« エヴァンスの「安心の一枚」 | トップページ | 僕にとっての「鉄板」ピアニスト »

2012年9月 5日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・37

ハードバップ時代に、聴いていて面白い、聴いていて楽しめる盤が沢山ある。面白い、楽しいがキーワードなんだが、恐らく、ハードバップという演奏フォーマット自体が、ジャズを演奏していて聴いていて「楽しい」、ジャズを演奏していて聴いていて「面白い」部分を前面に押し出した、ジャズをとことん楽しめる演奏フォーマットだから、と言って良いだろう。

そんなハードバップ時代の、聴いていて面白い、聴いていて楽しめる盤のひとつが、Pepper Adams『10 To 4 At The 5 Spot』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Pepper Adams (bs), Donald Byrd (tp), Bobby Timmons (p), Doug Watkins (b), Elvin Jones (ds)。1958年04月15日、NYはファイブ・スポットでのライブ録音。ハードバップの代表的レーベル、プレスティッジからのリリース。

まず、バリトン・サックス(略してバリサク)の雄、ペッパー・アダムスのリーダー作であり、ペッパー・アダムスのバリサクが心ゆくまで堪能できる可能性が高いこと。

そして、他のパーソネルを見渡すと、トランペットのドナルド・バードは、当時、若手売出中としてとことん充実、そして、コッテコテのファンキー・ピアニストのボビー・ティモンズ、 堅実ベーシストのダグ・ワトキンス、そして、野生人ポリリズム・ドラマーのエルビン・ジョーンズ、という、なんだかハードバップの優れもの達がズラリ。

これって、このアルバム『10 To 4 At The 5 Spot』の内容、ごっつい期待できるんとちゃうか、という気分になる。

で、この『10 To 4 At The 5 Spot』をCDプレイヤーのトレイに載せて、スタートスイッチを押す。と、野生人ポリリズム・ドラマーのエルビン・ジョーンズの傍若無人なドラミングがドバ〜っとスピーカーから出てくる。この傍若無人なエルビンのドラミングの煽られて、ペッパー・アダムスが、ブリブリブリブリ、っとバリサクを吹きまくる。
 

10_to_4_at_5spot

 
そして、の傍若無人なエルビンのドラミングの煽られて、ドナルド・バードが、パッパーパラパラパラッ、っとトランペットを吹きまくる。意外と、このドナルド・バードのトランペットがブリリアントで躍動感溢れていて、かなり雰囲気の良い、ハードバップなトランペットが実に良い。このライブ盤でのドナルド・バードは絶好調。

面白いのは、コッテコテのファンキー・ピアニストのボビー・ティモンズ。意外と、コッテコテなファンキー・ピアノを封印して、キッチリと端正なハードバップ・ピアノを展開している。う〜ん、ええ奴やなあ、ボビー・ティモンズ。自分が目立つより先に、既知入りと端正なハードバップ・ピアノで、フロントのバリサクとペットを盛り立てる。

ダグ・ワトキンスのベースが太い。野生人ポリリズム・ドラマーのエルビンから、バリサクのペッパー・アダムス、ペットのドナルド・バード、キッチリと端正なハードバップ・ピアノを展開しているボビー・ティモンズ。皆まとめて、皆のパフォーマンスの底を、ダグ・ワトキンスがガッチリと支えている。

ほぼ、一過性のジャム・セッションに近いライブ演奏の雰囲気。細かなアレンジ気にしない。ハードバップの基本である、ミュージシャンが交互に展開するアドリブの交歓。「アドリブ命」のジャズメン直球勝負なインプロビゼーションが、適度な長さで繰り広げられている。

タイトル通り、夜中の10時から朝の4時まで、NYはファイブ・スポットでの、ハードバップな要素がギッチリと詰まった、とことん白熱ジャムセッション。1958年04月15日の夜、このライブ盤の様な演奏がNYはファイブ・スポットで、さりげなく、日常の如く展開されていた。ええなあ。羨ましいなあ。このライブ盤の様な演奏が、1958年当時、NYのそこかしこに展開されていたんでしょうね。

そして、僕達は、21世紀に入ったこの時代、このライブ盤の記録を通して、1958年当時の、1958年04月15日の夜のNYはファイブ・スポットでの「アドリブ命」のジャズメン直球勝負なインプロビゼーションを追体験することが出来る。ジャズ者にとって「無上の幸せ」というものである。
 
 
 
★大震災から1年半が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

« エヴァンスの「安心の一枚」 | トップページ | 僕にとっての「鉄板」ピアニスト »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジャズ喫茶で流したい・37:

« エヴァンスの「安心の一枚」 | トップページ | 僕にとっての「鉄板」ピアニスト »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー