ピアノトリオの「安心のブランド」
ちょっと聴けば直ぐ判る。転がるような右手のシングル・トーン。絶妙のタイミングで合いの手を入れる左手のブロック・コード。ここまで書けば直ぐ判る。そう、レッド・ガーランドである。
カクテル・ピアノと形容するなかれ。確かに、右手のシングル・トーンは判り易くて、素人っぽい。でも、しっかりとグルーブが入っていて、そこはかとなくファンキー。通常の軽音楽としてのカクテル・ピアノとは似て非なるもの。レッド・ガーランドのピアノは「純ジャズ」である。
そこに、超弩級の低音がブンブン響く。重量級ウォーキング・ベースが実にファンキーなポール・チェンバースのベース。このチェンバースのベースと、ガーランドのピアノとの相性は抜群に良い。ガーランドの左手のブロックコードを「点」とするなら、チェンバースは、ウォーキング・ベースという「線」で支える。
そして、忘れてはならない、アート・テイラーの職人ドラミング。様々なテクニック、様々な音色、様々なリズム&ビートで、ガーランドが紡ぎ出すピアノのフレーズに彩りを添える。決して前面に出しゃばることは無いが、バッキングでしっかりと自己主張する職人芸的なドラミング。
今日、久し振りに引っ張り出して聴いたアルバムが、Red Garland『Can't See for Lookin'』(写真左)。1958年6月27日の録音。ちなみにパーソネルは言わずと知れた、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。鉄壁・鉄板のレッド・ガーランド・トリオである。
いや〜良いですね。確かにガーランド・トリオは「金太郎飴」。どのアルバムを聴いても、演奏のスタイル、演奏の音、演奏の雰囲気は同じ。それでも、曲が変わる毎に、その表情が微妙に変わっていくのだから、このピアノ・トリオはプロフェッショナルである。
このアルバム、1曲の長さが9分前後と長めで、じっくりとピアノ・トリオの妙技を堪能することができる。加えて、このアルバムの演奏は、ピアノ、ベース、ドラムがそれぞれ対等な立場での演奏展開になっていて、聴きどころが満載。とにかく、ガーランドが絶好調なのが嬉しい。
チェンバースも負けていない。このアルバムでのウォーキング・ベースは聴きものである。チェンバースのベスト・プレイに近い。そして、チェンバースはボウイングが好きなんだが、このアルバムでも「ギーコギーコ」している。まあ、このアルバムでのボウイングは音程が合っているので良しとしよう。音程の合っていないボウイングは最悪やけどね(笑)。
テイラーも凄い。派手は立ち回りなどは全く無く、堅実なドラミングを展開しているが、そのテクニックたるや、素晴らしいものがある。1曲の長さが9分前後と長め故、ドラム・ソロもしっかりと入っていて、これがまた実に職人芸的なリズム&ビートを、様々なテクニックと音で展開する。アート・テイラーって凄く上手い、ということを再認識。
ピアノ・トリオの「安心のブランド」である、レッド・ガーランド・トリオ。このアルバム『Can't See for Lookin'』は、こくのある、渋い内容の優秀盤です。ガーランド・トリオの代表盤にはなかなか顔を出さない盤ですが、これはガーランド・トリオの隠れ名盤として挙げても良い、実にガーランド・トリオらしいアルバムです。
★大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« ギターとトロンボーンの相性抜群 | トップページ | グレイト・ロック・クラシックス »
コメント