フォーカスというバンドの個性
今日も昨日に引き続き、欧州はオランダ発のプログレ・バンド、フォーカス(Focus)のお話しを。
さて、フォーカスのアルバムを見渡すと、駄作・凡作の類が無いのが判る。そんな中で、まず、このフォーカスというバンドの個性をまとめて感じることが出来るアルバムが、彼らの2枚目の出世作『Moving Waves』(写真左)だろう。
アルバム・ジャケットだけを見ると、恐らく、皆さん、触手が伸びないでしょうねえ。ピンク基調の波の写真の下方にメンバー4人のポートレートがレイアウトされている。ああ、何て趣味の悪いジャケット・デザインだろう。とても優れたプログレのアルバムとは思えない。でも、中身は確かなので、ご安心を(笑)。
さて、趣味の悪いジャケットはさておき、このアルバムは、フォーカスの代表作であり、フォーカスというバンドの個性の全てが詰まっている秀作である。
フォーカスというバンドの個性とは、欧州はオランダ出身のバンドなところで、プログレな演奏のメインは、クロスオーバーなジャズ・テイストであったり、クラシックな旋律であったりする。時に、ヨーロッパの民族音楽風なテイストも見え隠れする。このいかにもヨーロピアンな音作りが,フォーカスの個性。
しかも、演奏テクニックは優秀。1970年代前半に活躍したバンドの中でも上位に位置づけられるテクニックの確かさ。既に、このセカンド・アルバムで、爽やかな、アルバム表題曲をはじめとして、フォーカスの個性は完成されている。
軽快、かつ、なんとなくヨーロピアンなロックンロールにのって、タイスの壮絶なヨーデル・ボイスが絡みまくる「Hocus Pocus(悪魔の呪文)」で、冒頭から盛り上がるんですが、この曲の、ハードで捻れたなギターのリフと変てこりんなヨーデル風スキャットを初めて聴いた時には、すっごく戸惑います、というか「絶句」する方が多いでしょうね(笑)。
時に、ヨーロッパの民族音楽風なテイストも見え隠れする、フォーカスの個性と言えば個性なんですが。でも、演奏力は確かです。かなり難度の高いこの曲をいとも容易く演奏しています。
しかし、そこはご安心。2曲目以降はしっかりと「落ち着きます」。2曲目「Le Clochard(ル・クロシャール)」から「Janis」、「Moving Waves」とクラシック風の印象的な旋律をベースに、流麗なバラード調の小作品が続きます。この3曲に、米国ロックや英国ロックでは味わえない、典雅で流麗な欧州プログレ・サウンドをしっかりと感じることが出来ます。フォーカスというバンドの個性です。
そして、フォーカスの数ある楽曲の中で名曲として名高い「Focus II」のダイナミックな展開としっとりとした芳しい叙情性に感じ入るばかり。とにかく、このアルバムには、ヨーロッパの香りがプンプンして、僕のような英国を含む、ヨーロッパ指向の人間にはたまらない。
LP当時、B面全てを占めていた、トータル時間23分の大作「Eruption」は、即興性の高い、クロスオーバー・ジャズ風のインプロビゼーションが展開される。インスト・バンドとしてのフォーカスの真骨頂である。クラシック風の曲の構成、底に漂うロマンティシズム、ダイナミックなロック・ビート、インプロビゼーションにおけるジャズ風の即興性、フォーカスというバンドの持つ個性がこの大作に詰まっている。
フォーカスを何か一枚と言われたら、まず、このアルバムをお勧めです。プログレ・ファン、ジャズロック・ファンの方々には、ジャケット・デザインにびびらずに、一度は聴いて頂きたいアルバムの一枚です。
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