LP時代の音で幸せなひととき
朝から暖かい一日。暖かくなると、寒かった頃に控えていたことを色々とやりたくなる。特に、開腹手術を受けてからは、寒い部屋での作業は御法度。書庫の中のCDの整理はなかなか叶わなかった。
しかし、昨日今日と暖かい。というか、外に出て日向を歩いていると、早々に暑くて汗ばんでくる位だ。これだけ暖かくなると、西向きの暖房のない部屋も室温が上がる。ホワイトデーのプレゼント用のCDのチョイスとJポップのCDの整理を実施する。
すると意外なものが発掘された。LPをデジタルデータに落とした時の音源データのバックアップがCD-Rで発見された。東日本大震災の折の壊滅した部屋の片づけ時に捨てたと思っていたのでビックリ。音源データのフォーマットを見たら「aiff」形式。LPからPCに取り込んだ時のそのままのデータである。圧縮されたり加工されたりしていない。これは使える。
その音源データの中に、吉田拓郎の『今はまだ人生を語らず』(写真左)があった。吉田拓郎の初期の大傑作であるが、実はCDでリイシューされていない。正確には一度CDでリイシューされたのだが、とある理由である枚数が出た後、早々に発売中止になっている。それ以来、再発されることは無かった。
とある理由とは、冒頭の「ペニーレインでバーボン」の歌詞にある。「つんぼ桟敷」という単語があるのだが、これが差別用語として引っかかるらしいのだ。事実、この歌詞のこの部分のお陰で、何かとややこしいことに巻き込まれてきたらしく、吉田拓郎サイドは、もう懲り懲りという感じで、今もって全く再発される気配は無い。
しかし、このアルバムは吉田拓郎の大名盤である。アルバムとして聴きたい。中古LPを探し回った。しかし、このアルバムは吉田拓郎の大人気盤である。なかなか見つからない。これはどうも駄目かなあ、と思い始めた頃、近くに個人でLPなどを不用品販売っぽく、商売気無く、適当に売っているお店を嫁はんが見つけてきた。
どうせ大したものは無いやろうな、と期待もせずに冷やかし始めたら、なんと吉田拓郎の『今はまだ人生を語らず』が、美品であるじゃないですか。しかも値段は800円。ビックリしつつ、その驚きを悟られないよう平静を装いながら、なんと本当に800円でゲット。盤の状態も極上。ジャケットも極上。凄くラッキーな買い物だった。
そんなラッキーな経緯を経た音源データである。しかも、「aiff」形式で全く加工されていない音源。即、PCオーディオの環境にコピーして、早速、ハイレゾ仕様で聴いてみた。スピーカーから出てきた音は、LP時代の音、レコードプレイヤーの音、カートリッジの音である。優しく柔らかい、音のエッジが適度に丸い、LP時代の音である。
しかも、音の分離が良い。この『今はまだ人生を語らず』のアレンジを担当したのは、恐らく、あの松任谷正隆であろうと思われる(クレジットが無いけど、そうでしょう)。ヘッドアレンジっぽい、素晴らしいアレンジが、素晴らしいバックバンドの演奏で展開されている。
実に男気のある質実剛健な米国ルーツ・ロック風の音づくりで、基本的には、ボブ・ディランのバックバンドを勤めていた「ザ・バンド」風の音作り。渋く凝った音作りでチャラチャラしたところが全く無い。ストイックなまでの硬派なサウンド。参加ミュージシャンも、目を惹くビッグネームだけ拾ってみても、石川鷹彦、村上秀一、後藤次利・・・。凄いメンバーが集結して、よってたかって拓郎を惹き立てている。
目から鱗とはこのことで、ところどころで、こんな音が入っていたんやなあ、とか、この変態チックなベースラインはなんや、とか、ギターの伴奏フレーズが複雑怪奇やぞ、とか、今までの環境で気が付かなかった音に色々と気が付いた。特に、ドラムとベースの音が追い易くなった。「人生を語らず」のタイトなドラミングや、「襟裳岬」のベースラインなんて、もうそれはそれは痺れっぱなし。
いや〜素晴らしい音である。たまたま見つかった音源データで幸せな時間を過ごした土曜日の夕暮れ時でした。しかし、LP音源をPCで取り込んで、ハイレゾデータ化して、PCオーディオ環境で聴くって、結構いけるぞ。僕の手元には、未だCD化されない、ニューミュージック時代の名盤がLPとして数十枚眠っているが、もう一度、自らで、デジタル化に挑戦してみるか。
大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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