「途方もない」サド・ジョーンズ
今日は寒さも一休み。最高気温は12度を超えた、我が千葉県北西部地方。豊かな陽射し、風も無く、実に穏やかな午後。何かゆったりとしつつもしみじみとしてしまう、穏やかな冬の日の午後。
こんな穏やかな冬の日には、このアルバムが良く似合う。Thad Jones『The Magnificent Thad Jones』(写真左)。ブルーノートの1527番。ちなみにパーソネルは、Thad Jones (tp), Billy Mitchell (ts), Barry Harris (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds), Kenny Burrell (g)。1956年7月9日と14日の録音。
リーダーのサド・ジョーンズは、後の1960年代後半から1970年代に活躍した伝説のビッグバンド「サド・メル・オーケストラ」の双頭リーダーとしての印象が強くて、元々トランペッターとしての実績は、なにかと省略される傾向にあるが、どうして、サド・ジョーンズのトランペットは、実に個性に溢れ、実に味わい深いもの。聴かずにいるのは「ジャズ者の名折れ」である。
もともと、サド・ジョーンズは、1953年より、カウント・ベイシー楽団で人気No.1のトランペッターとして活躍しており、1955年、カウント・ベイシー楽団の人気盤『エイプリル・イン・パリ』を通じて、その名を知られるようになった訳で、トランペッターとしてのサドの成果を確認することは実に大切なことである。
サド・ジョーンズのトランペットの特徴は、中音域を中心とした「ふくよかで温かい丸みのある」音が個性のフレーズと、ミッドテンポを中心とした余裕のあるブロウ。聴いていて心地良いこと限りなし、という感じのトランペット。そんなサド・ジョーンズのトランペットを最大限に愛でることが出来るアルバムが『The Magnificent Thad Jones』(和訳すると「途方もない」サド・ジョーンズ)。
冒頭の「April in Paris(パリの4月)」を聴くだけで、サド・ジョーンズのトランペットの個性を十分に確認することが出来るだろう。スローなテンポのアレンジの中で、サドは朗々とトランペットを吹き上げていきます。実に良く鳴るトランペットです。
4曲目の「If Someone Had Told Me」でのサドのトランペットも秀逸。ミッド・テンポな演奏の中で、しっかりと抑制を効かせながら、オープン・ホーンで朗々と鳴るトランペットは絶品です。ミス・トーンも無く、テクニックも確か。ジャズ・トランペットをしっかりと体感できる、素晴らしいブロウです。
バックのサポートも秀逸。ピアノのバリー・ハリスが実に趣味の良いバッキングを提供し、パーシー・ヒースのベースが堅実に切れ味の良いスイング感を提供する。そして、マックス・ローチの素晴らしいドラムが演奏全体のリズム&ビートを支える。これだけ秀逸なバックのサポートがあってこそ、サドのトランペットが映えるのだ。
良いアルバムです。ハードバップの演奏にありがちな、明快な「激しさ」や「熱さ」とは無縁の演奏ですが、程良いテンションが心地良い、ミッド・テンポからスロー・テンポの演奏の中で、内に秘めた「激しさ」や「熱さ」が見え隠れするところが実に良いですね。
アルバム全体の悠然とした雰囲気が堪らない、サド・ジョーンズのトランペッターとしての代表盤の一枚です。
大震災からもうすぐ2年。でも、決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。
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