン毎の個性が聴き分けられるようになると、俄然、ジャズを聴くことが面白くなってくる。

例えば、ここに、Dizzie Gillespie & Roy Eldridge『Roy and Diz #2』(写真左)というアルバムがある。1954年10月29日の録音。パーソナルは、Roy Eldridge, Dizzy Gillespie (tp, vo), Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Louis Bellson (ds)。なんだか凄い面子。

1954年と言えば、ジャズの演奏スタイルとして、ビ・バップからハード・バップへの移行期にあたる。「ビ・バップ」とは、一言で言うと「マニアックなジャズ」。複雑なコード進行をベースとして、高度なテクニックを駆使して、疾走感溢れる速さで演奏するスタイル。ミュージシャン同士の腕の競い合いであり、そんなアクロバティックな展開を楽しむもの。いわゆる、ハイレベルのスポーツを見て楽しむ雰囲気。

「ハード・バップ」は、ビ・バップの様な複雑なフレーズやスピードよりも、旋律がもたらす雰囲気・味わいを重要視し、ビ・バップの自由でアーティスティックなアドリブ展開とリズム&ブルースが持つ大衆音楽としての聴き易さと親しみ易さを基本として、リズム&ビートをベースとしたスイング感とドライブ感を強調しながら、メロディアスに洗練されたスタイル。聴いて鑑賞されることを意識したアーティスティックな演奏スタイル。
 

Roy_diz_2

 
この『Roy and Diz #2』には、ビ・バップ的な傾向が強い演奏と、ハード・バップ的な傾向が強い演奏とが混在しているところが面白い。しかも、ビ・バップの演奏は、そのアクロバティックな展開が故に、2〜4分の短時間の演奏がほとんどだが、このアルバムでのビ・バップな演奏は長尺なのが特徴。

そう、この『Roy and Diz #2』は、各曲の演奏時間が長い。短い曲で5分半程度。後の3曲は、9〜11分の長尺の演奏ばかり。リズム&ビートがミッドテンポなハード・バップな演奏は実に心地良い。ディジーとロイ、共通するのは、ビ・バップなトランペッターという点であるが、鋭角で尖った、切れ味鋭いディジーと、丸くてマイルドではあるが、ゴリッとした芯のある音のロイ、個性は全く異なる二人の演奏を堪能できる。

逆に、長尺のビ・バップな演奏のうるさいこと、うるさいこと(笑)。テクニックは優秀、疾走感溢れる速さで演奏するディジーとロイではあるが、とにかく耳について「うるさい」。加えて、オスカー・ピーターソン・トリオのバッキングも、そのテクニックは一流だけに「うるさい」ことこの上無し(笑)。それぞれの演奏内容は素晴らしいんやけどなあ。疾走感溢れる速さで演奏されると「うるさい」。

このアルバムを聴いていると、ビ・バップとハードバップの特徴が良く判って面白い。やはり長尺の演奏となると、ハード・バップ的な演奏に軍配が上がる。一言で言うと、聴いていて心地良いのだ。やはり、ビ・バップは短時間の演奏に限る。

 
 

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2013年5月 7日 (火曜日)

「Feels So Good」の一発屋

「チャック・マンジョーネ(Chuck Mangione)」と言われて、まず浮かぶのが、フュージョン界でのフリューゲルホーンの名手。そして、ヒット曲の「Feels So Good」。さて、その次は何が浮かびますか、と問われて・・・、う〜ん、これが何も浮かばないのですね(笑)。それほど「Feels So Good」の印象が強い、愛すべき「これ一曲」の一発屋です。

それほど、当時(1977から78年)、この「Feels So Good」は、日本でも売れに売れた。喫茶店の有線に乗って、1時間に1回は、この「Feels So Good」が流れていたのではないか。今日は、それほどに「耳タコ」の「Feels So Good」をフューチャーした大ヒットアルバムについて語りましょう。

その大ヒットアルバムとは、Chuck Mangione『Feels So Good』(写真左)。このアルバムは、フュージョン界のフリューゲル・ホーン奏者チャック・マンジョーネの1977年発表の大ヒットであり代表作。

