ロリンズ流のフリー・ジャズ
テナー・タイタン、ソニー・ロリンズは、ジャズ・ミュージシャンの経歴の中で、なんと3度も雲隠れしている。
1回目の雲隠れは1954年から1955年の1年間。何故そう感じかは判らないが、多忙の中で自分の音楽を確立する機会を失してしまうと感じたそうで、ニューヨークからシカゴへ引きこもりました。う〜ん、その真の理由が良く判らない。
2回目は1959年。ライバルであったジョン・コルトレーンが台頭し、この陰に怯えたロリンズは再び雲隠れ。この雲隠れの間は、テナーのテクニックの自己研鑽を積む為、ニューヨークのウィリアムズバーグ橋の上で、来る日も来る日も楽器を吹いていた、という逸話は実に有名なところ。
3回目の雲隠れは1969年。この雲隠れは2年半にもおよび、ロリンズもいよいよ本当に引退かと噂された雲隠れでした。
この3回目の雲隠れが見えてきた、雲隠れのリーダー作2枚前のアルバムである。そのタイトルは『Alfie』(写真)。1966年のイギリス映画『Alfie』のサウンドトラックを、独自のアレンジでスタジオ作として吹き込まれたもの。決して、サウンドトラックとして映画に採用されたものでは無い。
独自のアレンジという部分は、当時、売れっ子だったオリバー・ネルソンにアレンジを託している。このオリバー・ネルソンのアレンジは、ちょっと時代を感じさせる「古さ」が漂うが、それはそれとして、ジャズの歴史的成果としては、なかなか鑑賞に耐える、素性の確かなアレンジではある。
1966年1月26日の録音。コルトレーンがフリー・ジャズに突入して、絶大なる人気を誇っていた頃である。実は、ロリンズにはフリー・ジャズは似合わない。ロリンズ自身もそれを判っていた。そこで、サウンド・トラックの焼き直しで、自身のテナーの見つめ直しを図っている。
オリバー・ネルソンのアレンジをバックに、朗々と吹き上げていくロリンズのテナーは、実に「らしく」て良い。冒頭の「Alfie's Theme」のロリンズのテナーを聴くだけで、やはり、ロリンズのテナーは「歌心」に尽きる、と確信する。フリー・ジャズなんてなんぼのもんじゃい。このアルバムでのロリンズは、伝統的なジャズ・インプロビゼーションのど真ん中を行くものだ。
ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson (tb -1,2) Jimmy Cleveland (tb -3/6) Phil Woods (as) Robert Ashton, Sonny Rollins (ts) Danny Bank (bars) Roger Kellaway (p) Kenny Burrell (g) Walter Booker (b) Frankie Dunlop (ds) Oliver Nelson (arr, cond) 。当時の先進的なモダン・ジャズの名うてミュージシャン達がズラリと並ぶ。
この優れたメンバーのバック演奏の上を、自由にテナーで吹き進めるロリンズ。マイペースでバッキングを無視したように吹きまくる様は、伝統に小指を残しつつ「ロリンズ流の限りなくフリーなジャズ」と解釈しても良い位のロリンズ独特のフリーな演奏。エモーショナルに感情のおもむくまま、垂れ流し的にアブストラクトに吹き続けるのでは無い、秩序を最低限に守りつつ、純ジャズのマナーを維持しながら、可能な限り自由に吹くロリンズ流のフリー・ジャズ。
オリバー・ネルソンの古さを感じるアレンジをバックに吹き上げていく、ロリンズ流のフリー・ジャズ。このアルバム『Alfie』の最大の特徴であり個性である。ロリンズらしいテナーの演奏が溢れんばかりの佳作です。意外と僕にとっての「ロリンズの愛聴盤」の一枚です。ジャズ者初心者の頃から35年来、お世話になっています(笑)。
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