ジャズ喫茶で流したい・40
ジャズの世界で人気のあるモダン・ジャズの演奏スタイルは「ハードバップ」だろう。「ハードバップ」は、アメリカ東海岸を中心に、1950年代半ばをピークに1960年代まで続いた演奏スタイルで、ソロのアドリブ演奏面において、ロング・プレイが基本を基本とし、ハードドライビングしつつ、メロディアスに洗練されたインプロビゼーションが特徴のスタイルである。
と言われても何のこっちゃ判らないのが、ジャズのややこしいところ。これは模範となる演奏を聴いて貰った方が手っ取り早い。我がバーチャル音楽喫茶『松和』において、「マスター、ハードバップでどんな演奏ですか」と問われた時に、聴いて貰うアルバムが何枚かあります。そんな「ハードバップが手に取るように判る」アルバムの一枚が、Red Garland『Soul Janction』(写真左)です。
1957年11月15日の録音。1957年と言えば、ハードバップ時代の「ど真ん中」。アルバムの全ての演奏が、ハードバップのサンプルの様な演奏です。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd(tp), John Coltrane(ts), Red Garland(p), George Joyner(b), Art Taylor(ds)のクインテット編成。テナーに若き日のジョン・コルトレーンが入っていることが目玉です。
冒頭のタイトル曲「Soul Janction」を聴くと、「ああ、これはハードバップやなあ」と思わず感嘆の溜息が漏れます。それほど、ハードバップした演奏です。曲の前半部は、ガーランドを中心とするピアノ・トリオな演奏で、ゆったりとしたテンポで、しっかりとテンション張りつつ、ジャジーでファンクネス仄かに漂う、実にコクのあるピアノ・トリオな演奏を展開しています。このピアノ・トリオな展開だけでも、十分にハードバップしていますね。
そして、曲の後半部に入るや否や、テナーのコルトレーンがブワーッと入ってきて、個性溢れるインプロビゼーションを展開するところなんざあ、鳥肌モノ。音符を敷き詰めるように高速に吹き上げる「シーツ・オブ・サウンド」は控えめに、朗々とテナーを吹き上げていくコルトレーンは絶好調。すぐにコルトレーンと判る個性、そしてハイテクニック。やっぱり、コルトレーンって凄いですね。
この冒頭のタイトル曲「Soul Janction」の曲全体の所要時間が15分30秒。ハードバップの前の流行の演奏スタイルだった「ビ・バップ」が、1曲当たり3分程度だったことを考えると、かなりのロング・プレイです。このロング・プレイの中で、しっかりとアレンジされた曲展開と、それぞれのジャズメンのインプロビゼーションが心ゆくまで展開される。これぞ「ハードバップ」です。
2曲目以降の曲も、1曲当たり6分30秒から7分30秒程度の、やはり「ロング・プレイ」な演奏ばかりで、このロング・プレイの中で、それぞれのジャズメンは心ゆくまで、それぞれの技術の粋を尽くして、ロング・プレイなインプロビゼーションを展開していきます。このアルバムの良さは、参加ジャズメンが皆、絶好調な演奏を聴かせてくれる点です。特に、テナーのコルトレーンとトランペットのドナルド・バードの演奏は白眉です。
このアルバムの中に詰まっているそれぞれの演奏は、本当に強く「ハードバップ」な演奏スタイルを感じさせてくれます。何度聴いても飽きない佳作でしょう。ジャケットも何かと問題のあるプレスティッジ・レーベルのジャケット・デザインからすると秀逸な出来で、このジャケット・デザインからも、しっかりと「ハードバップ」な雰囲気を感じ取ることが出来ます。良いアルバムです。
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