フュージョン・ジャズというジャンルは、純ジャズの様なインプロビゼーションのひらめきやアドリブの応酬など、瞬間の瞬間の突発的な要素はあまり重視されず、その卓越した演奏テクニックや演奏曲のメロディや展開の美しさ・聴き易さ、印象的なリズムやアレンジが重視される傾向にある。

チャック・マンジョーネは、このアルバムの冒頭を飾る「Feels So Good」という名曲1曲で、その名をフュージョンの歴史に名を残したペット奏者である。

名曲「Feels So Good」は、演奏曲のメロディや展開の美しさ・聴き易さ、印象的なリズムやアレンジが秀逸。フュージョン・ジャズの申し子の様な曲であり、演奏である。チャック・マンジョーネは、この「Feels So Good」一発で終わった「単発屋」でもある。
 
チャック・マンジョーネの吹くフリューゲル・ホーンは決して巧くない。ミストーンも散見される。マンジョーネって、アート・ブレイキー率いるジャズ・ メッセンジャーズにも在籍していたんですよ。でも、このアルバム『Feels So Good』のプレイを聴く限り、マンジョーネのフリューゲル・ホーンはあまり巧くない。
 

Feels_so_good

 
それでも「Feels So Good」という曲は、それはそれは印象的なテーマと、美しいことこの上ないチャックのフリューゲル・ホーンの音色、そして、その美しい旋律とメロウなアレンジ、ミドルテンポな聴きやすいリズム&ビートで、この曲は大ヒットした。

この大ヒットした「Feels So Good」を冒頭に配し、大ヒットの勢いそのままにリリースされたのがこのアルバム『Feels So Good』。この典型的なフュージョンのアルバムは、チャック・マンジョーネをはじめとして、 バンドのメンバーは、全て、スタジオ・ミュージシャンあがりばかり。
 
ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh, el-p), Chris Vadala (ss, as, bs, fl), Grant Geissman (g), Charles Meeks (b), James Bradley Jr. (ds)。
 
Chris Vadalaのサックスがエモーショナルでメロディアスで力強くて印象的。テクニック豊かなGrant Geissmanのエレギも良い。Charles Meeksのメロディアスで重低音なエレベが演奏の底をしっかりと支え、James Bradley Jr.の堅実な縦ノリドラムが演奏全体をグッと引き締める。実は、この「Feels So Good」、バックバンドの演奏の優秀さに負うところが大きい。

アルバム全編通して聴いてみると、確かに「Feels So Good」は良くできた曲だが、よりフュージョン的な演奏としては、2曲目の「Maui-Waui(マウイ・ワウイ)」が素晴らしい出来だと僕は思う。僕の中では、この「Maui-Waui」のフュージョンな演奏で、このバンドの演奏が軽音楽ではなく、正当なフュージョンバンドとしてのポジションをキープしている。
 
しかし、3曲目以下は「ジャジーな軽音楽的+仰々しく単調なアレンジ+オーケストラの存在」が、ちょっと純正フュージョンというには気恥ずかしい。

「Feels So Good」を聴くと、なぜか学生時代の夏の夕暮れ時の夕焼けを思い出す。 なんだか懐かしくて、ふんわりと心地よい気持ちになる。この曲、いまやすっかり僕の中では「ナツメロ化」してしまった。

 
 

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2013年5月 6日 (月曜日)

キューン独特のソロ・ピアノ

昨日ご紹介したリッチー・バイラークのソロについては、そこはかとなくリズムを刻む左手の存在が、ジャズ的な雰囲気をほんのり醸し出している演奏だとすれば、このスティーブ・キューンのソロは、ジャズから外れて、半ば現代音楽の域に入っている。

そのスティーブ・キューン(Steve Kuhn)のソロ・ピアノの代表作が『Ecstasy』(写真左)。1974年11月の録音。ジャケットもECMらしい、現代美術をモチーフにした「お洒落」なもの。おおよそ、1950年代のジャズの雰囲気とは全く違う洒脱なイメージで、従来のジャズとは全く異なる、スティーブ・キューン独特の音世界の個性が漂う。

