Carpentersの最高傑作です。
1975年6月のリリースになる。アルバム・タイトルは『Horizon』(写真)。邦題は『緑の地平線〜ホライゾン』。米国ポップス史上、屈指のコンセプト・アルバム『Now & Then』の後を受けてリリースされた通算6枚目のアルバム。
あの目眩くオールディズ満載の企画盤、最高傑作との評価の高い『Now & Then』の後ゆえ、「地味目なアルバム」という評価をされがちであるが、どうしてどうして、「これぞカーペンターズ」といえる素晴らしい曲達を、じっくりと全編に渡って堪能できるのは、実はこのアルバムだろう(ちょっとアルバムのトータル時間が短いのが玉に瑕だけど)。
実は私情が思いっきり入るが、カーペンターズのヒット曲の中で、僕が一番好きな「オンリー・イエスタデイ」が入ってるだけでも、このアルバムは良し。この「オンリー・イエスタデイ」って曲、実にカーペンターズらしい、最高にカーペンターズらしい名演だと思う。
カレンの歌声といい、リチャードのアレンジといい、コーラスといい、特別な装置を使ったエコーといい、トニー・ベルーソの実に個性のあるエレキギターといい、ボブ・メッセンジャーの歌心溢れるサックスといい、実に清楚で明るく元気が出るような楽想と言い、完全に、どこをとっても「カーペンターズ」なのだ。
そして、これは素晴らしい、と見直したのが、日本でも大ヒットした「プリーズ・ミスター・ポストマン」。耳にたこができるほど、聴かされて飽き飽きしたこの曲も、最新のリマスターされたCDで聴くと、実に様々な音が織り込まれた、実に奥の深い、アレンジの効いた曲ということが判るから不思議。
ヒットした1974年当時は、このようなポップス曲を優れたステレオ装置で聴いたことなんて無かったから、今回、リマスター盤に耳を傾けてみて「目からウロコ」。「やっぱり、カーペンターズんの音って凄かったんだ」と素直に感心することしきり。
このアルバムは、ヒット曲ばかりでなく、バラード調の曲の出来が素晴らしく良く、当時、ツアー続きで喉を酷使していたとは思えない、カレンのシットリとした歌唱が実に味わい深い。リチャードのアレンジも秀逸で、スローな楽曲も決して飽きさせない。いわゆる「大人のアルバム」なのだ。
イーグルスの名曲カヴァーである「Desperado」などは、本家本元のイーグルスの出来を凌駕する素晴らしい内容。このバラード曲を歌うカレンは素晴らしい。しかし、なんでこの「Desperado」の邦題が「愛は虹の色」なんやろうか。イーグルスの時は「ならず者」やったんやけど。この「愛は虹の色」の邦題のセンスは良く判らない(笑)。
このアルバム、売上的にみるとなかなか興味深い内容で、米国では、このアルバムはヒット・チャートのトップ10にランクインされなかった。つまり、米国ではカーペンターズのブームのピークは越えていたということ。1975年という時代。米国では、商業ロック、商業ポップスが「行き詰まり」状態にな っていた、ということだろう。
逆に、全英アルバム・チャートでは通算5週に渡って1位を獲得。日本でも、オリコンの総合アルバム・チャートで1位を獲得している。つまりは、米国以外は、良い物は良い、という、実に正常な感覚を持っていたということになる。確かに、この『Horizon』は、カーペンターズの最高傑作に位置づけられるアルバムだと僕は思う。
しかし、このアルバムを境に、米国でのカーペンターズの人気は一気に下降線をたどる。内容のあるアルバムをリリースし続けるのに、である。そういう面では、米国という国は音楽に対して正しい審美眼、というか「審美耳」を持っていなかった、ということになる。
つまりは、ロック&ポップスの世界で、米国で売れる曲=優れた曲であるという図式は当たらないのだろう。そういう意味では、この『Horizon』というアルバムは不幸な境遇にあるアルバムである。しかし、今の耳で聴いて、の『Horizon』は、再評価されて然るべき、カーペンターズの最高傑作に位置づけられるアルバムだと改めて僕は思う。
大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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