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2013年1月 8日 (火曜日)

レイ・ブライアントとの出会い

レイ・ブライアント(Ray Bryant)は、僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの一人なんだが、レイ・ブライアントとの最初の出会いって、どのアルバムなんだろうと想い出を手繰ってみた。

僕が大学に入ってジャズを聴き始めたのが1978年。大学の近くの「隠れ家のような優雅な喫茶店」の存在に気が付いて、その喫茶店に通い出したのが、1979年、大学2回生の夏である。その「隠れ家の様な優雅な喫茶店」で、僕はレイ・ブライアントに出会った。

出会いのアルバムは、Ray Bryant『Alone at Montreux』(写真)である。このアルバムが、この「隠れ家の様な優雅な喫茶店」でかかっていたのが、1979年の秋、晩秋の頃であったと記憶する。

喫茶店に足を踏み入れて、直ぐにこのアルバムがかかった。冒頭の「Gotta Travel On」のソロ・ピアノに仰け反った。凄い迫力。ゴスペル・フィーリングを踏まえたファンキーでソウルフルなフレーズ。ノリノリのインプロビゼーション。合いの手の様に叩き付ける左手の重低音。30秒も聴けば直ぐ判る、ピアノ・テクニックの確かさ。

続く「Blues #3 - Willow Weep For Me」で、もう僕はメロメロである。こんなファンクネス漂う、ゴスペルチックな「Willow Weep For Me(柳よ泣いておくれ)」を聴いたことが無い。オフビートを強調した左手の低音に思わず唸る。凄いピアノ・ソロだ。思わず、カウンターに駆け寄り、このアルバムのジャケットを確認させて貰った。この「隠れ家の様な優雅な喫茶店」の妙齢のママさんと初めて声を交わした瞬間でもあった(笑)。
 

Bryant_montreux

 
改めて、このRay Bryant『Alone at Montreux』は、1972年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのピアノソロ・ライブの音源である。実は、当初、ブライアントはモントルー・ジャズ・フェスティバルで演奏の予定は無かったそうだ。当初の予定はオスカー・ピーターソン。そのピーターソンが急遽、出演不可となり、主催者サイドが慌ててその代役を探していたところ、その代役の「白羽の矢」が立ったのが、レイ・ブライアントだったらしい。

当然、ブライアントは気合いが入る。ピーターソンの代役、役に不足は無い。やってやろうじゃないか。そんな気合いを胸に冒頭の「Gotta Travel On」を弾き始める。なるほど、そういう出演背景があったので、この「Gotta Travel On」の演奏の迫力とテンションが並大抵では無い訳だ。とにかく凄い迫力とテンション、そしてタッチ。前のめりというか、もう前ががりで「ひっくり返りそう」な程の強くてポジティブなノリ。

そのノリにのって、どんどんブライアントは、ソロ・ピアノを弾き進めていく。ソロ・プレーヤーが演奏しているとは感じられない程の、手数の多い音の洪水。決して喧しくない音符の連鎖。それに応える様に、曲が進むにつれ、聴衆もどんどん盛り上がる。ブライアントのノリと聴衆の盛り上がりが手に取るように判る、秀逸なライブ盤である。

ソロ・ピアノのライブ音源なので、心ゆくまで、レイ・ブライアントのピアノの個性を堪能することが出来る。ゴスペルチックなブルース・フィーリング溢れる、レイ・ブライアントの代表盤であり、ピアノ・ソロの名盤である。ジャズ者であれば一度は聴いて頂きたい。

ちなみに、このアルバムを仲の良いジャズ喫茶でリクエストする時は、ジャケット写真のブライアントの様に、両手の手のひらを無言で突きだせば、リクエストOK(笑)。「隠れ家の様な優雅な喫茶店」の妙齢のママさんに、幾度と無くやりましたねえ(笑)。

 
 

★大震災からもうすぐ2年。でも、決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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