そのタッチは、ジャジーでファンキーな雰囲気は全く皆無。クラシック的ではあるが、クラシックのピアニストには無い、タッチにおける芯の強さが個性。逆に、タッチにおける芯の強さを除けば、現代クラシックのソロ・ピアノという雰囲気。

皮肉な言い方をすれば、ジャズ・ピアニストのスティーブ・キューンが弾いているので、ジャズのジャンルで捉えられているのではないか、と疑いたくなるような、クリスタルでクラシック的、現代音楽的なソロ・ピアノが繰り出されていく。僕の印象としては、フランス印象派と呼ばれるラベルやドビュッシーを想起させる。
 

Steve_kuhn_ecstasy

 
ECMのアルバムには、この様なジャズというよりは、現代音楽、現代クラシックといったほうがピッタリ来る録音がままある。それが、ECMレーベルの特徴なのだが、あくまで、ジャズ・ミュージシャンをメインに据えているため、タッチや出てくる音にゴリッとした芯があるのが特徴。そして、ECMレーベル独特のエコーの効いた録音が秀逸。ピアノの音のエッジが適度に立っていて、高音がキラキラしていて聴き易い。

現代音楽に近いため、不協和音も平気で使うし、荒々しいのフリーキーなタッチもバンバン出てくる。真夜中、そこそこの音量で聴き通すのはちょっと勇気のいるアルバムなので、深夜遅くにこのアルバムを聴く時は、ステレオの音量に気をつけて下さいね(笑)。

と冗談はさておき、演奏の質については全く申し分が無い。キューンの特徴である、耽美的でリリカルで透明感の溢れるフレーズと、時にフリーキーで荒々しい一面をちらつかせながら、ナルシストのキューンは美しい印象的な音を紡いでいく。

そして、最後の曲がブレイクした時、ナルシストであるキューンが、最高のエクスタシーを感じているような、楽しんでいるような、そんな充実のアルバムである。

ジャズのジャンルには、こんなソロ・ピアノもあるんだ、ということを、ジャズ者の皆さんにも体験していただきたいですね。そして、ジャズの懐の深さを実感してみて下さい。

 
 

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2013年5月 5日 (日曜日)

凛とした静謐感漂うソロ・ピアノ

ECMレーベルといえば、ベルリン・フィルで主席コントラバス奏者を勤めたマンフレート・アイヒャーが、1969年、ミュンヘンで創立したレーベル。アイヒャー独特の美意識のもと、新しいジャズの在り方のみならず、新しい感覚の音楽の在り方を追求した、個性派レーベルである。

この個性派ジャズ・レーベルには、独特の雰囲気を持ったソロ・ピアノのアルバムが沢山ある。おおよそ、ハードバップの様な旧来のジャズとは違うマナーの、どちらかといえば現代音楽の雰囲気が強い、凛とした静謐感漂うソロ・ピアノがメインである。欧州のジャズ・レーベルならではのアプローチ。これがまた良い。

そんなECMレーベルの「凛とした静謐感漂うソロ・ピアノ」の中で、良くCDプレイヤーのトレイに載る盤が、Richie Beirach『Hubris(ヒューブリス)』(写真左)。1977年6月の録音。Richie Beirach(リッチー・バイラーク)の初のソロ・ピアノ盤である。全曲オリジナルで固めている。

私事になるが、このソロ・ピアノ盤、今から30年以上前のLPの時代、ジャズ者初心者駆け出しの頃から、欲しい欲しいと思っていながら入手できず、CDでリイシューされる度に、そのうちと思っていたら廃盤となって、口惜しい想いをしたアルバムで、20世紀の終わり、2000年のリイシュー時にやっと入手した、曰く付きの盤である。やはり、欲しいと思う盤は見かけた時に迷わず買うべきですね(笑)。

