ピアノ・トリオの代表的名盤・30
Charlie Haden, with Gonzalo Rubalcaba and Paul Motian『The Montréal Tapes』(写真左)。ピアノトリオのライブ盤である。
1989年7月3日。タイトル通り、ベースでリーダー格のチャーリー・ヘイデン、ピアノのゴンサロ・ルバルカバ、ドラムのポール・モチアンのトリオによるジャズフェスティバルで有名なスイスの「モントルー」での1989年のライブ盤(良く見ると「e」の上に「’」がついている)。
僕はゴンサロ・ルバルカバ(写真右)のピアノが大好きだ。ゴンサロのピアノは、印象派ピアノの側面を持ち、メロディアスでリリカルで幅の広い、ちょっとラテン・フレイバーの入った、ゆったりとフレーズの展開と、モーダルで超絶技巧で電光石火なビ・バップ・ピアノの融合。
リリカルで印象派なフレーズとモーダルで超絶技巧で電光石火なビ・バップ・ピアノの共存。そんな唯一無二な個性を持つゴンサロのジャズ・ピアノ。この正反対な個性の共存は、普通のスタンダード曲のカバーには決して向かない。そんな孤高の共存には自作曲が一番。つまり、ゴンサロのピアノの出来不出来は、ゴンサロの作曲とアレンジの出来不出来に比例する。
さて、このチャーリー・ヘイデンがリーダー格のピアノ・トリオのライブ盤『The Montreal Tapes』のゴンサロのピアノの出来は良好。というか、このライブ盤でのゴンサロのピアノは、ゴンサロのベストプレイのひとつに数えられるほどの、内容優れた、素晴らしい出来である。
アルバムの1曲目。ゴンサロの静かで印象的で広大なイメージのピアノ・ソロから始まる、ゲイリー・ピーコック作の「Vignette」 。この曲はゴンサロの作では無いが、ゴンサロのピアノの個性である「リリカルで印象派なフレーズとモーダルで超絶技巧で電光石火なビ・バップ・ピアノの共存」にピッタリとイメージが合致した希有な曲。この演奏でのゴンサロのピアノの素晴らしさには溜息しか出ない。
このライブ盤でのゴンサロのラテン・フレイバーはちょっと控えめ。それがまた、そこはかとなく「洒脱」で、ゴンサロのピアノ展開を際立たせる。ヘイデンの骨太で正統派ベースが、ゴンサロのピアノをメインストリーム化させている。そして、モチアンのドラムは、ゴンサロのモーダルで超絶技巧で電光石火なビ・バップ・ピアノのガッチリと支え、大いに煽りまくる。
ヘイデンのぶっといベースにも痺れまくる。そして、モチアンの緩急自在で「粋筋」なシンバル・ワークには思わず聴き入ってしまう。ヘイデンのベースもモチアンのドラムも、ソロにおいては思いっきりそれぞれの個性を前面に押し出し、ゴンサロのピアノのバックに回れば、ゴンサロの演奏のイメージをしっかり支えながら、ゴンサロのピアノのイメージを、時には増幅し、時には最大限に目立たさせる。高度な職人芸の仕業。
印象的ではあるが地味なアルバム・ジャケット(僕は好きですけどね)。何か残り物の様な、音源の落ち穂拾いの様なタイトル。ジャズ者ベテランで、チャーリー・ヘイデンやゴンサロ・ルバルカバが何者かを知っていて、お気に入りでないと手にしない様なライブ盤。
しかし、僕はこのライブ盤のクォリティの高さにはとことん平伏する。このライブ盤には、巷溢れる人気のピアノトリオ盤を決して寄せつけないほどの「凄み」と「粋」がある。孤高のピアノトリオ盤である。
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