スティットは喜々と吹きまくる
昨日のブログで、優れたジャズメンであっても、なかなか正統に評価されない、良いアルバムをリリースしていても、なかなか紹介されない。そんなジャズメンが沢山いる、としたが、このソニー・スティット(Sonny Stitt)というテナー奏者もその一人だろう。
ビ・バップ時代からハードバップ時代にかけて第一線で活躍したテナー奏者にも拘わらず、日本ではあんまり人気が無い。本場米国では、スティットはチャーリー・パーカーの最も優れた弟子と評価されている割に、日本ではパーカーの模倣扱いされ、アルト・サックスを聴くなら、チャーリー・パーカーを聴けば十分という偏った評論と相まって、ソニー・スティットはマイナーな存在に留まった。
ソニー・スティットの優れたアルバムを聴けば判るんだが、スティットのアルトは、決してパーカーの模倣では無い。パーカーよりも平易で明るいフレーズと節回しで、聴き易く判り易い。しかも、速いフレーズでも決して破綻すること無く、アドリブ・フレーズは一発でバシッと決める。アドリブ・フレーズの閃きがそのまま指に伝わるような流麗さで、この辺が、米国でチャーリー・パーカーの最も優れた弟子と評価される所以なのだろう。
なんやかんや語ってはいるが、早い話、ソニー・スティットは聴くに十分に値する、優れたテナー奏者だということが言いたいのだ。が、日本では、ソニー・スティットのアルバムに関する情報がとても少ない。聴くに十分に値するとは言っても、何を聴けば良いのだ、ということになる。
この我がバーチャル音楽喫茶『松和』のブログでは、2009年8月4日のブログ(左をクリック)で『Moonlight In Vermont』を、2010年7月4日のブログ(左をクリック)では『Sonny Stitt Bud Powell & J.J. Johnson』をご紹介している。この2枚は、ソニー・スティットのテナーやアルトを愛でる上でのマスト・アイテムなので、是非、ご一聴を。
さて、今日、ご紹介するのは『Sonny Stitt Sits In With Oscar Peterson Trio』(写真左)。1959年3月18日の録音。タイトルの通り、当時、大人気だったオスカー・ピーターソン・トリオをバックに従えた、カルテット編成のアルバムである。ちなみにパーソネルは、Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds), Oscar Peterson (p), Sonny Stitt (as.ts)。
録音年からすると、ハードバップど真ん中な時代。当然、演奏のスタイルはハードバップなんだが、スティットのサックスは「ビ・バップ」なスタイルを踏襲している。これが個性的で良い。明るいフレーズと節回しで、判り易いアドリブ・フレーズをバンバン吹きまくる。
なんせ、バックに控えるのは天下のピーターソン・トリオである。歌伴させたら右に出る者はいないと言われるピーターソンである。ジャズ史上、最高のピアノ・トリオのひとつ、ピーターソン・トリオをバックにしているのである。しかも、ピーターソン・トリオが一歩引いて伴奏に徹している。吹きやすいことこの上無かったろう。それもそのはず、このアルバムでは全編に渡って、スティットは喜々としてサックスを吹きまくっている。
この吹きまくるスティットがこのアルバムでの最大の聴きどころ。パーカーよりも平易で明るいフレーズと節回しで、聴き易く判り易いアドリブ・フレーズを吹きまくる。アルトもテナーも実に楽器として良く鳴っているところも聴きどころ。サックスがとてもサックスらしく鳴っている。あまりにポジティブで明るいフレーズがバンバン出てくるので、時に「五月蠅い」くらい(笑)。
アルバム・ジャケットも地味で、ジャズ入門本やアルバム紹介本に挙げられるアルバムでは無いんですが、これが良い雰囲気なアルバムなんですね。収録された曲の選曲も良好で、全編に渡って聴き易く、ハードバップなジャズを心ゆくまで楽しめる佳作だと思います。中堅以降のジャズ者の方々にお勧めの「隠れ佳作」です。
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