さて、このRichie Beirach『Hubris』であるが、とにかく美しい録音、とにかく美しいソロ・ピアノである。初夏の眩しい日差しの中、誰もいない静かな山間の公園か、その木々の合間から垣間見る穏やかな海を連想する音世界。確かなテクニックに裏打ちされた、力強くも優しいバイラークのピアノがここにある。
 

Richie_beirach_hubris

 
そして、ECMレーベルのアルバムは殆どがそうなのだが、アルバム・ジャケットのデザインや写真が、まさにそのアルバムの内容や雰囲気とピッタリなのだ。言い換えると、ECMレーベルのアルバムは、ジャケットの印象で買って良い、ということが言える。

この『Hubris』も例外では無い。ジャケットのイメージにピッタリのピアノ・ソロが繰り広げられている。しかも、この盤のジャケットは、昔のLPサイズだと更に格別な、秀逸なデザインである。

この盤のピアノ・ソロに、メインストリーム・ジャズ的な4ビート展開や、ファンキーでアーシーな左手のビートを期待してはいけない。いわゆる「純ジャズ」的な雰囲気のソロ・ピアノでは無い。バイラークの左手は辛うじて、リズム&ビートをキープしてはいるものの、演奏全体の雰囲気は現代音楽の域に近い。

しかしながら、現代音楽の幾つかがそうであるような難解さは無い。現代音楽風でありながら、実にシンプルで判り易い、印象的な響きのフレーズが特徴のピアノ・ソロ。

しかも、タッチにはジャズ的な力強さがあるので、クラシック・ピアノの様な繊細さ、儚さが希薄。流行の癒し系ではなく、健全で明快なタッチ、そこはかとなく明るく印象的な響きのフレーズが特徴の、いわゆる現代ジャズのひとつのバリエーションと言える演奏なのだ。

アルバム収録のどの曲も素晴らしいソロばかりであるが、一番良い演奏を1つ選べと言われたら、冒頭の「Sunday Song」を迷わず、僕は選ぶ。とにかく美しく、透明感溢れ、そこはかとなく明るく、初夏の眩しい青空のような、初夏の日を一杯に浴びた「穏やかな海」を連想させるような冒頭の1曲だけでも、このアルバムは買いだ。

 
 

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2013年5月 4日 (土曜日)

「欧州」的雰囲気なギターの代表

6弦と12弦ギターを中心に、ピアノも含めてオーバーダビングした作品だが、透徹な音世界なのに、音自体に冷ややかさがなく、それぞれの楽器が深い色彩を帯びつつ、ひとつの景色を描く例のない世界。ジャズ初心者駆け出しの頃、この人のアルバムを聴いた時、凄くビックリした。

Ralph Towner『Diary』(写真左)。ECMレーベルからのリリース。ジャケットが既にECMらしい。1973年4月4−5日の録音。Ralph Towner(ラルフ・タウナー)が、6弦と12弦ギター、そしてピアノを担当。

パット・メセニーのギターが「米国」的雰囲気の代表だとすれば、このラルフ・タウナーは「欧州」的雰囲気の代表だろう。ラルフ・タウナーは、このアルバムでは、ピアノも弾いており、このピアノの音色と、タウナーのギターの音が相まって、実に、ヨーロピアンな音世界を現出している。

ECMレーベルのアルバムはジャケット・デザインが秀逸なものが多く、よく「ジャケットは内容を表す」と言われるが、このアルバムにもそれが言える。青空は見えるが、ややくぐもった空。どこまでも続く水平線。遠く静かに聞こえる波の音。ジャケット写真から受ける印象そのままの音世界が、このアルバムに展開されているのだ。
 

Rarlph_towner_dialy

 
それぞれの曲を追っていくと、『これがジャズ?』といぶかしがる声も聞こえそうだが、そんな既成のジャンルの常識を越えてこのアルバムは美しい。それぞれの曲における演奏のイディオムは紛れもなくジャズであり、この『美』の世界を現出できたジャズというジャンルに限りない奥行きと懐の深さを感じる。これもジャズ、これも「あり」である。

