ハードバップの芳しき香り・・・
何気なく聴いていると、これはなかなか良いと思う。完璧なハードバップな演奏。音の具合からして、これは古い。1950年代後半のハードバップど真ん中の演奏と見切る。良い雰囲気だ。このアルバムは何というアルバムだろう。気になり出す。
特徴的なアルトから解明に入る。ハイテクニックで思いっきり吹きまくる、ファンクネス溢れるアルトはどうもキャノンボールらしい。ということは、このトランペットはナットということか。なんて類推する。アルトも上手いがトランペットも上手い。かなりのテクニック。ナット・アダレイはこんなに上手いトランペッターやったんや、と改めて感心する。
でも、アルバム名が判らない。仕方が無いから、ジャズ喫茶の、はたまたレコード屋のプレイヤーの下に駆け寄る。ジャケットを見る。でも「???」。当時、僕はこのアルバムの存在を知らなかった。今から20年ほど前の出来事である。
さて、そのアルバムとは、Nat Adderley『To the Ivy League from Nat』(写真左)。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Cannonball Adderley (as), Junior Mance (p), Sam Jones (b,tracks 3-11,cello,tracks 2 & 3), Al McKibbon (b,tracks 1-3), Charles "Specs" Wright (ds)。初リーダー作『That's Nat』から数えて3枚目のリーダー作。
うむむ、やはりハードバップど真ん中の演奏やな。趣味の良い端正でファンクネス漂うピアノはジュニア・マンス。なるほど、納得。ぶっといベースは誰じゃ。サム・ジョーンズには納得。アル・マッキボンは辛うじて名前を知っている程度。不明を恥じる。さらに、堅実ドラムのチャールズ・ライトは知らない。更に不明を恥じる。
しかし、アルバム全体の演奏のレベルは高い。恐らく、パッと集まって、パッと録音したと思われるが、これだけのレベルの演奏をサラサラとやってのける当時のジャズメンって、ミュージシャンとしてどれだけ優れているのかしら。結構、複雑なこともしているんですよ。それでもサラリとやってのけてしまう。一流ジャズメンって何時の時代も凄いよな〜。
リーダーのナット・アダレイは、トランペットでは無く、コルネットを使用している。コルネットはトランペットに比べまろやかで柔らかな音色で、音の移り変わりは滑らかだが、強弱の幅はトランペットより狭いのが特徴。このまろやかさと柔らかさという特徴が、このナットのリーダー作でも良く出ている。そういう意味で、このアルバムは、コルネットの特徴を聴くことの出来る好盤とも言える。
ナット・アダレイのコルネットは申し分無い。とにかく上手い。ナット・アダレイってこんなに上手かったんや、と心から感心する。歌心も豊か、強弱硬軟を自在に吹き分け、緩急も自在に吹きまくる。日本のジャズ本では、ナット・アダレイの代表作としては、リバーサイドの『Work Song』の一枚のみ紹介されることが多く、そういう扱いをずっと見ていたので、ナット・アダレイって大したトランペッターでは無い、なんて誤解をしていた時期もあった。
どうしてどうして、ナット・アダレイのトランペットは素晴らしいし、出来の良いアルバムを初リーダー作から、かなりの数を出している。今までの日本のジャズ本やジャズ評論家のナット・アダレイの扱いの低さの意味が判らない。まあ、やはりジャズのアルバムはどんどん実際に聴いてみるものである。
これも、ナット・アダレイの初期の佳作として、聴き応えのあるアルバムです。ジャケットもなかなか、ハードバップの芳しき香りが漂って、実に「ジャズ」な一枚です。
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