現代ジャズのトレンドがギッシリ
Ambrose Akinmusire『When the Heart Emerges Glistening』(写真左)。2011年5月のリリース。邦題『うちなる閃光』。
しかし、日本のレコード会社が考える邦題というのは、どうもよく理解できないものが多い(笑)。といっても、このタイトルは英語で読んでも長いし、もう少し、売る方の身になってタイトルを考えても、と思ってしまう(笑)。
このアルバム『When the Heart Emerges Glistening』のパーソネルは、Ambrose Akinmusire (tp)、Walter Smith III (ts)、Gerald Clayton (p)、Harish Raghavan (b)、Justin Brown (ds)。カルテット編成なんですね。
リーダーのAmbrose Akinmusire、片仮名表記すると「アンブローズ・アキンムシーレ」と書く。1982年生まれ。ナイジェリアの血を引き、カリフォルニア州オークランド育ち。今年31歳になる若き中堅ジャズ・トランペッター。邦題が『うちなる閃光』なので、鋭く切れ味の良いハードなトランペットを想起するが、そうでは無い。
アンブローズ・アキンムシーレのトランペットは知的。乾いてはいるが、重心が低く、ぶ厚く骨太な音色。緩やかにウネウネと不思議な抑揚を伴った思索的なフレーズ。ちょっとくすんだような、夕暮れ時の様な、やや薄暗い雰囲気のトランペットは、とっても個性的。今までに無いユニークなスタイルのジャズ・トランペッターです。
そして、テナーのウォルター・スミス3世は、正統派ジャズ・テナー。太くて芯のある豪快なテナーは魅力的。音も大きく通る。テクニックも優秀。歌心あるフレーズ。力強さと抒情性が同居している、硬軟自在なテナー。かなりの注目株と見た。リーダーのアンブローズ・アキンムシーレのトランペットとの相性抜群。
そして、このアルバムの注目は、ジェラルド・クレイトンのピアノ。フレーズが美しい。その美しいフレーズを紡ぐ中で、ユニゾン&ハーモニー、指回しの不思議な響き。今までにちょっと聴いたことが無い様な響き。今までのジャズの代表的印象である「煙と汗」とは正反対の、知的で品格のある思索的なジャズ・ピアノ。
「My Name Is Oscar」では、ジャスティン・ブラウンのビートに乗って、アンブローズ・アキンムシーレの抑制の効いた朗読が重なる。その朗読の響きは、まさにヒップホップ。これまでのジャズが経験してきた様々なスタイルに加えて、他の様々な音楽ジャンルの個性を様々な形で吸収した音世界は、ストレートに「新しさ」を感じさせてくれる。
これからの現代ジャズを担うであろう若い世代ならではのスタイルを感じさせる、なかなかの内容のアルバムだと思います。確かに、このアルバムには、現代ジャズのトレンドが、現代ジャズのスタイルがギッシリと詰まっている。知的で抑制の効いたクールな音世界は、現代ジャズのトレンドになるのかも知れない。
大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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