1曲目の「Dark Spirit」は、その展開と疾走感が素晴らしく、2曲目の「Entry in a Diary」は、その内省的で透明感あふれる内容は、しばし、時を忘れて耳を傾けてしまう、そんな素晴らしさ。3曲目の「Images Unseen」などは、ちょっと前衛音楽の演奏が入っており、環境音楽のようで、美術館のBGMのようだ。

しかし、前の3曲が一瞬にして霞むかの様に、4曲目の『Icarus(イカロス)』の演奏は凄い。言葉を失うような美しさであり、そのダイナミズム、その疾走感、その激しさと優しさ。ギターのソロとしては最高位に位置するこの演奏。この『美しさ』に打たれない人は不幸だと思うほど、この曲は、この演奏は美しい。

このアルバム全体を支配するのは「ヨーロピアンな雰囲気」である。所々に見え隠れするクラシック音楽な雰囲気やスパニッシュな雰囲気。そして、そこはかとなく、スカンジナビアンな雰囲気が現れては消えていく。そんな目眩く「ヨーロッパ」的雰囲気を、タウナーのギターを通じて、じっくりと味わって下さい。

 
 

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2013年5月 1日 (水曜日)

エレ・マイルス発祥のアルバム

MIles Davis『Miles in The Sky』(写真)。マイルスが初めて電気楽器を導入したアルバム。つまりは、エレ・マイルス発祥のアルバムである。

パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), George Benson (g), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。後に、あのソフト&メロウな歌うジャズ・ギタリストとして一世を風靡したジョージ・ベンソンが、マイルス・バンド初のエレクトリック・ギタリストとして採用されている。

冒頭の「Stuff」だけが、1968年5月17日の録音。そして、この「Stuff」が、マイルス初の8ビート・ナンバー。とてもシンプルな8ビートで、今の耳には凄く判り易い。この8ビート・ナンバーは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) という、マイルスの60年代黄金のクインテットでのエレ・マイルスな演奏。

ロン・カーターがエレクトリック・ベースを、ハービー・ハンコックがフェンダー・ローズを使用させられてのエレ・マイルス対応である。トニー・ウィリアムスが、淡々としたクールなシンバル・ワークが絶品の8ビートを叩き出していく。そこに、マイルスとショーターが自由にフレーズを紡いでいく。反復によるグルーヴ、8ビートが単純でクールな分、エレクトリック・ジャズのグルーブが判り易い。 
 

Miles_in_the_sky

 
面白いのは、エレクトリック・ギターの入ったセッションである「Paraphernalia」。ほとんど、それまでのモーダルで限りなく自由度の高いメインストリーム・ジャズが展開されている。エレクトリック・ギターの参入の効果、いわゆる「エレクトリック・ジャズ」の雰囲気はほとんど感じられない。

他の曲「Black Comedy」や「Country Son」は、『Miles Smiles』や『Nefertiti』の延長線上の演奏ばかり。それでも、その演奏内容は秀逸で、マイルスの60年代黄金のクインテットの面目躍如。マイルスのブロウは自由度が高く、凄まじいばかりの切れ味。トニーのドラミングは自由奔放、ショーターはほとんどフリーだし、ハービーは実にクールな響きのバッキングが個性的だし、ロンのベースはいつになく攻撃的。

エレ・マイルス発祥のアルバムである『Miles in The Sky』。エレ・マイルス者にとっては、冒頭の「Stuff」は絶対に外せない。そして、ジョージ・ベンソンの参入は不発には終わったが、「Paraphernalia」のエレ・マイルス風の楽曲の存在も、エレ・マイルス者にとっては、やはり外せない。

ジャケット・デザインも実に秀逸。「名は体を表す」というが「ジャケットは内容を表す」である。アコ・マイルスからエレ・マイルスへの過渡期ならでは「中途半端さ」が、エレ・マイルスの骨格を浮かび上がらせている。なかなか聴いていて興味深い、エレ・マイルスを理解する上では必須のアルバムである。

 
 

大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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