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2012年11月13日 (火曜日)

大西順子が「引退」である。

ジャズピアニストの大西順子が、この秋に行われる国内ツアーをもってプロ・ミュージシャンとしての演奏活動を停止する。つまりは「引退」。
 
昨年辺りから、雲隠れ以前と同様、心無い評論家の場当たり的な、無責任な評論に真っ向から対立して、なんだかヤバイ雰囲気やなあ、と思っていたんだが、やはり駄目だった様ですね。

大西順子と言えば、今をときめく日本女子ジャズ・ピアニストのトップ・ランナーである上原ひろみ、山中千尋が出現する以前、1990年頃から一世を風靡した、ハードボイルドな和製女性ピアニスト。男勝りの「ガーンゴーン」と強いタッチの左手のビートを入れながら、右手は回る回る、疾走感溢れるシーツ・オブ・サウンドの様な音符の羅列。

しかし、フレーズやアドリブが「どこかで聴いた様な」音で、歴史的に有名なジャズ・ピアニストのスタイルのエッセンスを大々的に取り入れた、有名なジャズ・ピアニストの面々のスタイルのコラージュ的な個性は、持ち上げられたり叩かれたり。しかも、心無い評論家の場当たり的な、無責任な評論に真っ向から対立したのだがら、これまた大変。まあ、大西順子もちょっと我が儘なところもあったんですが・・・。

1998年リリースの『Fragile』以降、当時のジャズ・シーンに愛想を尽かしたのか、雲隠れして実に11年。2009年には、突然にカムバックしたんですが、やはり馴染まなかったんでしょうねえ。とにかく、独特な考え方、感じ方をしているので、音楽家には向かないんだろうなあ。

大西は自身のサイトで、昨年家族の不幸があったことをきっかけに活動を自粛してきたこと、その期間中に「自分の音楽」について考えていたことを告白。「自分のための演奏は出来ても、オーディエンスを満足させるパフォーマー、クリエーターにはなれない、むしろ研究者でいたい」という結論に至り、引退することを決意した、とのこと。まあ、本人が下した結論だからこれで良いんでしょうね。
 

Mukai_j5

 
さて、大西順子については、彼女のリーダー作、サイドメンとしての参加作のほどんどを聴きこなしている。彼女の場合、リーダー作だとあまりに自分を出し過ぎて、かつ、自分を表現しすぎるきらいがあって、大がかりで大向こう張った目眩く展開の演奏がかなり重たく、聴いてドッと疲れる。有り体に言うと聴いてしんどいアルバムが多くて、僕にとっては、ほんの時々のスパンでしか聴き返せないものばかりだった。

しかし、フロントのバッキングに回った時の大西は凄い。敵無しである。リーダー作の時の様に、自分を出し過ぎること無く、自分の表現も適度に押さえて、実に生真面目にフロント楽器の演奏を支え、盛り立て、立てる。これって、トミー・フラナガンに通じるジャズ・ピアノの職人のみが成せる技であり、そういう意味で、大西順子は「ジャズ・ピアノの職人」だったんだろう。

そんな「ジャズ・ピアノの職人」な大西順子をビンビンに感じることの出来るアルバムがある。『J5(向井滋春 Featuring 大西順子)』(写真左)というアルバム。日本の代表的トロンボーン奏者向井滋春のリーダー作。1993年11月の録音。ちなみにパーソネルは、向井滋春 (tb), 山口真文 (ts), 大西順子 (p), Rodney Whitaker (b), Greg Hutchinson (ds)。

このアルバムにおける大西順子は素晴らしい。しっかりとバッキングに専念し、ソロの場面に来ると、キラリと光るアドリブを繰り広げる。決して目立ちすぎず、決して大袈裟にならず、粛々と持てるだけのテクニックと感性を発揮する。素晴らしい職人芸。素晴らしい個性。

バッキングに回って、リズム・セクションに回って、これだけのパフォーマンスを繰り広げられる力量って相当なものだと思う。このバランスの取れたパフォーマンスが、リーダー作に反映されなかったことを僕は遺憾に思う。プロデュースに問題があったのは確かだろうし、大西自身のセルフ・コントロールにも問題があったのだろう。実に惜しい。

しかし、今回のツアーで「引退」である。バックに回った時の魅力的なバランスの取れたパフォーマンスが、リーダー作で発揮されることを遂に聴くことができずに終わるのは残念ではあるが、本人が下した結論だから仕方が無い。勿体ないことだなあ、と思う。しかし、これもまた、ひとつの「ミュージシャンの生き方」である。これから歩む「別の人生」での健闘を祈りたい。

 
 

大震災から1年半が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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