最近のトラックバック

« ビッグバンド・ジャズは楽し・19 | トップページ | 「アバ(ABBA)」との出会い »

2013年2月 8日 (金曜日)

ペッパーの「東京デビュー」記録

ジャズのアルバムには、作品として優れた盤もあれば、ジャズの歴史の一場面を記録した「時代の証人」的な盤もある。ジャズは即興の音楽。その即興の瞬間を留めたアルバムはいつも聴いていて楽しい。

さて、昨年、興味深いアルバムをたまたま見つけた。存在は知っていたのだが、このアルバムは、ジャズの歴史の一場面を記録した「時代の証人」的な盤。内容的にちょっと懐疑的に感じて、なんだか後回しになって、なかなか触手が伸びなかった。

そのアルバムとは、Art Pepper『Tokyo Debut』(写真左)。時は1977年4月5日、場所は郵便貯金ホール。Cal Tjaderのゲストとして、「東京デビュー」を果たしたアート・ペッパーの記録。アート・ペッパーは天才アルト・サックス奏者。天才ではあるが、筋金入りの「ジャンキー」でもあった。

Wikipediaを紐解くと「生涯を通じて麻薬中毒によりしばしば音楽活動が中断されている。1960年代後半を、ペッパーは薬物中毒者のためのリハビリテーション施設シナノン(Synanon)ですごした。1974年には音楽活動に復帰し、ふたたび精力的にライブやレコーディングをおこなった」とある。つまり、重度の麻薬禍からカムバックして東京にやって来たということ。

このアート・ペッパーの「東京デビュー」はジャズ界の有名な伝説の一つ。3番目の妻ローリー・ペッパーによって筆記された自伝「ストレート・ライフ」に克明に記述されている。このCDでも、コンサートの冒頭、アート・ペッパーが壇上で紹介され、満場の拍手をもって迎えられる様子が、「Introduction」として記録されています。この部分だけでも鳥肌が立ちます。

自伝「ストレート・ライフ」のこの部分の一節は、ネットでもあちらこちらで引用されているので、ちょっと憚れるのだが、敢えて、ここでも引用させて頂く。それほど、感動的な出来事であり、感動的なジャズの歴史の一コマなのだ。
 

Art_pepper_tokyo_debut

 
「僕の姿が見えるや、観客席から拍手と歓声がわき上がった。マイクに行き着くまでの間、拍手は一段と高まっていった。僕はマイクの前に立ちつくした。おじぎをして拍手がおさまるのを待った。少なくとも5分間はそのまま立っていたと思う。何とも言えないすばらしい思いに浸っていた。あんなことは初めてだった。(中略)その瞬間、今までの、過去の苦しみが全て報われたのだ。生きてきてよかった、と僕は思った。」

なんと温かい日本のジャズ者の皆さんであることか。なんとジャズに対して造詣の深いジャズ者の皆さんであることか。確かにアート・ペッパーは心から感激したに違いない。本当に凄まじいほどの万雷の拍手なのだ。

以降、高速展開の「Cherokee」から、アート・ペッパー渾身のブロウが怒濤の如く続きます。ここでのペッパーのアルトは、ハードバップというよりは、高速展開が旨のビ・バップの様なブロウです。ところどころでフリーキーな展開も織り交ぜて、ジョン・コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」に影響を受けたという、ペッパー後期の「硬質でハードで限りなくフリーなバップ演奏」が全編に渡って展開されています。

このライブでのペッパーのブロウは、ちょっと「一杯いっぱい」な余裕の無い、ちょっと一本調子なブロウに感じますが、自伝「ストレート・ライフ」から垣間見える当日のペッパーの状態からすると、仕方の無いところかと思います。

この盤がリリースされた時には、「こんな歴史的な音源があったんや」なんて、心底、感心したのを覚えています。というか、アート・ペッパーの自伝「ストレート・ライフ」の、あの有名な一節を知っていただけに、この音源の存在は「なんか出来過ぎやなあ」なんて訝しがったりもしましたね(笑)。

このアルバムは、ジャズの歴史の一場面を記録した「時代の証人」的な盤です。内容はともかく、まずはジャズの歴史の一コマを追体験して下さい。音質もまずまずで、当時のライブの様子が十分に追体験出来ること請け合いです。

 
 

大震災からもうすぐ2年。でも、決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« ビッグバンド・ジャズは楽し・19 | トップページ | 「アバ(ABBA)」との出会い »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80793/49273178

この記事へのトラックバック一覧です: ペッパーの「東京デビュー」記録:

« ビッグバンド・ジャズは楽し・19 | トップページ | 「アバ(ABBA)」との出会い »

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