フュージョン時代のハバード
フレディー・ハバードは、帝王マイルスの後を継ぐべきトランペッターだった。テクニックがずば抜けており、1960年代、ハバードが若手売り出し中の時代のハバードのテクニックは、帝王マイルスを凌駕するほどだった。
上手過ぎるというのは、何かと「出る杭は打たれる」風な扱いを受ける訳で、それでいて、これまた若かりし頃のハバードは、自らのハイテクニックを全面に押し出した演奏をドバーッと仕掛けたりしたものだから、1960年代のハバードのトランペットに対する評価は、その実力に比して、結構、厳しいものがあったと記憶する。
かの帝王マイルスですら、ハバードはテクニックに頼りすぎる、なんて言うものだから、ハードバップ〜新主流派時代のハバードの評価は、このマイルスの「ハバード評」で定着した感がある。確かに、1960年代のハバードの諸作を聴くと、確かにハイテクニックを駆使して吹きまくる的な展開が主流だったことは否めない。
1970年代に入り、クロスオーバー〜フュージョンの時代に入ると、やっとハバードはその高度なテクニックを押さえつつ、小出しにしながら、流麗に歌うようなトランペットを吹きこなすようになり、1970年代〜1980年代のフュージョン系のリーダー作に、ハバードの面目躍如的な素晴らしいトランペットを聴くことが出来る。
しかし、1970年代、特に1970年代後半になると、フレディー・ハバードは、1960年代に活躍した「過去の人」的な扱いを受けることが間々あり、本人としては不本意だったと思う。それほど、クロスオーバー〜フュージョン時代のフレディー・ハバードの演奏は優れたものが多い。
そんなハバードのトランペットを愛でることの出来るアルバムのひとつが『Windjammer』(写真左)。1976年の録音になる。1976年と言えば、フュージョン全盛時代ど真ん中。このアルバムも徹頭徹尾、フュージョン・ジャズで貫かれている。
アレンジとキーボード、プロデュースを担当しているのは、今やフュージョン・ジャズの大御所、ボブ・ジェームズ。このボブ・ジェームスのアレンジが実に絶妙で、ハバードがペットを気持ちよさそうに吹きまくっているのが良く判る。ボブ・ジェームス独特のファンキー&ジャジーでポップな感覚がフレディー・ハバードのペットの良く似合う。
パーソネルを眺めてみると、Gary King (b), Steve Gadd, Andy Newmark, Chris Parker (ds), Ralph MacDonald (per), Lew Soloff (tp), Patti Austin (vo) 等々、今から振り返ると、錚々たるフュージョン・ジャズの手練のオンパレード。その演奏については悪かろうはずが無い。破綻の無い、充実した高度なバッキングが素晴らしい。
歌うようにペットを奏でるハバード。その高度なテクニックを押さえつつ、小出しにしながら、流麗に歌うようなトランペットを吹きこなすハバード。よくよく耳を傾けると、そのさり気ないブロウには、かなり高度なテクニックが織り込まれていることが判る。この盤でのハバードは「歌っている」。
派手で趣味の悪いジャケットに騙されてはいけない。これまでの「ハバード評」に惑わされてはいけない。まずはしっかりと自分の耳で感じて欲しい。この「歌っている」トランペットこそ、かの帝王マイルスが得意とするものだった。やっぱり、フレディー・ハバードは、帝王マイルスを継ぐべきトランペッターだったと僕は思う。
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