ジャズ喫茶で流したい・37
ハードバップ時代に、聴いていて面白い、聴いていて楽しめる盤が沢山ある。面白い、楽しいがキーワードなんだが、恐らく、ハードバップという演奏フォーマット自体が、ジャズを演奏していて聴いていて「楽しい」、ジャズを演奏していて聴いていて「面白い」部分を前面に押し出した、ジャズをとことん楽しめる演奏フォーマットだから、と言って良いだろう。
そんなハードバップ時代の、聴いていて面白い、聴いていて楽しめる盤のひとつが、Pepper Adams『10 To 4 At The 5 Spot』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Pepper Adams (bs), Donald Byrd (tp), Bobby Timmons (p), Doug Watkins (b), Elvin Jones (ds)。1958年04月15日、NYはファイブ・スポットでのライブ録音。ハードバップの代表的レーベル、プレスティッジからのリリース。
まず、バリトン・サックス(略してバリサク)の雄、ペッパー・アダムスのリーダー作であり、ペッパー・アダムスのバリサクが心ゆくまで堪能できる可能性が高いこと。
そして、他のパーソネルを見渡すと、トランペットのドナルド・バードは、当時、若手売出中としてとことん充実、そして、コッテコテのファンキー・ピアニストのボビー・ティモンズ、 堅実ベーシストのダグ・ワトキンス、そして、野生人ポリリズム・ドラマーのエルビン・ジョーンズ、という、なんだかハードバップの優れもの達がズラリ。
これって、このアルバム『10 To 4 At The 5 Spot』の内容、ごっつい期待できるんとちゃうか、という気分になる。
で、この『10 To 4 At The 5 Spot』をCDプレイヤーのトレイに載せて、スタートスイッチを押す。と、野生人ポリリズム・ドラマーのエルビン・ジョーンズの傍若無人なドラミングがドバ〜っとスピーカーから出てくる。この傍若無人なエルビンのドラミングの煽られて、ペッパー・アダムスが、ブリブリブリブリ、っとバリサクを吹きまくる。
そして、の傍若無人なエルビンのドラミングの煽られて、ドナルド・バードが、パッパーパラパラパラッ、っとトランペットを吹きまくる。意外と、このドナルド・バードのトランペットがブリリアントで躍動感溢れていて、かなり雰囲気の良い、ハードバップなトランペットが実に良い。このライブ盤でのドナルド・バードは絶好調。
面白いのは、コッテコテのファンキー・ピアニストのボビー・ティモンズ。意外と、コッテコテなファンキー・ピアノを封印して、キッチリと端正なハードバップ・ピアノを展開している。う〜ん、ええ奴やなあ、ボビー・ティモンズ。自分が目立つより先に、既知入りと端正なハードバップ・ピアノで、フロントのバリサクとペットを盛り立てる。
ダグ・ワトキンスのベースが太い。野生人ポリリズム・ドラマーのエルビンから、バリサクのペッパー・アダムス、ペットのドナルド・バード、キッチリと端正なハードバップ・ピアノを展開しているボビー・ティモンズ。皆まとめて、皆のパフォーマンスの底を、ダグ・ワトキンスがガッチリと支えている。
ほぼ、一過性のジャム・セッションに近いライブ演奏の雰囲気。細かなアレンジ気にしない。ハードバップの基本である、ミュージシャンが交互に展開するアドリブの交歓。「アドリブ命」のジャズメン直球勝負なインプロビゼーションが、適度な長さで繰り広げられている。
タイトル通り、夜中の10時から朝の4時まで、NYはファイブ・スポットでの、ハードバップな要素がギッチリと詰まった、とことん白熱ジャムセッション。1958年04月15日の夜、このライブ盤の様な演奏がNYはファイブ・スポットで、さりげなく、日常の如く展開されていた。ええなあ。羨ましいなあ。このライブ盤の様な演奏が、1958年当時、NYのそこかしこに展開されていたんでしょうね。
そして、僕達は、21世紀に入ったこの時代、このライブ盤の記録を通して、1958年当時の、1958年04月15日の夜のNYはファイブ・スポットでの「アドリブ命」のジャズメン直球勝負なインプロビゼーションを追体験することが出来る。ジャズ者にとって「無上の幸せ」というものである。
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