最後の玄人好みの「門あさ美」
青春のかけら達・アーカイブ。今日は先週に引き続き「門あさ美」。もう一枚、この『セミ・ヌード』(写真左)ってアルバムをどうしても紹介しておきたいので、ご容赦を。
さて、コンサートもやらない、テレビにも出ない、レコードだけで勝負していた、謎の女性シンガーソング・ライターにもかかわらず、予想以上の成果を出していた門あさ美。レコード会社が放っておく訳がない。真剣にプロモーションし出したのが、このアルバム。
まず、ミステリアスな存在だった門あさ美のポートレートが、アルバム・ジャケット前面を飾る。なんだか、歌謡曲のアイドルのようなジャケット。ファン的には、彼女のポートレートが前面に出て嬉しくもあり、密やかな楽しみが無くなったようで残念でもあり、当時、このジャケットを見て、実に複雑な心境になったのを覚えている。
曲のアレンジも、全編、歌謡曲っぽくなった。言い換えれば、当時のニューミュージックっぽくなった。デビューアルバムでの、和製ソフト・ロック的な、マニア好みのアレンジは影を潜めて、大衆受け狙いの無難なアレンジになって、マニア的には面白みが少なくなった。
それでも、門あさ美については、その哀愁に満ちて、情感たっぷりで、それでいてベタベタしていなくて、サッパリしていて、オシャレで、いやらしくないエロティックさ、は相も変わらずで、前の2作に比べて、その艶めかしさとコケティッシュさは、群を抜いている。6曲目の「お好きにせめて」やラストの「月下美人」なんぞは、大人の女のフェロモン全開である。
そして、このアルバムのこの1曲は、9曲目の「シーズン」。このちょっとオールディーズ風アレンジの、ミディアム・スローな曲は、僕の大のお気に入りである。門あさ美の曲の中で一番好きだな。終焉を迎えるような諦念感を漂わせながら女の意地を歌い上げる、この門あさ美は絶品である。
僕の私見では、和製ソフト・ロック的な、粋でオシャレな「門あさ美」はここまで。次作以降は、大衆路線に乗っかった「ファッション・ミュージック」路線を突っ走るわけで、マニアックな曲作りと健康的なお色気が微妙にバランスしていた、玄人好みの「門あさ美」は、既にそこにはいなかったのである。
「門あさ美」。知る人とぞ知る雰囲気から、彼女を独占している感じがまたマニア心をくすぐる、そんな感じが好きだった。だから、あんまり、人に教えない(笑)。親友とか、仲の良い奴にしか教えない、不思議なアーティストだった。
それでいて、行きつけの喫茶店で、時々、彼女の曲をかけてもらったりして、彼女の存在を知らない奴らから「これ、誰。教えてくれや」と言われて、「いや〜、これええやろ。そやけど、そんなに簡単には教えられへんなあ」なんて勿体ぶったりする(笑)。そんな、マニア好みのアーティストだったなあ。しかも、ルックスOKの女性SSWで、当時はそれ以上、何も言うことは無し(笑)。
ところで、門あさ美さんって、今、どこで何をされているのでしょうか?
大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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いきなり失礼します。たまたま行き当たった者ですが、門あさ美さんのことが載ってたんで嬉しくなりまして…。いやァ、ヨカッタですね、門あさ美! LPからカセットに録音して車ン中でさんざん聴きました。でも、6枚目だったか7枚目だったかで突然スタイルが変わっちゃって、それ以後はパッタリ。初めの方の6~7枚ばっかりを繰り返し繰り返し…、ホントによく聴いた。前の週にお書きになってるのも読みましたけど、ホントにおっしゃる通りで。
投稿: giovanni_xxiv | 2013年4月29日 (月曜日) 21時52分