スムース・ジャズの原点のひとつ
Spyro Gyraの『Freetime』(写真左)。1981年のリリースになる。このアルバムは、スパイロ・ジャイラの個性を定着させたターニング・ポイントとなったアルバムだと認識している。
1979年の出世作『Morning Dance』から『Catching the Sun』『Carnaval』と、アルバム・ジャケットのイラストレーションの雰囲気も統一されていて、そのアルバム・ジャケットの雰囲気と、音世界の中で。そこはかとなく香るラテンの雰囲気から、僕は勝手に「トロピカル3部作」と呼んでいる。
ちなみに、この3作のアルバム・コンセプトは、当時のフュージョン、つまり、ハイテクニックで、印象的なフレーズを前面に押し出し、ソフト&メロウな雰囲気を醸し出しつつ、疾走感、爽快感溢れる8ビート中心、電気楽器中心のジャズ、といった雰囲気を忠実に追求したものになっている。
しかし、そのフュージョンな雰囲気、フュージョンな音作り、というのは、所詮は「流行」の世界であって、恒常的な個性とするには、もう少し、その音楽性を煮詰める必要があった。
という、バンドとしての悩ましいタイミングの中でリリースされたアルバムが『Freetime』。このアルバムには、フュージョン・ジャズの後、その要素をしっかりと引き継いだ「スムース・ジャズ」の礎となる音作りがなされている。
僕は、「スムース・ジャズ」とは、フュージョン・ジャズ、ポップ・ジャズをベースに、R&Bのテイストを融合させ、高度な音楽性を保持しながらも「聴き易い」「聴き心地の良い」ジャズという解釈をしている。そういう意味で、このスパイロ・ジャイラの『Freetime』は、それまでの「トロピカル3部作」に比べて、ファンクネスな雰囲気が強くなっており、リズム&ビートについても、メリハリの強い、R&B的なビートのノリが前面に押し出されている。
冒頭のタイトル曲「Freetime」が、その象徴的な演奏と言えるだろう。ビートが強く効いたエレベの響き、心地良い爽快感溢れるシンセのフレーズ、そして、そこはかとなくファンクネスを漂わせながらも、印象的な響きとキャッチャーなフレーズが印象的なソプラノ・サックスの響き。 演奏全体の雰囲気が、それまでのフュージョン・ジャズの雰囲気とはちょっと違うことに気が付く。
テクニック的には、超絶技巧なものなんですが、決して、それを前面に押し出すこと無く、印象的なフレーズを前面に押し出し、ソフト&メロウな雰囲気を醸し出しつつ、疾走感、爽快感溢れる8ビートなエレクトリック・ジャズを表現する。所謂、後のスムース・ジャズ的な演奏を前面に押し出している。そういう意味で、当時のスパイロ・ジャイラは、フュージョン・ジャズの最先端を走っていたバンドのひとつと言えます。
青空に舞い上がれ!
最新NYサウンドと爽やかなメロディー!
豪華ミュージシャンをバックに
スパイロ・ジャイラの意欲みなぎる第5作!」
LP時代の帯紙に書かれたキャッチ・フレーズですが、ちょっと赤面ものではありますが、この『Freetime』のアルバムとしての雰囲気をまずまず言い得ていると思いますね。でも、ちょっと気恥ずかしい、歯の浮くようなフレーズが並んでいて、声を出して読むの憚られるレベルですねえ(笑)。
米国東海岸を代表するフュージョン・グループ「スパイロ・ジャイラ」は、このアルバムを境に、スムース・ジャズ化していきます。そんな、スムース・ジャズなスパイロ・ジャイラの原点が、このアルバム『Freetime』にギッシリと詰まっています。フュージョン・ジャズの、スムース・ジャズの名盤の一枚に数え上げるべき、なかなかの内容の優秀盤です。
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