現代の良質なハードバップな響き
現代ブルーノートを代表するサックス奏者ジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano)。80年代にメル・ルイス・オーケストラで活躍したベテラン・サックス・プレイヤー、ジョー・ロバーノ。バップからアバンギャルドまで吹き分ける、タフなテクニックを持つ。
口周りの鬚と巨体がテディ・ベアのようにチャーミングなテナー・サックス奏者。旋律を吹くテナーは風貌そのものだが、アドリブに入るとそのチャーミングなテナーが豹変する。かなり骨太で硬派で、かなりヴァイタルなアドリブがウネウネ、延々と展開される。
難しいプレイをするテナー奏者とされる。しかし、このライブ盤のロヴァーノは決して難しく無い。聴衆を前にしたライブである。難しいより先に、自分のプレイを堪能して欲しい。プロの吹き手ならば、まずはそう思うだろう。
ここに大変魅力的なライブ盤がある。Joe Lovano『Live at the Village Vanguard』(写真左)。CD2枚組。決して、ジャズ名盤紹介本などに名を連ねる盤では無い。ネットで検索しても、そうそうにヒットするライブ盤では無い。でも、その内容は天下一品。素晴らしい内容の現代ハードバップなライブ盤である。
ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (ts,ss), Tom Harrell (tp), Mulgrew Miller (p), Anthony Cox (b, Disc One), Christian McBride (b, Disc Two) , Billy Hart (ds,Disc One), Lewis Nash (ds, Disc Two) 。Disc Oneは1994年3月12日、Disc Twoは1995年1月22日の録音。かの有名老舗のライブハウス、ビレッジ・バンガードでのライブ録音である。
演奏の内容は完璧に「現代のハードバップ」である。どの曲も朗々とした雰囲気で「現代のハードバップ」を奏で続ける。素敵な余裕を持った、悠然としたアドリブ。切れ味良く一体となったテーマ演奏。
これまでのジャズの歴史での、ハードバップのバリエーションの良いところを上手く織り交ぜた、伝統に根ざした新しい響きが魅力の「現代のハードバップ」。
バックについては、まずピアノが素晴らしい。おおっ、なんとお気に入りの現代ハードバップ・ピアノの達人、マルグリュー・ミラーではないか。ほほっ〜。そして、これまたベースが良い。Disc1もDisc2も、どちらもベースが魅力的。なんとDisc1は、アンソニー・コックス、Disc2はクリスチャン・マクブライド。やっぱりな〜。どちらも大のお気に入りベースですぞ。
ドラムも良い。ふむふむ、なななんと、Disc1はビリー・ハート、Disc2はルイス・ナッシュ。こりゃ〜良いはず。迫力満点。大らかでダイナミックで繊細なドラミング。フロントを盛り立て、フロントと共に歌い、フロントと共に泣くドラミング。味のあるドラミング。誰にでも出来ることでは無い。プロの職人だけができる仕業。
主役のテナー、ジョー・ロバーノとトランペッター、トム・ハレルのフロント2管には惚れ惚れする。ジャズである。絵に描いた様なフロント2管。思いっきりジャジーなフロント2管。ポップス性など、全く追求しない。ジャズとしての、ハードバップとしてのアドリブを徹底的に追求する。潔く切れ味良く後味良く、良質なハードバップが、このライブ盤にぎっしりと詰まっている。
決して耳当たりの良い演奏では無いし、決してポップで聴きやすい演奏では無い。純粋、ハードバップ・ジャズの良きエッセンスが詰まりに詰まったライブ演奏である。良質のハードバップを体験したければ、このライブ盤を聴けば良い。良質のハードバップは、と問われれば、このライブ盤を紹介する。
どこから聴いても、現代の良質なハードバップな響きが、とてもとても心地良い。かなり骨太で硬派で、かなりヴァイタルな演奏なので、気軽に聴いたり、聴き流したりは出来ないけど、このライブ盤のロバーノは掛け値無しに優れた、現代のハードバッパーである。これこそが「純ジャズ」であり「メインストリーム・ジャズ」である。
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