シチュエーションを選んで聴く
フュージョン・ジャズの中には、シチュエーションを選んで聴くアルバムがある。季節や気候、時間、部屋の雰囲気、自分の状態などなど、その時その時のシチュエーションに合わせて選んで聴くアルバムがある。
例えば、Herb Alpert『Rise』(写真左)などがその良い例。アルバムとしては1979年のリリース。フュージョン時代真っ只中のヒットアルバムである。
ハーブ・アルパートと言えば、ポップス系ジャズのトランペッター&コンポーザー。また、A&Mレコードの創始者の一人。なお、A&Mの「A」はアルパート(Alpert)を指す。ちなみに、ニッポン放送の『オールナイトニッポン』のテーマソングである「ビター・スウィート・サンバ」は、ハーブ・アルパートの作。
そんなハーブ・アルパートのヒット作『Rise』。ハーブ・アルパートのトランペットって、透明感のある、明るくて、ちょっと哀愁感漂う音色です。ブリリアントで心地良い響きはアルパート独特なものです。そして、このアルバム『Rise』は、軽快なリズムや流行りのリズムに乗った、ちょっとラテンがかったサウンドが絶妙。
冒頭の「1980」は、大向こうを張った、ちょっと恥ずかしくなる位の、ファンファーレの様な出だし。映画音楽の様な仰々しさ。哀愁のトランペットの音色。う〜ん、これはちょっと恥ずかしいぞ。それでも、米国ではこれが受けるのよね。でも、この曲が来ないと、この『Rise』は始まらない(笑)。
ほんと、ハーブ・アルパートのトランペットって、明晰で突き抜けるような爽快感があるんだが、不思議とマイナーな哀愁感漂うところが良いんですよね。そして、本当にトランペットが良く鳴る。ブリリアントという言葉がピッタリのトランペットの響き。こんなハーブ・アルパートのトランペットが『Rise』全編に渡って響き渡っているんですね。
演奏される曲は、どれもちょっと大向こうを張った、仰々しい位のアレンジが施された、それでいて意外とスラッとした格好良い曲ばばかり。そんな中でも、2曲目の「Rise」や5曲目「Aranjuez (Mon Amour)」、7曲目「Angelina」、そして、8曲目の「Street Life」が良いですね〜。あっけらかんとしていて、難しいことなく、スッと自然に聴き流せます。
このHerb Alpert『Rise』が流行っていた頃は、僕はジャズ者初心者駆け出しの頃。このアルバムは、四季折々、春夏秋冬、どの季節にも合うんですが、何故か、昼下がりの空いている「行きつけの喫茶店」で聴くことが、流すことが多かった。授業やゼミやバイトで仲間は皆、出払っていて、行きつけの喫茶店の中で「ぽつねん」と一人。窓からは麗らかな陽射しが差し込んでいる。
そんな時に、喫茶店のおばちゃんに、このHerb Alpert『Rise』を流してもらう。「ぽつねん」と一人の部屋の中で、明晰で突き抜けるような爽快感溢れるトランペットが耳に飛び込んで、スッキリ清々しい気持ちになり、哀愁感漂うマイナーな響きが、少しだけ寂寞感をかき立てる。その「そこはかとない寂寞感」が良くて、春夏秋冬、いろいろな天気の中で、このアルバムを聴いた。
しかも、このアルバム、「ながら聴き」がきくアルバムで、「ぽつねん」と一人の部屋の中での、特に読書に合うんですね。ちょっと大向こうを張った、仰々しい位のアレンジが施された、それでいて意外とスラッとした演奏が、意外と読書のテンポを煽ります(笑)。
フュージョン・ジャズの中には、シチュエーションを選んで聴くアルバムがある。このHerb Alpert『Rise』は、行きつけの喫茶店の中で「ぽつねん」と一人、昼下がりの空いている「行きつけの喫茶店」で聴くにピッタリのアルバム。「そこはかとない寂寞感」が良くて、春夏秋冬、いろいろな天気の中で、このアルバムを聴いたなあ。
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