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2013年3月25日 (月曜日)

ナット・アダレイの初リーダー作

今までの日本のジャズ入門本のアルバム紹介には、かなりの偏りがあったのでは無いかと思っている。優れたジャズメンであっても、なかなか正統に評価されない、良いアルバムをリリースしていても、なかなか紹介されない。そんなジャズメンが沢山いる。

例えば、Nat Adderley(ナット・アダレイ)などはその一人だろう。ジャズ・トランペッターとして、テクニック、歌心、実績共に優秀。それでも、日本のジャズ本で紹介されるアルバムは、1960年1月録音、Riversideレーベルからの『Work Song』のみ。生涯、30枚以上のリーダー作をリリースしているのに、だ。当然、日本での人気はイマイチ。兄貴のキャノンボールの影に隠れた脇役的存在のレッテルを貼られたりで散々である。

しかし、最近、状況は変わりつつある。最近、1000円盤が流行っていて、この1000円盤でリリースされる盤を見渡すと、こんなアルバムをリイシューするのか、とレコード会社のビジネス感覚を疑いたくなるような、マニアックでレアな優秀盤が目白押しである。まず、ジャズ者初心者の方々が手を出すには躊躇するような、日本のジャズ本で紹介されたことの無いアルバムがズラリと並ぶ。

これでは、ジャズ者初心者の方々は困ってしまうでしょうね。なんせ、ジャズ本で紹介されていないんだから。一枚1000円とはいえ、そのアルバムに投資する訳ですから、変な内容の無いアルバムに当たってしまったら、ジャズ自体が嫌いになってしまう危険性もあります。

このSavoyレーベルから『That's Nat』(写真左)もそんな一枚です。今までだったら、このマニアックでレアな優秀盤が日本でリリースされることは無かったでしょうね。1000円盤の流行がもたらした、新しいリイシュー方針の成果です。でも、このアルバムが日本でリリースされた時は、一瞬、ビックリしました。ほんまかいな、と。

この『That's Nat』は、1955年7月26日の録音。2012年11月16日のブログ(左をクリック)でご紹介した『Introducing Nat Adderley』が、1955年9月6日の録音ですから、この『That's Nat』のほうが、ナット・アダレイの初リーダー盤になりますね。2012年11月16日のブログでは、『Introducing Nat Adderley』がナット・アダレイの初リーダー盤、とご紹介していますが、これは間違い。謹んで、ここに訂正させて頂きます。
 
Thats_nat
  
さて、この『That's Nat』、ナット・アダレイのトランペット(またはコルネット)を愛でるに相応しい、初々しい内容の初リーダー作となっています。とにかく、溌剌として思いっきりポジティブにトランペットを吹きまくるナット。音も真っ直ぐで美しく、テクニックは優秀。とにかく、ナット・アダレイはジャズ・トランペッターとして優秀。どのリーダー作を聴いても、ナットのトランペットは優秀です。

ちなみに、このアルバムのパーソネルは、Nat Adderley (cor), Jerome Richardson (ts,fl), Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。1955年の録音ですから、ビ・バップからハード・バップへの移行期、ビ・バップで活躍して、ハード・バップに適応しつつある、当時の中堅ミュージシャンを中心に人選されていて、このパーソネルを確認するだけでも、このアルバムの内容は保障されたようなもの。

リーダーのナット・アダレイのコルネットは絶好調。テナー&フルートのジェローム・リチャードソンも素晴らしいパフォーマンスを繰り広げ、ベースのウェンデル・マーシャルは堅実なウォーキング・ベースを披露する。このナット・アダレイを中心としたクインテットの中で、特に素晴らしい演奏を聴かせくれるのが、ピアノのハンク・ジョーンズとドラムのケニー・クラーク。

とりわけ、ハンク・ジョーンズのピアノは素晴らしい。「雅(みやび)」の漢字がピッタリな、実に典雅で実に小粋な「聴かせる」ピアノを披露してくれる。「雅」で「粋」なハンク・ジョーンズのピアノ。これぞジャズ・ピアノという感じの「聴かせる」ことを前提としたパフォーマンス。決して難しく無い、決して聴き苦しくない、典雅なピアノ。

収録された曲それぞれは、これまたマニアックな選曲で、渋いマニアックなスタンダードが中心。それでも、親しみ易い旋律を持った佳曲ばかりなので、聴いていて心地良い。明確で明朗なナット・アダレイのコルネットとジェローム・リチャードソンのテナー&フルートがフロントで輝かんばかりに響き渡る。

良いアルバムです。ジャズ者初心者の方々には、ちょっとマイナー過ぎるかな、と思いますが、ジャズを深く親しみ始めた、ジャズ者中堅の方々には絶対のお勧め盤です。「実は私、この盤を愛聴していまして」と自慢げにカミングアウトの「し甲斐」のある「知られざる優秀盤」です。
 
アルバム・ジャケットは、サヴォイ・レーベルらしく、かなり地味なんですが、でも、これはこれでジャズらしくて良いかな。
 
 

大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

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