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2012年11月21日 (水曜日)

新メンバーを迎えてRTFライブ

今年の7月に手に入れながら、なかなか聴けなかったライブ盤をやっとのことで聴いた。Return To Forever『Mothership Returns』(写真左)である。チック・コリア率いるフュージョン・バンド、リターン・トゥー・フォーエバー(以下RTFと略す)の最新のライブ盤である。

RTFとは言っても、メンバーは中核のChick Corea (p)、Stanley Clarke (b)、Lenny White(ds) のリズム・セクションは不動だが、フロント楽器のメンバーが全く新しい。Jean-Luc Ponty (vln)、Frank Gambale (g) が新メンバーとして参加している。

アル・ディメオラ入りのオリジナル・メンバー(第三期)で構成されて再結成されたRTFの『Returns』(Montreuxのライブ録音)があったので、また、RTFの再結成ライブかよ、と思われる方もいるでしょうが、我々の様なRTFのファンにとっては「待ってました」とばかりに歓待するんですよね。まあ、好きだから仕方が無い(笑)。

でも、RTFの再会セッションや再会ライブは、決して「昔の名前で出ています」的な、昔の演奏をなぞったような演奏では全く無く、再会セッション、再会ライブの都度、新しいメンバー、新しいアプローチ、新しいアレンジを携えたパフォーマンスを聴かせてくれるので、決して飽きないし、決してマンネリにならない。

今回は、フロント楽器が全くの新メンバー。とはいっても、もう中堅からベテランの域に達している演奏家ですが、バイオリンのジャン・リュック・ポンティとギターのフランク・ギャンバレ。そして、今回のRTFのライブ盤。この二人の新参加の演奏が素晴らしい。昔からRTFのメンバーであったかのように、息の合った、そして、RTFの音の個性を理解した、実に見事な演奏を聴かせてくれます。これぞ玄人、これぞ職人って感じでしょうか。
 

Motheship_rerurns

 
相変わらず、チックのキーボード、特にシンセの扱いは素晴らしいものがあるし、とにかく、エレクトリック・キーボードの演奏については、未だにジャズ界最高峰だろう。本当に上手いし、フレーズ毎にエレクトリック・キーボードの選択が秀逸。ここまでの高い極みに達すると、もはや、昔、ライバルと目されたハービー・ハンコックやジョー・ザビヌルは敵では無い。エレクトリック・キーボードの使い手として孤高の存在である。

スタンリー・クラークのチョッパー・ベースもライブでは映えるなあ。スタジオ録音でしつこくチョッパられると、ちょっと鬱陶しく感じるのだが、ライブでは、そのノリを要求するパフォーマンスとしてはなかなかのもの。そして、面白いのは前にも指摘したが、スタンリー・クラークはチックのバンドでバックを務める時に、それはそれは素晴らしい演奏を繰り広げるのだ。チックのバックでのスタンリー・クラークは無敵である。

そして、このところ、ドラムのレニー・ホワイトもそういう傾向になっていて、何故か、チックのRTFで叩くレニー・ホワイトのドラミングは実に魅力的。疾走感溢れ、堅実なリズム&ビートに、ジャズ・ドラマーに似合わず、乾いたロックっぽいリズム&ビートを供給してくれる。実はこの乾いたロックっぽいリズム&ビートが、RTFの音の個性を決定付ける重要な要素になっている。

Disc1が「Medieval Overture」「Senor Mouse」「The Shadow of Lo / Sorceress」「Renaissance(ポンティ曲)」、Disc2が「After the Cosmic Rain」「The Romantic Warrior」「Concierto de Arnjuez / Spain」「School Days」「Ceyond the Seventh Galaxy」で全9曲。どの曲も一定水準以上のレベルの演奏なので、安心して聴くことができます。ユニゾン&ハーモニーもバッチリ合っていて、再会ライブとは言え、しっかりとリハーサルされていて好感度良好です。

まあ、それでも、このライブ盤は、RTFマニア御用達的な存在だと思います。ジャズ者初心者、チック者初心者の方々は、まずはRTFのスタジオ録音盤である『Light As A Feather』や『Hymn of the Seventh Galaxy』『The Romantic Warrior』を、まず、聴いて欲しいなあ、と思います。それからでも遅くは無い(笑)。

 
 

大震災から1年半が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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