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2013年2月13日 (水曜日)

欧州に渡ったフィル・ウッズ

1960年代後半、1967年にジャズ・シーンを牽引していたキーマンのひとり、ジョン・コルトレーンが亡くなり、当時の米国のジャズ・シーンは迷走を始めた。

ビートルズの米国上陸を機にロックが市民権を獲得する中、コルトレーンがご執心だったフリー・ジャズが台頭したが、大衆の人気を得るに至らず、大衆性・娯楽性を追求したソウル・ジャズはその安易なアプローチ故、マンネリに陥った。ジャズとロックの融合を狙った、電気楽器を活用た8ビート中心のクロスオーバー・ジャズは何とか踏みとどまったものの、ビ・バップ以来のメインストリーム・ジャズについては衰退の一途を辿っていた。

まさにそんな1970年代に入らんとする時期の、このグループのライブ盤を聴く度に、当時の米国のジャズに対する考え方と欧州のジャズに対する考え方の大きな違いに思いを馳せる。そのグループとは、Phil Woods and His European Rhythm Machineである。

1960年代後半、米国のジャズ界に見切りをつけて欧州に渡ったフィル・ウッズ(Phil Woods)。米国で仕事が無かった訳では無いが、もはや当時の米国ではやりたい事が出来ない、というのが、渡欧の動機だった。1968年渡仏、ヨーロピアン・リズム・マシーン(The European Rhythm Machine)を結成し録音を残した。

Phil Woods and His European Rhythm Machineはライブ中心の活動だったので、アルバムの殆どがライブ音源です。幾つかあるライブ盤の中で、僕が一番お気に入りの盤は、ヴァーヴ・レーベルからリリースされた『Phil Woods And His European Rhythm Machine At The Montreux Jazz Festival』(写真左)。かの有名なモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音。1969年7月19日の録音とあります。

このPhil Woods and His European Rhythm Machineでの、まず、リーダーのフィル・ウッズのアルト・サックスの音はと言えば、完璧な「ビ・バップ」。ビ・バップなアルト・サックスを心ゆくまで楽しませてくれます。ハイテクニックを駆使した、高速フレーズ、高速アドリブな展開。実に芸術性豊かなアルト・サックスです。
 

Phil_woods_rhythm_machine_montreux

 
バックのリズム・セクションは、これまた、骨太なメインストリーム・ジャズなリズム&ビートを供給します。テクニックは優秀。供給されるリズム&ビートは、正統派ハードバップそのもの。そのメンバーは、George Gruntz (p), Henri Texier (b), Daniel Humair (ds)。

このライブ盤でのPhil Woods and His European Rhythm Machineは、まさに、硬派で骨太なメインストリーム・ジャズをガンガンに演奏していきます。その疾走感たるや、凄まじいものがあります。「圧巻」という言葉がピッタリの凄まじいテンションの張った演奏に思わず聴き惚れてしまいます。

そして、演奏が終わった後の聴衆の熱狂的な歓声と拍手。当時の欧州はジャズをクラシックと同等の「アート(芸術)」と捉えて、ジャズを鑑賞していたようです。ビ・バップなウッズのアルト、正統派ハードバップそのものなリズム・セクション。そして、このグループの圧倒的な演奏テクニック。まさに「アート」です。

逆に、当時の米国では、ジャズをカントリー&ウエスタンなどと同等の「過去の娯楽音楽」として捉えている様で、このPhil Woods and His European Rhythm Machineの様な、硬派で骨太なメインストリームなジャズはマイナーな存在でした。ジャズをエンタテインメントとして捉えている米国では、確かに当時の硬派でメインストリームなジャズメン達は居場所が無かったのでしょうね。

世界的に商業ロックが台頭し、米国ではジャズが衰退状態である中で、欧州ではこんな硬派で骨太なメインストリームなジャズが展開されていたんですね。さすがにクラシックを生み育んだ、歴史ある欧州。クラシックとは正反対の、即興の音楽であるジャズをアートとして理解し扱うなんて、なん懐の深いことか・・・。感心することしきりです。

まさに欧州で花開いた「硬派で骨太なメインストリーム・ジャズ」。このライブ盤にはそんな名演が満載です。でも、1972年には再び米国に舞い戻って活動を再開しているんですよね。この辺が、フィル・ウッズの良く判らないところ。しかしながら、たった4年間でも、Phil Woods and His European Rhythm Machineの成果は素晴らしいものがあります。   

 
 

大震災からもうすぐ2年。でも、決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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