日本ロックのコンプレックス
英語の歌詞と日本語の歌詞。70年代前半にそんな議論があった。ロックはインターナショナルな音楽であり、将来的には世界を目指すべきで、そのためにも英語で歌うべきで、日本語で歌うのは、歌謡曲に媚びることだという発想。例に漏れず、このクリエイションも歌詞は全て英語。ボーカルは全て英語で歌っている。いわゆる「カタカナ英語」である。
この、あんまり上手くない「カタカナ英語」のボーカルも含めて、クリエイションの音は新鮮だった。所謂、国籍不明な音。日本語で歌わない。といって、ネイティブな英語でも無い。ホワイト・ブルースをベースにしているが、言われるほどブルージーではない。
当時の歌謡曲に完全に相対していた日本ロックではあるが、クリエイションの音は今の耳で聴くと、当時の歌謡曲からの影響、ビートの取り方など、日本人ならではの、逆に言うと、外国人には絶対に出来ない音作りが、今でも新鮮に響く。
インターナショナルな音楽を目指しながら、日本人ならではの音世界が個性だったクリエイション。「カタコト英語」を聴くと、本当に無理してたんやな〜、なんて苦笑いしてしまいます。
それでも、このクリエイションの音世界は、今でも新鮮に響くほど、日本人の水準を遙かに超えたもので、今の時代にも十分通用するもの。一度、耳を傾けて頂きたい日本ロックのバンドのひとつです。
そんなクリエイションのセカンド・アルバムが『CREATION With Felix Pappalardi』。1976年のリリース。
元マウンテンのベーシストであり、かのエリック・クラプトンが在籍したクリームのアルバムをプロデュースしたことでも有名な、フェリックス・パパラルディを迎えて制作されたアルバムである(アメリカとカナダでは、アルバム名『FELIXPAPPALARDI & CREATION』)。当時、このアルバムの発表を契機に全米ツアーも行った。所謂、日本ロックのインターナショナル化戦略である。
クリエイションのファースト・アルバムはブルージーなツイン・ギターと走り抜けるような疾走感が特徴で、歌謡曲からの影響など、日本人のロックでしか出来ない、日本人ロックの個性が見え隠れするところがオリジナリティだったのであるが、このセカンド・アルバムでは、ブリティッシュ・ハードロックのフォロワー、コピー・バンドになってしまっている。所謂、クリエイションとしてのオリジナリティが欠如してしまったことが最大の問題点である。
これは、プロデューサーであるフェリックス・パパラルディのオーバー・プロデュースが原因だろう。ファーストアルバムで好ましい方向に出ていたクリエイションの個性が、フェリックス・パパラルディの楽曲で全く消されており、なんだか、マウンテンの出来損ない的なバンドの演奏を聴いているみたいな錯覚を覚える。
う〜ん、これは、はっきりいって失敗作でしょうね。クリエイションの個性が消されてしまっていて、凡百なブリティッシュ・ハードロックのバンドの演奏に聴こえてしまいます。あのクリエイションがです。当時、このアルバムを聴いて、結構、戸惑いました。
それでも、クリエイションのメンバーは、日本ロックのインターナショナル化の為には、このパパラルディのプロデュースを甘んじて受け入れなければならないと感じていたのでしょうか。なんだか、当時の日本ロックの海外コンプレックスを見るようです。
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