ロックな『CREATION』を聴く
1970年代前半〜中盤にかけて、日本では、ちょっとした「日本人ロック」のブームだった。欧米の商業ロックに刺激を受けて、日本人自らが日本人の感性でロック・バンドを立ち上げた。そんな中に「クリエイション」というバンドがある。
クリエイションは、ブリティッシュ・ロックの雄、エリック・クラプトンらのホワイト・ブルースに傾倒したギタリスト・竹田和夫を中心に1969年に結成されたブルース・クリエーションを前身としている。竹田は、このブルース・クリエイションをアルバム一枚で解散。単身、ロンドンに渡り、武者修行を重ねた竹田は、英国から帰国後、1974年にクリエイションを結成。
結成当時のメンバーは、竹田和夫 (g)、飯島よしあき (g)、松本茂 (b)、樋口晶之 (ds)の4人。ブルージーなツイン・ギターと走り抜けるような疾走感が特徴のバンドだった。日本では珍しいというか、振り返ってみると唯一無二の存在でしたね。
クラプトンらのブルースロックに傾倒しているという触れ込みでしたが、竹田+飯島でなるクリエイションのツインギターの印象の方が強くて、ブルースロックというよりは、当時、ブリティッシュ・ロックで人気を博していた「ウイッシュボーン・アッシュ」のコピー・バンドという印象の方が今でも強い。今回は、そんなクリエイションのファーストアルバムについて語ります。
さて、このデビュー盤『CREATION』(写真左)、1975年のリリースになる。冒頭のイントロは「なんだなんだ、グループサウンズか〜」とのけぞってしまう様な、ノスタルジックなフレーズ。この一曲目『YOU BETTER FIND OUT』の、1960年代グループ・サウンズ風なレトロな響きの前奏に失望してはならない。間奏の小粋なツイン・リードまで、「カタカナ英語」のボーカルにもジッと耐えることだ。
当時、日本のバンドが英語で歌うのが流行っていた時代で、そのなかでも、クリエイションは、結構格好良かった。彼らのルーツは、エリック・クラプトンらのホワイト・ブルース。聴きこんでいくと、それが手に取るように判る。ちょうど、1970年代前半のブリティッシュ・ロック。ブルースとスワンプとが、まぜこぜになって、そして、適度にレイドバックしている。
そして、どう聴いても、ウイッシュボーン・アッシュのパクリとしか思えないツイン・リード。でも、どれもが、完全コピーでは無く、十分にオリジナリティーを感じさせるのが、このバンドの良いところ。当時は、このツイン・リードが堪らんかったなあ。そして、竹田のギタ・テクは凄く格好良かった。ギターバンドの極みである。
ところどころ、なんとなく歌謡曲風していて、なんとなく、1960年代後半のグループ・サウンズ風のフレーズが見え隠れしたりする。これって、当時の日本人ロック独特の、日本人ロックの個性である。リアルタイムで聴いていた若かりし頃は、これがなんとなく気恥ずかしかったんだが、今では、これが「日本人ロックの個性」と評価できる。うん、年を取るのも悪くないなあ(笑)。
しかし、「カタカナ英語」のボーカルは弱い。ジャズ・ボーカルと同様に、やはり発音は重要やね。ホワイト・ブルースを踏襲するなら、もう少し、発音の上手いボーカルを配しておればと悔やまれる。
「俺は所詮Yellowだけど、この国にだって、Bluesはあるんだぜ」。このアルバムを締めくくる曲『BLUES FROM THE YELLOW』にはそんなフレーズが出てくる。これには、当時、いたく感動した。今では、「そんなにツッパらなくても良い、日本人の音には日本人の音なりに、他の国に真似できないクールな面がある」と思うんだが、当時は、外国の音に対して、密かな「劣等感」があったからね。
全編通じて、今の耳で聴いても、良い出来のロック・アルバムだと思います。1970年代Jポップ者の方々に、是非、一度は聴いて欲しいアルバムのひとつです。特に、ギターバンドが好きな方にはお勧め。結構「はまります」。
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